ボクは、期待と不安を手に入れた。
そう、何気ない毎日を暮らしていたけれど
一通の手紙が2つのモノをもたらした。
家族とは長い間、会っていない。
しばらく、この古い家ともお別れだ。
城へ向かう準備を終えてドアを開く。
道なりを歩いていけば駅へたどり着く。
歩いていくと時間はかかるけれども……
急ぐ旅でもない。
林道に差し掛かった時
樹の影が大きく揺らいだ。風が吹いている
わけでもなく、樹は静かに立っているのに
影だけが大きく揺らいでいる。
少し先に眼をやると、宙に浮く女がいる。
赤のドレス、とても綺麗な顔立ち。
ここだけみれば、どこかのお姫さまにみえる
ただ、とても冷徹な瞳がそれを否定した。
「どうやら、お前のようだねぇ」
ボクは全く理解できていない。体が全く
動かない。ただ、ただ、眼だけが不可思議
な映像を届けてくる。
宙に浮く女が手のひらをこちらに向ける。
みるみる大きな赤い玉が出来上がる。
「今のうちに処分しておかないとねぇ」
ボクは勝手な話についていけない。ただ
大きな力で、このまま宙に浮く女の言うとおり
になってしまうだろう。
ものすごいスピードで赤い玉がこちらに
向かってきた。もはや、眼も恐怖で塞いでしまって
どうなったのかもわからない。
死……
い、いや、耳が音を伝えてくる。
「ハハっ、間に合ったネ」
眼を開き入ってくる映像に、美しい人……女性
のエルフがボクの目の前で盾を使って赤い玉を受け
止めている。
「あ、あの……」ようやく口が動いてくれたが、
ボクはなんて言えばいいのか、わからなかった。
「キミがオーダー君だネ?」盾で防いでいるからか
少し力のはいった声でエルフが聞いてきた。
「はい」うなずきながら短く答える。
「詳しい説明は今できないけど、私の相棒に乗って
駅へ向かって欲しいんだ」
すると!
白い馬が颯爽とやってくるやいなや、ボクはその
背に跨った。そして「あ、あの、ありがとう」
エルフはウインク一発で返答して
また緊迫の戦闘へもどる。
ボクは見惚れてしまい、林道を抜けていたことを
ようやく気付いた。
急に不安だけが襲ってきた。
一体さっきのは何だったのか……なぜ見習い騎士が
狙われたのか……あのエルフはなぜ守ってくれたのか?
「でも、美人だったなぁ」つい口に出してしまった。
あのエルフさんにまた会えるかなと、ちょっと期待
して顔がにやける。
手綱から伝わったのか白馬が急にジャンプした。
ボクは必死で掴まって事なきを得る。
しかし、この白馬は本当に賢い。乗りやすさも抜群
鐙に足をかけ、手綱を持っているだけで駅まで着いて
しまった。
(主人に手は出させないけど、また会いましょう)
ボクはポカーンとした。
「まさか……ね」つぶやき白馬を見た。
するとウインク一発こちらに返して風のように
去っていった。
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ファンタジー小説です。続きものです。