No.211682

ふつうでふつうの恋だから

想いを伝えるのって難しいと思います

2011-04-14 21:00:10 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2898   閲覧ユーザー数:2497

 

何をやっても目立たない。

そんなことは自分が一番よくわかってる。

政治、軍事、武芸、芸術、料理、器量…

どれをとってもパッとしないことくらい自分が一番わかってる。

そりゃ、私だって一君主として人の上に立ち、政を取り仕切っていたことだってあったさ。

けどそれも、今にして思えば大したものではなかったのかもしれない。

周りを見れば、桃香に蓮華、華琳に雪蓮…とてもとても私がかなう相手じゃない。

そんなことは自分が一番わかってるんだ。

たしかに不得意なことはないけど得意だと胸を張れることもないんだ。

政治では華琳に敵うわけがないし、武術では雪蓮に到底及ばない。

蓮華ほどの器量もなければ、桃香ほどの存在感なんてあるはずもないじゃないか。

自分ではちょっとしたものだと思っていた馬術も霞や翠には勝てるはずもない…

自分で言ってて悲しくなってくるけど、けどそれも事実なんだから仕方ないじゃないか。

努力が足りないのか。

それとも根本的に何かが違うのか。

からたちだかがないのは私のせいなのか…

わからない。

わからないんだ。

なんでこんな私を好きだと言ってくれるのか。

だからこそ、あいつの特別になりたかった。

いろんな特別が集まる中で、一番特別なあいつのそばにいたかった。

あいつが胸を張って、特別だと言ってくれるような女になりたかった。

何をやっても目立たなかった。

そんなことは自分が一番よくわかっていた。

勉強、運動、顔に性格…

どれをとってもパッとしないことは自分が一番よくわかっていた。

そりゃ俺だって男だ、ヒーローみたいなものに憧れてたことだってあったさ。

けどすぐにわかった。俺はヒーローにはなれない。

俺なんて、大したものではなかったんだから。こっちの世界でもそれは同じ。

周りを見れば、華琳に雪蓮、恋に桃香…とても俺が努力して追いつけるようなものじゃない。

それは自分が一番よくわかっていた。

胸を張って得意だといえることなんだこれっぽっちもない。

勉強なんかは華琳を筆頭に軍師ーズの足元にも及ばなければ、武術で武官連中に敵うはずもない。

だらしないといわれるかもしれないけど、事実なんだからしょうがない。

努力が足りないのはわかってる。

根本的に持って生まれたものが違ってることも、もちろんわかってる。

わかってる。

そんなことは十分わかってるんだ。

なんであの子が好きになったかなんて。

いろんな特別が集まる中で、一番普通のあの子のそばにいたいと思った。

だからこそ、あの子にとって普通になりたかった。

あの子が笑って、隣にいるのが普通なんだといえるような男になりたかった。

特別なことがしたかったわけじゃない。

特に変わったことがしたかったわけじゃない。

ただ単に、あいつに振り向いてもらいたかっただけなんだ。

そりゃぁできれば他の連中にも認めてもらいたいさ。

重要な会議ではいなかった扱いをされて、思い出話にもほぼ出番はない。

けど麗羽たちのお守りには…いやちょっと言い過ぎかな?でもあいつらの面倒となると私に真っ先にまわってくる。

それが普通で、とびっきりの特別があつまる中で、普通の私の立ち位置としてはこんなものかもしれない。

でも。

それでも。

少しくらい背伸びしたっていいじゃないか。

せめて、あいつのそばにいられるくらいの特別を望んだっていいじゃないか。

もう普通って呼ばれるのは嫌だ。

もう残念って言われるのは嫌なんだ。

もうこれ以上、地味って言われるのは耐えられないよ…

特別になりたかったわけじゃない。

特に変わったことをしたいわけじゃない。

ただ単に、あの子に気が付いてもらいたかっただけなんだ。

そりゃできれば俺だってヒーローになりたかったさ。

重要な場面で颯爽と登場してどんなことでも即座に解決したり、思い出話の中心にいたり。

そんなヒーローに憧れたこともあった。

でも気が付いた。俺はそれにはなれない。

だったらせめて、万能とまではいかないまでも、何でもそつなくこなせるくらいの、普通の人間になりたい。

それが、とびっきり変わった世界の中でも特別な俺がもつ、普通のあこがれ。

だから。

そうだから。

少しだけでもあの子に伝えたいんだ。

せめてあの子のそばにいるときくらい普通を望んでも罰は当たらないはずだ。

もう特別には憧れてない。

もう英雄と呼ぶのはやめてくれ。

もうこれ以上、特別扱いしないでくれよ…

私はあいつにとっては普通なんだ。

天の国から来たあいつは、この世界でたった一人の天の遣いで、乱世を治めた英雄だ。

私の知ってる中で誰よりも優しくて、厳しくて、臆病で、勇敢で、弱っちくて、強い。

私なんかとは全然違う、英雄だから。

目立たなくてパッとしない私を好きだと言ってくれたあいつは、私の求めた理想だったから。

地味で普通でドジな私を、そばに置いていてくれるなんて思えなかったから。

せめてあいつが私を手元に置いておきたいと思えってもらえるように。

私はあいつの特別になりたい。

あの子は俺はとって特別なんだ。

未来から来た俺は、この世界にたった一人の天の遣いで、三国同盟の神輿役だった。

でも俺はこの世界では一番馬鹿で、だらしなくて、臆病で、弱い。

理想とは全然違う、英雄なんかじゃないから。

そんな弱っちくて頼りない俺にとってあの子は、俺の求めた理想だったから。

俺に対しても気負わずに普通に接してくれる、あの子のそばにいたいと思ったから。

せめてあの子が俺の隣にいるときくらい笑っていてくれるように。

俺はあの子の普通になりたい。

自分の持ってないものばかりが目につく。

周りばかりが欲しいものを手に入れて、自分には一つもないように思える。

才能に囲まれたあの子なんてよっぽどだろう。

その事実ばかりが目について、気になって、悩んで、迷って耳をふさいでしまう。

だから届かない。気が付かない。

だけど、俺はあの子に伝えたい。そんな君は特別だから、と。

いつかきっと、届くから。

普通の俺が言うんだから間違いないよ。

普通なんかじゃないんだ。

俺にとって、あの子はもう、地味でも残念でもないから。

あの子は俺の「特別」だから。

自分の持っていることには気が付かない。

周りが欲しがるものを手に入れて、自分は何でも持っているように思えた。

天から来たあいつなんてよっぽどだろう。

その事実は目につかず、気にもせず、喜んで、笑って、泣いてしまう。

だから届けたい。気づかせたい。

だからこそ、私はあいつに伝えたい。そんなお前は普通でいいよ、と。

いつかきっと言えるから。

私が言うんだから間違いないさ。

普通でいいんだ。

私にとって、お前がいることが、普通になってしまったから。

私にとって、お前はもうなくてはならない普通だから。

あいつは私の「普通」だから。

 

 

 
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