No.211475

G×T・海鳴の空に羽は舞う~三話目~

さん

ずいぶんと間のあいた更新ですがとりあえず三話目です。

2011-04-13 09:59:39 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4814   閲覧ユーザー数:4431

チュンチュン……

 

海鳴の地に横島とタマモが来て初めての朝、さざなみ女子寮管理人の槙原耕介は朝早くから住民達の朝食の準備をしていた。

 

「今日からは二人分多く作らなきゃいけないな」

 

そう鼻歌を歌いながら料理をしていると誰かが起きて来た。

 

「…おはようございまふ……」

「ああ、おはよ……ぞふっ!?」

 

目玉焼きをひっくり返そうと放り上げると目の前に飛び込んで来た光景に目を奪われ、目玉焼きはそのまま耕介の頭の上に落ちる。

 

起きて来たのは横島、……だが彼、もとい(今は)彼女の姿はランニングシャツにトランクスというラフな格好だった。

 

横島からしてみれば何時もの眠る時の格好なのだが女性の姿でのソレは色々な意味で凶悪過ぎた。

 

「どうしたんですか、耕介さん?」

「ど、ど、どうしたって……あ、あの…その…」

 

横島は寝ぼけていて自分が女性の姿と言う事を忘れている為、実に無防備に耕介に近づいて行く。

当然、身長は耕介の方が上の為彼からは横島を見降ろす形になる。

 

何と言うか今の横島は『だっちゅーの』状態の為胸の谷間は丸見えであり、其処に視線が釘付けになっている彼を誰が責められるであろう。

 

 

「……耕介さん?」

「ひいぃっ!!??」

「一体朝から何を見ているのかしら?」

「ご、誤解だ、これは誤解だ!!」

 

 

……訂正、責める奥さんが居た様だ。

第三話「まるで天使の様になの」(後、出番がないの…)

 

その後、朝食の時間になり皆が集まった訳だが、体中に包帯を巻いた耕介の事は見ない様にして淡々と食事を済ませる空気が読める住人達であった。

 

そして遂に登校の時間になり、それぞれの制服に着替えた皆は寮の前に集まり横島が出て来るのを待っている。

 

「お待たせ、皆。さあ、いい加減に諦めて出て来なさい」

「わかったわよ」

 

タマモに連れられた横島は頬を赤らめながら風芽丘学園の女子制服に身を包んで出て来た。

どうやら愛に捕まったらしく、薄く化粧をされ髪型も赤いリボンでツインテールにまとめられている。

 

「うわ~~///」

「忠夫、綺麗なのだ」

「…自信、無くすなぁ~~」

 

知佳と美緒は制服姿の横島に見とれて、那美は何やら項垂れていた。何処とは言わないがふくよかな部分を見つめながら……

 

「ふふふ、女の子なんだからちゃんと綺麗にしなくっちゃ」

「だから私は本当は男なんですってば~~」

「ん?なあ横島。あんた、何か声が変わってないか」

 

真雪が疑問を口にすると他の皆も気付いたのか「おお、そう言えば」と言っている。

 

「ああ、これ?さすがにあのままじゃ変に思われるからちょっと裏技を使って声を変えてみたの。変かな?」

「そんな事無いです。とっても綺麗な声ですよ」

 

そう言って来たのはさざなみ女子寮の住人の一人、岡本みなみ。

横島が来た時はバスケ部の練習試合で留守にしてたが、帰って来てから詳しく説明されて案外すんなりと横島の事を受け入れた。

 

実際声を変えた方法は勿論【声】の文珠。

タマモは【女】の文珠で女性化した方が手っ取り早いんじゃないかと聞いたが横島曰く、

『文珠での女性化では女の子達の中で暴走しかねん。だが神魔人化すると頭の中は男のままでも精神は幾分女性よりになるので暴走してのセクハラなどの心配がいらないんだ』

との事である。さすがに少しは考えている様だ。

 

「さあ皆、早く行かないと遅刻するわよ」

「は~~い、行ってきます」

 

皆はそれぞれの学校へと走って行き、横島は那美の案内で風芽丘学園へと歩いて行く。

タマモはさすがに入学は無理だったようで久遠と一緒に寮に残り愛の手伝いをするようだ。

そして学園に着いた横島は周りからの視線に晒されていた。

 

『な、何だあの美女は?』『二年の神咲と一緒だぞ』『転校生なのか?』『是非、お友達に』『いや、それ以上の関係に』

 

 

「な、何だか動物園の中を歩くパンダの気分…」

「あはは。し、仕方ないですよ、横島さん綺麗ですから」

「ううう、どうせなら元の男の姿でこんなにモテてみたかった」

 

そう涙ぐみながら彼(彼女)は呟く。

知らない事は幸せなのか不幸なのか、GS世界では地味にモテてた事に気付いていない横島であった。

そんな横島の目に見覚えのある男が居た。神社に続く石段でなのはと一緒に居た高町恭也が美少女と仲睦ましげに会話しながら歩いていた。

 

 

「あの男は確かなのはちゃんと一緒に居た」

「あ、高町さんですね。なのはちゃんのお兄さんの高町恭也さんですよ。隣に居るのはお付き合いしている月村忍さんですよ」

 

「………」

「横島さん?」

 

「む~~~」

 

横島はその光景を怪訝な表情で見つめている。

此処で説明しておくが神魔人状態の横島はその姿に引きずられる様に言葉などが女性仕様になっている。それは言葉だけではなく、思考時の頭の中や表面に現れる表情も同様で、つまり今の横島が恭也を見つめる表情はまるで仲良さげな二人に嫉妬しているかの様なのだ。

 

 

ザワザワザワザワ……

 

『な、何だあの子のあの表情は…』『ま、まさか高町の奴に…』『た、高町の奴……MOGUか?』

 

 

「よ、横島さん、何か変な雰囲気に」

「ねえ、那美ちゃん」

「は、はいっ」

「私はこんな格好で苦労してるっていうのにアイツだけ明るい男女交際をしてるっていうのは何か間違ってるよね」

「え、え~と…その…」

「マチガッテルヨネ?」

「はいっ!!ま、間違って…ますです。はい…」

「うふっ、いい事考えた♪」

 

そう言ってクスリと笑うと横島はスキップしながら恭也の所へと歩いて行く。

 

 

 

「よ、恭也」

「ん?ああ、赤星か。お早う」

「お早う、赤星君」

 

恭也に声をかけて来たのは彼の数少ない友人の一人、草間一刀流剣道の遣い手で剣道部の主将・赤星勇吾。

 

「お早う、月村さん。今日も朝から仲が良いね」

「からかうのなら何処かに行ってくれ」

「何だよ、二人の語らいの時間を邪魔するなってか」

「そう言う事じゃなくってだな…」

「きょーぉーやっ♪」

「ん?」

「なっ!!」

「え……ええ~~っ!!」

 

 

恭也に近づいた横島は空いていた右腕に笑顔で抱きついた。あまりにも咄嗟の事だったので恭也は反応が遅れ、逆に赤星と忍はその信じられない光景に目を丸くしていた。

 

「き、君は?」

「えへへ~~、今日転校して来たんだよ」

「え、え~~と」

「あ、職員室に行かなきゃいけないんだった。じゃあ、なのはちゃんにもよろしくね」

 

そう言うと横島は駆け足で那美の所へ駆けていく。

ふと、那美と目が合うが彼女は申し訳なさそうな顔で頭を下げると横島と一緒に校舎へと歩いて行く。

 

 

「…!殺気!!」

 

殺気を感じた恭也が振り向きざまにその場を離れると赤星が竹刀を振り抜いており、恭也の頬に一筋の切り傷が刻まれていた。

 

「あ、赤星、何を?」

「恭也、俺は今初めてお前を憎いと思った。月村さんと言う美人の彼女が居ながらまたあんな美人を……。俺は今ならきっとお前を越えられる!!」

 

そう言いながら涙する彼の後ろには見た事も無い誰かの影が見える様な気がしていた。

誰とは言わないが及川とか樹とかしっとマ○クとか。

 

赤星と対峙する恭也だがそんな彼を襲う更なる殺気があった。

 

「恭也…」

「し、忍?……」

「向こうでOHANASIしましょう」

「ちょっ…ちょっと待ってくれ」

「いいからKINASAI」

「落ち着いてくれ!!俺はあんな子は知らないんだ、何かの間違いだ!!」

「落ち着くのは恭也よ、少し頭HIYASOUKA」

 

そのまま引きずられて行く恭也を見た男達は先ほどまでの嫉妬心は何処かへと消え去り、敬礼をして見送っていた。

「あ~~、スッキリした」

「よ、横島さん。何気に酷いですね」

「何の事かしら?ほほほほほ」

 

こう言う所はさすが美神の弟子と言った所か。

 

 

そしてその後、横島は編入先のクラスでの自己紹介だが、女性の姿の為名前は忠夫ではなく忠雄と変えていた。

 

「転校してきた横島忠雄です。皆さんよろしくお願いします」

『うおおおおーーーーーーーーーーーーーっ!!』

 

横島の自己紹介にクラスの男子は一斉に雄叫びを上げ、女子は女子で見惚れている様だ。

溜息を付いている横島が目をやると真ん中の席辺りで那美が「あはは」と乾いた笑いを浮かべていた。

 

「丁度神咲の隣が空いてるな。横島、彼女の隣の席に座りなさい」

「はい」

 

 

 

その後は転校生恒例の質問責め。

何処に住んでいるのだの、恋人は居るのかだの、高町との関係はどうかなどと。

 

住んでいるのは神咲さんと同じさざなみ寮、高町との関係はちょっとからかっただけと言ったら男子生徒は安堵の溜息を吐いた。

いや、安心されても困るんだけど。いくら精神が女性寄りと言ってもさすがに男に惚れる様な事は間違っても無いから。

恋人は居ないけど好きな人は居た。…もう死んじゃったけどね、と言ったら好きですだの付き合って下さいだのと言って来る者は居なくなった。那美ちゃんは目を丸くしてたけど。

 

 

そしてその日の学校は無事に何事も無く終わった。

 

那美ちゃんはこの後神社にい事言うので途中まで一緒に帰ろうと誘い、歩いていると横断歩道の所に目を奪われた。其処に泣いている一人の女の子の自縛霊が居たから。

 

「那美ちゃん、ちょっと待っててね」

「横島さん?」

 

 

横島さんが駆けていく先には自縛霊の女の子が居た。この道路は確か三日前に人身事故が起きた場所だった。

今朝通った時には何ともなかったのに、幽霊になりたての様だ。私も横島さんが駆け寄らなかったら気付かないほどの弱々しい霊、私もまだ修行不足かな。

横島さんはしゃがみ込んで女の子に話しかける。

《え~ん、え~ん》

「こんにちは、お穣ちゃん」

《え?…お姉ちゃん、私が分かるの?》

「うん、分かるよ。お穣ちゃんのお名前は?」

《私?私の名前は一美っていうの》

「じゃあ、一美ちゃん。ちょっとお話しようか」

《あのね、誰も私の事見てくれないの。いくら話しかけても聞いてくれないし、お母さん達もお花やお菓子を持って来てくれるんだけど泣いてばかりなの。お家に連れて帰ってって頼んでも連れて帰ってくれないし私もここから動けないの。ぐすっ…お、お家に帰りたいよ~~、え~ん、え~ん》

 

横島さんは泣きじゃくる女の子、一美ちゃんを優しく抱きよせながらその頭を撫でてあげている。

 

「そうね、帰りたいよね。でもね、一美ちゃん。可哀想だけど一美ちゃんはもう死んじゃってるのよ」

《え…?う、嘘だ嘘だ、お姉ちゃんのウソつきーーっ!!何でそんなイジワル言うの!!》

 

一美ちゃんは横島さんから離れようと手で押しながらポカポカと叩く。

それでも横島さんは笑顔を絶やさず彼女の頭を撫で続ける。

 

「辛いのは分かるわ、信じたくないのも。でもね、それを理解しないと一美ちゃんは天国に行けくなるのよ」

《え?……》

 

横島さんがそう言うとポカポカ叩く一美ちゃんの手が止まる。

ふと周りを見ると歩いている人達は横島さんの事を怪訝な表情で見ている、おそらく独り言を言う変な女とでも思っているのだろう。私は薄笑いをしている女の人を睨みつけるとその人は慌てたように去って行く。

そんな間も横島さんは一美ちゃんの説得を続けている。

 

《でも、でも…》

「う~ん、そうだ。那美ちゃん」

 

「は、はい。何ですか?」

「ちょっと体をお願い」

「体ですか?」

 

私がそう尋ねると横島さんは一美ちゃんを抱き抱えたまま幽体離脱をする。

当然周りからは見えないのだが翼を羽ばたかせるその姿はまるで天使の様だった。

《お、お姉ちゃん天使さまなの?》

「ううん、違うよ。少し不思議な力があるだけ。さあ一美ちゃん、良く周りを見て」

《うわあ~~~♪》

 

 

一美ちゃんは空の上から見る景色に目を輝かせている。

 

「ねえ、綺麗でしょ一美ちゃん」

《うん、とっても綺麗》

「あのままあそこに居たらこんな景色は見れないのよ、あの砂浜で遊ぶ事も出来ない。でもね、死んだ事を受け入れて天国に行けば何時かもう一度この世界に生まれて来る事が出来るの。だから成仏しよう、もう一度この世界に生まれて来る為に」

《………》

 

一美ちゃんは未だ踏ん切りがつかないのか押し黙ったままだ。

ふと下を見ると花を抱えた女性が近づいて来た、おそらくは一美ちゃんのお母さんだろう。

 

「一美ちゃん、あの人お母さんじゃない?」

《え?あっ、お母さんだ。お母さーーん!!》

 

一美ちゃんは母親に向かって手を振っている。可哀想だけど二人を会わせてきちんと別れをさせてやらないと。じゃあないと一美ちゃんは何時までも成仏できない。

 

「一美ちゃん、お母さんにお別れの挨拶できる?」

《お別れの?》

「そうよ。そうしたらもう一度お母さんの子供に生まれて来るかもしれないよ」

《ほんとっ!?》

「約束はできないけど、神様にお願いしたら叶えてくれるかもしれないわ」

《……分かった。お別れする》

 

一美ちゃんは少し考えた後、ようやくそう言って納得してくれた。

 

「じゃあ、お母さんにもう一度会わせてあげる。そしてお別れしよ」

《うん…》

「あ、あのう。此処で何かあったんですか?」

「え?」

 

しゃがみ込んだままの横島さんの体を支えていると後ろから声をかけて来た花束を持った女性が居て、誰かなと思っていると横島さんの体に幽体が戻って来た。

 

「ふう。あ、一美ちゃんのお母さんですか?」

「そ、そうですけど、何で一美の名前を?」

「まずは本人とお話して下さい」

 

横島さんはそう言うと一美ちゃんに霊波を送り始めた。するとうっすらとしか見えなかった一美ちゃんがはっきりと見える様になって来た。パサリと音がしたので振り向くと一美ちゃんのお母さんと言う人が花を落として呆然としていた。どうやらこの人にも一美ちゃんが見える様になったようだ。

 

「一美?一美なの?」

《お母さーーんっ!!》

 

一美ちゃんは泣きながらお母さんに抱きついた、お母さんも駆け寄って来た一美ちゃんを優しく抱きとめる。

 

「一美ぃ…一美」

《お母さぁん。うわあぁぁーーん》

「ごめんね一美。助けてあげられなくてごめんね」

《もういいの、母さんともう一度会えたからもういいの。う、うえぇ~~ん》

 

 

私はその姿を見て今はもう居ない両親の事を思い出す。久遠との事にもうわだかまりは無い、でもやはりもう一度会えたらと思う。

 

 

《お母さん、このお姉ちゃんがねお母さんに会わせてくれたんだよ。そして私、天国に行くの》

「貴女が一美を?一美が天国に行くというのは…」

 

「はい、本当です。ここで成仏すれば一美ちゃんは天国に行けて、そして再び転生の輪に入る事が出来ます」

《そしたらね、私もう一度生まれて来れるんだって。だから…お母さん、私もう一度お母さんの子供になってもいい?》

「ええ、勿論よ。一美が帰って来るのをお母さん何時までも待ってるわ」

《うん、約束。じゃあお姉ちゃん、私天国に行く》

「なら一美ちゃんにこれをあげる。天国に送ってくれるお守りよ」

 

そう手渡したのは【成】【仏】と刻んだ二つの文殊。これで後はこの世界のキーやんが気をきかせて上手く一美ちゃんを転生させてくれるだろう。

光に包まれた一美ちゃんはゆっくりと光の中に消えていく。

 

《お母さん、お姉ちゃん、ばいばい》

「一美、待ってるからね。お母さん、待ってるからね」

 

手を振る一美ちゃんは笑顔で光の粒となり空へと昇って行き、その後ひとしきり泣いた一美ちゃんのお母さんは横島さんに何度もお礼を言って帰って行った。

 

 

 

「横島さん、一美ちゃん早く帰ってこれるといいですね」

「うん。まあ、それにはあの夫婦が頑張らないとだけどね」

 

その横島さんの言葉でさっきまでの感動がすべて吹き飛んだ。

…最後の最後で台無しです、横島さん!!

そして翌日。

 

 

「愛さ~ん、勘弁して下さ~い!!」

「だ~め、大人しくしてなさい。可愛くしてあげるから♪」

「ふえ~~ん」

 

今日も今日とて横島さんは朝から愛さんに捕まり化粧と髪型のセッティングをされていた。今日は何とお団子頭だ。似合っていて、とても可愛いのが少し悔しい。

 

それにしても、昨日のあの時の横島さんと今のこの横島さん。どっちが本当の横島さんなんだろ?いや、男とか女とかは別にして。何故だろ、とても気になる。

 

 

 

「そうだ、ついでにリボンも着けちゃいましょ♪」

「い~~や~~~!!」

 

続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、某所。

 

「どうしたの、なのは?」

「……出番、無かったの」

あとがき

 

時間かけた割には横島と那美しか出て来なかったですね、横島も女の姿のままだったし。

 

まあ、この話では横島はさざなみ寮と学校では女性として過ごさないといけないしと、女性比率が高いです。その分私は楽しいですけど。

 

次回は横島と恭也の対決があります、どう言う事になって対決なのか?それは次回の講釈で。

 

でわ(゚ω゚)ノシ

 


 
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