「死にたくなければ生き残れ。」
必死だった。
この数年間必死で足掻いた。
だから・・・いける。
大丈夫だ。
本気の俺は強いんだ。
「これより第14班死分け戦を開始する。」
僕はある特殊部隊の戦闘員だった。
しかし、2年前あるミッション中仲間だと思っていた一人に裏切られ僕たちの特殊部隊はその任務で敵に敗北した。
そして僕は捕虜となった。
そのとき敵は僕にこういった。
「お前は素質がある、この先生きたいならば訓練をさせてやろう。最終試験に合格すれば我々の部隊に歓迎する。どうかね?それとも今死ぬかい?」
僕は必死で頷いた。
死にたくない。
その一身で。
そして2年間この部隊のもとでの様々な訓練をへて今にいったった。
これが最終試験“死分け戦”。
今まで何度かメンバー変えがあったものの長い時間を共に過ごしてきた班員。
そしてその中で最も優秀なものだけが生き残ることが出来る最終試験。
これまで合格者は13人。
目の前で52人の人間が死んでいく様を見た。
それは壮絶だった。
信用と裏切り。
絶望と希望。
弱者と強者。
生と死。
そこには表裏一体なそれらが確実に存在していた。
そして今自分はそこにいる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
悲鳴が上がる。
・・・N-4の声だ。
Nとは班であり、数字は配属された順番だ。
全員名称はここからとっている。
自分の名称はN-2だ。
悲鳴がやんでいる。
しかし銃声はなっていなかった。
逃げるなんて選択肢はない。
これは最終試験と言う名の見世物。
上からやつらがこの建物を操作する。
壁が突然消えたり。何もなかったところに出てきたり。
絶対に逃げることは出来ない。
そういう姿を見て奴らは上から笑っているのだ。
そう、つまり銃声も走る音も聞こえないと言う事はN-4は死んだということだ。
「・・・。」
心の中で別れを告げる。
僕はまだ死ぬ気なんてない。
「・・・死んでたまるか・・・。」
期待はずれだと言われ続けた。
素質なんてあってないようなものだった。
周りはもっと凄い人たちばかりで。
気がついたときにはクズ呼ばわりだった。
逃げる場所もなく隠れるところもない。
どこにいても奴らは僕を見て笑う。
所詮僕たちは籠の中の鳥だから。
「だから決めたんだ。見返してやる。あの時そうやって決めたんだ。」
バカにされ、コケにされ続けたある日やつが来た。
「あなたは素質がないようですね。どうします?許可が出ましたよ、死にたければ死んでいいですよ。」
勝手に死ぬことの許されない鳥籠の中死を持ちかけられた。
馬鹿にした笑みで。
悔しかった、悲しかった。
死を望む人間の多い中。
死なさせてもらえるのに死を望む勇気のない自分が。
死ねない籠の中で鳥は死ねずにただ踊る。
死ぬ勇気のない自分に、そして死なない勇気のない自分がただ悔しかった。
「絶対生き残る絶対生き残る絶対生き残る絶対生き残る絶対生き残る絶対生き残る絶対生き残る絶対生き残る。」
呪文のように唱え続ける。
敵はすぐそこ。
絶対生き残る。
それは自分以外の全てを殺すと言う事。
自分をクズだといっていたやつらに死をもってわからせてやると言う思いで引き金を引く。
これが俺の本気だと言わんばかりに。
弾はただまっすぐと仲間の脳天を付きぬいた。
今の僕から過去の君へ。
「さようなら。」
外に出る。
こんな暗いところはもういやだ。
とても辛い道のりだと言うのは百も承知だ。
だが必ず生きて生きて生き抜いてみせる。
「・・・!!・・・!!?!!!」
また一人誰かが死んだ。
これで残っているのは僕ともう一人。
僕は誰かを守るために特殊部隊に入っていた。
でも今の僕はただ自分が生き残るために戦っている。
仲間を殺して。
でも未来に続く道がこれしかないって言うなら進むしかないじゃないか。
そう思うことで自分を正当化して。
もう一人の自分の声は今の僕には届かない。
でも忘れないように。
壊れてしまわないように。
もう一人の僕よ。
醜くったっていい。
もがき抗ってくれ・・・今の僕に。
後方で爆発音がなる。
地雷の音。
そう、あの方向に僕は悲鳴のすぐ後トラップを仕掛けておいた。
卑怯なんて言葉はここには存在しない。
やれることをやらないと死ぬのだから。
壁が取り払われていく。
自分以外の全ての人間が死んだということだ。
僕は本気を出してない、今はまだ。
「N-2よくやった、とても面白かったよ。まさか君が生き残るとはね。」
「君のその生への執念をかって歓迎しよう。ようこそわが部隊へ。」
「ありがとうございます。」
虚勢を張っていると笑われようと。
今からだ。
本気になるのは。
「絶対生き残る。生き残ってみせる。」
今からが僕の本気だ。
今の僕はさっきまでのとは違う。
死はもう怖くない。
もう少しだけまっててくれよ、もう一人の僕。
壊れないように消えないようにもう少しだけまっててくれ。
僕は本気になるからさ。
このくだらない遊びを終わらせるためになら。
「必ず
(あいつらを殺して)
生き残る。」
いつの日か未来の自分が笑えるように。
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今回もボカロソングの小説化です。
『僕はまだ本気出してないだけ』歌:初音ミク
今回はこの歌を聴いて“本気をだす”ということを主旨にした小説を描いてみました。