No.211387

頑張れ!P坊主「第二章:戦友」

Puuryさん

今回から、愉快な仲間が登場します・w・今回で、この作品の方向性が分かるようになると思います。

2011-04-12 21:15:30 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:607   閲覧ユーザー数:587

<前回までのあらすじ>

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小さな田舎の村を出て、大きな街『セシール』で一人前の狩人を目指す『P坊主』が、

集会所で出会った受付の女性『エミル』の協力により、ランスを手にする事が出来た。

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第二章『戦友』

 

「カラーン!」

 

………

 

「カラーン!」

 

集会所の中で、何かが崩れる音が響き渡る。

 

「イケる…6本越え……」

 

他のハンター達が食べ終えた肉の骨を集めて、P坊主が積み骨をしていると、

 

「あんた…折角ランスが手に入ったんだから狩りにでも行ったら?」

 

っと、エミルが困った顔をしてP坊主に話しかける。

P坊主はあれから一週間程、ずっとカウンターで積み骨をしていた。

エミルに狩りに行け言われるが、P坊主は流石に一人じゃ心細いと拒む。

それならば仲間を作ればいいじゃない、と、エミルに言われると、

 

「僕を見て…一緒に狩りに行ってくれる人がいるでしょうか?」

 

P坊主がエミルにそう聞くと、

 

「ん~~……」

 

エミルは、集会所内でP坊主と一緒に狩りに行ってくれそうなハンターがいないか見回すと、

 

「ん?……え!?ヤダ!!」

 

エミルは急に顔を赤く染め、両手で顔を覆う。

P坊主は何が起きたのか理解できず、とりあえずエミルに事情を聞くと、エミルが遠くの方を指差す。

P坊主は、エミルが指差した所に目をやると、そこには一人で椅子に座る男がこちらをじっと見ている。

 

特に変わった所と言えば、バケツのような銀色の鉄で出来た被り物を被り、上半身は裸で、下半身は赤い褌一丁な所だろう。

 

「エミルさん。確かにあれは変態ですが、何もそこまで恥ずかしがらなくても」

「僕なんて裸ですよ?…ッポ…」

 

P坊主が照れていると、エミルは、

 

「違うわよ!あ・あれを見なさいよ!」

 

エミルは男に向けていた指を少しだけ下げる。

P坊主は男の下半身部分に目をやると、エミルが恥ずかしがっている理由が分かった。

男は大きく股を開いた姿勢で座っている為、褌の両端から男性だけに付いている2つの玉が露出していた。

 

 

 

エミルとP坊主がドン引きしていると、男は席を立ちあがり、こちらに向かってくる。

 

「きゃー!こっちに来るな変態!」

 

エミルが男にそう言い放つと、

 

「何を怖がっているんだお嬢さん」

「見よ。私はこの通り丸裸。何の武器も隠し持ってなどいない!」

 

男はそう告げると、大きく胸を張り、自身の筋肉を強調させる。

良く見るとこの男性はものすごく体格が良く、筋肉だけを見ても相当な凄腕ハンターだと思える程だった。

 

「下よ!下のやつを直しなさい!」

 

エミルが男の下半身を指差す。

 

「むぅ?おお!これは失敬。レディーの前でとんだ失態を…」

 

男はそう言うと、褌の両端を持ち上げる。

 

「少し褌がずり下がっていたな」

 

褌が上に上がったせいで、両端に出ていた2つの玉がプリ!と、張る。

 

「ぎゃーー!!!」

 

エミルは近くにあったナイフで男を刺そうとするが、P坊主が止めにかかる。

 

「殺してやる!止めないでー!」

「落ち着いて!落ち着いてくださいー!」

 

2人の様子がおかしい事に気づいた男は、自身の2つの玉が露出していた事に気づき、ごそごそと褌の中に戻す。

 

「やぁ~すまなかったね。私の名は『バシルダ』だ」

 

男が自己紹介し、あいさつ代わりに先程股間を触っていた手を差し出す。

 

「やっぱり殺してやるー!」

 

再びエミルを怒らす――

 

エミルが落ち着いたところで、P坊主がバシルダに仲間になって欲しいと頼むと、

 

「私で良いのならお手伝いしよう」

 

と、案外簡単に承諾を得た。

 

「ん?確かあなたバシルダって言ったわよね?」

 

エミルが名前を確認し、ハンター名簿を見てバシルダの情報を調べる。

確かに名簿にはバシルダの名があった。

しかし、10年以上討伐歴が無く、ハンターズギルドと言う、ハンターが必ず入団しなくてはならない組合から解雇されていた。

ハンターズギルドを解雇された者は、二度とクエストを受ける事が出来ない。

 

「……いや…その……」

 

男は困ったように焦り始める。

 

更に、エミルがバシルダの経歴を調べると、バシルダは今までモンスターを討伐した事が無く、

今まで受注したクエストの数が1000を超えているのに、達成した事のあるクエストが0という酷い戦果であった。

 

エミルとP坊主が呆れていると、

 

「そのバシルダって男は可哀想な奴だな!っま、私は違うけどね!」

 

男は、自身がバシルダでは無いと訂正し始めた。

ハンターズギルドの情報だと、バシルダの右目には大きな傷があるらしい。

しかし、男の顔はバケツのような物で覆われているので確認出来ない。

 

「ちょっと。あんたその顔に付けている物取ってみなさいよ」

 

エミルがそう指示するが、男は、

 

「明るくて広い場所が苦手なのでちょっと…」

 

と、言い訳をして断る。

 

「じゃ~あんたの名前は?」

 

エミルが男に問うと、

 

「名は……昔、モンスターから受けた傷によって忘れてしまった…」

 

男がそう告げると、エミルは疑いの目で睨みつける。

すると、P坊主が急に泣き出し、

 

「なんて可哀想な人だ…エミルさん!疑うなんてあんまりですよ!」

「P坊主君!君は優しいひ……ひ……優しい『子』だ!」

 

感動し合う2人を見てエミルは大きくため息をつき、

 

「じゃ~あんたをなんて呼べばいいのよ?金○野郎?」

 

笑いながら屈辱的な名前を付けようとするエミルであったが、P坊主がそれは可哀想だと言い、

自らが良い名前を付けると豪語する。

 

「ん~…バケツみたいな被り物をしているから…『バケツ』!バケツ君!」

 

男とエミルが少し固まると、

 

「…す・すばらしい!これから私の名はバケツでいこう!」

 

喜ぶバケツとP坊主を見て、エミルは呆れた顔をして、ハンターズギルドの名簿にバケツという名のハンターを追加する。

 

「あなたの愛用武器は?」

 

エミルがバケツに問うと、

 

「私はこれしか」

 

バケツが見せたのはハンマーだった。

 

全ての武器の中で最大級の重量で、リーチは短いものの、その威力は大型モンスターを

めまい状態にする事が出来る程の威力だ。

しかし、バケツが見せたハンマーは少し小振りで、まるで工具のハンマーではないかと思う程小さかった。

 

「これ…ハンマーはハンマーだけど…トンカチ的な…」

エミルは、一応名簿にハンマーと書く。

 

「さぁー!これで仲間が出来たんだし、クエストを受けなさい!」

 

エミルに促されるP坊主であったが、後一人欲しいと言い、拒む。

P坊主達は、辺りを見回し仲間になってくれそうなハンターを探していると、

 

「あ・あの~…」

 

どこからか声が聞こえる。

 

「あの…ここですぅ…」

 

声は下から聞こえた。

机の上に乗っていたP坊主と、カウンターに居たエミルは机の下を覗き込み、バケツは足元に目をやると、

P坊主に負けず劣らず小さな女性が居た。

 

 

 

「あの…あたし…『メリィ』といいます」

 

深々と頭を下げ、丁寧な自己紹介を終えると、メリィはハンターズギルドの登録を先に済ませたいとエミルに告げる。

どうやらP坊主とバケツと同じく新米ハンターのようだ。

 

メリィの装備を見たエミルは、首を傾げ何かを考えている。

 

「あなた…新米ハンターよね?」

 

エミルの問い掛けに、メリィが頷くと、

 

「その防具…キリン装備じゃない?」

 

キリンとは『古龍』と称される他のモンスターと異なった種類で、その数は少なく『幻のモンスター』と言われている。

幻のモンスターの貴重な素材で出来た防具を付けているのに、今までの戦果が無いのに疑問を抱いたエミルは、

じりじりとメリィに詰め寄る。

 

すると、メリィは困った顔をしてP坊主とバケツを見つめる。

 

「待てぃ!この鬼畜暴力娘!」

「メリィさんが怖がっているじゃないですか!……………シネ……」

 

バケツとP坊主が庇うと、エミルはバケツとP坊主を殴る。

 

「うっさいわね!でも…所々防具のパーツが足りてないみたいだし…」

「それに…ちょっと汚れているわね…」

「正直に答えなさい」

 

エミルがずぃ!っと、顔を近づけると、メリィは泣き出し、

 

「すいません~!この街に向かう途中に、倒れていたハンターから剥ぎ取りましたぁ~!」

 

と、自白する。

 

「な!なんですってー!」

 

死んだハンターから装備を剥ぎ取るという行為は、外道中の外道がやる事だった。

エミルが呆気にとられていると、

 

「いやぁ~流石ですね。僕も今度辺りを良く調べてみようかな」

「先輩と呼ぶに至るお嬢さんだな」

 

P坊主とバケツが関心していると、エミルはP坊主に10発・バケツに30発の拳骨と、メリィに1発のデコピンをお見舞いする。

 

P坊主とバケツが倒れているそばで、エミルは涙を流すメリィに話しかける。

 

「いい?もぅしちゃったから仕方ないけど。これからは自分の装備は自分で作るの」

「もぅ、死んだハンターから剥ぎ取っちゃ駄目よ?」

 

エミルにそう言われ、メリィは頷く。

 

「男女差別だ…」

「我々とは偉い態度が違うではないか…」

 

P坊主とバケツは、エミルに向かって文句を言っていると、

 

「何かしら?」

 

エミルがゆらり、と、近寄り、手の指をポキポキと鳴らす。

 

「P坊主君!彼女の機嫌を直すような事を言うのだ!」

 

バケツがP坊主にそう伝えると、P坊主は急いでエミルに向かって、

 

「えっと。えっと。…あ!エミルさん!今日はピンクの縞模様の下着ですか!良いですね!」

 

「なに?…ほぅ……」

 

P坊主とバケツがエミルのスカートの中を覗き、鼻の下を伸ばす。

 

「い・いい度胸じゃない……」

 

この時のエミルは、今までに見た事の無い程恐ろしい殺気を発していた。

 

――エミルに殴られ、P坊主とバケツは血まみれで床に横たわる。

 

この日、集会所でラージャンが現れたという誤報が、他のハンター達の間で知れ渡った。

 

――こうして、P坊主はバケツとメリィと一緒に狩りをする事になった。

 

第三章『初陣』に続く――

 


 
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