No.211306

SHUFFLE!&リリカルストーリー 28

グリムさん

体育祭から数日、ユーノとフェイトは亜沙の家にお呼ばれすることになった。
そこで待っていたのは……?

2011-04-12 01:42:35 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1778   閲覧ユーザー数:1693

第二十八話 お義母さん(おかあさん)

 

「……あーちゃん、本気なんだよね?」

 

向かい合って座る姉妹にも見える二人の少女、言葉を発した少女は驚きと寂しさと心配と喜びとがないまぜになったような表情を浮かべていた。

 

「うんこれが親不幸だってわかってる……でもそれでも思っちゃたの。ユーノくんとフェイト、そしてエリオくんとキャロちゃんと一緒に居たいって……一緒に暮らしたいって」

 

そう答えるのは反対側に座る少女、その顔に浮かぶのは強い意志と少しの申し訳なさ。

 

「そっか、あーちゃんがそういうなら……いいよ」

 

その言葉に対面に座る少女ははっとしたような表情を見せて……

 

「って言ってあげたいけどお母さんとしては無理です」

 

それに続いた言葉に表情を曇らせる。

 

「それでもボクは諦めないから」

 

「うん、わかってる。だってあーちゃんのことだもん。だからね一回でいいからそのユーノくんとフェイトちゃんを遊びに連れてきてくれない?」

 

「……うん、わかった」

 

「話はそれから。わたしだってあーちゃんの初めての彼氏さんを見てみたいし。楽しみだぁ」

 

そして話は打ちきりだと言わんばかりに明るく声を弾ませる女性、この人物の名前は時雨亜麻。体面に座るのは時雨亜沙、見た感じでは姉妹にしか見えないこのふたり実は親子である。

 

「ちょ、ちょっとおかあさん!?」

 

「楽しみだな~あーちゃんの恋人さんと恋人さんのもう一人の恋人さん♪」

 

「…………連れてくるのかなり不安なんだけど」

 

亜沙はそんな母の様子に苦笑いを浮かべながらでも嬉しそうに笑っていたのだった。

 

体育祭の振り替え休日、その昼ごろ時雨家の前には二つの人影があった。ユーノとフェイトである、亜沙から事の顛末はもう聞いていてこうして時雨家を訪ねることになったわけである。

ユーノが呼び鈴を鳴らすとベルの音がなり中から声が聞こえてくる。

 

「なんだか緊張するね」

 

「うん、わたしも…かな」

 

なにかといいつつユーノは恋人の自宅を訪問、フェイトにいたっては娘の恋人のもう一人の恋人という亜沙の親からするとか~なり微妙な立ち位置なのだ、緊張しない方がおかしいというものだろう。

 

そんなふうに考えていると目の前の扉が開いた。ユーノとフェイトはそこから顔を出した人物を見て表情を緩める。

 

「いらっしゃい、ユーノくん、フェイト。ささ、あがって」

 

時雨亜沙、ユーノにとってはフェイトとおんなじくらい大切な女性、フェイトにとっては同士とも呼べる女性だ。

 

「はい、亜沙さん」

 

「うん、亜沙」

 

ちなみに亜沙の要望でフェイトは亜沙の事を呼び捨てにしている、敬語もなし。

 

ここで少し説明しておこうかと思う。

亜沙の家は普通の一軒家だ、とはいっても普通の一軒家の中ではかなり大きい部類に入るだろう。それなりの大きさの庭も付いているし部屋の数も三人暮らしにしては多すぎるくらいに多い。芙蓉家と同じくらいといったところだ。

 

亜沙について家に上がると二人はリビングの方へ通された。

そこにはだいたい亜沙と同じ年ごろか少ししたくらいに見える女性がいてユーノ達の姿を見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。

 

「紹介するわねユーノくん、フェイト。この人は――「あなた達がユーノくんとフェイトちゃん?」――って人の話を遮らない!!」

 

「あ、はい、お邪魔してます。ユーノ・スクライアです。はじめまして」

 

「フェイト・T・ハラオウンです。はじめまして」

 

亜沙のお叱りもなんのそのという感じの女性に唖然としながらもユーノとフェイトはあいさつを返す。

 

「やっぱりそうなんだぁ~。う~んユーノくんだからゆーちゃん。フェイトちゃんだからふーちゃんって呼ぶね?」

 

「「え、え~と」」

 

「だ、だめなの~」

 

突然のゆーちゃん、ふーちゃん発言に困惑しただけなのだが女性は駄目だと思ったらしく目いっぱいに涙を貯め始める。

 

これに慌てたのはユーノとフェイトだ。

いきなり亜沙の姉妹と思われる人に泣かれてしまっているのだからこの困惑は当然のものだろう。

 

ちなみに亜沙はこのときその横で頭を抱えていたのだがユーノとフェイト、その女性は気がついていなかった。

 

「「わ、わかりました!わかりましたから泣かないでください!!」」

 

「わ~い、やった~。あーちゃん、ゆーちゃんとふーちゃんって呼んでもいいって言ってくれたよ」

 

ユーノ達が慌ててOKを出すと瞬時に泣きやみ亜沙に嬉しそうに報告する姿はなんだかやはり姉妹を思わせる。

だからだろうか?この後に亜沙の台詞に言葉を失ったのは……

 

 

「あ~も~!おかあさん恥ずかしいから少し落ち着いて!!ユーノくんとフェイト困ってるじゃない」

 

 

一瞬だけ時間が止まって――

 

「「え~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」」

 

――二人の驚きの声が響き渡った。

 

これがユーノ達と亜沙の母である時雨亜麻とのファーストコンタクトである。

 

「はじめまして、あーちゃんのお母さんの時雨 亜麻です」

 

そうして十分ほど後、やっと落ち着いた二人を椅子に座らせ自己紹介を始めるころには最初の緊張もすべて解けきってむしろ脱力していたとは亜沙の談である。

亜麻はけっしてそれが狙いでやったわけではないのだろうが結果お~らいというやつだろうか?

 

……まぁ何にも考えていない素の状態だったというのが一番正しいのだが。

 

「あ、さっきは失礼しました。あらためましてユーノ・スクライアです」

 

「フェイト・T・ハラオウンです」

 

少し前の自分達の様子からは、いまみたいに落ち着いてあいさつができていることなんて想像をしてなかったであろう二人は柔らかく亜麻にあいさつを返す。

二人の様子を見ながら亜麻は少しだけ微笑む。

そして、まるで亜沙に向けるものとそん色のない温かな視線を二人に向けていた。

 

「さっきはごめんね~。あーちゃんの恋人さんと恋人さんのもう一人の恋人さんがどんな人なのか楽しみで興奮しちゃって」

 

「おかあさんはボクがあれだけ言ったにもかかわらず……」

 

「う、反省してます」

 

「「ぷっ」」

 

亜沙による亜麻への説教というむしろ逆なんじゃないかとでもいうようなそのやり取りに二人は同時に噴き出す。

亜沙と亜麻は一瞬ポカンとしたかと思うと二人で顔を見合わせて

 

「「ぷっ」」

 

なんだかおかしくなってふきだす。そこからはもう連鎖的に広がっていった。

 

「ひ、ひどいじゃないユーノくん、フェイト、ひ、人が真面目に、ぷっ、あはは!!」

 

「そ、そう言う亜沙さんこそ、なんで爆笑してんですか、あ、あはははは!」

 

「そ、そうだよ亜沙。ぷぷっ、ユーノの言う通り」

 

「あはははは!やっぱりあーちゃんの彼氏さん達だけあって面白いねぇ」

 

「ああもう!あはは、おかあさん、全然、反省、ぷっ、してないじゃない!」

 

「「「「あははははは!」」」」

 

「ユーノ・スクライア君」

 

ひとしきり笑ったあと、その呼びかけと同時に亜麻の雰囲気が変わる。声の柔らかさとかそう言うのではなく何となくではあるが。

 

「はい、なんでしょうか亜麻さん」

 

フルネームで呼ばれたユーノはその雰囲気を感じ取って真面目な表情で亜麻に相対する。

 

そのときの亜麻が口を開くまでの時間は数秒だったかそれとも何分もあったのかそれはわからない。だがユーノには何分もあったように感じられたのは確かだ。

もちろんフェイトや亜沙にとってもだったが。

 

 

「うちのあーちゃんのことを末永くよろしくお願いします」

 

「!!はい」

 

「「えっ?」」

 

亜麻が言ったことが予想外だったのかフェイトと亜沙は驚きに目を見張る。さすがに亜麻がいきなりこんなことを言うとは思ってもいなかったようだ。

それに対してユーノは少しだけ驚いた様子を見せたが即答して見せる。その目にはどこまでも真摯な色がうかがえた。

 

「うん、やっぱり思った通りの子だ」

 

「え?」

 

ユーノの答えに対し満足そうな表情をして亜麻はそうこぼす。

 

「ううん、ユーノくんならあーちゃんを任せられるってこと。あーちゃんのこと幸せにしてあげてね?もちろんあーちゃんだけじゃないよ、ふーちゃんもだよ?」

 

「はい、必ず。……必ず幸せにして見せます“お義母さん(おかあさん)”」

 

ユーノのその返しに亜麻はさらに笑みを深め、ふたりの“娘達”に目を向けてからもう一度真剣な表情を作った。

 

「幸せになってね?二人とも。ゆーちゃんと三人で、ね?」

 

「うん、ありがと。おかあさん」

 

「はい、ありがとうございます。亜麻義母さん(かあさん)」

 

その答えに満足そうにしながらもなんだか泣きそうな亜麻を見かねて三人は表情を緩める。

 

「もぉ、お母さんたらそんなんじゃ本当の結婚式のときもたないわよ」

 

「ふぇぇ~、そんなこといったって~」

 

「ふふ、今度くるときはエリオとキャロも連れてきますね。亜沙義母さん」

 

「え、ホントに?うーんあーちゃんが結婚したらわたしはえーくんときゃーちゃんのおばあちゃんか~」

 

ころころと表情の変わる亜麻、本当の娘のように話すフェイト、本当に楽しそうな亜沙――その光景にユーノの顔にも自然に笑みが広がる。

きっとここにエリオとキャロ、そして亜沙の父がいればホントに家族の光景だっただろう。

 

「お義母さんはほんとに見てて飽きないですよ、いい意味でですけど」

 

「ユーノくん流石にうちのお母さんに手を出したら怒るわよ?」

 

「流石にないよね?ユーノ」

 

「ありえないよ~。わたしこんなにおばちゃんだもん」

 

そんな嫉妬なのか本気なのかわからない反応にユーノの顔には苦笑が広がる。亜麻に手なんか出すわけないがそれはそれで言うとしてとりあえずはだ

 

「いや、お義母さんがおばあちゃんだったら成人女性は全員おばあちゃんって言われますって」

 

「もぉ、ゆーのくんお世辞はいいよ~」

 

「いやお世辞じゃないから」

「いやお世辞じゃないですから」

 

ユーノとしては亜麻のその認識だけは正しておかないといけないと思うのだ。

 

「「それはそうと」」

 

「ユーノ」

「ユーノくん」

 

「「お母さん(亜麻義母さん)にとはいえそう言う口説くみたいなものいいは禁止!!」」

 

「……はい」

 

「ゆーちゃん、わたしはゆーちゃんの味方だからね」

 

「って、お義母さんいまそれはなんか逆効果!!」

 

「ユーノ」

「ユーノくん」

 

「……」

 

「「ちょっと頭冷やそうか」」

 

「いや僕何もしてないよね?」

 

こうしてユーノに一つまた一つと護りたいものが増えていく。

そしてそれが彼のこれからを紡ぐ力となっていくのだがそれはまた先の話。

 

あとがき

 

お久しぶりになります、グリムです。

いや春休みが意外に忙しくてあまり時間がとれませんでした。いいわけですねハイ(^_^;)

 

まぁそんなことはさておいて今回は亜沙先輩のお家訪問編、稟くんたちの出番が最近少ない気がする。もっと頑張ろうと思う作者ではありますがまぁぼちぼちやっていきますので気長に待ってくれるとありがたいです。

 

最後に呼んでくれた皆様、こんなものを待ってくれていた皆様に感謝をそれでは失礼します。

 


 
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