No.211078

異世界冒険譚 月殺し編 外伝 トラウマ

RYOさん

交通事故によって死んでしまった主人公。しかし、それは神の弟子が起こした事故だった!?主人公はなぜか神に謝られ、たくさんの世界へ冒険する。

これは……その話の外伝である。

2011-04-10 19:44:37 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2492   閲覧ユーザー数:2327

yukito side

 

……よし、周りに敵は居ない。

 

俺は壁に背を周りを見渡す。

木製の壁の湿ったような感触が俺を落ち着かせる。

武器は小銃が二丁。敵は5人。敵の武器は俺と同じく二丁拳銃が一人。そしてアサルトライフルが四人。みんな武器を他に隠しているだろう。俺も隠しているが……

 

「……くっ!?」

 

不意に俺の右の曲がり角から人影が飛び出してくるのが見え、俺に向かって弾丸を放ってきた。俺はそれを前に飛んで避け、人影に銃口を向ける。

 

「見つけたぜ! まさかお前が最初の敵になるなんてな」

 

人影が俺に銃口を向けながら話しかけてくる。

 

「俺も……まさかお前が最初になるとは思ってなかったな……圭一」

 

そう、曲がり角から現れたのは圭一だった。その手には水鉄砲(200円)が握られている。

 

「行くぞ! 圭一いいいいい!」

 

俺はそう言うと圭一に向かって走り出す……事はせずに圭一の周りを回るように走り出す。

圭一も同じように走る。殴り合いなら近づかなければ当たらないがこれは銃撃戦なのだ、十分に離れて相手の弾を見て避けて、反撃したほうがいい。近づくなど十分な勢いと目が無ければやれない。

 

「……そこ!」

 

圭一の移動先を予想し、頭と腹があるであろう場所に撃つ。コロラド撃ちってやつだ。

 

「おっと! そう簡単にはやられてやれないぜ!」

 

しかし圭一も然る者。俺の呼吸を読んだのか方向転換し反対方向に跳ぶ。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

圭一も俺の動きを予測して撃ってくる。

 

「ふっ!」

 

俺はさらに早く移動してそれを避ける。

 

「マジかよ!? さすが雪人だぜ!」

 

「当然! 俺はかぁいいモードのレナ以外に身体能力で負けるつもりは無いぜ!」

 

軽口の応酬をする俺たち。しかし体と腕は激しく撃ち合い、避けている。

 

「ちっ! 拉致があかねー。行くぞ雪人!」

 

そう言うと圭一は俺に向かって走ってくる。

 

特攻!? 死ぬ気か!?

 

俺は圭一に向かって撃つ!

 

「はぁっ!」

 

「なっ!?」

 

しかし、圭一は俺の撃った弾を避けて近づいてくる。

 

「もらった!」

 

圭一は銃口を俺の頭に向ける。俺は左に避けようと……もう一つの銃口が俺の左わき腹を狙っている!

 

「ぐぉ!?」

 

俺は右に倒れるように跳ぶ。

俺の顔の横を銃弾が飛んでいく。

 

圭一はさすがに驚いたのか一瞬動きが止まる。……ここだ!

 

俺は圭一に向かって連射する!

 

 

「うくっ!」

 

倒れている途中で圭一に攻撃をしたので受身が取れず、俺は地面を転がる。

 

「どうだ!?」

 

俺は転がった反動で立ち上がり圭一を見る。

 

「ちっくしょー。やられちまった」

 

どうやらきちんと当たっていたようだ。圭一がずぶ濡れになっている。

 

「へへっ、まず一勝!」

 

俺が宣言すると校舎から感心したような声が上がる。

 

「よっしゃ! この調子で優勝するぜ!」

 

と、言ってはみたものの圭一との戦いで結構水を消費してしまった。……とりあえず他の人の戦況を見ながら水鉄砲を交換しよう。

 

俺は校庭に向かって走る。

 

 

「うりゃ!」

 

「みー!」

 

おっと。俺が校庭についたと同時に梨花と魅音の決着が着いたようだ。梨花がびしょ濡れになっている。…………ちっ! 透けたりはしないか。

 

さて……どうするか。すぐ近くの水鉄砲を取りに行って魅音と戦うか?

 

「さーて。さっきレナと沙都子が向こうに行ってたよね……」

 

そう言って魅音が俺の居る方向と反対の方向を見た。今だ!

 

俺は魅音に向かって走り出す。叫び声など上げない。足音を極力立てないように注意しながら走る。俺の水鉄砲には水がニ~三発残っている。この好機を逃す手は無い!

 

魅音と俺の距離が近づく距離は後五歩!

 

「殺った!」

 

「しまっ!?」

 

俺の声に反応して魅音が振り返るがもう遅い!

俺の水鉄砲が火を噴くぜ!

 

「きゃっ!」

 

魅音がいつもの性格と反対の可愛らしい悲鳴を上げる。

俺の撃った弾は魅音の顔に直撃した。

 

俺は胸を張って言った。

 

「油断したな魅音」

 

「うう~ちくしょう……」

 

これで二人目!

 

魅音という強者を倒した余韻に俺は浸……いや。油断は禁物。

 

俺は周りを見渡す。……レナの影も沙都子の影も無い。戦っているのだろうか?

俺はみんなの見えないような場所に走って、校舎の上に飛び乗る。魔力持ちの特権だ。皆、悪く思うなよ?

 

校舎の上にはポツンと水鉄砲(500円)が二丁置いてあった。水鉄砲を取り空撃ちしてみる。……どうやら砂は入っていないようだ。俺はレナと沙都子が戦っているであろう方向へ向かう。

 

「私いつも言ってましてよ?トラップは最後の最後にほ~んの一つささやかに……これが究極の美徳でございましてよ~!」

 

そう言って沙都子は嬉しそうに踊る。何か腹立つね……

 

「ふふっ」

 

レナは俺の記憶に間違いが無ければ水鉄砲に砂を詰められて水が飛ばなくなっていたはず。明らかな劣勢。しかし竜宮レナは笑っている。

 

「沙都子ちゃんもまだまだ甘いね~」

 

レナは余裕そうに言う。

 

「なんですって~!?」

 

「被弾の定義覚えてる? 水鉄砲の水に触れたら被弾とし、負けとする」

 

レナは沙都子に集中していて俺に気付いていない。沙都子も俺に気付いていない。俺はレナに水鉄砲を向ける。……そのきれいな顔を吹き飛ばしてやる!

 

side out

 

 

satoko side

 

「私いつも言ってましてよ?トラップは最後の最後にほ~んの一つささやかに……これが究極の美徳でございましてよ~!」

 

ふふふ……これでレナさんは銃が撃てない。私のすぐ隣にはバケツに入った水鉄砲が三丁。これで勝ったも同然ですわ!

 

「ふふっ」

 

劣勢なのにレナさんが不敵な笑いを浮かべる。

 

「沙都子ちゃんもまだまだ甘いね~」

 

「なんですって~!?」

 

「被弾の定義覚えてる? 水鉄砲の水に触れたら被弾とし、負けとする」

 

レナさんが今回の部活のルールを説明しだした。

 

「はっ? それがいったい……」

 

レナさんが何かをしようとした時に上からレナさんに何かがかかる。

 

「ふぇ?」

 

あれは……水!

 

そう判断した瞬間、私はその場から飛び退きました。

 

「よっしゃ! これで俺の勝ち!」

 

校舎の上から声が聞こえてくる。

声のしたほうを見ると雪人さんが水鉄砲を持ちながらガッツポーズをしていた。

 

「よっと!」

 

雪人さんが飛び降りてきました。

 

「あっ!」

 

しまった。水がレナさんにかかったと判断してすぐ逃げたから私の水鉄砲の入ったバケツが雪人さんのそばに!

 

「ふふふ……沙都子、君の水鉄砲は一丁。対して俺は君のを合わせて五丁。この勝負俺の勝ちだ!」

 

雪人さんがそう宣言する。

 

「くっ!」

 

確かに先ほどのレナさんと私の勝負の再現みたいですわね……それにしても……

 

「どうして、姿を現しましたの? あのまま姿を隠していたらかなりのアドバンテージがあったでしょうに!」

 

それにレナさんを撃った後、私を撃てば勝負は決まっていたでしょうに。

 

「ははっ! トラップの無い沙都子なんて恐れる必要が無いだろう?」

 

「なっ!?」

 

雪人さんに言われてカッとなる。

でも、私は何とか雪人さんに突っ込むのを踏みとどまりました。

 

「ちっ! そのまま突っ込んできてくれれば楽だったのに……」

 

雪人さんの顔が少しだけ歪む。焦っている? どうやら先ほどの言葉は本心では無かったようですわね……

 

どうしましょうか? 逃げる? ……いいえ。雪人さんは既に五丁水鉄砲を持っていますわ。あれを持って広い場所で待機するだけで私の勝ちはなくなりますわ……なら! やることは一つ!

 

「相打ち覚悟で突撃ですわ!」

 

「いいぜ! 来い沙都子!」

 

私は雪人さんに向かって走り出しました。

 

でも、私が構える前に雪人さんの方が先に銃を構える。くっ! ダメでしたか!

 

私が諦めかけたその瞬間……

 

「っ!」

 

雪人さんの引き金を引く指が止まりました。

 

「! 今ですわ!」

 

私の水鉄砲から水が放たれる。

 

「っ! しまった!」

 

……結果は……

 

side out

 

 

yukito side

 

次の休み。場所、エンジェルモート。

 

沙都子以外の部活メンバーは……

 

「「「「「いらっしゃいませ! エンジェルモートへようこそ!」」」」」

 

エンジェルモートでお手伝いをしていた。

 

……ええ。負けましたよ! それが何か!?

 

他の部活メンバーを見てみる。

圭一、上半身セーラー服。下半身猫の尻尾付きブルマ。……正直きもいです。

魅音、まさかの黒ゴスロリ。ガサツそうな魅音に似合わなさそうなチョイスだが少し恥ずかしがっている今の魅音には最高の服だと思う。

レナ、チャイナドレス。清楚そうなレナだが、私服はスリットが結構深く入っているせいか魅音よりは恥ずかしがっていない。レナの抜群のプロポーションが惜しげもなく強調されている。すばらしい!

梨花、エンジェルモートの制服。特に言う事は無し。

 

そして俺、メイド服。以上!

 

「はぅ~雪人くんかぁいいよ~お持ち帰り~!」

 

「いや~似合ってるよホント。おじさんいけない趣味に目覚めちゃいそうだな~」

 

言うな。何も言うな。そして見ないでくれ。

 

「雪人君も似合ってます! メイド服の黒と白! そして雪人君の銀色の髪のコントラ「死ねい!」たわらばっ!?」

 

黙れ岡村ああああ!

 

「くすくす……ダメですよ~? お客様にオイタをしちゃ~」

 

不意に客席からそんな声が声が上がる。

 

「くっ! そもそも……なぜあんたが客の側にいて沙都子と一緒にデザート食ってんだよ! 詩音!」

 

そう、俺に注意したのは詩音だったのだ。詩音は沙都子と一緒に幸せそうにデザートを食っている。

 

「私だって非番の日くらいありますよ~。その日が偶々この日だっただけです」

 

嘘だ!

 

「雪人さん! 負けて悔しいからって詩音さんに当たらないでくださいまし!」

 

「くぅ!」

 

ちくしょう……なんで俺、沙都子を残しちゃったんだろ……ちくしょう……

 

「ありがとうございます。沙都子」

 

詩音は沙都子に庇われて凄く嬉しそうだ。

 

ちくしょう……

 

「軽く不幸だああああ!」

 

「うるさいですわよ! 雪人さん!」

 

side out

 

 

??? side

 

密室で一人の男性と少女が話している。

 

「ふむ……沙都子さんを水鉄砲で撃つときに……」

 

「そうなのですよ~何でか分かりますですか? 入江」

 

ふいんき(ry)が台無しである。

 

「う~ん。診てみないことには断定は出来ませんがPTSDかもしれませんね~」

 

「PTSD? それって何なのですか?」

 

少女――もう梨花ちゃんで良いや――梨花ちゃんが首をかしげて尋ねる。

 

「PTSD、外傷後ストレス障害。外傷……すなわち怪我などによってその怪我をした原因を嫌がったりする症状です。簡単に言えばトラウマですね」

 

「トラウマ……ですか?」

 

「はい。軽い怪我程度のトラウマなら簡単に消えてくれますが生死にかかわるような災害、テロ、戦争、事故などに遭遇する、ひどいいじめや虐待、犯罪の被害者になる、自殺、殺人などの場面を目撃するといった衝撃的な体験のあとのトラウマは感嘆には消えてくれません。……古手さん。雪人君から何か聞いていませんか?」

 

入江が梨花ちゃんにそう聞くが梨花ちゃんは首を振り否定する。

 

「聞いていないのです。雪人は僕にあまり自分のことを話してくれないのです」

 

「そうですか……沙都子ちゃんに反応……小さい。違いますね……金髪。これでしょうか? まあ聞いてみない事には分かりませんか」

 

「みぃ? どうかしたのですか?」

 

「ああ、いえ。何でもないんですよ」

 

どうやら入江の呟きは梨花ちゃんには届いていなかったようだ。

 

「雪人君は日常生活には何の問題も無いんですよね?」

 

「ハイなのです。今日も沙都子と一緒に遊んでいましたから」

 

「そうですか……もしかしたら軽い物なのかもしれません。ですがもしかしたら重い場合もありますのでトラウマを刺激するような行動は避けてあげてください」

 

「分かりましたです。……それじゃあ失礼しましたです」

 

梨花ちゃんは入江にペコリと頭を下げて部屋を出て行く。

 

「はい。気をつけて帰ってくださいね」

 

入江はそれをにこやかに送り出した。

 

 

「トラウマね……とんだ救世主さんだわ」

 

家への帰り道で古手梨花は呟いた。

 

『あうあう……そんな事言っちゃいけないのですよ~』

 

羽入が現れて梨花の言葉を戒める。

 

「分かってるわよ」

 

「分かってて言うのはもっと悪いのです。それに雪人はなりたくてトラウマになった訳じゃないのですよ?」

 

「分かってるわ」

 

分かってる分かっていると梨花は自分に言い聞かせるように呟く。

 

「分かっていても失望してしまうのよ。この100年で一度も現れなかった男の子。それに期待していて……私はダメな女ね。100年経った今でも成長してないように感じるわ……」

 

「梨花ぁ……」

 

羽入は少し涙目になって名前を呼ぶ。

 

「大丈夫よ。私は今回こそは運命の袋小路を打ち破ってみせる。運命なんて金魚すくいの網より簡単に破れる……圭一がそう言ってたんだもの。……私はあきらめない。今回こそ……」

 

何かを決意したような目で梨花は言う。

 

「運命を打ち破ってみせる!」

 

 

あとがき

 

こにゃにゃちわーー!

 

春が近づいてきましたね皆さんはお加減はどうですか? 私の住んでいるところは春一番なのか風が強かった日がありました。風が強かったせいで目にごみが入って痛かったです。

 

さて今回は外伝! ということで部活の話を書いてみました。

 

雪人は迂闊ですね。リリカルなのはの世界でも同じようなことがあったのに。

 

さて、どうだったでしょうか? 今回は中々うまく書けたような気がするのですが……

 

皆さんが楽しんでいただければ幸いです。それではまた次回に会いましょう!


 
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