No.210570

恋姫無双 ~天が地に還るまで~最終章

くらのさん

ついに終わりです。伏線も回収しました。伏線は勿論……。コメント、もしくは感想を頂けますと『これが終わったら、新しい小説書くんだ』って友人に言っときます。さて、それではけろりとお楽しみください。

2011-04-08 04:56:37 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:10364   閲覧ユーザー数:7435

 自己嫌悪に陥った時、少し離れた所から、璃々ちゃんを呼ぶ声が響いた。多分、璃々ちゃんを捜しに来たんだろう。

「璃々殿~!」

 その声は一番聞き慣れている声だった。

いつも側に居てくれて、こんなふがいない俺を慕って、尊敬してくれた。そして、俺の知る限りならずっと自分を責め続けている、凪だった。

「やばっ」

 徐々に近付いてくる凪の声に俺は慌てて璃々ちゃんを降ろした。

「どうしたのお兄ちゃん?」

「璃々ちゃん。これからお姉ちゃんが来るから、そのお姉ちゃんにして欲しい事があるんだ。頼んで良いかい?」

「うん! 良いよ!」

「じゃあね………………。分かった?」

「うん!」

「じゃあ、お願い」

 俺は近くにある茂みに身を潜めるため、そしてばれないようにそっと移動した。

 

 いつの間にか居なくなっていた璃々殿を捜すため、私は森に来ていた。

「璃々殿~!」

 ここには居ないのだろうか。と別の場所を探そうかと思い始めた時、川の側から声が響いた。

「凪お姉ちゃん!」

 慌てて、向かうとそこには璃々ちゃんが川辺にある石に座っていた。

「璃々殿、突然居なくなったから皆大騒ぎです。早く戻りましょう。紫苑様も心配なさっています。ところで璃々殿。ここにはずっと一人で?」

「え! う、うん。そうだよ」

 何かを隠しているのはバレバレだ。璃々殿のすぐ下の地面には大人の足跡が残っている。多分、その人が璃々殿と遊んで下さったのだろう。だが、それらしき人はいない。と言うことは、璃々殿に口止めをしたのだろう。

「ね、ねえお姉ちゃん!」

「何でしょうか?」

 辺りを見回して、探していると璃々ちゃんが慌てて声をかけてきた。……と言うことはまだこの近くに居る?

「えっとね。目をつぶって?」

「は? 目をつぶる。ですか?」

「うん!」

「しかし、……いえ。分かりました」

 多分、その間にここに居た人物を逃がすつもりなのだろう。どうして私と会わないのか分からないが、璃々殿の態度からすれば悪い人物とは考えられない。なら、そのまま見逃してもいいだろう。そう思った。

 しかし、恐らくどこかの茂みに息をひそめて隠れていた人物は逃げる気はないらしく、こっちに近付く気配がした。ますます分からない。誰か、私を驚かせようとしているのだろうか。真桜? いやさっきまで一緒に居たから違う。と言うことは蒲公英殿だろうか。

だが、気配が違う。これはもっと近くて――

「――凪」

 懐かしい声が私の胸に響いた。優しい、全てを包み込んでくれるような。あの声が。

 ふわり、と目をつぶったままの私を後ろからそっと抱きしめてくれた腕は、あの頃よりも逞しくて、でも何も変わってなくて。

 そっと、壊れものを触るように自分の前で組まれている手に触れた。それは、思い出の中で何度も撫でてくれたあの優しい手だった。

「凪」

 そっと囁いてくれる声。それに応えたいのに、言葉が出ない。口を開けば嗚咽が漏れそうだった。目も開けられない。もし、開けた時、誰も居なかったらきっと私はもう、立ち直れない。

怖い。これが幻かと思うと。もし、そうなら目を開けてしまえば消えてしまう。蜃気楼のように。伸ばした手が届かない。

 だけど、ボロボロと零れる涙は止められないで頬を伝って私と隊長の手に落ちて散っていく。

その時、隊長の腕が私から離れて行きそうになった。

「駄目です!」

 ギュッと掴む。二度とこのぬくもりから温もりから離れないように。

「凪、大丈夫。消えないから」

 私の手から無くなりそうだった手がしっかりと、苦しいくらいまでに抱きしめられた。

「凪、ごめんな。勝手に居なくなったりして。でも、本当は居なくなりたくなかった。ずっと凪の側で隊長をやっていきたかった。凪に『隊長』って呼ばれるのがどんなに嬉しかったか。凪の真剣に取り組む姿勢を見て、何度励まされたか。凪……俺は凪が居ないと駄目な御遣い様なんだよ……。だからな、凪。これから、遅れた三年間も含めて一緒に過ごそう? ずっと側に居てくれ」

「……はい。隊長の側から離れません。ですから、隊長ももう二度と居なくならないでください……」

「ああ、約束する」

 しっかりと抱きしめて、隊長は誓ってくれた。

 

「しかし、隊長? どうして自分から逃げたのですか?」

「ああ、それなんだが……」

 璃々ちゃんを膝の上に乗せて、俺と凪は近くにある岩に腰かけて川を見ていた。

 しかし、なんと言えばいいのだろうか。まさか、夢の中で凪が自分のことを責めていたから、もし正面からで会っていたら逃げられたかもしれないから。とは流石に言えない。

「やはり、私が――」

「ああ、違う。その信じられないかもしれないけど」

 凪が顔を伏せてしまい、自分を責めようとするのを止める。そして、結局全てを話すことにした。

 全てを話し終えた後、凪はぎゅっと拳を握りしめた。

「ごめんな、凪」

 酷い話だ。皆は苦しんでいる時、俺は夢だった。と見切りを付けていたんだから。

「いいえ、戻って来て下さったのですから。でもどうやって?」

 言えない。身投げをしたとは。凪も流石に怒るか、呆れるかしてしまうだろう。

「まぁ、そこは上手く説明できない」

「そうですか」

「ところで、凪。ずっとここに居て良いのか?」

「あっ!?」

 すっかり忘れていたらしい。

「璃々ちゃんはこれだよ?」

 遊び疲れたのだろう。俺の腕の中ですやすやと眠る璃々ちゃんがそこには居た。

「では、璃々殿はこちらで」

 そっと璃々ちゃんを預かろうとした。が、

「ん……」

 がっしりと俺の服を掴んで離さない。

「はは、璃々ちゃんは俺が連れて行くよ。どうせ一緒に行かないといけないから」

「そうですか……」

 どこか羨ましそうに璃々ちゃんを見つめる凪。

「じゃ、……帰ろうか?」

「はいっ!」

 

 城内に帰る中、俺は凪から様々な事を聞いた。三年間、皆が何をしていたか。とか。今、何をやっているとか。

「へぇ、三国で祭りかぁ」

「はい、蜀の皆さまと呉の皆さまとも仲良く出来ました」

 そう聞くと、自分の存在をかけたかいがあったのだろう。

「楽進隊長代理、お帰りなさ……た、隊長!?」

 城門に立っていた兵の一人が凪と俺の姿を見つめて驚愕していた。

「ああ、久し振り」

 城門に立っていたのは昔、同じ警備をしていた仲間だった。

「天の国に戻られたのでは?」

「何だけど、帰って来た。迷惑だったか?」

「何を言うんですか!? 隊長が帰ってきてくださってすごく嬉しいです!」

「そう言ってくれると嬉しいなぁ。また一緒に警邏しような」

「はいっ!」

「そういや、今さっき凪のこと、『隊長代理』って」

「はい、楽進様を含め于禁様、李典様。そして我ら隊の全員が『隊長は北郷様を除いて他には居ない』と申しまして。なので、隊長が帰ってくるまで、暫定的に楽進様達が隊長代理を務めることになったのです。

「そっか」

 嬉しくて頬が緩む。自分がこれだけ慕われていたのかと思うと仕方がない。

 凪も、当然とばかりに頷いて。と、何を思ったのか、近くにある露店で何かを買っていた。

「あ、隊長。その、出来ればこれを」

 と凪に渡されたのはお面だった。狐の。

「何で?」

「いえ、この祭りの中で隊長が現れますと、混乱が考えられますので……」

「あ、そうか。天の御使いが帰って来たらそりゃそうだよな」

 言われて納得だ。渡されたお面を被り、門を抜けて行く。

 

「へぇ、賑わってるなぁ」

「はい、隊長が居なくなってから大きな争いは起きていませんから」

「そっか。それで華琳達はどこに?」

「先ほどから三国会議の最中です」

「それってすごく重要なんじゃ」

「はい、重要です。よほどの火急がない限り邪魔はしてはいけません」

「え、だったら今は不味いんじゃないか?」

「ハァ、隊長……」

え、何でそんな残念な目で見る?

「隊長が帰って来たことのどこが火急じゃないと言うんですか?」

「いや、だけど」

「隊長。隊長は自分達にとってなくてはならない存在なのです。天の御使いが舞い戻ってきた。これのどこが大したことじゃないと言うんですか」

「そ、そうなのか?」

「そうなのです! 全く、隊長は……変わりませんね」

「そうか? 結構変わった気が――」

「いえ、変わっていません。自分のことには全く疎いのに、他人の事には分かって下さるところは」

「そうかな? 自分じゃよく分からないけど」

「はい、ですから……」

 と玉座の間への入り口に立った凪は嬉しそうにほほ笑んだ。

「こうやって私達は待つことが出来たのですから」

 手をかけていた扉を大きく開け放った。

 

「華琳様!」

 三国会議の最中、凪の声が響いた。

 三国会議が重要だってことは三国の将であれば知っているはず。

「凪、一体どうしたと言うの?」

「はっ! ぜひとも華琳様、いえ。他の将の方々、全員に見てもらいたい事があります!」

「見てもらいたいもの? 三国会議の最中だと知って言っているのよね?」

「はい! 大切だと断言できます」

「分かったわ。では、聞きましょう。桃香、雪蓮。申し訳ないわね」

「いいですよ~。大切なことなんでしょうし」

「ええ、丁度一区切りついたとこだしね」

 二人の王に許可をもらい、凪に改めて向く。と、そこで後ろに男性がいることに気が付いた。狐のお面を被って顔は分からない。紫苑の娘を抱いているところを見ると、この男が見つけ出してくれたんだろう。

「そこに紫苑の娘を抱いた男性が居るのも関係があるのでしょうね? 平民を何の許可も無しにこの城内に入れること自体に罪はあるのよ?」

 と、そこで紫苑の娘が目を覚ました。

「ん~。お兄ちゃん、ここどこ?」

「璃々っ!」

「あ、おかーさんだ!」

 男性の腕から飛び降りると、真っ直ぐに母親の所に駆けだした。

「勝手にどこかに行っちゃ駄目って行ってるでしょ!」

「……ごめんなさい」

「でも、良かったわ。何の怪我も無くて。凪さんも見つけ出して下さってありがとうございます」

「あ、いえ。私は何も。見つけ出したのは」

「その男性?」

「ここは玉座の間、そのお面は取って貰いましょうか。そして名を名乗って貰いましょう。そして同盟国の大切な将の娘を見つけてくれた礼もしたいしね」

 私の言葉に苦笑したように見えた。その男は頷くと、とことことこちらに歩き始めた。

「華琳、出来れば凪は許してあげて欲しいな」

 お面を取った、その姿は

「一応、俺は平民じゃないよな?」

 その声、笑みは

「まだ凪達は隊長代理らしいし」

 徐々に近付いてくる。何も言えない。

「名乗らせてもらうよ。覇王様」

 玉座まで

「北郷隊、隊長。そして天の御使い、北郷一刀。……ただいま。寂しがり屋の女の子」 

「一刀!」

 あの優しい笑みを浮かべて一刀は私達の前に立っていた。

 

 

「一刀!」

 玉座から立ち上がって驚く華琳を見つめていると、笑ってしまった。

 今まであんなに驚いた華琳の姿は見たことが無かった。

 他の皆は驚きで何も言えないみたいだし。

多分、他の国の人達もいるんだろう。見た限りで何人か最後の時に会った人達がいた。

華琳の隣にいるのは劉備さんと孫策さん。後は良く分からないな。

「凪は一応、警備隊隊長を連れて来たんだから、罪には問われないよな?」

「え、ええ」

 未だ、呆然として満足に反応が得られない。

「ほ、本当に北郷なのか?」

「当たり前だろ。春蘭、悪いな。今まで居なくて。これからは三人でもう一度華琳を支えて行こうな」

「あ、当たり前……だ」

 ようやく、本当に俺だと分かって安心してくれたんだろうか。春蘭はボロボロと涙を零し始めた。

「こ、このば、ばかものがぁ。わたひらひをおひていなくなるなぁ!」

 涙交じりに言う言葉は分かりづらいけど、想いだけは分かりやすかった。

「本当だぞ。北郷。お前が居なくなってからというものの皆大変だったんだ」

「うん、ごめん。秋蘭、少し痩せた?」

 俺の言葉に秋蘭は少し肩をすくめてみせた。

「どっかの誰かが居なくなったせいでな、だが」

 一粒の涙を零して、秋蘭は笑ってくれた。

「これからは少しは安心できるかな」

「ああ、まかせろ」

 その時、言い合いをしていた時に、よく彼女が使っていたあの懐かしいセリフが聞こえた。

「こ、この全身精液男! 何で帰って来たのよ! せ、せっかく居なくなって……あ、安心……ひ、ひぐっ」

 桂花の声が聞こえたのはそこまでだった。泣いていた。大粒の涙を零しながら。俺の為に。

「ごめんな。桂花。これからもよろしく頼むよ」

 答えは頷くだけだった。嗚咽をどうにかこらえている桂花にはそれが精いっぱいらしい。

「兄ちゃん……」

「兄様……」

「季衣、流琉。少し大きくなったか?」

 俺が最後に見た季衣も流琉よりも身長も体つきも大きくなっていた。それが月日を感じさせた。

「当たり前、だよ。もう何年もたってるんだよ?」

「私達だって大きくなります」

「そうだよな。もう、膝の上には乗せられないかな?」

「の、乗れるよ!」

「ま、まだ子どもですから!」

「ああ、そうだな。まだ、子どもだもんな。膝の上に乗せたり、流琉の料理を食べて、一緒に遊ぼうな」

「うん!」

「はい!」

「う~、お兄さん」

「風?」

「風は怒っているのですよ? 散々、この未発達の体を散々開発――」

「だぁー! そういう言い方はするな!」

「ぐぅ」

「寝るな!」

「……おお、ついお兄さんの懐かしい声に釣られて寝てしまいました」

 と昔のようにお約束をした時、風は嬉しそうにほほ笑んで、一粒涙を零してくれた。

「お帰りなさい、お兄さん」

「ただいま」

「全く、あなたと言う人は……。まぁ、いいです。お帰りなさい。一刀殿」

「ああ、ただいま」

「……一刀」

「……霞」

「なぁ、聞きたいことあるんやけどいいか?」

「ああいいよ」

「前のことはもうええねん。一刀が帰って来てくれたやからええねん。ただな。……また居なくなるん?」

「いや、もう二度とこの地を離れないし、離れる気もない。だから、霞。また、一緒に飲もうな」

「……そやな。一緒に飲もう! そんで、一緒に騒いで! 色んな所に行こう!?」

「ああ、ローマにも行こうな?」

「おお! そうやな! 一緒に行こうな!」

 

「さて、と。華琳……ただいま。ってもう言ったか?」

 皆との会話を終えて、改めて華琳に顔を向けるとそこには覇王とした少女が座っていた。

「ええ。でもね、一刀。天の御使いは乱世を太平して天の国に帰ったんじゃないかしら? 今度は何で来たのかしら?」

「……乱世は切り抜けた。けれど、人々の平穏はまだ遠い。それの手助けに、じゃ駄目か?」

「ええ、足りないわね。そんなもの私達でやってみせるわ。天の御使い、あなたじゃないと無理なことじゃない限り。私はここにあなたをおく必要が無いわ」

「じゃあ、簡単だ」

「あら、簡単に言ってくれるわね」

「寂しがり屋の女の子が泣く場所になるために。俺の愛する人達が安心できる場所となるために」

「……その言葉、偽りないわね」

「ああ。二度と俺はこの地を離れない。そして愛する人達も離さない」

「何にかけて誓う?」

「愛する人達に」

 大真面目に言うと華琳は一瞬、嬉しそうな顔を浮かべたけど、すぐさまこらえるようにため息を吐いた。

「ハァ、……お帰りなさい一刀」

「ああ。ただいま」

 玉座を降りてきて、そっと差し出した少女の手を掴み、そっと抱きしめた。

「もう二度と離さない」

「当り前よ。私ももう二度と手放さないわ」

 彼女の心臓の音は少し速くて。けれど、その鼓動を感じていると嬉しくて。

「一刀……」

 そっと目をつぶって差しだしてくれた唇はかすかに震えていて。それに応えたくて、その震えを止めようとした。

「ああ、お兄ちゃん! うわきしちゃだめー!」

 止まった。全てが。時も、俺の動きも、彼女の唇の震えも。

「ど、どういうことかしら一刀?」

 目を開いてこちらを見てくる華琳の視線は嘘は許さない、と言っている。

「い、いや――」

「お兄ちゃん。璃々と結婚してくれるっていってくれたもん」

「一刀?」

 華琳の視線が痛い。そして周りの『また、こいつは』という視線が分かる。

「い、いや。こ、これは――」

「……嘘だったの? お兄ちゃん。璃々には嘘はつかないって言ったのに……」

 さきほどまでの怒った声は無くなり、寂しそうに言う言葉に俺はつい否定した。

「璃々ちゃん。嘘じゃないよ」

「……一刀?」

「ち、違うんだ」

「そう、帰って来たかと思えば、私達に会うよりも先にあんなちっちゃな子を落とすことだなんて。流石、魏の種馬ね」

「あ、あの華琳さん? その話を――」

「なんて怒ると思う? どうせ、優しくて気に入られただけ、それでつい頷いた。ってところでしょ?」

 からかわれた。とようやく感じられたのは華琳の視線がいたずら面白そうに光っていた。

「ああ。その通り」

「ま、その程度で怒るような私じゃないわよ。……璃々ちゃん?」

 俺が口を開くよりも、目で『任せときなさい』と言った華琳を信じて口をつぐむ。

「なーに?」

 声をかけられた璃々ちゃんは恋敵を見るように華琳のことを睨む。しかし、華琳は余裕の笑みを浮かべて優しい声音で璃々ちゃんに諭した。

「一刀はね。私の物なの。一刀は私のことが好きなのよ。だから諦めなさい」

 何を言ってるんですか。小さな子に向けて言っていい言葉じゃない。しかも、してやったり。とばかりに微笑む華琳。

「う゛~。違うもん! お兄ちゃん、璃々の事が好きだもん」

 駄々をこねるように、璃々ちゃんは首を振る。

「こら、璃々。止めなさい。ごめんなさいね。華琳さん」

「いいわよ、別に。子どもの言うことだし」

 璃々ちゃんのお母さんの言葉でようやく、璃々ちゃんは頬を膨らませながらも喋るのをやめた。と思ったのもつかの間。華琳のある一部分をじっとみつめて、

「……って言ったもん」

「え?」

「お兄ちゃん、胸が大きい子が好きだって言ったもん! 璃々がお母さんみたいに大きいおっぱいだったら嬉しい? って聞いたら。お兄ちゃん嬉しい。って言ったもん!」

 死んだ。時が、華琳のオーラが。そして何より俺が。

「へ、へぇ。そう……」

 こめかみがピクピクと動く華琳。

「か、華琳さん。え~と。分かってますよね?」

「ええ。分かってるわ。……春蘭。この者の首を刎ねなさい!」

「ハッ!」

 華琳の声に何の疑問も持たずに遠慮なしに剣を振るう。

「ちょ、ちょっ!」

 必死でかわすのは当たり前だった。

「あ、こら逃げるな北郷!」

「誰だって逃げるわ!」

「ええい、往生際の悪い奴め! このまま、貴様の血肉を地に還してくれる!」

「せっかく帰って来たのにそんなん認めてたまるかー!」

 あわてて玉座の間から逃げ出す。

「あ、こら一刀待ちなさい! 皆、一刀を捕まえなさい!」

「「「「ハッ」」」 

 背後で華琳の嬉しそうな声と皆の楽しそうな声がした。

 それがなんだか嬉しくて、楽しくて。

「そう簡単に捕まるかー! って、誰だ! ここに落とし穴、って桂花! お前だろ! うわぁっ! 一気に来るな! ぎゃぁー!」

 

その日、天の御遣いが帰って来た日。時が止まっていた城内に再び時が動き出した。それでこのお話はおしまい。

だけど、天の御遣いが地に還る、死ぬまで彼と彼女達のお話はまだまだ続いて行く。それが外史。          

                                終わり

 

 

はい、どうも。くらのです。いかがでしたでしょうか。ふふ、誰がタイトル自体に伏線があろうとは思いもしなかったでしょう。……もし、気が付いた方には『ヒャッハー!』と言ってあげます。そして、『ヒャッハー』が30個貯まった方には! その方が望む外史を短編を書いちゃいます! え、どうやって数えるかって? じ、自己申告? まぁ、冗談は置いといて。

無事、タイトルの伏線も拾えたのでなんとか良かったかな。と。え? 真桜、沙和? あの二人は別の場所で璃々ちゃんを探しています。

いえ、別に。こう、出すのが億劫だったわけじゃないですよ? ただ、あの二人が入るとギャグになりそうで。それが……。

 まぁ、ともかく。これにて『天が地に還るまで』は終了~! さあ、ついに始まるのは……不敗無双(仮)! というか、内容は決まってるんですけど題名が……。内容は分かっていますよね?だれか、題名を……。 

なんで出来るだけ早く上げれるように努力します。それでは、再び別の外史で! 

See you next again!

 


 
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