No.210473

真・恋姫無双 夜の王 第51話

yuukiさん

真恋姫無双夜の王第51話。優しい魔王と復讐の英雄

2011-04-07 20:48:11 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:7526   閲覧ユーザー数:5931

兵に指示を出しながら、迫りくる魏軍の迎撃を始めた。

 

一刀「行くぞ!」

 

兵士「じょ、城門、もう持ちません」

 

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、まじ?

 

 

 

 

一刀「、、、、まさか、最終決戦の初戦が二行で終わるとは思わなかった、、、orz」

 

兵士「そ、そんなに落ち込まないでください!」

 

この時、まだ知らない。最終決戦初戦の名に恥じぬ、一万文字を超える死闘があったことを。

 

一刀「まあ、冗談だ」

 

手を地面に付け落ち込んでいた様子を装っていた俺はすぐに立ち上がり掌についた土を叩く。

 

一刀「勝てないのは解りきっていたことだ。この兵数の新兵で勝てると思う方がどうかしている」

 

兵士「は、はあ」

 

一刀「ようは何の抵抗も無く落ちるのが問題だったんだ。抵抗はした、被害もそう無いし上出来だろう、すぐに撤退の準備を始めろ。一気に洛陽まで退くぞ」

 

兵士「は、はい!すぐに通達してきます」

 

数人の兵が伝令に散った後、破られたという城門の方向を睨む。

 

一刀「だが、流石にこの速さは予想外だな。やはり、関羽のせいか。ふ、ふふははは、そこまでお前は俺を殺したいのか、、、少し、寂しいな。いや、思われていると喜ぶべきか」

 

そう呟きながら、傍らにある長刀を手に取る。

 

一刀「餌が無ければ、全員は逃げられないよな。誰かある!」

 

兵士「はっ、なにようでしょうか?」

 

一刀「出る」

 

兵士「えっ?」

 

一刀「俺が出陣(でる)と言っている。城門近くの味方を全て下げる。俺が時間を稼いでいる間に撤退準備を整えた後、合図を待たずにすぐに退け。と、俺が言っていたと言っておいてくれ」

 

兵士「し、しかし、お一人で足止めなど。せめて護衛だけでも「邪魔なだけだ」」

 

一刀「俺を誰だと思っている?武一つで一国を作り上げた男だぞ?安心しろ、そうやすやすとは死なん。守らせてくれ、俺にお前達を」

 

兵士「、、、、、了解しました。ご武運を」

 

一刀「ああ、お前もな」

 

 

笑顔を携え、その場から立ち去った一刀の後ろ姿を見ながら、兵士は呟く。

 

兵士「、、、あれが、我らの正義」

 

 

何処の誰が言っていただろう?この世に偶然は無く、全ては必然である、らしい。

だが、そんなことは言われずともわかることじゃないだろうか?

大体、偶然なんてモノを認められるか?

偶然死ぬ、ふざけるな。

偶然勝つ、馬鹿にするな。

偶然引き分け、つまらないじゃないか。

 

一刀「何が言いたいかと言うと」

 

関羽「、、、、、、、、、」

 

一刀「この結末は、あの時、お前と戦わなかった時から決まっていたのだろうということだ」

 

城を抜け、壊された城門を抜けたすぐそこの中庭に必然的当り前に関羽が立っていた。

その全身に返り血を浴びながら、周りには天兵の死体が転がっていた。

 

一刀「、、、は、ははは」

 

関羽「どうした?」

 

一刀「いや、俺はつくづく魔王なのだと思ってな。先ほど守ると言った者が死んでいるのに、それよりお前が変わらぬ姿で立っている事に安堵している。まったく持って誠意と言うものが無い」

 

関羽「屑が」

 

一刀「そう言わないでくれ、仕方ないだろう。お前は俺にとって関雲長だが、それらはただの兵1~10だ。そいつらより、お前の命の方が俺には重い」

 

関羽「そうか、私は貴方を殺しに来た」

 

俺の言葉には興味が無いと目で語りながら適当に返事を返した後、すぐにバッサリと本題に入って来た。

 

一刀「此処は退く気はないか?って、聞く所だろうが、無駄だよな。もう、迷わないのか?」

 

関羽「ああ、迷わない。私は復讐の為に貴方を殺す。もう、それにしか私には無いのだ。貴方しか、もう私の周りには居ないのだ」

 

一刀「それは素敵な口説き文句だな」

 

互いに手に持つ武器に力を込める。

今はまだ膠着状態。ただ相手を見据えていた。

 

一刀「一つ聞きたい、何故桃香を捨てた」

 

関羽「、、、、、、、、聞きたくはないな、そんな言葉」

 

一刀「関羽、、」

 

 

関羽「復讐を、正義を成すことに理由が必要か?」

 

一刀「、、、、、復讐が正義か、憎しみの先で誕生するそれが正義だと、お前はそう言うのか?」

 

関羽「復讐とは何なのか、貴方はそれを知るべきなのだ。賢人は言う、復讐は何も生まないと、そうだろう。だからどうした?」

 

一刀「、、、、、」

 

関羽「何もないことが無意味だという、それは生者の理屈だ。忘れるな、大義の犠牲者は死んでいる。死者は何もないことを無意味だとは言うまい、言えまい、何も得られないのだから」

 

一刀「、、、、、、」

 

関羽「ならばどうする?どう償う?簡単ではないか、帳尻を合わせればいい。生で死の狭間が埋められないなら、死を持って死まで至ればいい」

 

一刀「それが、正義だと?」

 

関羽「そうだ。復讐は死者の為の物。自身に帰るモノのない完全無欠無欲な戦いの理。それを正義と呼ばずに何と言う」

 

一刀「詭弁だな。どれだけ自己中なんだ?」

 

関羽「詭弁でも構わん。唯一の現実だけあればいい。私に、正義が有るという事実がな」

 

関雲長には迷いが無い。

誤解が無い、しようがない。

あるのはただ、

 

一刀「正義、と言う訳か。まあ、良い、それでもいい。それが正義だというのなら、俺は心が広いからな、受け入れよう。断罪は別として」

 

俺には迷いが無い。

誤解がない、自身でもできそうにない。

 

一刀「だがな、関羽。俺を殺すということがどういうことなのか、わからない訳じゃないだろう?お前は俺を殺せるか?大陸の半分、半数の正義である俺を、大義である俺を殺せるか?」

 

関羽「、、、、、、、」

 

一刀「脅しでも何でもない。確固たる事実だ。俺を殺せば、世界は終わるぞ?」

 

関羽「ああ、わかっている。王を失った国がどうなるか、そしてそれがもし大陸の半分を支配する大国だとすれば、考えるまでも無く、終わるのだろう」

 

一を殺し千を救うのが大義なら、一を殺し千も殺すのが正義。

少なくとも、関羽が正義と呼んだモノはそう言う類。

不平等を生みだす俺の理想より、確かに関羽の正義の方が正しいのかもしれない。

理由なく、差別なく、何もかも消し去るそれは、悲しいまでに平等だ。

 

関羽「だが、それがどうした。昔、貴方の部下が言っていた。『亡き者の無念も知らず、笑いながら生きることは悪だ』と、その通りだろうと今の私は思うのだ。犠牲になった者の、死んだ者の意思を消し去っていい筈がないのだと」

 

理解できる、と関羽は言う。

目を閉じながら、何度も頷きながら。

だから、亡き者の無念を知り此処に立つのだと。

 

関羽「貴方の大義も理解できる。一を殺して千を救う、正しいことだろう。素晴らしいことだ。

だが、再び言葉を借り言わせてもらおう。『正しいことが即ち正義なのか』答えは、否だ」

 

目を開き、関羽は俺を見つめていた。

ただ、純粋に迷い無く。

 

関羽「貴方は優しい人。分かっているさ、蜀の臣であった我らの一人も断ずることなく生かし、手を差し伸べた。周りには常に人が居た。愛されていた。そんな貴方は間違いなく善人だろう。そんな貴方に少なからず惹かれた自分もいた。しかし、そうした時ふと思ったのだ。あの日、高定殿が反旗を起こした時、思い出してしまった」

 

俺の正面に立ち、誰でも無い俺を見詰め、言う。

 

関羽「貴方は悪人なのだ。たとえどれだけ優しかろうと、どれだけの人を救おうと、悪は悪」

 

大義で死した者が居るのなら、無辜の民をコロシタ。

 

関羽「復讐の理由はそれだけでいい。貴方の善行に善果があり、今の貴方が居るのなら。次は貴方の悪行に悪果があるべきだ。正義の理由は、それで十分」

 

間違っているか?と、関羽は問う。

間違ってはいない。

善行に救いがあり、悪行に報いがある。

悪は報いを受け世に正義はある。

 

だとするならば、正しい。

俺はそろそろ、罰を受けるべきだろう。

まぎれも無く、間違いも無く、俺は罪も無い人をコロシタ。

大義の為にと言いながら、戦以外でも殺した。

 

一刀「だが、だからこそ、それでも、」

 

 

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   『じゃあ、璃々が大きくなったらかずとおにいちゃん忙しくないんだよね?

       そしたら、璃々といっぱい遊んでくれる?』

 

            『暇だったらな』

 

           『うん!約束だよ!』

 

 

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それがどうしたと俺は笑おう。

 

一刀「有象無象のことなど知らん。俺は俺のやりたいように俺の守りたい者を守るだけだ。迷わず、恥じず、考えず。欲一念を貫いてこその魔王」

 

言い訳はしない。

逃げも隠れもしない。

笑いたくば笑うが良い。

蔑みたいなら好きにしろ。

俺はただ、やりたい事をやるだけだ。

俺の周りの人々が笑顔なら、それでいい。

 

関羽「、、、それが間違っていないと、貴方はそういうのか」

 

一刀「まさか、故に俺の道を塞ぎたくば好きにしろ。道を塞ぐものが正義だというのならそれでもいい、正道の英雄を差し向けろ。苦難を越えずして何の道か、英雄と対峙せずして何の魔王か」

 

関羽「報いを受ける、覚悟はあるのだな?」

 

一刀「はっ、まさか。なにを聞いていた、覚悟などあるか。俺は対峙する全てを踏みつぶす、そして我が大義を、生涯を賭け完成させよう」

 

関羽「、、、、、、、」

 

一刀「何ものも顧みず、我欲ままに生き、報いも受けず、満ち足りて命を終えてみせるさ」

 

関羽「、、、真っ直ぐだな、貴方は悲しいほどに迷いがない」

 

一刀「お前に言われたくは無いな、正義などの為に義姉を捨てたお前に」

 

俺の言葉に、返す言葉がないのだろう。

関羽は黙りこみ俺を見据える。

対峙する、魔王と英雄。

 

慈悲深き魔王、復讐の英雄。

まったくもって阿呆もいいところの配役だ。

互いに道化。

何処かが間違っているとわかりきっては居るのに、止まることすらできなかった。

止まることなど、選べなかった。

 

関羽「後悔は、ないのか?もし、その大義とやらを成し得た時。貴方はまぎれも無く圧政者、殺戮者として歴史に名を残すだろう。そんな道の先で、血塗れの体で本当に笑えるのですか?」

 

一刀「笑えるさ、笑うほかないだろう。後悔もしない、する暇も無い。俺は大義を成すのだからな」

 

関羽「出来る筈がない。貴方の苦闘も、誠心も、献身も、全ては無駄だ」

 

一刀「無駄では無い。世界平穏への道は途絶えない。この俺が、有る限り」

 

盲信し、過信する。

己を、己の夢を。

そうでもしなければ、狂ってでもいなければ、誰が、誰が世界など手に出来よう。

 

関羽「貴方の、その意味不明な真っ直ぐさは、嫌いではありませんでしたよ」

 

ため息をつきながら、関羽はそう言う。

俺はそれに、笑って答えるだけ。

 

一刀「俺は最初からお前のことは嫌いじゃ無かったぞ」

 

この互いの言葉だけ聞けば、未だに分かり合えるのではないか。

などと言う幻想を抱きそうになる。

 

しかして、関羽は静かに、遂に、俺に偃月刀を向けた。

 

もう、雑談の時間は終わったらしい。

そして始まる。有るべき現実への、一歩。

 

一刀「本当なら、此処は剣を向けられながらも、お前とは戦いたくないとか、お前を傷つけたくないとか言う感動の場面なんだろうな。それで俺が死ねばまさしく美談だ」

 

関羽「なんだ?貴方はそんな気色の悪いことを言うつもりか?」

 

俺は笑う、嗤う、哂う。ただ、わらう。悪辣に、卑劣に他者を虐げた笑みを浮かべ彼女を見る。

 

一刀「まさか、残念だが先客がいてな。この後遊んでやらなきゃならない女が居る。まだ幼いが、将来が楽しみな女がな。だから、お前は早く黙って俺を殺すといい、」

 

刀の先を関羽に向け、嘲笑う。

彼女の正義を、誠意を。

  

一刀「俺は黙って、それに抵抗する。なに、案ずるな、手足の一本や二本欠けたところで、変わらずに愛してやる」

 

 

 

 

 

関羽「やはり、、貴方は屑だ」

 

 

 

 

懐かしい言葉を聞いた。俺はそれに、前は返せなかった返事を返す。

 

一刀「ああ、わかっているよ。俺は魔王で、そして夜王だからな。だが、だからこそ、俺は迷わない」

 

大義?無論、そんなものは詭弁の類だろう。

要は許せないだけだ、俺が全てを手に出来ぬ世界など。

昔、言ったじゃないか、俺は世界の全てを支配したいだけだ。

世界征服、陳腐にして史上最高の理想。

そんなことは出来ないと誰もが言うだろう。

どだい、一人で六十九億人の支配は無理なのだと。(いや、この時代は世界人口もっと少ないかだろうが、どっちらにせよ無理だろう)

 

だが、俺はやるぞ?その先にしか望むものが無いのなら。

有体に言えば璃々が笑い戦いから遠い場所にいる世界が出来うるのなら。

俺はそれに仇なす全ての者を殺して血塗れの体で璃々と笑い合おう。

 

一刀「屑には愚劣が間尺相応、賢く生き無念を残すより、愚劣を通して笑ってくれよう」

 

平和のための悪があるのなら、それは悪だが正しいだろう。

 

一刀「悪は妖しき然して断罪される言われ無し」

 

関羽「何を、言っている?」

 

一刀「わからないのか?俺は世界を救う為に悪であろうと言っている。裁かれるべきではない悪は、有るべき悪は、此処にある。絶対悪は、この俺だ」

 

関羽「、、、、、、、、、、」

 

辛うじて、砂粒ほど残っていた和解への道は断たれた。

復讐と言う名の正義を語る断罪者の前で、自身は悪だと認めたのだ。

ならば、彼女の取るべき行動はもう一つしかないだろう。

 

関羽「ならば、死ね」

 

単純明快にしてそれ以外の何の意味も持たない言葉。

彼女は彼女の正義を賭けて俺は死ぬべきだと断言する。

ああ、まったく持って純粋だ。

憎しみも嫉妬も彼女は忘れ去っているだろう。

解っていたこと、桃香の純粋すぎて甘過ぎて理想を正義だと言った関羽が、その正義を砕かれた後縋るのなら。

もっと純粋で甘過ぎて否定のしようがないものを正義と言うことなど。

 

 

正義を成すのではない、悪を憎むのだ。

 

悪を憎むのではない、憎しみを晴らすのだ。

 

憎しみを晴らすのではない、無念を消し去るのだ。

 

無念を、他者の無念を消し去る。復讐こそが、正義。

 

 

 

まったく愚かしい。

救いようも無く、どうしようもなく愚かしい。

 

一刀「だが、」

 

より愚かなのはどちらなのだろう?

前人未到、空前絶後、桃香以上の叶う筈も無い夢想を大義と呼んだ俺。

有りもしないモノ、正義を探し至った先が復讐だった関羽。

 

一刀「、、、、、同じようなものか」

 

救えない愚か者同士が相対しただけ。

ならば、これでいいのだと思う。

俺は正しい、彼女も正しい。

互いに求めただけだ、正しさを求め直向きに道を歩いただけ。

自己を正しく生き、正しく此処に至った。

 

清く、正しく、美しく、殺し合うだけ。

 

一刀「なあ、関羽」

 

関羽「なんだ?」

 

一刀「俺達は愚かだが、どうしようもなく愚かだが、こうするしかなかったよな?」

 

関羽「、、、、」

 

一刀「俺もお前も違う道は選べなかった。二人出会って、争って、殺し合う」

 

関羽「ええ、そうですね。そうしてできた猿芝居。こんなにも愚劣で滑稽なのに観客が誰もいない」

 

そんなことを言う関羽の顔に、俺は初めて笑顔を見た。

笑っていた。

俺と同じように。

相手を思い、自身を思い、笑い合っていた。

 

思えば、俺にとっての本当の敵は誰だったのだろう?

華琳か?雪蓮か?桃香か?違うだろう。

彼女だ、純粋に俺を嫌い、理由なく敵対した彼女こそ、唯一の俺の敵。

 

だからだろうか?誰も至れなかった俺の隣に彼女は確かに立っている。

心が昂る、心臓の動悸が激しく木霊する。

吊り橋効果とは違うだろうが、確かに確実に、彼女の笑顔に刀を向けている俺の心は躍っていた。

 

一刀「なあ、愛紗。結婚を前提に俺と付き合ってくれないか?」

 

気づくと唐突にそんな言葉を口にしていた。

場違いすぎる言葉、しかし、彼女の答えもまた可笑しいもの、否、可愛らしいものだった。

 

愛紗「ふ、ふざけているのか貴様は!な、なにを言っている!」

 

顔を赤らめながらそう言う愛紗の笑顔に不覚にも顔に朱がさす。

 

笑顔が愛おしい。

なら、笑い合おう。

この場には二人しかいない。

ふたりきりでわらいあおう。

 

 

猿芝居を演じる道化たちを指差して、その愚かしい生き様を。

 

 

 

思えば、

 

 

一刀「愛紗」

 

 

愛紗「一刀」

 

 

たぶん、

 

 

一刀「半殺しにさせてもらう。全ては大義の為に!」

 

 

愛紗「死んでもらおう!復讐のため、真の正義の贄として!」

 

 

 

 

初恋は君だったと思う。

 

 

 

 

 

 

十合、二十合討ちあい疲弊し始めた彼女に俺は問う。

 

一刀「なあ、一つ言いたいことというか聞きたいことがあるんだが」

 

関羽「はあ、はあ、なんだ」

 

一刀「守りたいもの以外を守らないことがそんなに悪いことなのか」

 

関羽「悪いに決まっているだろう。何かを守らないことはそれだけで悪だ」

 

一刀「そうか、確かに、そうなのかもな」

 

 

 

 

 

 

 

桂花「なによ、、これ」

 

関羽を先行させ、追いついた彼女は目を見張る。

 

桂花「どう、して、、うまく、いったのに、わたしの、さくは、うまく」

 

その通り。

うまくいった、成功していた、彼女の策。

天国を囲み、それに対応する為に将が散らばった時を見計らっての城攻め。

一刀を呼び寄せ、捕える。

彼のことだ、負けるとなれば自分を囮に兵を逃がすだろう。

現に蜀と呉に囲まれた時もそうして華琳様を救ったのだ。

いくら優将から魔王になったとしても、行動の根幹は変わらない、変えられない。

そんな一刀の優しさ、馬鹿さ加減を利用した自身の自信策。

 

終わる筈だった。

戦わずに、戦いは終わる筈だった。

関羽には勝てないまでも一刀の足止めをさせ、今後ろに連れてきている兵達で囲み、一刀を捕える。

それで終わり。

戦いは終わり、後は華琳様があの馬鹿を二度と裏切れないように調教するだけだった筈なのに。

 

桂花「なのに、どうして、どうして、誰もいないのよ。なにも、ないのよ」

 

なにも無く、誰もいない。

一刀は居ない、関羽もいない。

ただ、十人分程の肉塊が庭の中央を避け飛散し、中央には血だまりと、、、砕け散った長刀と偃月刀。

 

桂花「駄目なのに、あいつを、殺したら、駄目だったのに」

 

血で染まった地面に座り込み、視線の定まらない目で地をみる桂花に兵士達は話しかけられない。

 

桂花「華琳様がどうとかじゃない、、そうじゃないのよ、ちがうのよ、、」

 

死体は無い。

なら生きてる?

ふざけないで、普通に考えて、あの肉塊の幾つかが、一刀と関羽であったもの。

なら、死んでいる。

 

桂花「駄目、天はあいつ一人が立てた国。なら、あいつを失った国は、もう狂うしかないじゃない」

 

 

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  『決して天は崩れない、敗れない。あの方さえ、居てくれるのなら』

 

  『もし二人が死んだなら、、俺の生きてる価値は無くなるかも知れねえがなぁ』

 

  『、、、あれが、我らの正義』

 

 

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夜空に輝いた星々達、夜が明けるのではなく消え去ったなら。

消える? 否、降り注ぐ。

地上に、大地に、居場所を奪った復讐を遂げんと、容赦なく。

 

桂花「終わらない、、私達の戦いは、、これから、なの、、、」

 

絶望に等しいその言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達の戦いは、これからだ。

 

 

 


 
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