No.209696

仮面ライダーEINS 第六話 蒼穹

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。
・仮面ライダー1000回記念+40周年おめでとうございます。
・というわけで二週連続更新です。

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2011-04-03 08:30:09 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:421   閲覧ユーザー数:417

EPISODE6 蒼穹

 

――2011年9月24日 7:14 a.m.

――学園都市理系学区、機械工学部

――テスト試運転室 

「まだ威力が高いかな?」

 タイプスティール・ペガススの襲撃から一日。アインツはもう一つ実装される武器の調整を行っていた。

アインツは仮面ライダーの中でも異質なのは、殆どの武器が非殺傷ということだ。過去にも殺傷しない仮面ライダーがいたが性質上殺せないというものであった。

「まだ高出力か?」

「与える衝撃も連射力もクリアしたよ。あとはホントに威力そのもの。バーストさせる瞬間をフレーム単位で調整すればなんとか」

 一騎と晴彦はテスト室に篭もっていた。相手は強敵だ。それに打ち勝つには新しい力が必要となっている。

「それにしても敵さんは誰だろうね」

「おそらく傭兵だろう。PMCか軍隊かは分からないが」

 聞こえてきた老成した声。ネイティブの発音ではなかった日本語。作戦の手の込みよう。

それらを予想して出た仮説はそういうことであった。おそらく新型のタイプスティールのテスト兼学園都市の勢力を削ぐなどの理由が考えられる。もちろんその中にはアインツの能力調査も入っているだろう。

「目の敵にされているって事?」

「そりゃそうだろ。五年かそこらでここまででかくなって敵は随分多い。資金源は意外と先進国かもしれないな」

「ほほう、口を割らせれば大スキャンダルだね」

「口封じに研究費が流れてくるかもな。やはり生け捕りだな」

 一騎の顔が怪しく不敵な笑みに変わる。研究者として研究費が大事なのか、はたまた死活問題なのかは。

いずれにせよ、最近に学園都市に入った男の外国人をピックアップしたほうがいいかもしれない。

「よし。すまんが任せていいか?俺はG-6の指揮に行かなくちゃならない」

「試験的に導入したのが今回の相手を撃退したんだってね?そりゃ点数もあがるよ」

「しかしトドメを刺すには至らなかった。G-6の主兵装はアサルトライフルだ。弾幕を張ることは出来ても決定的な一撃がなかったということだ」

 そう言って鏡の前に立ち服を整え帽子を被る。徹夜明けのせいか服には皺が入っている。シャワーには入っているのでさっぱりはしているのだが。

「嫉妬かい?」

「まさか。かけた金の額が違うじゃないか」

 何体実装されていると思っているんだ。と捨て台詞のようにドアを荒々しく開け放つのであった。

 

 

――2011年9月24日 8:31 a.m.

――学園都市理系学区、エネルギー工学部

――試験発電研究所

「壮観だな」

 一騎が到着したのは発電に関する研究を行っている研究所だ。学園都市においてその重要度は高く、バイオエタノールやバイオコークス、オイリックスなど次世代燃料のデータだけではなく、それらの効率的なエネルギー抽出の研究も行っており、この研究所だけであげる利益は計り知れない。いまこの研究所を失えば学園都市の優位性はかなり失われるだろう。

その重要拠点には青いカラーの量産型仮面ライダー、G-6が警備に当たっていた。かく言う一騎もG-6の開発を手助けしており、開発主任の女性には随分と手を焼かされた。

その内の一人が一騎に気づいて近づいてきたところで敬礼した。顔は仮面で見えないが若々しい声が聞こえてきた。

「雨無警部!」

「ご苦労様です。何人配置されて?」

「はっ。G-6六人にGX-05とGXランチャーが装備されています!」

 ガトリング式機銃にロケットランチャーが6門あるということか。量産型とはいえ侮れない装備だ。

そもそもG-6自体はアインツには及ばないが量産型とは思えないほどスペックが高い。六人もいれば並のタイプスティールは撃退出来るだろう。変身者の無事は考慮しないが。

「少ないかもな」

 拠点の重要度を考えると少ない気もする。ましてや今度の敵は空から来る。それをカバーするために一騎はここに来たと言っても過言ではなかった。

「しかし雨無警部が来てくださって百人力です!」

「ははっ、飛び道具が有る分G-6がいる方が頼りになる。俺はせいぜい邪魔にならないように防御に専念しよう」

 そう、今のアインツには飛び道具はない。

必要性がなかったといえば聞こえが良いが、開発の遅れは認めざるをえない。何せ飛び道具は殺傷能力が高くそれを下げれば今度は肝心の威力も低下する。

つまりその調整に異常なまでの時間がかかっているのだ。今調整されている物も、一度実装されたこともあったが威力が高すぎる故封印した代物なのだ。

 

 

――2011年9月24日 16:58 p.m.

――学園都市理系学区、エネルギー工学部

――試験発電研究所

 そして夕方を迎えた。よい子はお家に帰る時間だ。

タイプスティール・ペガススが現れたという情報もなければ、変身者と思わしき人間が拘束されたという情報もなかった。

これから来る夜というのは人間にとってもっとも厄介な時間だった。

襲撃に備え一騎は耳に通信機を繋げる。

『ハロー?外は快晴かい?』

「そっちの状況によるな。出来ていれば快晴、遅れていれば槍が降っている」

『じゃあ槍が降っているね。今ようやく調整が終わったところだよ。今アインツコマンダーに送るデータを打ち出しているところだよ』

 それだと霰だな。と思いながら、雲が多い空を見上げた。西の方は雲が少なく光には困らないかもしれない。もっとも夜になればサーチライトが点く。

そう思っていた矢先、周辺から爆発音が響き渡った。

「どこだ!?」

 煙が上がっているのは研究所からやや離れた場所だ。確か空き地の場所だったはず。しかしその地点は、『今』は重要拠点であった。

その拠点の今はG-6が混乱具合から察することが出来た。

「オペレーター!応答しろ!」

「しまった!Gトレーラーを狙われたか!」

 アインツとG-6の違いはオペレーターの位置だった。

アインツのオペレーターである晴彦は一騎の研究室の地下にある司令室で待機している。

しかしG-6はレーダーの関係かオペレーターやレーダー管制が近くにいる必要があった。それらを司るのがGトレーラーだ。それを狙われればG-6の長所は数だけになってしまう。

タイプスティール・ペガススはその弱点を突いたのだ。工作なんざ高性能爆薬でどうにでもなる。

「ハル!スプラッシュで出る!ブラストは!?」

『今、データを打ち込んでる!時間を稼いで!』

「40秒で支度しろ!」

『冗談!8分、いや5分はかかるよ!ははっ!一度実装しておいて良かったね!多少は速くなるよ!』

4――9――1――3――2

 アインツコマンダーにコードを入力し、アインツドライバーを召喚する。いつもと違うコードは基本フォームであるエナジーフォームを経由せず直接スプラッシュフォームに変身するためのものだ。

 

――変身!!

 

 いつもとは違い緑の光輪がドライバーから飛び出し回転を始め一騎を包み始める。緑の光球が振り払われた時緑のアインツ、スプラッシュフォームが姿を現す。

「さあ!派手にいこう!」

 唯一無事であるアインツの目にはタイプスティール・ペガススが映っていた。

「ちっぽけだな、仮面ライダー!」

 姿を確認したG-6がガトリング式機銃で迎撃を開始するが、火器管制塔を失っている以上空を飛んでいる相手に当たるはずもなかった。

タイプスティール・ペガススは両手にエネルギー弾を形成し研究所に打ち込む。しかしアインツがそれを許さない。スプラッシュフォームのジャンプ力でエネルギー弾に追いつきスプラッシュロッドで弾き返す。着地先は研究所の屋上だ。

「そこに居られるならば攻撃は無意味だな」

「傭兵風情が!随分とやってくれたな!!」

「お前は安心しろ。爆薬の量は少なかった」

「そういうことを言ってるんじゃねえ!」

 アインツがそう叫んだ瞬間、タイプスティール・ペガススが背中を地面に預けるように降下を始める。

G-6がガトリングでこれを叩き落とそうと試みるが上から下に落下するものは銃では狙いにくい。そのままタイプスティール・ペガススはエネルギー弾を形成し地面に発射することで煙幕とし一気に研究所を離脱しようと試みた。

だがアインツだけこの行動について行けていた。既にバイクに飛び乗りタイプスティール・ペガススを補足した状態であった。

「さすが!」

「Fuck you!!」

 

 * *

 

――2011年9月24日 17:02 p.m.

――都市立大学病院

――屋上

 そこは平和なはずだった。

普段なら洗濯物を干し、入院患者がビタミンDを作り出すのに最適の場所であった。今も児童達が屋上で遊び回っていた。

「ほらー、みんな。そろそろ中に入ろうね!」

 そこには亜真菜がいた。

たまたま手が空いていた亜真菜は小児科の看護士に頼まれ児童達の監督をしていたのだ。

「こーらー」

 あくまで優しく病院内に戻るよう促そうとしたその時、屋上にソニックブームの衝撃波が襲いかかった。

「え!?」

 宙に浮かぶはタイプスティール・ペガスス。その手にはエネルギー弾。

戦いからほど遠い場所で生活している亜真菜にも今の状況が危険と言うことが分かっていた。

「みんな伏せ……」

「伏せろぉぉお!!」

 発射されたエネルギー弾はアインツ・スプラッシュフォームが弾き返した。

「和泉!子供達は無事か!?」

「私の心配は!?」

「俺が守ったんだ!心配なんかいるか!」

 亜真菜の顔は確認せず、アインツの声はコンバットハイ状態に入っていた。

しかし亜真菜もアインツの状態をみるやいなや子供達に号令を飛ばし逃げるように指示をする。

「貴様!非戦闘員を巻き込むな!誇りはないのか!?」

「任務を達成する時に、私は利用できる物は最大限に利用する!」

 絶対にわかり合えない。一騎の師は人間であれば誰でもわかり合えると説いた。しかし一騎は目の前の殺戮者とは絶対にわかり合えないと確信した。

次に殺戮者が放ったエネルギー弾は階段を狙っていた。それに反応が遅れたアインツは子供達を逃がす経路を失ってしまう。

「ちぃ!なぶり殺しかよ!」

 次の攻撃を予見したアインツは集まっていた子供達の前に飛び出しスプラッシュロッドを高速回転させる。

その出来るだけ当たって欲しくない考えは解答となりエネルギー弾の連射がアインツを……正しくは子供達を襲う。

「いつから小児科に移ったんだ!?」

「兼務したっていいじゃない!!」

「答えになってないぞ!」

 スプラッシュフォームで良かったと心の底から思っていた。エナジーフォームは相手の攻撃を弾きいなすことが難しい。

『一騎!今ブラストのデータを転送した。インストールに時間がかかると思うから少し耐えてくれ!』

(ええい、全てが都合良くは回らんか!)

 幸いスプラッシュロッドは強固にできている。このまま相手のエネルギー弾を弾き続けるのには心強い相棒だ。だが後ろの子供達と一人の看護師がいるのを考慮に入れると、この状況をできる限り早く脱出しなければならない。

体感は長かった。実際長かったかもしれないが晴彦から待ち望んだ通信が流れてくる。

『一騎!インストール終了!いつでもいけるよ!!』

「よっしゃあ!!」

 防戦はもう飽きた。反撃に転ずるには派手な方がいい。

思いっきりスプラッシュロッドをタイプスティール・ペガススに向かって投げ飛ばす。

「What's!?」

そもそも得物を投げるとうことがナンセンスだ。これに驚いたタイプスティール・ペガススはエネルギー弾で迎撃を試みるが、そもそも加えられている力が多すぎる。迎撃よりも回避が一番正しかっただろう。投げられたスプラッシュロッドに直撃してしまう。

しかしアインツはそんなことはお構いなしだ。スプラッシュロッドを投げ捨てた瞬間、腰に刺さっているアインツコマンダーを開いていた。

8――8――8――

 

――超変身!!

『BLASTFORM』

 

 アインツが青の光に包まれ、右の腰に銃とも小さな斧とも言える武器ブラストアクスガンを備えたアインツが現れる。

情報処理と遠距離戦闘に長けたアインツ・ブラストフォームのお披露目だ。

『一騎!ブラストは連射速度と衝撃力、弾速に優れているけど、威力そのものはあまりない。わかっているね!』

「今、あいつを仕留めるのに威力はさほど必要じゃない」

 スプラッシュロッドの直撃を受けたタイプスティール・ペガススは、丁度空中で体勢を立て直したところだ。右手に持ったブラストアクスガンの照準を相手に合わせる。

「泣きっ面に蜂とはよく言ったものだ!!」

 文字通り蜂の如く連撃がタイプスティール・ペガススを襲う。下から上への射撃は重力に引かれ弾速、威力が共に低下する。しかし発射されるエネルギー弾は減衰せずタイプスティール・ペガススに突き刺さり続ける。

衝撃によって空中を揺さぶられるのは平衡感覚に大きくダメージを与える。平衡感覚だけではなく視覚からのダメージもあるだろう。

相手の動きが鈍った瞬間を狙って、すかさずアインツはコマンダーを開く。

「トドメだ!」

8――8――8

 

「ライダーブラスト!」

『RIDERBLAST!!』

 

 宣言と電子音と共にアインツドライバーから右手のブラストアクスガンに電流のようなエネルギーが流れ始める。一発だけの必殺技だが外すことは一切考えられなかった。

トリガーを引いた瞬間攻撃が当たったと錯覚するほどの弾速だった。

 

 

「凄い!仮面ライダーだ!」

「本物だ!本物だ!」

「はいはい、どけどけ。ガレキをどかせないじゃないか」

別に子供が嫌いなわけではない。むしろ好きなのだがまとわりつかれるのはやや苦手だ。今アインツに変身しているのもあり力の加減をミスすると大けがになりえた。だが今は変身は解除せずに階段を防いでいたガレキの撤去作業が優先だろう。

肝心の撃墜したタイプスティール・ペガススは近くのビルの屋上に墜ちた。何れ回収されるだろう。

「ほら、開いたぞ。とっとと中に入れ」

 はーい。という合唱が耳に入った。

子供達の笑顔を確認し、階段を下っていったところでアインツは変身を解除した。その顔は戦闘の緊張感から汗だくだった。

そんな一騎にタオルが手渡された。今度は亜真菜の笑顔があった。

「ご苦労様」

「全くだ。まあ子供達の笑顔を見られただけ良しとするか」

 

 

次回予告:

 

――先生、雨無先生

 

――鍛えてますから

 

――破っ!!

 

EPISODE7 --

七之巻 来る鬼

 


 
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