No.208480

真恋姫無双~夢の続きへ~(Ⅴ)

十六夜さん

真恋姫無双~夢の続きへ~
なんとか久しぶりの更新です。
今回あとがきはありません。
それでは、どうぞ。

2011-03-28 00:27:47 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4762   閲覧ユーザー数:3763

やぁ皆さん、どうも北郷一刀です。今俺は洛陽から少しばかり離れた森に警備隊の一個小隊を率いて来ています。え?なんで森なんかに来てるかって?それはね─

 

 

「隊長なにしてはるん?」

 

「うおう!?あーびっくりした…、なんだ真桜か」

 

 

「なんだっちゅうんは失礼ちゃう?」

 

「あーごめんごめん、悪かった」

 

 

自己主張の激しい胸を張って抗議する胸

 

 

「胸ちゃうわ!」

 

 

「ナイスつっこみ!」

 

「ないす?」

 

「良いって意味の言葉だよ、それにしても─」

 

一刀が辺りを見回すが、辺り一面、森・森・森である

 

「地形って2年足らずで大分変わるもんなんだな…」

 

 

「そらそうやで、隊長が強くなったんも同じや」

 

 

「はは、ありがとう。それより今回の任務って─」

 

 

「最近この辺に現れる不審人物の調査ってやつやろ?」

 

 

「そうそれ、不審人物ねぇ……本当にいるのかよ…」

 

辺りを見回しながらキョロキョロとあっちを見たりこっちを見たりを繰り返す

 

 

 

「ま、賊とかやったら話は早いんやけどなー」

 

 

螺旋槍を振り回しながらキョロキョロする真桜

 

 

「それ、振り回すなよ。誰かに当たったらどうすんだ?」

 

 

「賊に当たって退治できたらそれでええんちゃう?」

 

「賊だとは限らないだろ、まだ。ん?……………しっ」

 

 

後ろに着いてきていた警備隊の隊員を手で制し、一刀は口元に人差し指を持っていく

 

 

 

ガサガサ………ガサガサ……

 

 

周りの林から微かに何かが移動する音が聞こえる

 

 

しかし、

 

 

ピョンッ

 

 

茂みから飛び出してきたのはただの野うさぎだった

 

 

(というかウサギいたんだ…この大陸)

 

 

「なんや隊長、驚かせんといてやー」

 

 

「あ、あぁ……ごめんごめ…っ!……真桜!後ろだ!」

 

 

一刀の声が焦りを含む

 

それもそのはず、珍妙な仮面をした人間?が真桜の背後に迫っていた

 

 

「○☆◇□△×※§*&!!!!!」

 

 

声になってない雄叫び(いや、叫びか?)を上げて真桜に襲い掛かろうとしている賊

 

 

 

 

「隊長、どうしたん?」

 

 

真桜がくるりと体の向きを変え―

 

 

チーン!

 

 

担いでいた螺旋槍が丁度可哀想なことに可哀想なところに当たった

 

 

「───!…………」

 

 

最早声も上げられずに賊は地面に倒れ伏した

 

 

「ん?なんやこいつ」

 

 

自分が悪魔のような所業をしたとは露知らず、真桜は倒れた賊を見下ろす

 

 

「真桜……今のは…あまりにも酷だ………!」

 

 

一刀の台詞に着いてきていた警備隊の面々も頷く。みんな同じヶ所を抑えながら

 

 

「んー……それにしてもけったいな服着とるでーこの賊」

 

 

「けったいな服?」

 

螺旋槍の有効範囲に入らないようにしながら一刀はゆっくりと近づいて行く

 

 

「どれどれ……?」

 

 

一刀が賊の着ているものをよく観察すると、上はコートのような服、下はジーパンのような服と、まるで現代人のような───

 

 

「ていうかこれコートじゃん!下はジーパンだよ!そのものだよ!」

 

 

一刀が叫ぶ

 

 

「こーと?じーぱん?」

 

 

「どっちも俺のいた世界に流通してる服のこと」

 

 

真桜の疑問に丁寧答える一刀だったが、内心は嫌な予感がビンビンしていた

 

 

そーっと賊の仮面に手を掛け、少しだけ見る一刀

 

だが一瞬だけ見たかと思うとバッ!と素晴らしいスピードで仮面を元に戻して

 

 

「最悪だ…………」

 

 

と、額に手をやり呟いた

 

 

 

数秒間黙っていたかと思うと、手招きで2、3人の隊員を呼び─

 

 

「“これ”運んで貰えるか?洛陽まで」

 

 

その場にいる全員が色んな意味で驚くような一言を言った

 

 

 

 

「それで?“これ”はなんなのかしら?一刀」

 

 

華琳にも“これ”扱いされる色んな意味で不幸な謎の男

 

その謎の男は現在、一刀の部屋の寝台で絶賛昏倒中だ

 

「いや、俺も自分の目を信じられないというか…信じたくないというかさ」

 

 

「結局なにが言いたいのかしら?あなたは」

 

煮え切らない一刀の言に苛立ちを覚える華琳

 

 

一刀も華琳の苛立ちを察したのかしばらく黙ったあと、意を決したのか口を開く

 

 

「多分“これ”おれの知り合い…です」

 

 

 

「はい?知り合いなんて珍しくもないじゃない。魏が誇る天の御使い様?」

 

 

華琳の皮肉に一刀の部屋に集まった魏の主要メンバーが一斉に頷く

 

 

(というかなんでみんないるんだ?……サボり?)

 

 

「みんながみんな貴方と一緒じゃないわよ」

 

 

「人の心を読まないでくれ」

 

「顔に出てたのよ」

 

 

「ぐっ……!と、とにかくそうじゃなくてだな…」

 

 

一刀が言い辛そうに頭を掻く

 

 

「はっきりしなさいよ……なにが言いたいの?」

 

 

「いやだから…“これ”は俺の知り合いなんだよ。……その…………俺のいた世界の」

 

 

 

「「「「「「「「「「「「………………はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!?????????」」」」」」」」」」」」

 

 

12人分の絶叫が洛陽の城下まで響き渡った

 

 

 

 

「いや、びっくりした!まさか風まで絶叫するとは」

 

 

「風だって本当にびっくりした時には絶叫ぐらいするのですよ~」

 

 

「兄様の世界の知り合いということは……天の世界の人ってことですよね?」

 

 

「一刀殿以外の天の住人ですか………興味深いですね」

 

「しかし一刀以外の天の住人がなぜこちらにいるのだ秋蘭?」

 

「私に聞かれてもな…」

 

「ったく…この種馬1人でも厄介だってのに…。ぶつぶつ……」

 

「僕達とあんまり変わらないんだねー」

 

「一刀の知り合いか~!なんかおもろいことになりそうやな~!」

 

「隊長のお知り合い…ですか」

 

「あー凪、心配せんでもええで?“これ”男やったから、隊長にそっちの気が無ければ大丈夫や」

 

「良かったのー!隊長のむこうでの恋人さんとかだったらどうしようかと思ったのー!」

 

 

「一刀?念のため聞いておくけど…」

 

 

「断固として否定する!俺はノーマルだ!」

 

 

華琳の疑うような眼差しに全否定の防御陣形を張る一刀だった

 

 

「のーまる?確か普通という意味だったかしら」

 

「そうだよ」

 

「ふーん………普通ねぇ?」

 

チラッと季衣と流琉を見て、もう一度華琳は一刀に視線を戻す

 

 

何か言いたげな華琳の視線を顔を逸らすことで回避する一刀

 

 

その時だった

 

 

「う、う~ん………………あぁー……よく寝たでぇ……ふぁぁぁぁぁ…………………ん?」

 

 

一刀の寝台で寝ていた謎の男が起き上がり、大きな欠伸をしたかと思うと一刀の方を向く

 

しばらくの沈黙

 

しかし一刀にはこの先が読めていた

 

 

「か………かっずピ──ゲシッ!「触るな、馬鹿が移る」……ぎゃふぅぅぅ………」

 

 

急に抱き付いてこようとした謎の男を冷静にキックで迎撃する一刀

 

 

 

「……………」

 

 

いつもと違う一刀のキャラに茫然とする魏の面々

 

 

「か、かずピー………酷いでぇぇ…」

 

 

よろよろと立ち上がる謎の男

 

 

「うっせ、で?なんでお前がこっちにいるんだよ…“及川”」

 

 

そう、仮面の下から現れた謎の男の正体。

それはこちらにいるはずのない男、及川だった

 

 

 

しかし、ひとつだけ一刀には心当たりがあった

 

 

「及川、お前あの日俺の部屋に来たろ」

 

 

「あの日っていつや?」

 

「正月だよ、正月」

 

「はぁ?来たもなにも朝から初詣行こて誘ったやん」

 

「違う、その後だ。時間帯は夜」

 

 

「夜?…………………あー!思い出したわ!かずピーわいを置いて1人で勝手に帰ったやろ!だから復讐したろ思うてこのけったいな仮面着けて脅かそ思うたんや。したらかずピーの部屋からもんの凄い光が出てな?あれなんやったん?」

 

 

 

「懇切丁寧な説明どうもありがとう。というか及川、お前かなりテンパってるな」

 

 

一刀が若干憐れみの視線を投げ掛ける

 

 

「テンパってる?なんでや?」

 

 

「だってお前─」

 

 

さっきから場の空気を読んでいるのか黙りこくっている魏の美少女達を一刀は肩越しに見る

 

 

「この状況でいつものお前だったら“天国やー!パラダイスやー!あははははー”ってな感じになるだろ?」

 

 

「いや、そうしたいんは山々なんやけどな?なんかわい……すっごい形相で睨まれとんねん」

 

 

 

「は?」

 

 

一刀が及川の言葉に疑問を感じ、後ろを振り向くとなぜか凄い形相で及川を睨んでいる魏の美少女達が─

 

 

「……なんでみんな敵意剥き出しなの?」

 

 

最もな一刀の意見だった

 

 

 

 

 

「それで一刀?一応聞くけど“これ”は何?」

 

 

「何って…………人間?」

 

 

シャキン…

 

 

どこからともなく現れた絶が華琳の手に握られる

 

 

「…もう一度聞くわよ?“これ”は何?」

 

 

「わ、わかった!わかったから絶をしまってくれ!……俺のいた世界の…まぁ…友達かな?」

 

 

「ちょ!かずピー、なんで疑問系なんや?わいら友達やろ?親友やろ!?」

 

 

「貴様は黙っていろ!」

 

 

「すんません…………」

 

 

春蘭の一括に小さくなる及川

 

 

 

「で、なんでそのお友達がこちらにいるのかしら?」

 

「いや多分………」

 

 

かくかくしかじか

説明すること5分間

 

 

 

 

「そう…、まぁいいわ。それで─「ちょーっと待ったぁ!!」……なにかしら?」

 

 

途中で話を中断された華琳の額に青筋が出ていることなど露知らずに、及川が手のひらを前に突き出しストップを要求する

 

 

 

「かずピー……どういうことや…?」

 

「は?」

 

「いや、言わんでもわかるでぇ……やっと分かったわ……この二年間!かずピーが女の子に言い寄られても全く相手にせぇへんかったんはこれが原因やったんやなぁ!!」

 

 

「及川…………。あぁそうだ、俺はこの子達のことを─」

 

「この二年間!ハーレムを創るのに勤しんでたんやなぁ!!!」

 

 

「…………台無しだよ」

 

 

一刀は額に手をやり、疲労困憊のサラリーマンのように呟いた

 

 

「は?三国時代?魏?魏って……曹操やったっけ?」

 

「貴様ぁぁ!!華琳様の名を軽々しく─「姉者…話が進まん、少し黙っていてくれ」し、しゅうらぁん……」

 

 

 

「そう、その魏だよ。で、お前の前にいる金髪の子が覇王、曹操だ」

 

 

「…………女の子やん」

 

 

「だから、そう説明したろ?」

 

 

「一刀?これの首、斬っていいかしら?」

 

「いい加減にこれって言うのを止めてあげてくれ。あと首を斬ろうと絶を出すのもだ」

 

 

華琳の蛮行を冷静に止める一刀

 

 

「でも確か魏って…………赤壁の戦いで惨敗したんや無かったっけか?」

 

 

「……………それは…」

 

 

「ふん!何を言っている!赤壁で魏が負けただと?大勝だ馬鹿め!」

 

 

「春蘭………少しは空気を読みなさい」

 

 

「は、はぁ……申し訳ありません」

 

 

他の魏の面々は複雑な表情をして、黙っている

 

「なんかわい……聞いちゃいけへんこと聞いたんか?」

 

 

「いや、なんでもない。まぁ…さっきも説明したように俺達の知ってる三國志とは大分違うんだよ、名だたる武将はみんな女の子だし、今は魏、呉、蜀の三国で同盟を結んでいる感じだからな」

 

「んじゃそこの片目のねーちゃんは夏侯惇ちゅうことなんか?」

 

「斬る!」

 

「落ち着け姉者」

 

七星牙狼を振りかぶる春蘭を秋蘭が羽交い締めにし、冷静に止める

 

「そういうわけか…………ん、理解したで」

 

「及川…お前順応早いな」

 

「いつまでも疑っとってもしゃあないやろ?それよりこの状況を楽しむのが先決や!」

 

及川の瞳にいつもの何か善からぬことを企んでいる光が宿る

 

「待て、何を考えるか分かるけどな下手に手を出すと─」

 

「わーい!美少女や、天国や、パラダイスやー!!!!!」

 

一刀の制止も虚しく及川は美少女(※注・一騎当千の猛将達)の群れに飛び込んで行き─

 

「ふんっ!」

 

ボグスッ!

 

「ぎゃあああああ!!!!!」

 

ドサッ

 

お約束通り迎撃された………春蘭に

 

「なんなのだ?こいつは」

 

倒れ伏す及川に春蘭が若干憐れみの視線を投げ掛ける

 

「ははは……」(何かの冗談だと信じたい…)


 
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