No.208344

漆黒の守護者~親愛なる妹へ9

ソウルさん

願うは太平の世。代償は―――

2011-03-27 12:23:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2391   閲覧ユーザー数:2056

 危機一髪の所で華琳も雪蓮も失わずに合戦を終結できた。両軍大規模の兵力を失ったが立ち直すことは可能。だが次の戦までには時間はかかる。それまで俺たちも行動を移さなければいけない。残された時間は限られているのだから。

 

休養の為、未だ建業に身を寄せている俺は秘密裏に大陸各地の仲間を呼び集めることにした。自国は月たちに頼む伝達は送ってある。彼女たちは問題ないだろう。

 

「琥珀殿と忍冬殿が到着されました」

 

俺の補佐にあたってくれている聖は集う仲間を屋敷内に通した。枢・壬・椛たちは呉と魏の監視及び斥候の排除にあたっている。排除と言っても気絶させる程度ではあるが。

 

「この司馬懿仲達、この時を待ちわびていたぞ翡翠」

 

「よく来てくれた琥珀。お前の才、我が元で存分に発揮させてくれ」

 

琥珀とは少年時代のときに断金の誓いを交わしたほどに長い付き合いである。

 

「琥珀殿、いつも口々に申していますがこういう場では翡翠様と呼ぶように。ぶっとばしますよ。お久しぶりでございます、翡翠様」

 

「相変わらずに真面目だな忍冬は……。まぁ、そんなお前を俺は気に入っているわけだが」

 

王元姫、彼女もまた少年時代に出会った古き友人である。今までは琥珀と共に同志を集う任務に就いてもらっていた。

 

「それは愛の告白ですか!?」

 

どこをどう拾えば告白につながるのか定かではないが、忍冬は妄想に浸っていった。

 

「忍冬は相変わらずにお前を溺愛しているな」

 

「忍冬のような美人に溺愛されるなら男としては本望だろうさ」

 

「…………何を焦っている? 俺の考えではまだ時期尚早だが」

 

「………鋭いなお前は。その鋭さを屈指すれば俺の考えがわかるはず」

 

琥珀は俺の言葉の意味を考え始めた。

 

「まさかお前!」

 

「どうしようもない。だが夢を、俺たちの宿願を叶える時間は十分に与えられているから安心しろ。とはいえ無限ではない。だから事を進ませた」

 

俺は胸に手を当てながら琥珀に伝える。結論にたどりついていた琥珀は顔を歪ませながらただ頷くことしかできなかった。

 

 その後、続々と同志たちが集い始めた。誰もが明日を憂う理想と力を手にした強者たちである。新生明星軍――通称・明国を設立。自国に明の旗が立ち上る。俺たちは夜逃げのように建業を後にして自国へと帰還。これ以上、あの場所にとどまることを危険視した琥珀の案だった。明国に到着したの明朝にも関わらず、民と兵たちは俺たちを迎えてくれた。

 

 俺は玉座に座り将軍を集める。

 

「民衆や兵たちの前にまずはお前たちに伝えておく」

 

俺の左に聖、右には琥珀が立ち、眼前には大陸全土が集った将軍たちが立っていた。

 

「これまで自分が夢を訴えながらも一歩踏み出すことの出来なかった未来に介入しようと思う。何故急にと思うかもしれないがお前たちと兵士、そして民衆たちにはその真意を伝えておこうと思う」

 

誰もが疑問だった急速な宣言に終止符が打たれようとしていた。

 

「毒矢で俺の体は一度死を迎えた。だがある者の力でこうして生きながらえている。それには代償が必要だった」

 

「その代償とは?」

 

忍冬は首を小さく傾げながら訊いてきた。

 

「代償は――――――――――だ」

 

誰もが驚愕の色に染まる。

 

「俺がこうして存在しているのは奇跡に近い。だがそれだけこれからの未来に力を入れるという証拠と考えてほしい。……俺はもう一度訊く。俺についてきてくれるか?」

 

将軍たちは互いの顔を見合い、

 

「御意」

 

声を合わせて返事した。

 

 城壁の前に立つと兵士と民衆が城の前に集合していた。

 

「我らは明星を改めこの地、ここに明国を設立する。これは大陸の英傑に宣戦布告、そして大陸の統一の宣言ととってもらっていい。皆には苦労をかけることになる。だが俺は明るい未来を次代を担う子たちの為に築き上げたい。皆の力を俺に貸してくれ」

 

俺の言葉に民衆も兵士を一斉の雄叫びで答えた。反復される俺の名前。皆の気持ちが一つになった瞬間だった。

 

 

 


 
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