No.208095

虚々・恋姫無双 虚廿壱~一刀SIDE~

TAPEtさん

話が重いままなのも何なので軽い話を入れてみました。
まぁ、一刀から見るといつもこんなんでしょうけど……

2011-03-25 21:36:44 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2649   閲覧ユーザー数:2214

 

 

 

 

「………」

「……」

 

孫権お姉ちゃんは泣いていた。

泣く理由は分からなかった。だけど、その涙が、他国の人であるボクたちの前なのにも関わらず、一つの国の王が泣いているのだとしたら、それはきっとボクたちにはいい知らせだった。

ボクを抱えて泣いている孫権お姉ちゃん。

華琳お姉ちゃんなら抱え返したりもしたかもしれないけど、他国の王にでもなるとさすがにそこまではできそうになかった。

というか……この状況自体ちょっと恥ずかしかった。

 

 

「……はっ!」

 

孫権お姉ちゃんも気付いてくれたのかボクを離して直ぐ涙を拭いた。

 

「ごめんなさい、つい……」

「……<<ふるふる>>」

 

頭を振って見せるけど、きっと今の自分の顔を見ると赤くなっていそう。

身体が熱っぽいし……

 

「言葉でもなく書物一つで国の王を感化させるとは、流石というべきでしょうかね……とても風には真似できそうにありません」

「………」

 

幼い時に言葉を失ったボクが人に自分の考えを告げる方法は、書くことしかなかった。

でも、物書きでは伝えないものもあった。

感情、それはどうしても書物にしたら伝えたい感情をうまく人に伝えることができなかった。

ボクの気持ちを伝えたくて何かを書くと、人たちはそれを言葉の表面的なことしか分かってくれなかったり、それとも全く違う意味で受け取る人もいた。

そんな時になるとボクは、無理だって知っていながらも、喘ぎ声にしか聞こえないその声を口から出してみたりした。もちろん、それでもボクの気持ちをちゃんと伝えることはできなかったけど……

 

声が欲しかった。

自分の気持ちを何よりも的確に伝えることができる自分の声が……

 

「……はぁ゛ぁ゛……」

 

でも、今回は運が良かった。

孫権お姉ちゃんが優しい人だったからそうだったのかも知れない。

とにかく、これでうまくいってくれたら…きっと華琳お姉ちゃんの心配も減る。

 

「……あなた…名前は確か……」

「……」『一刀(かずと)』

「そう、一刀君だったわね……あなたの言い分はわかったわ…明日ぐらいになるとお前の国からの使者が到着する。そこで細かい話はまたするようになるとは思うが…取り敢えず我らも魏からの同盟を断るつもりはない」

「!」『じゃあ…』

「ただ、表面的に同盟を結ぶとしても、我らからみると、魏は私の姉、孫策を暗殺した仇の国。その国と同盟を結ぶとなると異議を唱えるものも出てくる。それを何とかするのが我らがやるべきことではあるが……一刀君にも一つ助けてくれて欲しいことがある」

「……」『何でもする。ボクが力になれることだったら』

「……孫権さま、申し訳ないですけど、こちらとしてはあまり一刀君に無理なことをさせるわけには……」

 

風お姉ちゃん、ボクのことは…

 

「駄目ですよ…ただでも丈夫な身体じゃないというのに…もうしたいことを成し遂げたわけですから、風は早く一刀君に帰って欲しいのです。これ以上の仕事は大人の私たちに任せて、一刀君は身体の方を心配してください」

「うむ…それもそうだな……」

 

それを聞いた孫権お姉ちゃんもなにやら丹念する様子。

…だけど、今じゃないと駄目。

 

『ボクは大丈夫。それよりもボクにお願いしたいことが何か教えて』

「一刀君、だから…」

 

ぐぅー

 

 

「……」

「……」

「………?」

 

長い沈黙が走った。

二人ともどうしちゃったのだろう……?

へ?お腹が鳴る音?ボクはしらないよ?

 

「あのぉ、ここは捕らわれた人には飯もくれないのでしょうか…」

「へっ……ああ!ごめんなさい!今用意してあげるから…!」

 

孫権お姉ちゃんが慌てて外に出て行った。

王さまなのに華琳お姉ちゃんみたいな威厳はちょっとない。

寧ろ王じゃなかったらいろいろドジりそうなお姉ちゃん……と思ったら失礼かな。

 

 

「まったく、夜急ぎの用事だと言われて穏たちより先に帰ってみれば……」

「ごめんなさい!夜遅くて厨房の役人たちがもう皆退勤してて……祭ぐらいしか頼めそうな人がなかったから…」

「仕方ないの……じゃがまぁ…」

 

チィーー!

 

「……<<キラキラ>>」

「あんなに輝く目で人の料理を待っている坊主を見ておると、悪い気はしないのぉ」

「そういうものなの?」

「何じゃ、権殿にはわからんのか?」

「私はこう……料理とかあまり作れないし…」

「……権殿は平和になると、花嫁修業も重ねて儂が料理を教えた方が良いかも知れぬの」

「平和になったってそんなことする暇あるわけないでしょ?!」

 

何か黄蓋お姉ちゃんと孫権お姉ちゃん二人で騒いでるけど、気にしない。というか気に出来ない。

朝ご飯も実は食べていない上に、昼頃にこっそり魏から来ようと思ったら風お姉ちゃんにバレて、ここで捕まって丸一日何も食べていない。

目が輝いているというか、こうでもしないと死ぬ。

今ボクの目が輝いているのはきっとあれだよ。

鳥の母がまだ飛べない子たちに餌をあげる時、一番頸を長くした子から餌が回ってくるアレ……

 

ぐぅー

 

「どんどん、お腹が鳴る時間の間が短くなってきてますね…このままだと一刀君のお腹と背中がくっついちゃうかもしれません」

「さ、祭!早くならないの」

「そう焦るでない、まったく…そう焦ってるぐらいなら二人とも料理の一つぐらいしたほうがどうじゃ」

「っ…私は呉の王だし…」

「風は一応側にうまい人が居ますので…魏においてきてますけど……」

「まったく…二人とも後で子供が出来てから大変じゃの……」

 

チー…

 

……あれ、何かこれって…魏に居る時とあまり変わらなくない?

 

黄蓋お姉ちゃんが秋蘭お姉ちゃんで、横で早く料理が出来るように急いでって言っている孫権お姉ちゃんが春蘭お姉ちゃんで、ボクの横に居るのは……いや、風お姉ちゃんは風お姉ちゃんか。

 

もし、ボクが最初にさっちゃんに連れてこられたところが魏じゃなくて呉の近くだったら、ボクを拾ったのは孫策お姉ちゃんになっていたかもしれない。

……そしたら、またどうなってたのかな。

でも、もしボクが魏に来てなかったら、きっと華琳お姉ちゃんは戦うのをやめてくれなかっただろう。

そしたら、覇王の華琳お姉ちゃんを相手にして、呉から平和の使者を出したところで、きっと華琳お姉ちゃんは聞いてくれない。

……魏に居てよかった、ボク。うん。

 

「ほら、一刀君があまりが空腹感のあまりに幻覚を見ちゃってますよ。一人でなんか清々しい顔でうんうんとしてます」

「祭ー!」

「だからもうちょっと落ち着かんか!ええいっ、儂が仕える王たちを来たら落ち着きというものを知らん!」

 

何か長く見ているとこの場面も魏のところほど和んできた。シュールだけど……

 

 

 

 

遅い夕食を終えて(一日何も食べてなかったのでいつもの三倍食べた、それでも人並みでしかなかったけど)、ボクはまた前の部屋に戻って孫権お姉ちゃんを話をした。

 

「我ら呉は、今孫家の支配下に居るが、孫家だけが全てを決定するわけにはいかない。他の家紋でも力のある、呉の旧臣たちが居て、彼らの賛同を得ずに魏と同盟を結ぼうとすることは相当難しい」

『そうなの?』

 

確かに華琳お姉ちゃんも下の豪族たちの中に反対する人たちもあるって言ってたけど……

 

「それで、一刀君の手紙をその豪族らのところの渡して、孫権さまみたいに感化させるという作戦ですか?」

「……うまく行くとは限れない。だけど彼らは何よりも呉の安寧と孫呉の民の平和な暮らしを最優先にしてくれている。一刀の手紙は、魏に対しての恨みによって曇っている彼らの目と耳を開くにいい薬になると思う」

「………」『わかったよ』

「一刀君、よく考えてくださいよ」

 

風お姉ちゃんが軽く引き受けようとするボクを止めた。

風お姉ちゃんは反対なのかな。

 

「一刀君は今身体の調子も良くないです。また倒れたりしたらここに居ては対応できないのですよ。早く戻って都の医者に見てもらわないと……」

「……」『でも、魏にいるお医者さんだって、ボクのことどこがどうおかしいってはっきり言えなかったじゃない』

「それでも、ここよりは早く対応できるのです。ここではこれから外交という戦争が起きるのですから、いざとなって一刀君の面倒を見てくれれる人が少ないのですよ。それに……」

「……?」

「風は別にいいですけど、もし桂花ちゃんが一刀君が病があるにも関わらずここに来たと知ったら、一刀君は大丈夫でも、風は桂花ちゃんに殺されますよ」

 

それを言いながら少し震える風お姉ちゃんを見ると、それが冗談じゃないことが分かった。

でも、ボクの場合どうなんだろう。

さすがに桂花お姉ちゃんでも怒るかな………

……ううん、それぐらい覚悟してきてたわけだし…。でも風お姉ちゃんを巻き込んじゃうのもどうかと……

 

「一度言っておくが、魏の使者団ならもうお主らがここに居るって知っておるぞ」

 

……え?

 

「……ぐー」

 

風お姉ちゃん寝ちゃってる。

駄目だよ、風お姉ちゃん。ちゃんと現実に立ち向かわないと人は成長しないよ。

 

「<<ゆさゆさ>>おぉ……最近の一刀ちゃんは押しが強いのです」

『引くのはどうやるの?』

「風にももう少し甘えてくださると嬉しいですよ」

「………」

 

…………

 

「<<にぱぁー>>」

「なっ!」

「っ……!」

「おおっ!そ、それは……それはいけません……」

「……<<にぱぁーっ>>」

「だ、だから風は押しには弱いのですよ……」

「<<パァーッ>>」

「……ぐぅー」

 

風お姉ちゃんは永遠の眠りに着きました。

 

『取り敢えず、風お姉ちゃんも許してくれたから、…ボクが何をすればいいのか教えて』

「………」

「………」

 

…孫権お姉ちゃん?黄蓋お姉ちゃん?

 

「<<ゆさゆさ>>ぬあっ!な、何!?」

「……」『大丈夫なの?』

「い、いいえ!?」

『どこか具合悪いの?』

「ち、違うそういうんじゃなく……そ、そうだわ。今日はもう遅いし、話はまた明日にしましょう。ほら、一刀君がまた倒れたりすると頼みたくてもできないしね」

「……」

 

確かに…

先夕食食べたら眠い。

 

「……<<コクッ>>」

「そ、そう。じゃあ、私たちはこれで…祭、帰るわよ」

「…ん?あ、そ、そうだな……」

 

……

 

皆疲れてるんだね……

ボクも疲れてるし、もう寝ようかな……

 

 

「ぐー」

 

風お姉ちゃん、そんなところでずっと寝ると風邪引くよ?

 

・・・

 

・・

 

 

 

「さ、先のはびっくりしたわ。また思わず顔が緩んでしまうところだった」

「うむ……流石に天の御使いというところじゃの。普通の子供とは笑顔が違う」

「…そういう問題なの?」

「他に訳もないじゃろう」

「それもそうだけど………シャオもあのぐらい可愛かったらいいのだけど」

「小蓮殿は活発だからのぅ。孫家の血ではとても真似できそうにない」

「…できれば、もうちょっと側に置きたいんだけどね…」

「何か言ったかの」

「べ、別に!?」

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

余談

 

 

 

一方魏の使者団が着いている呉、長江。

 

呂蒙と陸遜のお出迎えの船に、桂花と季衣、凪は乗っていた。

 

「ぁぁ………」

「…………」

「……OTL」

 

元なら長い旅で疲れている使者団を廬江で一日休ませてから行くつもりだったが、後で一刀が呉に居て、そして急に倒れたという話を聞き、急いで建業に向かうべく休まず長江を渡ろうとしたのは良いものの……

 

「皆さん、船酔いで大変そうですね」

「まぁ、北方の方々じゃあ船はなかなか乗れませんしねー。疲れも溜まっているのに無理をしちゃったのですから仕方ないですよー」

 

 

「……はぁ……はぁ…」

「桂花さま、大丈夫ですか?」

「聞かないでよ…今でも吐きそうだわ…だけど、早く行かないと一刀が…」

「……桂花さま」

「何よ、凪」

「……私、もう我慢出来ません。先に行っていますので桂花さまはゆっくりと来てください」

 

バシャー!

 

「ちょっ!」

「凪ちゃん!」

「あー!誰か!魏の将の方が水に落ちましたよ!」

「違うわよ!いや、とにかく誰かあの馬鹿とめてよ!」

「あー!凪ちゃん、溺れてる!泳げないじゃん!」

「……<<ぼこぼこ>>」

 

もうグダグダだった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、泰山

 

 

――そう、三国も同盟は着々進んでいるようじゃ…

 

…………

 

――トリガーを見ると、どうやら新野城で三国と馬一族が大陸の平和を宣言する時が時になりそうじゃ。

 

…………

 

――お前が間に合うか否かは関係おらぬがの……しっかしお主は一度死んでもやはり左慈じゃ。

 

――この様を見遣れ。昔お主を【使い捨て】にして今まで生き延びた元老どもの屍が神社のあっちこっちに散らばっておる。

 

………

 

――そうじゃな。そうでもしなければお主がそこでそうやって儀式をすることはできやしないじゃろうの……

 

………

 

――危うくば…この事件で『管理者』たちは一気に混乱し、滅亡の道を歩むかもしれぬ。じゃがそれさえもお主には関係ない話じゃろう。

 

………

 

――それはそれほどの価値のあるものかえ、左慈…やっと得た己の身をそんな風にしてまで……あの子を助けねばならぬか…

 

………

 

――……!

 

………<<バチッ>>みなみ、今のは……

 

――ああ、……誰か外史のトリガーを変えやがった…管路か于吉か…それとも貂蝉やも知れぬ……

 

………

 

――マズイの……今はまだ時は熟しておらぬ。もしかしたら全てが無駄になるやも知れぬ

 

………………

 

――どうする、左慈……動くかえ

 

………華琳さまに全て託してここに居ます。できないとしたら、彼女はこの全ての歴史を、そして覇道を歩むに値しなかったということでしょう。

 

――そうか……最後まであの子のために……

 

僕は他はどうなって関係ありません。所詮は外史という大きいな木の葉っぱ一つ…………ただ、あの子は悲しむことはどうしても…みたくありません……故に…

 

ブチッ

 

――!!お主何を…!!

 

プチッ

 

プチッ!!

 

我が身よ。矛となれ、盾となれ。力になり、わが友進む道を守る森となれ。

 

――やめぬか、愚かもの!そんなことするとお主もただじゃ済まぬ!

 

……行け……我が血肉を受け継いだ我が眷属よ……盾となり、剣となって、幼き御使いの意志を守りぬけ。

 

――……愚か者め……この愚か者めがぁあああ…!!!

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
17
5

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択