「・・・・・ふぅ。」
俺は少し風に当たりたいと思い、一人城壁の上に来ていた。
あの最終決戦の後、三国の王、武将、軍師の物たちは、あの戦いが嘘だったかの様に、成都で宴を始めた。
でも、・・・俺はその宴を楽しむ事はあまりできなかった。
なぜなら、
「・・・・・もうそろそろかな。」
俺の天の御使いの役目を果してしまったから・・・
俺は曹操こと華琳を天下へ導くかけ橋だったのだ。
体調が悪くなったのも俺が俺の知る歴史を変えてしまったからなのだ。
そして華林が天下を果たした今、もう俺がここにいる理由がなくなってしまった。
「・・・・・そろそろ行くか・・・・・」
俺は一人、ただ歩き始めた。
「じゃぁね、皆・・・・、さようなら・・・・・」
皆に最後の別れを告げて・・・・・・
「・・・・・・・・・・」
俺は無言のまま歩き続けた。
なにも考えず、ただ一人、歩き続けた。
ふと空を見上げると、
「・・・・・・綺麗だ・・・」
空には綺麗な満月が昇っていた。
「こんなに綺麗な満月、見たことない・・・・」
あまりの美しさに見とれてしまった。
「・・・・・あれ?・・・・」
俺は自然と涙が出ていた。
「・・・なんだよ、これ・・・・」
自分では気がつかないうちに涙が出てしまっていたのだ。
「・・くそ、何で止まらないんだよ・・・・」
なんど涙を拭いてもあふれてくる。
「・・・・止まれよ、とまってくれよぉ・・・・う・・・・・くっ・・・」
拭いても拭いてもあふれる涙、なぜ止まらないのか自分では分かっていた。
「・・・・・まだ・・・・・まだやりたいことが・・・・あるのに・・・・・」
俺はまだ・・・・皆と別れたくないんだ・・・・・
「皆と別れたくない・・・・まだここに残って・・・・・皆と楽しい日々を送りたいのに・・・・・なんで・・・・・・・・帰らなくちゃいけないんだよぉ・・・・・・」
俺はその場に膝から崩れ落ちた。
「華琳・・・・皆・・・・俺は・・・・ここに残りたいよ・・・・・・」
俺はただ泣くことしかできなかった、そして・・・・
「っ!」
自分の手を見て、俺は言葉を失った。
「手が・・・・・透けてる・・・・」
俺の手は少しずつ透けていたのだ。
「・・・・・・・・・・・」
俺は何も言葉が浮かんでこなかった。
「・・・・・もう・・・・・だめなのか?・・・もう・・・・何も・・・・できないのか?・・・・・・・・もう・・・・・みんなとは・・・・会えないのか?・・・」
何も浮かばない・・・・何も考えられない・・・・・何も・・・・・見えない。
「・・・・一刀殿?・・・・」
その時、ある者の声が聞こえた。
そう、俺が最も愛した、・・・・・凛の声が・・・・・
時は少し遡る
「全く、皆が楽しく宴をしていると言うのに、一刀殿は何処に行ったのだろうか。」
私は華琳様に一刀殿があまりにも遅いので探しに行くように頼まれた。
宴の途中で抜け出し、一刻経っても戻ってこないので、少しおかしいと思ったのだろう。
「ここにもいないか・・・」
一刀殿の行きそうなところを隈なく探した。
だが何処にも一刀殿の姿がない。
「一体どこに?」
私は少し、外の方を探しに行った。
森の奥まで来たが、やはり一刀殿の姿はなかった。
「本当にどこに行ってしまったんだ?」
私は来た道を戻ろうとした。
だがその時、
「・・・・・・う・・・・・くっ・・・・」
「・・・・え?」
何か聞こえた。
「こんな森の中に、誰か居るのか?」
私は声の方に向かって歩き出した。
「確かこのあたりから聞こえたような気がしたんだけど・・・」
私はあたりを見渡した。
そしてそこには、
「あ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
一刀殿がいた。
「こんなところにいたのですか。全く、一体どれだけ探したと思って・・・・・・・っ!」
私はそのあとの言葉が言えなかった。
なぜなら一刀殿の体が・・・・・透けていたから・・・・・
「一刀殿?・・・・・・」
「り・・・ん・・・・?」
俺は声がした方に目をやった。
そこには心配そうに俺を見つめる凛の姿があった。
「一刀殿?一体どうしたんですか?その体は・・・?」
「凛・・・来ちゃったんだな・・・・」
「一刀殿、これはどういうことですか?」
「見ての通りだよ、凛、俺はもう、ここからいなくなるんだよ・・・」
「いなく・・・・なる?・・・・」
「うん、俺はね、華林を天下に導くためにここに呼ばれたんだ。でも今日、その華林が天下をとった今、もう俺の役目は終わったんだよ。」
「っ!」
「だから俺はもうここにはいられない、だから凛、最後に君に会えてよかった。」
「・・・・・・」
「俺がいなくなっても、凛、君は華林を一生支えてやってくれ、俺の代わりにね。」
「・・・・・・」
「俺がいなくなった事、皆に伝えてやってくれ、辛いかもしれないけど、頼んだよ。」
「・・・・いつですか?」
「え?」
「いつ、ここに帰ってきてくれるんですか?」
「凛?」
「あなたは、華琳様を支えると言う役目がまだ残っているではありませんか・・」
「そうだね、でも俺は見ての通り、もうここにはいられな「だからいつ帰ってきてくれるというのですか!!!っっ!」
「彼方は私たちを女にしておきながら、天に帰り、もう二度と帰ってこないというのですか!?そんなこと許しません!私だけではありません!魏の者達が彼方をゆるしませんよ!?」
「凛・・・」
「彼方は私を!私たちを置いていってしまうのですか!そんな無責任なこと言わないでください!」
「・・・・ごめん」
「謝れば済むという事ではありません!」
「うん、そうだね。でも・・・・ね?・・・・・もう・・・時間・・・・みたい・・・だ」
「っ!」
「皆を置いていって・・・・しまう・・・・事、本当に・・・・ごめん。でも・・・・ね?凛、俺は・・・必ず・・・・戻ってくるよ。」
「信用できません、彼方は一度約束を破るのですから。」
「・・・じゃぁ、これなら・・・・どうだい?」
「きゃっ!」
俺は凛のそばに行き、そのまま強く抱きしめた。
「一度は・・・・約束を・・・・破って・・・・しまうけど、・・・でも・・・・もう一度・・約束・・して欲しい・・・」
「・・・・なんですか?」
「もし・・・帰って・・・・こられたら、・・・一番・・・に・・・・君に・・・・会い・・・・・に・・行くよ」
「・・・それを信じていいんですか?」
「ああ、信じて・・・・くれ・・・・」
「・・・・・わかりました・・・・」
「あり・・が・・とう」
「・・・・う・・・・うぅ・・・・・あぁ・・・」
「もう・・・・時間・・・・だ・・・・」
「・・・・・行かないで・・・・ください・・・」
「・・・・ごめん・・・・」
「私を・・・・一人に・・・・しないで・・・・・」
「ありがとう・・・・・・・凛・・・」
「ずっと・・・・わたしの・・・傍に・・・・いてください・・・・・・」
「行ってきます・・・・・・・愛しの・・・・・女の子・・・・」
「一刀殿ぉ!!」
「行ってきます、愛してるよ・・・・・凛・・・・・・」
ちゅっ
「っ!」
その瞬間、一刀殿が私のおでこにキスをしてくれた。
「一刀・・・殿?・・・」
私は声をかけた。
しかし、・・・もうそこには・・・・誰もいなかった。
「あ・・・・ああぁ・・・・うぅ・・・・・ぁ・・・・・・」
私は立つ力を失くし、その場にしゃがみ込んでしまった。
「ううぅ・・・・一刀・・・・・殿ぉ・・・・」
ただ、泣くしか・・・・・なかった・・・・・・・
「っ、一刀殿ぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
完
ども、anです。
どうだったでしょうか?
楽しんでいただけたのならうれしいかもですw
さて、早く学園物と新しい作品作らなきゃw
では皆さん次の作品でお会いしましょう。
バイ^^」
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この作品はある方のリクエストにより必死で書きました。
期待に答えられるように頑張って書いたので、期待してくれていた人たちにこの作品を見てほしいです。
ではどうぞ^^