No.206053

真・恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~ 第廿壱話『虎狼』

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拙い文章ですが感想意見etc、一言だけでもコメントして頂けると嬉しいです。
では、どうぞ。


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2011-03-11 05:46:57 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:13454   閲覧ユーザー数:10440

遠くを見ていた。

 

直角に切り立つ断崖。

 

突風の吹き抜ける峡谷。

 

白雲が流れゆく蒼穹。

 

描かれた絵画のように、

 

切り取られた写真のように、

 

さしたる変化のない景色。

 

それでもその遥か彼方を、正確にはやがて訪れるであろう巨大な影を、彼女は見続けていた。

 

決して逸らさず、揺らがず、闘志の焔を宿した双眸。

 

燃料は憤怒か、怨嗟か、あるいはその両方か。

 

 

 

そして、砂塵は舞い上がった。

 

 

 

徐々に耳朶を擽り始める大多数の足音達。

 

近付くに連れ、気配を濃厚にするのは人の濁流。

 

さながら博覧会のように立ち並ぶ牙門旗、黄金色に染められた一つに照準を定めた。

 

「袁、本初……」

 

これでもかと言わんばかり。

 

千万の苦虫を噛み潰したかのように、臼歯が耳障りな音を立てる。

 

そして、

 

「解ってるわね。恋、ねね」

 

「……(こくり)」

 

「当然なのです、これ以上奴等の好きにはさせないのですぞ!!」

 

表れたのは二つの影。

 

寡黙に頷く前者が携えるは研ぎ澄まされた刃。

 

冷たく澄んだ輝きを放つ彼女は光陰を基調とした衣服を身に纏い、触覚にも似た特徴的な紅の髪がゆらゆらと揺れていた。

 

かつて単身で黄巾党五十万の軍勢を退けたという逸話さえ世に轟かせた『飛将軍』呂布奉先。

 

そして、その隣。

 

前者の彼女の半分程度だろうか、それほどにその身の丈は低く、容姿もまた相応の幼さを示している。

 

自分よりも一回り大きな、黒を基調とした衣服もまた、彼女の幼さを冗長させている要因の一つであろう。

 

しかし、彼女の頭頂部には帽子がかぶせられていた。

 

それは、歴とした軍師の証。

 

陳宮公台。

 

彼女もまた、知性を自らの剣とする官の一人。

 

 

 

「まずは僕達が耐え切れるかにかかってるわ……目に物見せてやりましょう」

 

 

 

間も無く、火蓋が切って落とされようとしていた。

 

 

汜水関の制圧を終えた翌日、連合軍は直ぐ様虎牢関への進軍を開始した。

 

先の汜水関における戦果から虎牢関における先鋒は袁紹・曹操が取る事となり、孫策・劉備両軍は後曲へと配置換えされた。

 

よって、現在の連合軍の配置を大まかに表すと、

 

 

    前 ←―――――――――― 後

 

  袁紹・曹操  馬超・袁術  劉備・孫策

 

 

となる。ちなみに公孫賛は遊撃軍となっているため定位置はなく、進軍中の現在は馬超・袁術と劉備・孫策軍の間に位置している。

 

で、その後曲にて。

 

「……つまんないわね」

 

「何が、ですか?」

 

「袁術ちゃんよ。あいつ、まだ何もしてないじゃない?」

 

ぼそりと溢したのは雪蓮だった。

 

「後々の事を考えると、あいつの部隊が無傷ってのはちょっと、ねぇ」

 

表情を顰めるのも、無理はない。

 

ゆくゆくは袁術からの独立を果たさんとする孫呉陣営において、彼女の勢力は少しでも削っておくにこした事は無いのだ。

 

が、

 

「今は耐えなさい、雪蓮。その為にも、我々は董卓を秘密裏に救出しようとしているのだから」

 

「冥琳……それは解ってるんだけどね」

 

「大丈夫ですよ、雪蓮さん。次の虎牢関では、袁術さん達も戦わざるを得なくなりますから」

 

「それも何回も聞いたけど……ねぇ、白夜。本当に上手くいくの?」

 

「はい。先の汜水関において、董卓陣営は華雄さんとその部隊を失いました。斥候の兵士さんから聞くに、虎牢関に控えるのは呂布、賈駆、それに汜水関から引いた張遼ですよね」

 

「はい~、それは間違いありませんね~」

 

「元々連合軍と董卓軍とでは、兵数が圧倒的に違います。それを汜水関で更に広げられた。いくら虎牢関という地の利があるとはいえ、この差は間違いなく戦局に響いてきます。向こうはなるだけ被害を抑えたい。ならば、直ぐに虎牢関から出てくるような事はないでしょう。袁紹さんや曹操さんでも、そう簡単には破れないはずです」

 

「だろうな。だが、持久戦に持ち込まれてはいずれ我々の兵糧が尽きてしまいかねん。加えて、連合軍は言わば寄せ集めの軍隊。あまり戦局を長引かせれば、ただでさえ悪質な連携や低迷な士気が更に悪化しかねん」

 

「はい。ですから、なるだけこちらの消費を抑えつつ、相手に貯蓄を早く消費させる必要がある」

 

「で『あの策』という訳か。……いずれお前には、天の技術や文化についてゆっくりと訊かせて貰いたいものだな」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「その時は是非、私も呼んで下さいね~」

 

軍師同士の会話とは思えない、何処か和やかささえ感じさせる空気が漂った直後だった。

 

「袁紹、曹操の部隊が虎牢関に取り付き、戦闘を開始しました!!」

 

前線に張り付いていた斥候より、その報告が告げられたのだが―――――

 

 

 

 

 

 

――――――――数日後。

 

 

 

 

 

 

 

状況はどう?

 

 

―――――華琳様。……正直、あまり芳しくはありませんね。袁紹も攻城戦を繰り返してはいますが、やはり城壁は高く攻めあぐねています。

 

 

ふむ。華雄がいれば少しは期待出来たのだけれど……流石に堅牢なだけはあるわね。

 

 

―――――ただいま戻りました。

 

 

お帰りなさい流琉、季衣。様子はどうだった?

 

 

―――――……全然駄目でした。上からああも反撃されたら、手も足も出ないですよ~。

 

 

そう。あまり時間もないし、早く決着をつけたい所だけれど……真桜に攻城塔の準備を急がせた方がいいかもしれないわね。

 

 

―――――華琳様。

 

 

あら、秋蘭。どうかしたかしら?

 

 

―――――劉備と孫策が、提案があると。

 

 

 

連合への参加諸侯が全て集められ開かれた軍議の席にて、孫策と諸葛亮が言い放った提案は実に単純明快なものだった。

 

「……攻め続ける?どういう事だ?」

 

「張勲、どういう事なのじゃ?妾にも解るよう説明してたも」

 

「今でも、我が軍は間断なく攻め続けているでしょう?これ以上、やり方をどう変えろと仰いますの?」

 

一部の、頭の弱い連中は理解できていないようだが、私は即座に理解出来た。

 

「間断なくとは言っても、食事や休息の時間は空いているでしょう?それを失くてしまうのよ」

 

「一日を六等分して、一つの隊が六分の一ずつ攻める。そうすれば、こちらの消費を抑えつつ、相手の消費に拍車を掛ける事が出来ます」

 

孫策と諸葛亮の言葉に、私は小さく首肯する。

 

成程、確かに効果的な策だ。

 

ただでさえ数で劣る相手は一日中応戦しなければならなくなるのに対し、こちらは兵糧の温存や定期的な休息を得られる。

 

不寝番や夜襲こそあるとはいえ、基本的に夜間は非戦闘時間。

 

数で圧倒的に勝る現状でこそ選べる、最良の策と言えるだろう。

 

「一日の六分の一しか攻めないのでは、何時まで経っても勝てませんわよ!?」

 

「そうなのじゃ!!その間に昼寝でもされたら堪らんぞえ!!」

 

「……あくまでも一隊が、ですよお嬢様。それが六つあったらどうなりますか?」

 

…………まぁ、あの馬鹿姉妹は放っておきましょう。どうやら張勲が随分と噛み砕いて説明しているようだし。

 

「しかし、ねぇ……」

 

(この策、一体誰が編み出したものなのかしら……?)

 

ゆっくりと向ける視線の先、捉えるのは周瑜に諸葛亮。そして、

 

(北条、白夜……)

 

その背後、見守るように佇む諸葛瑾を隣に、奴はずっとこの軍議の様子を窺っているようだった。

 

まるで、私達の反応を確かめているように。

 

(桂花の報告が確かなのだとしたら……)

 

初めて書簡に目を通した時、まず私は奴の正気を疑った。

 

敵兵の弔いの調べ。それに付き従うだけでなく、頭まで垂れたという兵士達。

 

しかし、その次に漏れたのは、

 

(私達や他の諸侯の目に、全くつかないとは思ってはいなかった筈。何かしらの策なのか、それとも……)

 

「ふふっ」

 

確かな、好奇心だった。

 

悟られぬよう、思わず漏れた声をなるだけ抑えはしたものの、

 

(……やっぱり)

 

奴だけは、私の反応に気付いたようだ。

 

僅かに首をこちらに向け、うっすらと感じられる、視線のような何か。

 

意図が読めない。

 

意志が読めない。

 

こんな感覚は久々だった。

 

(面白いじゃない……私に何をさせようというのかしら?)

 

 

「……流石にきつくなってきたわね」

 

虎牢関での戦闘が始まり、連合軍の軍議が行われて更に数日。

 

時刻はとうに深夜を示しており、それでも尚絶え間なく襲い来る連合軍、現在は劉備・公孫賛軍を見下ろしながら、賈駆は呟いた。

 

ここ数日、連中は連合全体を各軍毎に分割し、時間帯別に振り分けて昼夜問わず攻めてきている。

 

寝る間も削りながらの応戦を強いられ、兵士達の士気も徐々に低下しつつあった。

 

「………………ぐぅ」

 

「れ、恋殿~起きてくだされ~!!」

 

普段ならば檄を飛ばす所だが、今回ばかりは無理もないと思う。

 

どれほどの武人も、どれほどの鬼謀も、まともな睡眠も摂らずに動き続けられる筈もない。

 

「我慢比べ、もとい持久戦に持ち込んできたってわけね」

 

「効果的な作戦である事は間違いないのです……ふわわ」

 

「…………むにゃ」

 

「ちょっと、恋。何処に行くのよ?」

 

「…………布団」

 

「れ、恋殿、駄目なのですよ~!詠、このままで本当に間に合うのですか~!?」

 

「えぇ。不測の自体が起きてない限り、後一晩。なんとか明日の夜まで耐えるのよ。……取り敢えず、恋は一刻だけでも休んでおきなさい。貴女には出来るだけ万全の態勢で臨んで貰いたいからね」

 

「…………いいの?」

 

「一刻程度なら、僕とねねでも耐えられるわよ。その代わり、きっかり一刻経ったら何が何でも起きて貰うからね」

 

「ね、ねねもなのですか!?」

 

「あら、出来ないの?天下の飛将軍、呂布の軍師ともあろう者が、たった一刻軍勢を押しとどめる事さえ出来ないの?」

 

「そ、そんな訳がないのです!!いいでしょう、やってみせるのです!!」

 

少し挑発的な態度をとるだけで、案の定である。

 

この単純さが、今は実に頼もしい。

 

「さぁ、もうひと踏ん張りよ!!」

 

決意を新たに向ける眼差し。

 

それは決して土壇場の自暴自棄から生まれる類のそれではなく、確信と意志の齎す灯。

 

明らかに背水の陣たる現状において、彼女が鍵を託したのは、

 

「急いで頂戴、霞」

 

 

 

その頃、連合軍先鋒にて。

 

 

…………ん?

 

 

―――――どうされました、白夜様?

 

 

……少し、空気が湿ってきてますね。

 

 

―――――? そうですか?

 

 

えぇ。明け方、天気が崩れるかもしれませんね。一応雪蓮さんに報告をお願いします。

 

 

―――――はい、解りました。

 

 

…………(何なんだろう、追い詰められている筈なのに、董卓軍からは何か強い意志のようなものを感じる。)

 

 

―――――白夜様?

 

 

………………。

 

 

 

 

やがて白夜の読み通り、空が明るむに連れて灰色の帳が天上を埋め尽くしているのが見えて来た。

 

 

完全に夜が明ける頃には雨粒が落ち始め、その勢いは時の流れに連れて加速してゆく。

 

 

火薬の類は全滅。足下も泥濘へと変わり始め、徐々に煩わしさを帯びてゆく。

 

 

その夜明けと同時、後曲に位置していた袁紹が先鋒へと移動。

 

 

擦れ違いざま『今度こそ、私が陥落させてみせますわ!!』と息巻いていたのが聞こえた。

 

 

当然だろう、現段階の連合軍において戦果を残せているのは劉備・孫策軍のみである。

 

 

増してや袁紹はこの連合軍の発起人。(一応)自ら総大将を買って出て何の結果も残さないままでは溜飲も残るというもの。

 

 

流石に自分達のみでは虎牢関を落とせない事は理解できたのだろう、『24時間戦えますか?』作戦を呑みこみはしたが、虎視眈眈と手柄を狙い続けていた。

 

 

それは他の軍も同じ事。曹操や袁術もまた、積極的に戦線へ参加せざるを得なく、現段階において白夜の策は功を奏しているように思えた。

 

 

だが―――――

 

 

 

 

《現在の配置》

 

     ]

     ]  袁紹   孫策 馬超

 虎牢関 ]              袁術

     ]   曹操  劉備・公孫賛

]

 

 

やがて正午にさしかかろうという頃だろうか。

 

後曲に控えていた曹操軍が袁紹軍と交代しようと移動し始めていた頃に、それは起きた。

 

クワーン クワーン

 

微かに響く鐘の音。

 

誰もが『連合軍の何処かが、何らかの作戦で使っているのだろう』と、真っ先に思った。

 

 

―――――その鐘の音が、自分達の背後から聞こえている事に気付くまでは。

 

 

「え、袁術様っ!!張勲様!!」

 

 

袁術軍本陣へと駆け込む兵士の報告は、

 

 

「ちょ、張遼です!!我等の背後から、張遼が攻めて来ました!!」

 

 

連合軍全体を震撼させるものだった。

 

 

 

「遼来々、遼来々!!」

 

それは、羅刹の到来を告げる警笛。

 

「遼来々、遼来々!!」

 

それは、彼女を神速たらしめる証明。

 

兵士達は突然の、予想外の来訪者に少なからずの混乱の体を表し、

 

「邪魔やあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

戦場に置いて、一瞬の迷いは敵の好機と化す。

 

それは、強き将である程に。

 

白兎の如き俊足で懐へと踏み込み、

 

貪狼の如き爪牙で命を刈り取る。

 

稲穂のように。

 

紙片のように。

 

舞い踊る竜の顎。

 

逆鱗に触れた者が、明日の朝陽を拝む事はない。

 

が、塵も積もれば山と化す。

 

人の手で山を動かすのは不可能にも等しい。

 

雑兵とはいえ、その屍は足下を掬う罠と化し、

 

ぬかるんだ泥が更に動きを阻害する。

 

しかし、それでも彼女は駆ける。

 

風のように。

 

矢のように。

 

一筋の赫き道を描きながら。

 

揺れる外套は羽ばたく翼。

 

振るう凶刃は研がれた牙。

 

生臭い風を撒き散らしながら、彼女は今、天翔ける紫紺の龍と化していた。

 

 

(まさか背後から攻めてくるなんて……最初からこの時間稼ぎが目的だったんですね)

 

襲い来る兵士を切り伏せながら、怯え震える小さな君主を庇いながら、七乃は思考を巡らせる。

 

(だとしても、一体何処から?ここから汜水関までは完全な一本道。分岐点なんて無かった筈なのに……)

 

記憶をいくら手繰ろうとも、その結論は覆らなかった。汜水関、虎牢関の存在そもそもが、外敵の侵攻経路の制限の為に作られたものなのだ。

 

(別の道程を通って回り込んだ?……いいえ、それだと時間が懸かり過ぎてしまいますね。こんなに早く着ける筈がありません)

 

僅か七日程度であの長距離を駆け抜け、更に汜水関側から回り込むなど、いくら神速の張遼と言えども不可能としか思えない。

 

(一体、どうやって此処に?)

 

「知りたいか?」

 

「っ!?きゃっ!!」

 

突如、鼓膜を震わす声に、咄嗟に振り上げる刀身。

 

即座に弾かれ、響く振動が右手を麻痺させる。

 

僅かに身を引きながら見上げた先、逞しき馬身の上に、彼女はいた。

 

「不思議や、っちゅう顔しとるな。ウチ等がなんでここにおるかっちゅうとこやろ」

 

不敵な笑みと共に、あっけらかんと彼女は語る。

 

「答えは単純。降りて来たんや、崖の上からな」

 

「なっ!?」

 

そんな事が可能なのだろか。……いや、可能だったからこそ、彼女は今、目の前にいるのだ。

 

この子だけは、と小さな身体を庇うように心持身体を前に進めて、

 

「さて、アンタ等の相手するんも悪ないんやけど、ウチにもやらなアカン事があるんでな。今回は見逃したるわ」

 

「……どういう事ですか?」

 

「ウチの狙いはアンタ等とちゃうっちゅうこっちゃ。ほな、さいなら」

 

即座に馬頭を翻し、彼女が向かった先は、

 

「前曲……っ、あっちは確か、」

 

吹き荒ぶ風雨の中、揺れていたのは紅の孫一文字であった。

 

 

一方、先鋒にて。

 

「な、何ですの、何が起こっていますの!?」

 

「解りませんよ、麗羽様!!ただ、間違いなくヤバい事にはなってると思います!!」

 

「そんな事は解ってますわ、猪々子さん!!私は、何が起きているのかを訊いていますのよ!!」

 

流石は名ばかりの総大将、大層な慌てぶりである。

 

自軍が直接の被害を受けている訳でないにも関わらず、袁紹軍の兵士達は焦燥に駆られ、同様の波紋があっという間に全体へと広がり、

 

 

 

直後、それは更に拍車を掛けられる事となる。

 

 

 

「姫、前っ!!」

 

「今度は何ですのっ、斗詩さん!?」

 

ヒステリックな叫び声を掻き消したのは、

 

 

 

ジャーン ジャーン ジャーン

 

 

 

「三連鐘?一体誰が……」

 

重苦しい音を立てながら、堅く閉ざされていた門が開いてゆく。

 

やがて現れたのは、

 

「真紅の、呂旗……呂布か!!」

 

「やっと出て来ましたわね!!さぁ皆さん、やぁっておしまいなさい!!」

 

「ちょ、姫!?後ろの方で何が起きてるかも解ってないじゃないですか!!」

 

「知った事ではありませんわ!!それよりも、奴らを倒せば虎牢関は落としたも同然!!行きますわよ!!」

 

 

とまぁ、こんな呆れに呆れる会話が交わされているとも知らず、袁紹軍は呂布軍との激突を余儀なくされた。

 

襲い来るのは、正に『壁』。

 

撃てど射抜けず、切れど断てず、ただただ押し返されるのみ。

 

いくら数を集めた所で、蟻がどうして巨象に勝てようか。

 

冷酷無慈悲な刃が振るわれる度、十数もの体躯が宙を舞う。

 

まるで、水面に落とされた小石が底へと沈み行くように、真紅の牙門旗が黄金色の軍勢を両断してゆく様を、彼女は少なからずの『愉快』を含んだ笑みで見下ろしていた。

 

「報いを受けなさい、袁紹本初」

 

ただでさえ少ない軍を二つに分け、背後に回り込ませての挟撃。

 

分の悪い賭けだった。

 

が、故に読まれないだろうとも。

 

そして、彼女達ならば出来るだろうとも。

 

要は、その用意が整うまで自分達が耐えきれるかどうか。

 

そして、その賭けに勝ったのだ。

 

策の成功。虎牢関に控える董卓軍の誰もが、それを確信していた。

 

呂布の突撃は留まる所を知らず、袁紹軍の本陣へと真っ直ぐに猛進していく。

 

 

 

が、その確信は崩される事となった。

 

 

 

「―――――な、何ですって!?」

 

袁紹軍が動きを見せた。

 

今更どうするのかと最初は高をくくっていた賈駆も驚愕の表情を露にする。

 

なぜならその動きは―――――

 

 

「周瑜様、袁紹軍が呂布軍をこちらへ受け流し始めました!!」

 

「何だと!?こっちはただでさえ張遼を抑えるのに必死なんだぞ、連中は何をしている!?」

 

斥候から届いた報告に、冥琳は瞼を見開いた。

 

背後から襲い来る張遼の対応に追われていた所にこの報告である。

 

雪蓮含む将の殆どは張遼軍と交戦中にあり、背後にはそこまで兵を割いてはいない。

 

割り当てられているのは、

 

「っ、不味い!!向こうには―――――」

 

 

ただ、切り裂いていた。

 

遮るものを。

 

立ち塞がるものを。

 

雑草のように、造作もなく。

 

敵だから。

 

邪魔だから。

 

命じられたのは、ただ一つ。

 

『袁紹の首』

 

会った事が無かったので、どんな奴かを聞いた。

 

『やたらと目立っとる奴や』

 

同僚はそう答えてくれた。

 

皆が同じような格好をしていた。

 

だから、違う格好の奴を探した。

 

切り裂きながら。

 

切り伏せながら。

 

そして、

 

 

 

「―――――いた」

 

 

 

その『男』は、やけに目立つ服を着ていた。

 

 

 

 

後書きです、ハイ。

 

久々に割と早く更新出来ました。

 

いやぁ、結構な走り書きになってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。

 

次回、どうなるかは…………なるだけ早くお届けしますので、どうぞお楽しみに。

 

 

 

取り敢えず、もう眠いんで落ちます。

 

いやぁ、バイトの面接の帰りにリサイクルショップ寄って、

 

そこでオ○ラチェンジャー見つけちゃって、

 

思わず即決購入しちゃって、

 

家で何度も『気力転身!!』って叫びながらポーズとかしまくって、

 

その後に日課の筋トレして、

 

もう体力が尽きかけてるんで、

 

お休み。

 

 

 

 

 

 

…………受かってるといいなぁ。


 
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