No.206029

黒子……ですの。その3

tanakaさん

黒子、三話目ですよ。
前のシリーズと被らないようにするのは難しいね。

2011-03-11 00:23:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1792   閲覧ユーザー数:1711

「……っ、少し油断してしまいましたわね」

 いつもの風紀委員の仕事、犯罪を犯したスキルアウトの相手。

 簡単に相手を拘束し、一息ついたのが間違いだった。

 もう少し周りに注意をしていたら、隠れていた相手に気付く事が出来たというのに……

「普段はこんなヘマをしないはずなんですけどね……」

 どうして、わたくしは油断をしてしまってのでしょうか?

 こんな事では町の安全を守る事なんて出来ませんの。

 ちゃんと気合いを入れて風紀委員としての――

 

「あれ? 白井じゃねぇか。こんな所で何してるんだ?」

「上条さん、ですか。別に何もしてませんの」

 ただ少し外の空気にあたって、頭を冷やしていただけですの。

「そうか――――って、ちょっ白井!? お前怪我してるじゃねぇか!」

 驚いた声をあげて近づいてくる上条さん。

 はぁ。どうして怪我してる事を気付くのでしょうね。

 気が付かなければ面倒な事にはなりませんでしたのに。

 まったく、不幸ですわね。

「こんな所に突っ立ってる場合じゃないだろ! 早く治療した方がいいぞ」

「結構ですの。そこまで酷い怪我ではないので」

 実際、上条さんが心配するほどの怪我ではありませんの。見た目、少し派手に見えるかもしれ

ませんが、たいして酷い怪我ではない。

 それにもう少し、外の空気にあたっていたいんですの。

「いやいや、白井は女の子なんだから、そういうのには気をつけないと」

「風紀委員になった時から覚悟はしてますの」

 そう。風紀委員になった時からある程度の怪我は覚悟してますから。

 ですから大丈夫なんですの。

「せっかく可愛い顔をしてるんだから、治療するに越したことはないだろ」

「そ、そうですか?」

 この人は何を言っているんですの!?

 く、黒子の顔が可愛いだなんて――そんな事を真っすぐに言って。

「あーほら、行くぞ」

「ど、何処に行くんですの?」

「何処って、病院だよ病院」

「け、結構ですの!」

「ダメです。このままだと上条さんの精神衛生的にもよろしくないので、無理やりにでも病院

に連れて行くぞ」

「あ、ちょっと――」

 わたくしの手を掴んで無理やり病院に連れていこうとする上条さん。

 こうなったら、テレポートで逃げ――

 

 あら? 逃げられませんの。

 演算をする事は出来るのに、テレポートをする事が出来ない。

 ああ、そうでした。上条さんの右手がわたくしを捕まえてるんですね。

 これではテレポートが出来ませんの。

 はぁ。本当に面倒な事になりましたね。

 仕方ありませんね。大人しく病院に行きましょうかね。

 

 

「よかったな白井。たいした怪我じゃなくて」

「ですから初めからわたくしは、そう言っていたでしょ。それなのにあなたが――」

「はは、いいじゃねぇか。あのまま放置してたら傷が残ったかもしれないだろ?」

「それは、そうかもしれませんが……」

 わざわざ病院に行くほどの事でもないと思いますけどね。

「単に俺の自己満足だから諦めてくれよ」

「はぁ。まったく、あなたは――」

 面倒な殿方ですの。ですが――

「まぁ、これで上条さんも安心できますよ」

 そう言って、嬉しそうな笑みを浮かべる上条さん。

 面倒で、我儘な優しさを持っている上条当麻さん。

 何故でしょう。そんなあなたが少し、ほんの少しだけ……

 

 気になってしまうのは。

 これは、単なる気の迷い? それとも…………

 


 
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