No.205820

真・恋姫夢想 ~続・とある桂花のデレ日記~

狭乃 狼さん

デレ桂花の日記。

まさかまさかの大好評だった前回。

味を占めての第二弾です。

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2011-03-09 16:44:39 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:27436   閲覧ユーザー数:18461

 

 

 

 

 

 

                            「続・とある桂花のデレ日記」

 

 

 

 

 

 

 

 

 △月□日。

 

 

 定例の三国会談も、今日で無事終了と相成った。

 

 でもって、会議の終了後に、華琳さまから通達があった。

 

 明後日。

 

 その日一日を丸々お休みにして、魏の面子全員でもって、川に水遊びに行くことにしたと。

 

 それを聞いた瞬間、季衣が大喜びで飛び上がり、その横で稟が思いっきり鼻血を吹いていた。……何を想像したのやら。

 

 それはともかく、私は華琳さまに、あからさまに顔をしかめたまま、あることを聞いた。

 

 「・・・・・・あの、華琳さま?もしかして、”アイツ”も来るんですか?」

 

 「一刀?ええ、一緒に行くわよ」

 

 ・・・あは。

 

 顔は心底嫌そうに、そして口からは「冗談じゃないです!あんな奴に水着姿なんか見られたくないです!」と、叫びながらも。

 

 私の心臓は、爆発しそうなくらい、激しく脈打っていた。

 

 ・・・・・・・・もちろん、すごく嬉しくて。

 

 当然、そんなこと、表情に出しはしない。

 

 で、私のそんな拒否反応を見た風が、「桂花さんだけお留守番しますか?」って聞いてくる。

 

 そんなの絶対嫌!わたしだって、一刀に水着姿を見てもらいたいんだもの!なので、その反論として出た理屈が、こう。

 

 「わ、私がそばにいなかったら、華琳さまがアイツの毒牙にかかるかも知れないじゃない!それに、私だって華琳さまの艶姿を拝見したいもの!」

 

 うん。われながら完璧な理屈だ。で、それを聞いた風はというと、

 

 「ほほー。なるほど、それもそですねー」

 

 とか言いながら、何事も無かったかのように、私から視線を外した。

 

 ・・・・・・・・・まさか、気づいてないわよね?あの娘。

 

 

 この私、魏国一、いや、三国一の男嫌いと知られる、この荀文若が。

 

 三国一の種馬と名高い、あの、天の御遣いこと北郷一刀を。

 

 普段、散々に罵りまくり、一応、世間的には嫌っていることになっているあの人を。

 

 

 ―――本当は、心の底から愛している、ということに。

 

 

 

 △月〇日。

 

 

 水遊びに行く事が、華琳さまの口から知らされた、その翌日。

 

 私は一人で街に出ていた。

 

 目的は新しい水着を新調するため。

 

 (どんな水着だったら、あいつは喜んでくれるかな?)

 

 彼の視線を独り占めできるような、そんな大胆な水着でも買ってみようか。

 

 こう、ほとんど紐みたいなのとか。

 

 きゃー!きゃー!もう!私ったら大胆~!!

 

 ・・・こほん///。

 

 それはともかく、目的の店に向かってとおりを歩く私の目に、その一軒の小物屋が入った。なんとなく、ちょっと寄り道をしてみた。

 

 そこで、それを見つけた。

 

 「・・・・・・・珍しい形の首飾りね。翼が片方だけの鳥なんて」

 

 そう。それは鳥の形をした首飾り。けど、その鳥は片翼しかなかった。

 

 「おや、お客さん。それが気に入ったかね?ああ、翼が片方しかない理由かい?簡単さ。それは二つで一組なんだよ。比翼の鳥って言ってね。恋人同士が、互いに片方づつ身につけるものなのさ」

 

 「・・・・・・恋人、同士・・・・・・」

 

 

 気がつけば、私はそれを、買ってしまっていた。

 

 恋人同士が、片方づつ持つもの。

 

 そんな、渡せもしないものを。

 

 誰にも、見せられないものを。

 

 ・・・・・・誰にも、知られるわけに、いかない物を。

 

 とぼとぼと。私はそのまま館に帰った。・・・・・・・水着を買い忘れたことに気づいたのは、その日の真夜中だった。

 

 ・・・・・・・・はあ。

 

 

 

 でもって。

 

 

 △月×日。

 

 

 水遊びの日の当日。

 

 

 都の近くにある川に、アイツと魏の面子が、全員揃っていた。

 

 で。

 

 着替えをして、水着姿(結局去年の水着になってしまった)で皆の下に行くと、早速三羽烏とアイツが、楽しそうに戯れている姿が見えた。

 

 ・・・・・・・・・めらっ。

 

 嫉妬の心に火がついた。

 

 「何やってんのよ、そこの性欲魔人!三人も同時に相手して、いやらしいわね!」

 

 半分本音の罵倒。

 

 「いや、べつにいやらしいことしてたわけじゃ・・・・・・あれ?」

 

 「な、何よ?ちょっと!そんなにじろじろ見るんじゃないわよ!・・・ハッ!!さては視姦してるのね?!頭の中で、わたしにあんなことやこんなことをしてるんでしょ!この万年発情期!」

 

 途中からじっと、私を見つめだした一刀の視線。それがとても恥ずかしくて、思わずとんでもないことを口走っていた、私のこの天邪鬼な口。

 

 もっと見て。穴が開くほどじっくりと。私だけを見続けて。

 

 そんな本音は、こういう時ほど、絶対に出てこない。

 

 ほんと、こんな自分が嫌になる。で、しばらく私を見ていた彼の口から出た言葉は。

 

 「・・・・・・・あのさ、桂花?それって、去年のじゃないのか?」

 

 「!!・・・よ、よく、覚えてるわね」

 

 気づかれた。

 

 去年の私の水着を覚えていてくれたこと、それは素直に嬉しいと思う。ちゃんと、見ていてくれたんだ、と。

 

 でも、反面すごく恥ずかしかった。ちゃんと、新しい水着を着た私を、彼に見てもらいたかった。だからかどうかはわからないけど、私は自分の体を隠しつつ、こんなことを叫んでた。

 

 「あ、あんたなんかに新しい水着なんか、見せるわけ無いでしょうが!あんたさえ居なかったら、それはもう、口に出して言えない様なすっっっっごいのを着てたんだけどね!!」

 

 いやまあ、実際には買ってないんだけど。

 

 「く、口では言えない様なって・・・ほとんど紐とか?」

 

 「ば///!馬鹿言ってんじゃないわよこの変態!年中無休の全身性液男ーーーーー!!」

 

 「ほごあっ!?」

 

 ぼぐうっ!!

 

 あ。

 

 ・・・・・・・思わず手が出ちゃった。てへ♪

 

 ま、まあ、それはともかく。

 

 ・・・・・・・今度、本当に買ってみようかしら?紐水着。・・・・・・なーんて///

 

 

 

 某月他日。

 

 水遊びの日から数日後。

 

 私は今、寝台の上で寝ています。

 

 まあ、ぶっちゃけただの風邪なんだけど。

 

 その風邪を引いた理由が、これまたなんとも情けないもので。

 

 ・・・・・・・ええ。紐水着、買いましたとも。買って、それを着て、一晩中、姿見の前で一人、ニヤニヤとしてました。・・・一刀に見せたら、どんな反応するだろうなーとか。思わず押し倒されちゃったりするのかなー、とか。

 

 ・・・・・・・そんなことをしてたら、ものの見事に、熱が出ました。

 

 見舞いに来てくださった華琳さまには、そんなこと口が裂けても言えるはず無く。

 

 「・・・ほ、北郷に仕掛ける為の罠を、一晩かかって作ってました」と。

 

 思いっきり下手な嘘をついてしまった。・・・けど、信じられちゃったのよね、それ。

 

 ・・・普段の行いって、大事ですねーwww

 

 華琳さまが帰られた後、それこそひっきりなしに、他の面子も見舞いに来てくれた。あの、春蘭ですら、果物がたくさん入った籠を持って。まあ、ぶっちゃけ、その果物は季衣に全部食べられちゃったのだけど。

 

 で。

 

 最後に来たのが彼だった。

 

 「・・・・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 無言。

 

 こっちも向こうも、終止何も話さない。

 

 私としては、これを好機とばかりに、彼にたっぷり甘えたいのが本音。なんだけど・・・・。

 

 「・・・ちょっと、何かしゃべりなさいよ」

 

 「え?あ・・・うん。そうだな・・・えっ・・・と」

 

 『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 と。こんな状態が、かれこれ一刻続いているわけで。たまらず私は、いつもの調子で毒を吐いてしまった。

 

 「・・・・・・・何も話すことが無いなら、早く帰ってよね。あんたと一緒の部屋に居て、あんたの吐く空気を吸ってたら、それだけで妊娠しちゃうじゃないの」

 

 なんていう、思っていることと正反対の言葉を。

 

 「・・・・・・・・わかった。ごめんな、気の利かない奴で。じゃ、お休み。早く治るといいな」

 

 「あ」

 

 そう言って部屋を出て行こうとする彼の背に、思わず手を伸ばして、その服を掴んでしまった。

 

 「・・・・・・桂花?」

 

 「ね、ねえ、北郷?た、確か、風邪って、汗をかけば、早く治るのよ・・・ね?」

 

 ちょっと待て私!何を口走ろうとしてるの!?

 

 「だ、だからその、あ、あんたが嫌じゃないんなら、きょ、協力させてやってもいいけど・・・・・・」

 

 わー!わー!止まれ!私の口、止まれ!お願い止まってー!!

 

 「で、でも勘違いしないでよね!?これは・・・そう!あくまでも!風邪を早く治して、華琳さまに迷惑をかけないようにするためなんだから!!」

 

 ・・・奮闘むなしく止まりませんでした。も、顔から火が出そう!・・・いま、どんな顔してるんだろ、私。

 

 「・・・・・・・・じゃ、なるべく優しくするからさ。・・・途中でひっぱたくのは無しだぞ?」

 

 「わ、分かってるわよ!す、するなら早くしなさいよ!・・・しっかり、汗かかせてくれなきゃ、承知しないんだからね?!」

 

 「はいはい」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 たっぷり、汗をかかせてもらっちゃいました。

 

 そのせいか、翌日には熱も下がったし、政務にも復帰できたし。うん。いいこと尽くめだったわ。・・・・たまには、風邪もひいてみるもんね。・・・なんて。

 

 

 

 他月或日

 

 

 ・・・・・・・おちつけ~。

 

 落ち着けわたし~。

 

 そう。

 

 なにも、緊張する理由なんて無いんだから。

 

 そう!

 

 ただ、あの時の礼をするだけ。

 

 他のみんなと同じように、お見舞いのお礼をするだけ。

 

 コンコン。

 

 激しく高鳴る心臓を、やっとのことで落ち着かせ。のっくとやらを、彼の部屋の扉にする。

 

 「は~い。開いてるよ~」

 

 「は、入るわよ、北郷」

 

 「桂花?・・・・・珍しいな、俺の部屋にそっちから来るなんて」

 

 部屋に入ると、机に向かって政務の真っ最中だった彼が、筆をおいてこちらに体ごと、その視線を向けてきた。

  

 ・・・・・・・・うん。やっぱり、かっこいい。

 

 じゃなくて!

 

 「そ、その。仕事の邪魔して、わ、悪かったわね」

 

 「いや、そろそろ一段落つけようと思ってたところだからさ。・・・どうかした?」

 

 「その、あの、えと、だから、あう・・・・・・あげる!」

 

 ぐい、と。

 

 手に持っていたその箱を、一刀のその手に無理やり握らせる。

 

 「へ?!あの、なに、これ?」

 

 「こ、こないだのお礼よ!その、それだけよ!それ以上の他意はないんだから!いいわね!?じゃ!!」

 

 ばたん!!

 

 「・・・・・・・・・何だったんだ・・・・・・・・?」

 

 

 

 

その次の日。

 

 「あら?一刀どうしたの?それ?」

 

 「ああ、これ?・・・・・・・・・・(ぎろ)う。・・・買ったんだよ。なんか、よさげだったんで」

 

 「そう?でも珍しいわね。比翼の鳥の首飾りなんて。で?”誰に”買ってあげたの?」

 

 に~っこり。

 

 華琳さまの笑顔を見て固まる一刀。

 

 ・・・・・・そうなることは分かってたはずなのに。

 

 それでも、アイツは”あれ”を付けてくれた。

 

 今、私が外套に忍ばせている、”あれ”の片割れを。

 

 話していいかと。そんな目を向けてきたアイツに、私が向けた拒否の視線。それを汲み取り、彼は私が送った物だと言うことを、華琳さまに隠してくれた。

 

 そんな彼に、申し訳ないとは思いつつ、追い討ちをかける私がいたりして。

 

 「どうせこの種馬のことですし、どっかその辺のメス犬にでも渡したんじゃないですか?」

 

 「犬って・・・・ひどいな、桂花。いくらなんでも、そこまでは」

 

 「ふんっだ!あんたみたいな歩く性欲の言うことなんて、どれほど信じられるもんだか!」

 

 ぷい、と。

 

 彼からその視線を外し、そっぽを向く私。

 

 ・・・・・・・・一刀、ごめんなさい。

 

 「ま、桂花の言うことは半分ぐらい当たってるでしょうけど。さて、それじゃあ今日は、一刀の尋問から始めるとしましょうか?」

 

 「いいっ!?」

 

  

 ぎゃあぎゃあと。

 

  

 一刀を囲んで、その首飾りのことを、根掘り葉掘り聞き始める、華琳さま始め三国の武将一同。

 

 

 その輪から、一人外れた私は、外套の袖口の裏に潜ませた、件の首飾りの片割れにそっと触れる。

 

 その表情を変えることなく。

 

 ただ、頭の中でだけ、私は思い描く。

 

 

 いつか、大手を振って、彼と、このお揃いの首飾りを付け、その腕を組んで、街中を歩く姿を。

 

 

 (・・・・・・いつの日か、この願いが、叶う日が来ますように)

 

 

 恋人同士を模した、つがいの鳥。。

 

 どちらが欠けても、空を飛ぶことの出来ない、永久の夫婦。

 

 そんな存在に、いつかなれたらと祈りつつ、私は今日も、彼の傍に居続ける。

 

 比翼の鳥と呼ばれる、そんな二人になれる日を。

 

 

 ひたすらに、彼を罵倒し、罵りつつw

 

 「ちょっと種馬!いつまで華琳さまを独占してるのよ!いい加減離れさいよ!てか、私の前から消えなさいよ!!」

 

 その裏に、素直になれない、たくさんの、この愛をこめて。

 

 

 ~えんど~


 
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