私と季衣、そして稟、風の4人は白蓮殿と別れ
今後の方針を決めるため暖を取った
二人から今まで何をしていたのかも聞きたいしな
逃走から何も食べていなかった私達は用意した非常食を調理したのだが、まさか翠が釣れるとは
ふふ、これも天運かもしれん
「おやおや~、翠ちゃんがいらっしゃいましたよ。ちょうどよかったですねー」
「ちょうどよかった?あたしが?」
「秋蘭殿と季衣殿に私達が知っていることを話すところでした。これからお話することは蜀にも関係があるのです」
「翠、これも何かの縁だ。ここに座ると良い」
「お、おう、ありがとう秋蘭」
翠と黄鵬に食料を与えるとあっという間に食ってしまった
「モグモグ・・・ングッ、んで、話ってなんだ?」
「はい、それでは始めましょうか~」
「まず、華琳様の異変についてです」
華琳様の異変・・・・
華琳様に一体何があったと言うのだ
「最初に華琳様の異変に気づいたのは桂花殿でした」
「桂花が?」
「はい、ある日桂花殿から相談を受けました。華琳様のお部屋から灯が消えないと」
「桂花ちゃんが言うには、一週間ほど朝まで灯が消えていないそうでして」
「私達3人は華琳様に内密に調査団を作り、ひそかに華琳様の部屋の灯が消えない理由を探っていたのです」
「ですが、さすがは華琳様、身辺警護が完璧でして、手が出せなかったのです」
「私達がわかったことは一つだけでした。調査を開始してから2ヶ月、一度も灯が消えることはなかったのです」
「うっへぇ~、華琳は2ヶ月寝なくても大丈夫なのかよ、やっぱすげえな」
「翠ちゃん、いくら華琳様が凄くてもさすがにありえないのですよー」
「まて、忙しかったとは言え、2ヶ月も華琳様と会わないことなどなかった。
お顔を拝見しても、お疲れになっているようには見えなかったが」
「華琳様と最も近い秋蘭殿が気づかないほど、華琳様は普段どおりだったと言うことです。
しかし、そんなことがありえるでしょうか」
「灯をつけたままお休みになっていることも考えられましたが、警護の者に聞くと朝まで生活音がしていたそうでして」
華琳様とて仕事に忙殺されていたはず
それが睡眠を取らず、且、疲れも見せなかったと言うことか
「調査の話を私に報告しなかったのは?」
「秋蘭殿に話したとして、華琳様の調査を続けさせましたか?」
「うむ、やめさせただろうな」
「ですから、このことを知っているのは私と風と桂花殿の3人だけです」
「うむ、水を差してすまなかった。続けてくれ」
「その後も私達は調査を続けました。すると、ある証言が出てきたのです」
「華琳様の部屋からお兄さんを呼ぶ声が聞こえたと」
「北郷を?」
「はい、そこで仮定を立てました。華琳様は一刀殿を復活させる手立てを探っていたのではないかと」
「一体どうやってお兄さんを復活させようとしていたんでしょうねー」
「そして、さらに2ヵ月後、蜂起が起こったのです」
「ふむ、華琳様の異変、そして不眠、蜂起、それらは繋がっている可能性が高いということだな」
「まず間違いないでしょう」
「さて、ここからが問題なのです。なぜ華琳様は司馬懿と名乗ったのでしょうー」
「私達二人は蜂起の後、司馬家を調査しました。その結果、本物の司馬懿はとうに亡くなっていることがわかりました」
「高齢のおじいちゃんだったそうなのです。ですが、どうして司馬懿なのでしょう、どうして晋なのでしょう」
「そんなの簡単じゃないか、本物が死んでたから替え玉になったって話じゃないのか?」
「では、晋はどこから生まれた国名でしょう」
「う~~ん、偶然思いついたとか?」
「翠ちゃん外れです~。実は、風たちはお兄さんから三国志の結末を聞いたことがあるのです」
「一刀殿の話によると、魏は司馬懿の反乱によって滅び、晋が取って代わると言っていました」
「反乱を防ぐため、風達は司馬家を常に監視していたのです。袁紹さんが滅んで表舞台から消えたのはそういうことなのです」
「その忌むべき存在である司馬懿を名乗り、晋を興す理由・・・・・つまり、こういうことです」
「華琳様は、お兄さんの知っている歴史に戻そうとしたのですよ」
「それは、つまり・・・・」
「華琳様は初めから呉蜀と戦争を始めるおつもりだったのではないでしょうか」
「なんだってー!じゃ何か?最初から戦争始めるために蜂起したってことか?」
「翠ちゃんー落ち着いてくださいー」
「ここからが蜀に関係のある大事な話なのですよ翠殿」
「ううう、それで、その後どうなるんだよ」
「楽進、李典、于禁の3人は極秘に華琳様に協力していたようです。恐らく、協力すれば一刀殿に会えると言われ
華琳様を信じたのでしょう」
「・・・・うむ」
「3人に悪気はないのです。ただ、お兄さんに会うためと、道を見失っているだけなのです」
「そしてもう1人、華琳様に従っている者がいます。桂花殿です」
「桂花ちゃんは華琳様を調査するうちに我慢できなくなったのでしょうね~」
「ちょっとまてーーーーー!桂花なら蜂起から逃げてきたって・・・・・」
「華琳様はもう一つの可能性も信じていたのです。それは、戦乱が復活すれば一刀殿も復活するかもしれない、と
しかし、一刀殿が復活したとして、どこで復活するでしょうか?
最も可能性が高いのは、一刀殿が消えた成都です
蜀と戦争状態になった時に一刀殿が成都で復活してしまったら、最悪の場合一刀殿と敵対してしまうかもしれない」
「それを恐れた華琳様は桂花ちゃんを蜀に送り込んだのでしょうねー。桂花ちゃんなら内部で動けるでしょうから
ですから桂花ちゃんは逃げてきたのではなく、華琳様の指示で蜀にいると思われますー」
「あんにゃろおおおおおお、今すぐとっちめてやる!」
「翠ちゃんー落ち着いてくださーーーい」
「翠殿、話はまだ終わっていないのですよ?」
「もーーーなんだよ!まだあんのかよ!」
「ここからさらに重要な発表があるのですよー」
「次に、今起こっている春蘭様の処刑問題についてです」
「・・・・ああ、続けてくれ」
「華琳様にとって最大の計算違い、それは春蘭殿、秋蘭殿、季衣殿の元で一刀殿が復活したことなのです」
「!?」
「華琳様はきっと、成都か、最低でも手の届くところでお兄さんが復活すると確信していたのでしょう
それが、秋蘭様のところで復活したと知った華琳様の胸中、さぞ苦しみに満ちていたことでょう」
「それでは・・・・邪魔の理由は・・・・」
「恐らく、嫉妬、かと」
「馬鹿な!華琳様がそのようなことで姉者と私を邪魔扱いするなどありえん!!!」
「・・・・秋蘭殿の仰るとおり、本来の華琳様ならば、その程度でお二人を邪魔扱いなどするはずがありません」
「それだけ今の華琳様に起こっている異変は大きいと言うことなのです」
「しかし、一体何があったと言うのだ、灯が消えない部屋で何をされていたのだ!」
「それがわからないのです。それがわかれば解決策が見つかる可能性もあるのですが」
華琳様の嫉妬
あの時、邪魔と仰ったときの華琳様は明らかに本気だった
一体どうしてしまったと言うのです・・・・
「そして華琳様は思いついた。秋蘭殿達を利用し、呉との戦端を開き、その罪をかぶせ、一刀殿までも手に入れる」
「まさに一石三鳥、さすが華琳様なのです」
「も、もしかして、僕が聞いた呉へ華琳様が行ったって話は・・・・」
「華琳様が意図的に流した情報でしょう」
「そ、そんな・・・それじゃ春蘭様が捕まっちゃったのは・・・・僕が騙されたから」
「季衣、それは違う。季衣はよくやってくれているよ。誰も季衣を責めることなんてないさ」
「秋蘭様・・・・」
「もう少しだけお話は続きますよー。翠ちゃん、起きてますか~?」
「・・・・ん?お、おう」
「さて、華琳様は一刀殿を手に入れました。つまり目的を達成しているのです」
「お兄さんを手に入れた華琳様はもう戦争を起す必要がないのでしょうか?
もしそうなら、今からでも事態を終息させようとするはずですねー」
「しかし都の動きを見るに、事態は終息どころか開戦間近、一体どういうことでしょう」
「はい、翠ちゃん」
「あ、あたしかよ!?え~っと、ううーん、御遣いにいいとこ見せて惚れ直させるとか?」
「ブブー、翠ちゃん大はずれなのです~」
「うっせぇ!」
「一刀殿を手に入れた華琳様の次の目的は、一刀殿を消滅させないことでしょう」
「さてさて、お兄さんを消滅させないためにはどうすればいいでしょうね~」
「一刀殿は三国志の結末を晋による統一と言っていました。晋による統一が終端だとしたら
統一されたその時、一刀殿は再び消えてしまうかもしれない」
「かと言って戦争をやめ、大陸に平和をもたらせば、役割を失ったお兄さんは再び消えてしまうかもしれませんー」
「つまり、華琳様の次の行動は、継続的な戦乱を起すことです」
「そこでまたまた桂花ちゃんの出番なのですよー。翠さん、わかりますか?」
「わかんねーよ!」
「桂花殿の第二の使命、それは蜀を守ることなのです」
「はぁ?華琳の命令で蜀に潜入しといて蜀を守ることが使命?意味がわかんねーーーー」
「そうですね・・・・翠さんは六三一の意味がわかりますか?」
「むむむ、競馬の馬券番号?」
「違います」 「翠ちゃんまたまた大外れなのですー」
「うっせええええええええええ!」
「これは、魏呉蜀それぞれの力関係を表した数字です。魏が6、呉が3、蜀が1です」
「明らかに蜀が少ないですね~」
「蜀は天嶮の要害に守られ防衛に適した国ですが、国力の差はなんともしがたい
長期戦となれば蜀に勝ち目はなく、戦後も軍事力を高めた晋と戦えば滅んでしまうのは確実」
「蜀が滅べば次は呉です。呉一国と晋が戦えば呉の敗北は確実なのです」
「そうなれば晋による統一が達成され、一刀殿の知っている三国志は終端を迎えてしまいます」
「ですから、桂花ちゃんは蜀をほどほどに勝たせ、ほどほどに負けるよう動かすはずです」
「なんだよそれ、桂花は蜀の敵なのか味方なのかさっぱりわかんねえじゃねえか」
「しばらくはやりたいようにやらせていればいい、蜀が勝ちすぎると判断した時に注意されるとよろしいかと」
「ふーん・・・・」
「後ほど朱里殿宛てに一筆書きましょう。翠殿はそれを届けてくださればいい」
「助かるけどさ、けどそれって、華琳と桂花がまずいんじゃないのか?それでいいのか?」
「翠ちゃん、今度は大当たりなのですよー」
「本当か!いやー照れるな、あっはっは」
「なぜ華琳殿が私達を持ちいようとしなかったのか。
それは、華琳様が道を踏み外したと判断した時、私達はそれを正すことができるからです」
「つまりですね。春蘭様、秋蘭様、季衣ちゃん、稟ちゃん、風
私達で華琳様を止めて欲しいと言う、華琳様ご自身の意思なのです」
「それでは、華琳様は・・・・」
「はい、以前の華琳様の意思が残っているのでしょう。私達を選んだのは無意識の人選だったと思われます」
「春蘭様を捕まえてしまったのは嫉妬心からの行動であって、本当の華琳様の意思ではないと思いますー
私達の華琳様の意思が残っている限り、処刑されることも危害を加えられることもないと思われます」
「異変の謎を解けば、華琳様をお救いすることも可能なのだな?稟、風」
「はい」「確信してますー」
「季衣!稟!風!」
「はい!」「はっ」「はい~」
「魏は滅んでいない、この戦必ず勝利し、華琳様をお救いするぞ!!」
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だいぶ長くなってしまいました。