No.204739

遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第一章・五話

月千一夜さん

ども、こんばんわ
五話目、公開しますw

お暇でしたら、読んでやってくださいww

2011-03-03 21:17:28 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10496   閲覧ユーザー数:8253

「ふぅ・・・」

 

 

穏やかな日に照らされた部屋の中

俺は、自身の持つ竹簡に走らせた筆を止める

それから、思い切り体を伸ばした

長い間座っていたためか、背から小気味の良い音が響いた

 

 

「休憩するか」

 

 

言って、俺は椅子から立ち上がり窓を開け放った

瞬間、心地よい風が吹き抜けてくる

 

 

「はぁ・・・」

 

 

それと同時にこぼれ出たのは、軽い溜め息

どうやら、疲れが溜まっているようだ

そう思い、俺は再び椅子に腰を下ろした

すると目に入るのは、机の上のかれた先ほどの竹簡

俺はそれを手に取り、ジッと目を通していく

 

 

「一刀、か」

 

 

その途上、零れ出た名前

“三日前”に美羽達に頼まれて診た、一人の青年の名前

 

 

「結局・・・何も、わからなかったな」

 

 

苦笑し、俺はその竹簡を机に置いた

竹簡に書かれたその名前を見るたびに思い出してしまうからだ

あの日、俺が一刀を診た時に感じた

 

あの・・・“不可思議な感覚”のことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第一章 第五話【大切な場所】

 

 

 

 

「さて、それではさっそく診てみよう」

 

「ん・・・」

 

 

時は、一刀と華佗が初めて会った日にまで遡る

あの日、七乃は一刀と出会った時の詳しい状況

そして彼が目覚めた後のことについて華佗に話した

彼はそれを聞き、すぐさま一刀のことを診ることにしたのだ

 

 

「肩の力を抜いて、そこに座ってくれ」

 

「ん・・・」

 

 

華佗に言われ、椅子に座る一刀

華佗はそれを見ると、彼に向いスッと手を伸ばした

それから、目を閉じる

 

 

「では、始めるぞ」

 

 

そう言って、華佗は自身の氣を集中させる

瞬間、集まっていく彼の氣

それを確認した後、彼はスッとその瞳を開いた

 

 

(・・・?)

 

 

同時に、彼は些細な違和感を感じた

目の前に座る青年、一刀のことをみた瞬間にだ

 

 

(これは・・・)

 

 

見たところ、病魔らしきものは見当たらない

しかし・・・“おかしい”のだ

 

 

(“氣”が・・・圧倒的に少ない!?)

 

 

“氣”とは言わば、人が生きていくうえで必要なエネルギーのようなもの

確かに通常よりもその身に宿す氣が少ない者もいるが、彼はその比ではなかった

それこそ、華佗の頬を冷や汗が伝う程の驚き

 

 

(信じられない・・・たったこれっぽちの氣

これではもう、あってないようなものだ!)

 

 

例えるならば、目の前に置かれた一つのコップ

その中に入っていた水を飲みほした後

その底に僅かに残った水滴のようなもの

“ありえない”

そう頭に過ぎった瞬間、彼は自身の首を強く振った

 

 

(落ち着け・・・もしかしたら、何らかの理由で表に出ていない氣があるのかもしれない)

 

 

深く深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる

それから、華佗はさらに神経を集中させた

 

 

(まだだ・・・まだ

もっと、奥深くまで探れ!)

 

 

心の中で叫び、彼はさらに意識を・・・氣を集中していく

それに伴い、彼の額からは大量の汗が流れいく

 

 

(まだ、視えない!?

駄目だ、諦めるな!!

もっと、意識を・・・!)

 

 

 

 

 

 

~ああ・・・どうやら、お客さんのようだね~

 

 

 

 

 

 

(え・・・っ?)

 

 

フッと、彼は自身の体から力が抜けていくのを感じた

集中させていたはずの氣も、どんどん薄れていく

“いったい、何が起こったんだ?”

そう疑問に思う彼の頭の中・・・浮かんだのは、ある景色だった

 

 

 

~だけど、駄目だよ

ここは・・・君が来ていい場所じゃないんだから~

 

 

 

(ここは・・・)

 

 

それは・・・どこまでも果てしなく続く、透き通った“蒼”

美しい蒼天が広がる草原

その草原に見えた、一人の少年の姿

顔はハッキリと見えない

だがしかし、その少年が着ている服を彼は見たことがあった

その、白く輝く衣服を・・・

 

 

 

 

 

~ここは、俺と彼の・・・■■■■にとって、大切な場所なんだから~

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「ふぅ・・・」

 

 

思い出し、再びこぼれ出た溜め息

そんな自身の行動に、苦笑することしかできない

 

結局のところ、俺にはわからなかった

あの後、意識を集中させた先にみた“あの景色”が何だったのか

彼の氣が、何故あんなにも少ないのか

何故・・・俺はあの景色の中に見た少年のことを、見覚えがあると思ったのか

 

何も、わからなかった

 

仕方なしに、悪いとは思ったが“特に異常はみられなかった”と皆には言った

それからしばらくの間毎日通うことを伝えると、俺はその日はひとまず事前に取っておいた宿へと帰ったのだ

 

 

 

「しかし、あれから三日・・・未だに、何もわからないままだな」

 

 

あの日から毎日彼を診ているが、未だに何もわからない

それどころか、あの不可思議な感覚はもう感じることが出来なくなってしまった

 

とりあえず、彼には毎日軽く街を歩き体力をつけるよう言った

今のところは、それくらいしか出来ないだろう

 

 

「まぁ、まだたったの三日だ

これから、もっと色々と調べていくか」

 

 

呟き、俺は再び筆を取った

そうして、竹簡に筆を走らせていく

 

まだ三日

そう、自分に言い聞かせながら・・・

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

 

「ホラ、見てください一刀さん

あそこにいる男の子、可愛いと思いませんか?」

 

「・・・?」

 

「そして、その隣にいる男の子もまた涎ものです

そんな二人の可愛い男の子がもし相思相愛だったのならば、それはとても素晴らしいことだと思いませんか?

これらの組み合わせを“かっぷりんぐ”と言います

目の前の二人の男の子を“かっぷりんぐ”として想像する・・・まずは、そこから始めてみましょうっぷ!!?」

 

「何を始める気だ、何を」

 

 

上機嫌に話を続ける姜維の頭上に、“ゴツン”と拳骨がおちる

それがいつの間にか背後にいた夕によるものだと気付くのに、彼女はあまりの痛みに時間がかかってしまった

 

 

現在、時刻は昼の中頃

太陽は人々の頭上で温かに輝き、子供たちは無邪気に街を走り回っている

その光景を遠目に、姜維と一刀は日陰になる場所で座っていた

そのすぐ後ろには、呆れたような表情を浮かべながら夕が立っている

 

 

「ったぁ~、いきなり酷いじゃないですか夕さんっ!」

 

「お前が妙なことを一刀に教えようとしたからだろうが」

 

 

ようやく痛みも治まってきたのか、姜維が頬を膨らませ夕に言うが彼女はそれに呆れたように笑うだけ

それから、一刀の隣に腰を下ろし溜め息を一つついた

 

 

「お前、仮にも“太守”だろ?

それなのに、ここのところ毎日我々のもとに来て・・・暇なのか?」

 

「いえ、まったく

むしろ死ぬほど忙しいです♪」

 

「なら、なんでここにいるんだ?」

 

「お仕事ばっかだと疲れちゃいますし、ちょっとした息抜きですよ」

 

「・・・サボりか」

 

「あはは・・・イエ、ソンナマサカ」

 

 

視線を逸らし、冷や汗を流しながら言う姜維

そんな彼女の姿を見て、夕はまた溜め息をつくしかなかった

 

 

「太守?」

 

 

そのような空気の中、一人別のことに反応してみせたのは一刀だ

彼は首を傾げながら二人を見つめ、小さくそう呟いたのだ

その言葉に、姜維は人差し指をピッと立て微笑む

 

 

「言ってしまえば、この天水の街を治める人のことです」

 

「街を・・・治める」

 

 

呟き、彼は目を細める

姜維の言葉を、どこか深く噛み締めるよう・・・静かに

 

 

「仕事の殆どを部下に押し付けて、よく治めてるなんて言えるな」

 

「なっ、自分の分のお仕事はちゃんとやってますよ!?

いくら私でも、仕事を残したまま趣味の世界に没頭しようなんて思いません!」

 

「・・・本音は?」

 

「すごく・・・逃げ出したいです」

 

 

“駄目だ、この太守”と、夕は頭を抱えた

その隣では一刀が、ピクリと体を震わせていた

 

 

「あれ・・・」

 

 

それから、一刀はスッと指を差した

二人はそれに気づき、彼が指し示す方へと視線を向ける

そして・・・特大の溜め息を吐きだした

 

 

「あの・・・あれって」

 

「祭だな・・・」

 

 

二人の言うとおり、視線の先にいたのは祭だった

彼女は街中を、上機嫌に歩いている

その手に、あるものを持ちながら・・・

 

 

「あの・・・あの、手に持ってるのって」

 

「ああ、酒だな」

 

 

言いながら、ユラリと夕は立ち上がった

その身に、言葉には表せないような異様な雰囲気を漂わせながら

そのあまりの迫力に、姜維は頬をピクつかせていたくらいだ

 

 

「すまん・・・ちょっと、いってくる」

 

「あ、は~い・・・い、いってらっしゃ~い」

 

 

そう言って、ゆっくりと歩き出す夕

向かうのは、勿論彼女・・・祭のもと

 

 

 

「ふふふ・・・まさかこのような所で、ここまで良い酒が手に入るとは思わなんだ」

 

「そうか・・・それは良かったな」

 

「うむ!

あとはこれをバレないように、かく・・・し・・・て」

 

「まさか、隠すなんて言わないよな?」

 

「ななな、夕っ!?」

 

「さて・・・覚悟はできてるか?」

 

「あ、いや、ちょっと待て

きっと、話し合えばわかるはずじゃ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕さん・・・容赦ないですね」

 

「夕、笑ってる?」

 

「ええ、良い笑顔ですね」

 

 

“恐ろしいほどに”とは、空気が読める姜維は言わない

そんな二人のこともよそに、視線の先では夕による祭へのお仕置きが繰り広げられている

 

 

「ほら、ここか!?

ここがいいのか!?」

 

「あ、ちょ、やめっ、アッーーーーーーーーーーー!!??」

 

 

 

 

 

「二人とも、ここが街のど真ん中ってこと忘れてますね」

 

「皆、見てる」

 

「ええ、適度に距離をとって」

 

 

それはもう、人目を集めまくっている

まぁ普段が穏やかな街なだけに、このような騒ぎは目立って仕方がないのだろう

というか、何人かは“ああ、またか”と笑いながら呟いている

それを見る限り、これはもうこの街にとって見慣れた景色になりつつあるのだろうか

 

 

「平和ですねぇ・・・」

 

 

その光景に目を細めながら、姜維は誰に聞かせるでもなく小さく呟く

それから見上げた空に、彼女は何を見たのだろうか

先ほどまでの笑顔は消え去り、真剣なものになっていた

 

 

「この平穏を・・・私は、守って見せる」

 

 

“だから・・・”と、彼女は手を伸ばした

その先に、何かを掴もうとして

 

 

 

「この街を・・・そして私のことを見守っていて下さい、“お父さん”」

 

 

 

★あとがき★

 

今回もまた、のんびりとした内容となりました

あと数話は、こんな感じでのんびりと時間が進んでいきます

所謂、拠点のような感じでしょうか?

しかしその後は、おそらく急展開の連続ww

言ってしまえば、これらのお話は嵐の前の静けさなのです

数多くあるうちの謎の一部が

一刀の目指すべき道が

一章では、明かされていきます

そして、この章における“とある矛盾”についても明かされます

 

 

 

 

それでは、またお会いしましょう♪


 
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