「―――」
「―――?」
「―――か―――。そ―――おき―――」
(なんだ…?)
何かが優しく髪を撫でる感触に、眠っていたままの意識が覚醒していく。
「かず―――。もう―――ってば」
「ふ―――まったく―――ほん―――」
頭の下に感じる、柔らかくて温かい感触。
懐かしくも忘れることのない香り。
目覚めてはいるのにはっきりとしない意識の中、ゆっくりと重い瞼を開いていく。
視界に映ったのは、さらさらと風に舞う桃色と黒。
その先に映る空の色は何処までも青く、降り注ぐ陽の光に、思わず目を顰める。
「もう、やっと起きたの?」
「ふふ―――すまない。もう少し静かにしてやりたかったのだがな」
例えるなら、爛漫に咲き誇る花のような。
例えるなら、静謐に流れる川のような。
忘れようにも忘れられなかった音色に、一瞬だけ耳を疑う。
どんなに時が過ぎようとも、決して色褪せることのなかった音色。
目の奥から熱く込み上げてくる感覚に、抗いきれずに目を細める。
けれど自然と唇は、もう会えないと思っていた二人の名を呼び、微笑む。
涙でぼやけた視界には二人の女性の美しい笑顔。
やっと会えた。
会うことが出来た。
託された意思を継ぎ、ただひたすらに駆け抜けて。
遺されたモノの大きさに、思い悩むことも多くあったけれど。
それを支えてくれるたくさんの人達がいて。
振り返れば、救うことの出来なかった二人が何よりも望んだ笑顔があった。
二人に話したいことはたくさんある。
けれど、最初の言葉はずっと決めていた。
もしまた会えるのなら、こう言おうと決めていた言葉があった。
喉を振るわせようとする様々な思いを飲み込んで。
文字通り万感の意味を込めて言う。
「…また会えたね。雪蓮、冥琳」
【後書き】
どうも、大樹來です。
前回に引き続き、最後まで読んでいただきありがとうございます。
さて、前回は天寿を全うした一刀ですが、今回は天寿を全うした先であの二人と再開するというお話になっております。
しかし…何と言いますか…。
自己満足の範囲なら兎も角、皆様にお見せするには稚拙もいいところ…。
短編にすらならない短さで、非常に申し訳ないとは思いながら、無い頭から伝えたいことを捻り出して書いたつもりです。
それとですね。前回のお話にて、コメントで『これから先があるのか?』という質問が多々ありましたので、そちらについてお答えしたいと思います。
ネタバレになるかもしれませんが、一応の予定といたしましては転生?長編物を目指しております。
本編となるお話が始まるまでは、一刀、雪蓮、冥琳との会話シーンや、一刀が天寿を全うするまでのお話をちょこちょこ書いていくつもりなので、暫くは息抜き程度のものになりますが、ご了承下さい。
さて、長くなりましたが、今回はこの辺りでお暇させていただきます。
執筆速度に関しましては大分ムラがあるため保証は出来ませんが、それでも私の作品を読んでくださる方がいる限り、精一杯努力したいと思いますので、よろしくお願いします。
それではまた。
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前作でこの世を去った一刀が、二人に再会するお話です。
非常に短くなってしまっていますが、詳しくは後書きで語らせていただくことにします。