No.204610

-真・恋姫無双 魏After-残された者 後編

獅子丸さん

お待たせしました。
残された者 後編 です。

最初に謝っておきます。

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2011-03-03 00:22:37 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5603   閲覧ユーザー数:4824

 

 

 

― 三羽烏Side ―

 

 

 

私は隊長の部屋に来ていた。

部屋に入り見回してみる。

隊長が消えたあの戦いに出向く前のまま。

隊長が寝起きしていた寝台、机の上には硯と筆。

初めて会った市で真桜から買った竹篭。

そして書きかけの竹管。

 

「隊長。・・・・・隊長はどうして私たちに何も言わずに逝ってしまわれたのですか・・・」

 

つい思いを口にしてしまった。

 

「・・・・・凪、やっぱ此処におったんか」

 

私は隊長がいつも座っていた椅子を見て呆けていた。

そんな私を真桜と沙和が心配そうに見つめていた。

そして彼女達も私の視線の先に目を向ける。

 

「・・・・・隊長は何時もあそこに座って難しそうな顔して仕事しとったもんなぁ」

「そうなの。一人で警備隊の報告書とか華琳様に提出する書簡とか見ながら唸ってたの・・・・・・」

 

二人は私と同じようにあの椅子に隊長が座っている姿を思い浮かべているのだろう。

 

「隊長代理をして初めてわかった。・・・・・隊長は一人であれだけの仕事をこなしていたのに

私達には愚痴一つ言わずにいつも笑顔で私達を導いてくれていた」

 

「せやな、いつも春蘭様に追い回されてるだけやなかったんやなぁ」

「春蘭様だけじゃないの、華琳様や桂花ちゃんにも怒られてたの」

 

二人はそう言いながら笑ってみせる。

だけどその顔には楽しいという感情は読み取れない。

 

「・・・・・・どうしてうちらに何も言ってくれんかったんやろな」

「・・・・・・・・私達ってそんなに頼りなかったのかな?」

 

二人はそう呟く。

二人の顔が徐々に崩れていく。

私も同じような表情をしているのだと思う。

隊長は私達のことを頼りないと思っていたのかもしれないと思うと胸が締め付けられる気がした。

 

「隊長・・・・・、私達は頼りなかったのですか? だから何も言わずに天に帰られたのですか?」

 

いるはずのない隊長に向かって問いかけてみる。

帰ってくるはずの無い答えを三人で待っていた。

 

「いい加減にしなさい!!」

 

思わぬところから怒声に私達は驚くしかなかった。

声がした方に振り向くとそこには華琳様がいた。

そしてその表情には怒りの色が張り付いている。

 

「黙って聞いていればあなた達はいったい一刀の何を見てきたのかしら?

貴方達が頼りないからですって? 何時からそんなに弱くなったの?

貴方達を育てた一刀の手腕を疑うわね」

 

「「「っな!!」」」

 

私達は頭に血が上る。

 

「華琳様!! 私達にお怒りを向けるのはかまいません!!

しかし、隊長を悪く言うのであればいくら華琳様であろうとも私は黙ってはいられません!!」

「せや!隊長を悪く言うのは許されへん!!」

「ふ、二人とも落ち着くの!?」

 

華琳様の表情に不敵な笑みがこぼれる。

 

「ふふ、私に逆らってまで一刀を思える貴方達なのにまだわからないのかしら?

そこでもう少し考えなさい。北郷一刀という人間のことをね」

 

そう言って華琳様は隊長の部屋から出て行った。

 

「・・・・・・・そっか、隊長やもんな」

 

真桜が言葉を漏らす。

そう、私達が想って止まないは『北郷一刀』という人。

 

「・・・・・・そうなの。隊長なの。お人好しでスケベでそれでもって無駄に優しい人なの」

 

続いて沙和もそう漏らす。

無駄に優しい人。

そう、隊長は優しい人だった。

優しすぎる人だった。

でも、今の私達にはその優しさがとても痛い。

私はこの体に残る傷を受けたときよりも遥かに痛いと感じます。

 

「隊長・・・・・・・・・・」

 

私達は静かに涙していた。

隊長の優しさは今の私達にはとても耐え難い痛みです。

私達はそんな優しさは欲しくありませんでした。

隊長の笑顔を見ているだけで幸せだったあの日々はもう戻っては来ないのでしょうか?

 

「隊長、私達は隊長に会いたい・・・・・・」

 

私達は止まらない涙をそのままに隊長がいつも座っていた椅子を

何時までも見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

― 役満三姉妹Side ―

 

 

 

「以上が今回の公演の草案になります」

 

私達は華琳さまに今回の公演に向けての案の提出に来ています。

『三国同盟記念講演』

私達の夢だったことがやっと手の届くところまで近づいてきました。

 

「・・・・・・ふむ、わかったわ。あぁ、人和、一刀に代わる新しい仲介役を就けるわ・・・・」

「必要ありません・・・・・」

 

自分でも驚くほどにすんなりと言葉が出てきた。

 

「理由を言いなさい!! 納得いく理由じゃなければわかっているのでしょうね!?」

 

華琳さまは怒りの表情を見せて声を荒げた。

姉さん達も声に当てられたようだけどすぐに反応する。

 

「私達のことを・・・・・わかってくれてない人が・・・・」

「っちょ、ちょっと!人和、っは、はっきり言いなさいよ!」

「ちー姉さんは黙っていてください」

 

此処で華琳さんを怒らせてもいいことがある訳じゃない。

そのことは私達もわかっている。

 

「え~とぉ」

 

そんな中天和姉さんが言葉を発した。

 

「簡単なことだよぉ、わたしたちの世話役は、一刀しかつとまらないもん♪ ねぇ~地和、人和」

 

満面の笑みで天和姉さんはそう答えた。

曹操の殺気を前にして自身の言葉を恥じることも隠すこともなく笑っている。

そう、私達に恥じることは何もなかった。

私達を支えてくれた一刀の代わりなんていない。

 

「っそ、そう! 一刀しかいらない」

「・・・・・一刀さん以外に私たちの世話が勤まると思えませんので」

 

これは恥でも、謀反でもないのだから。

もし此処で一刀さん以外を受け入れてしまうのなら

私達を此処まで導いてくれた一刀さんに対する裏切りになる。

私達を助け、私達の夢を真剣に応援してくれた。

私達の中に一刀さんは既に含まれているのだから。

 

「そう・・・・・わかったわ。その代わり人和何か問題が起こった場合・・・その時はわかっているわね?」

「問題ありません。連絡、報告に関してはこちらで雇った者をよこしますので」

「わかったわ、もう下がってよろしい」

「「「失礼します」」」

 

 

 

「ふぅ~・・・・・」

「生きてる心地がしなかったわ・・・・・」

「姉さん達ったら・・・・」

 

私達はため息をつきながら城を後にする。

 

「ねぇ、二人とも?一刀って本当に天に帰っちゃったのかな?」

「・・・・・・わからない。でも、華琳様はその場に立ち会ったと言ってたから・・・・・」

 

私達が一刀に会ったのはあの戦いが始まる少し前。

それが私達の見た一刀さんの最後の姿。

 

「ん~、私思うんだけど~、一刀ってもしかしたらまだ大陸のどこかにいるかもしれないんじゃないかなぁ?」

 

天和姉さんはそう呟く。

 

「確かにそうかも!天の国に帰ったんじゃなくてまたどこかに落ちてるかも知れないよね!」

「そうそう、前に一刀が言ってたみたいにいきなり荒野の真ん中に寝てるかも」

 

確かに姉さん達の言ってることは頭ごなしに間違いとは言えないかもしれない。

 

「そうね、姉さん達、私達で探しましょう」

「あれ?珍しく人和が乗り気」

 

失礼なこと言われてる気がするけどこの際そこは置いておいて話を進める。

 

「地和姉さん、私達は今からどこに行くと思う?」

「は~ぃ!三国同盟記念講演!」

「っちょ、天和姉さん、あたしの台詞とらないでよ!」

 

そう、私達は今から三国を巡る公演に出かける。

これは魏の将達には探しに行きたくても決してできないこと。

私達は三国を自由に往来できるのだから。

私達はこれを逆手にとって一刀さんを探そう。

 

「そう、私達は一刀さんを探しに行きましょう」

「「さんせ~い!!」」

 

そうと決まれば早速準備をしなければ。

私達に何も言わずに居なくなった一刀さん。

一刀さんはもう居ないと聞かされた時の私達の悲しみを一刀さんには聞いてもらわなくてはいけないから。

私達三人の夢だったこの国一の歌い手になること。

でも、いつからか一刀さんにその姿を見せることも私達の夢の一つになっていたのだから。

だから、一刀さんを絶対見つけなくてはいけない。

 

「さぁ、姉さん達。事務所に戻ったら早速準備を始めましょう」

「「おー!!」」

 

 

 

― 桂花Side ―

 

 

 

 

 

「おや?」

「桂花ちゃん、なにをしているのですかぁ?」

 

私は急に掛けられた声に体を震わす。

 

「風!? ベ、べつにあなたには関係ないわ」

「ふぅ~む、また華琳様にしかられますよぉ?」

 

それは困る。

 

「そんな罠にひっかかるほどお兄さんはばかではないのですよー」

「っば、ばかよ!あいつはばかなの!絶対引っかかるように、この魏随一の軍師の私が仕掛けてるんだから掛かるに決まってるじゃない!!」

 

しまった。

私としたことが風の策に嵌った。

 

「華琳様が掛かったらどうするのですかぁ?また怒られますよ~?」

 

だけど風はそこを突いては来なかった。

 

「っか、華琳さまは、・・・・私が付いていれば問題ないわ!!」

「急にいなくなっ・・・・・いえ、華琳さまを煩わせたあのばかに一泡吹かせないと気がすまないのよ!!私が唯一目を掛けてやっていたのに!挨拶もなしに勝手にいなくなって!・・・勝手に!・・・・勝手に!!」

 

自分でも何を言ってるのかわからなくなってきた。

 

『私が唯一目を掛けてやっていた』

 

あの男を?

自分の気持ちがわからない。

私は男という生き物が嫌い。

同じ部屋で同じ空気を吸うことすら嫌悪感を覚える。

そんな私があの男に目を掛けていたですって!?

あの男の所為で私の心は無意味にかき乱される。

どうして私はあの男のことを考えるとこんなに胸のあたりが『もやもや』するんだろう。

男なんて汚らわしい。

あの男なんて特によ!!

魏の将や軍師に手当たり次第手を出すような最低な種馬なのに!!

なんで?

どうして?

もう!!わけわかんない!!

 

「・・・・・・桂花ちゃん」

 

風は隣で感情任せに穴を掘る私を見てそのまま視線を空へと向けた。

私は行き場のない感情を足元の穴にぶつけていると風の足元に水滴が落ちるのが見えた。

雨かと想って振り向く。

 

『涙』

 

空を見上げる風の頬に一筋の涙が伝っていくのが見えた。

いつも何を考えているかわからない風。

そんな風が泣くなんて想像すらしてなかった。

そんなにあの男のことを想っていたのか。

あの男のどこがそんなに良かったのかさっぱり理解できない。

でもそんな風を見ていると余計に『もやもや』がひどくなった気がした。

だから私はその『もやもや』を地面にぶつける。

だけどその『もやもや』は一向に薄れることはなかった。

そして私の頬にも何かが伝っていく。

その伝っていく何を袖で拭き取りながら私は地面をさらに深く掘る。

 

『私は認めない』

 

私は認めてなんかやるもんですか!!

あの男のことなんて絶対認めてなんかやらないから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 華琳Side ―

 

 

 

 

日も落ち、月の光に照らされながら私は城壁に来た。

唯々、月を見上げている。

唯々、あの夜を思い出すような満月を見上げているだけ。

 

「・・・・・ばか」

 

私は月に向けてただ一言呟いた。

この呟きは彼に届くだろうか。

そんなことを思っていた。

私は自身の夢と確証はなかっとはいえ彼の存在を天秤にかけていたのかもしれない。

そしてその天秤は自身の夢の方へと傾いた。

それは、彼が私の傍から居なくなるはずがないと高をくくっていたからかもしれない。

今思えばいろんな所にその兆候は出てきていたのに。

私はどうすればよかったのか、そう考えながらあの日のような満月の日には必ず此処に来ている。

 

「・・・・・・・後悔しているのかもしれないわね」

 

そう、後悔しているのだろう。

 

『何故彼を止めなかったのか』

 

『止める事ができたんじゃないか』

 

あの日の夜彼の部下に言われた言葉が頭の中を駆け巡る。

 

ねぇ、一刀。

素直になっていればよかったの?

私がないて止めれば一刀は自らの身を削ることをやめた?

 

・・・・・・・

 

「はぁ・・・・・・・何もしない姿が思い浮かばないわね」

 

ため息を付きつつ私はもう一度満月を見上げる。

あの日のような大きな満月。

私はこの満月の下で泣いた。

覇王の仮面を脱ぎ捨てて泣いた。

一人の男を想い。

自らの女を自覚して。

傍にいて欲しいと願った。

それなのに自尊心が邪魔をした。

 

『行かないで』

『離れないで』

『傍にいて』

 

この簡単な三つの言葉だけでも言えたら違う今があったのかもしれない。

いえ、多いわね。

一言。

たった一言でよかったんだわ。

 

『一刀、○○○○○』

 

私は月に向かってその一言を口にしてその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

あとがきっぽいもの

 

 

9度目まして獅子丸です。

ごめんなさい。

なんか謝ってばっかりなきもします。

三羽烏、役満姉妹。

全員別で書くのは無理でしたorz

なので仕方なく三人纏めて書かせて頂いています。

 

華琳、桂花は書いていて意外とすんなり書けました。

キャラが濃い分逆につかみやすかったのかも知れません。

あくまで獅子丸の中での華琳と桂花のイメージですが・・・・・・。

 

さて、これで多少肩の荷が下りました。

この次は本編?の方も終盤に差し掛かってますので、至らない場所の修正と再構成の見直しをしつつ投稿できるように頑張ります。

 

それでは毎度の一言。

生温い目でお読みいただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 


 
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