夥しい数の兵士たちが行軍してくるのを汜水関の城壁から見下ろしていた。ざっと十万はゆうに超えている。それに加えて英雄と呼べる豪傑たちが数多くいる。俺たち董卓連合軍にも豪傑はいるが、それでも数に劣る。さらに汜水関と虎狼関と二つの砦に振り分けていることから断然にこちらが不利なのだ。
「覚悟はしていたけど、目の前にするとびびるな」
霞が得物に力を入れながら声を絞り出した。
「臆病風に吹かれたか、霞。あの程度、私一人で十分だ」
強気な口調に言葉づかいでやせ我慢するのは華雄。その全身は震えていた。
「華雄やって震えとるやないか」
「こ、これは武者震いだ」
恐怖に蝕まれていく二人。それは汜水関に配置された兵士たちも同じこと。董卓軍は黄巾賊に奮戦した数少ない官軍だったが、所詮は農民上がりの賊集団。訓練を施された軍隊と渡り合うのは今回が初めてで、それは未知の世界だった。
明星も同様だが、しいて違いを挙げるならば覚悟の違い。霞たちが死を覚悟していないわけではない。ただ明星には一度死を経験しかけた訳ありの集団。生死を一度彷徨えば、それ以上の恐怖を覚えることはない。その為、汜水関に割り当てられた明星の兵は誰ひとりと恐怖に蝕まれていなかった。
「主の眼は何が映っている?」
城壁で隣り合わせに討伐連合軍の布陣を目にしながら聖は問う。
「明星の行く末」
十字架が刻まれた目が疼く。
「その未来は?」
「死滅か生存か………。その瞬間まで謎だろう」
「……じゃの」
火蓋が切られた。それは予兆もなくただ董卓軍の将軍である華雄の独断専行による結果。猪とは理解していたが、ここまでとは思っていなかった。その独断専行で汜水関は落ちる結果となった。
あまりにも早すぎる汜水関の陥落。敗北を余儀なくされているとはいえ、このままでは逃亡の準備を稼ぐこともできない。
「主」
そのことを危惧していたのは聖も同様だった。
「わかっている。霞、お前たちは虎狼関まで帰還して月の元に迎え。その後は手筈通りに……いいな」
「ちょっと待ち! そんな事したら翡翠たちはどうするんや?」
「俺たちなら問題ない。それに月の命が最優先だ」
次に霞の反論をさせる暇を与えることなく俺たちは身体を反転させた。そして、行軍をしてその場を去った。霞の呼び止める声に後ろ髪を引かれる思いで馬を走らせた。
今回はめちゃくちゃな話だと思います。ごめんなさい
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董卓連合VS董卓討伐連合