真・恋姫†無双~赤龍伝~第35話「赤と黒の邂逅」
小蓮、藍里、嶺上の三人が、馬に乗って街道を進んでいた。
嶺上「なあ、姫様」
小蓮「なーに、嶺上?」
嶺上「こんなトコまで、みんなに黙って来て良かったのか?」
小蓮「えーー! 今更何を言ってんのよー」
嶺上「だってさ。姫をこんなトコまで連れ出したことがバレたら、火蓮さんにどんな目に遭わされるか。考えただけで……あーー! 考えただけで鳥肌が立つ!」
藍里「リンシャン。それなら大丈夫ですよ」
嶺上「へ?」
小蓮「どういうこと、藍里?」
藍里「火蓮様は、小蓮様が飛び出すことを分かっていました。だから、私たちを護衛役として付けたのでしょう」
嶺上「そうなのか?」
藍里「はい♪」
小蓮「さっすが、お母様♪ シャオのこと分かってるわ♪ でも、嶺上はともかく……藍里が護衛役~~?」
嶺上「私もそう思った。全然、武の才能のないお前が護衛役だと~~?」
藍里「二人とも失礼ですね!! 私だって、これを使えば戦えますよ! 」
そう言って、藍里は懐から短刀を取り出して、小蓮と嶺上に見せた。
藍里が懐から取り出した短刀の名は、風切羽(かざきりばね)。藍里が火蓮から受け取った護身用の短刀。しかし、藍里の実力が低いので、あまり役に立っていない。
小蓮・嶺上「………………」
藍里の実力を知っている二人は言葉がでなかった。
嶺上「はあー。……安心しろ姫。私がしっかりと守ってやる」
小蓮「うん。お願いね嶺上」
藍里「え、ちょっと、二人とも……」
二人に無視されて、藍里は戸惑う。
嶺上「心配するな、お前も私が守ってやるから」
藍里「そーじゃなくてですね!」
三人は騒がしく街道を進んで行く。目的地へと向かって…………。
――――許昌――――
天の世界での生活などを、赤斗が曹操に話していると、玉座の間に一人の男が入ってきた。
司馬懿「失礼致します。曹操様」
入ってきた男は、全身黒づくめの衣装を纏っていた。
曹操「仲達か…何事か?」
曹操は入ってきた司馬懿に冷たく尋ねる。
司馬懿「申し上げます。袁紹が我らに向かい動き始めました」
司馬懿は落ち着いた様子で答える。
夏候淵「何だと!?」
曹操「馬鹿は決断が早すぎるのが厄介ね。敵の情報は?」
司馬懿「旗印は袁、文、顔。敵の主力は全て揃っているようです。しかし、報告によれば、敵の動きは極めて遅く、奇襲などは考えていない様子。むしろ、こちらに自らの力を誇示したいだけという印象を受けたそうです」
曹操「馬鹿の麗羽らしい行動ね」
司馬懿「それと曹操様」
曹操「何?」
司馬懿「報告のあった城から、兵の増援は不要だと連絡がありました」
夏候惇「何っ!? 報告のあった城には兵はどれくらいいるのだ?」
司馬懿「約七百とのことです」
夏候惇「ななひゃくぅ!? 馬鹿な。みすみす死ぬ気か、その指揮官は!」
曹操「……分かったわ。ならば増援は送らない」
夏候淵「華琳様!?」
曹操「城の指揮官は何という名前?」
司馬懿「郭嘉と程昱の二名です」
曹操「なら、その二人には袁紹が去った後、こちらに来るように伝えなさい。皆の前で理由をちゃんと説明してもらうわ。そうでないと、納得できない子もいるようだしね」
司馬懿「承知致しました」
そう言って、司馬懿は玉座の間を出ていく。その際、赤斗は司馬懿と一瞬目が合ったような気がした。
夏候惇「しかし華琳様! 説明もなにも、そやつらが生きてここに来られる保証などどこにも……!」
曹操「皆も勝手に兵は動かせないこと。これは命令よ。……守れなかった者は厳罰に処すから、そのつもりでいなさい」
赤斗「…………ねえ曹操。質問があるんだけど」
曹操「何? 兵の増援についてのことだったら……」
赤斗「いや、それはいいよ。曹操にも、程昱、郭嘉にも考えがあってのことだろうしね」
曹操「そうなの? じゃあ何かしら?」
赤斗「さっき来たのって、連合の軍議にも参加していた司馬懿だよね? あの人ってどんな人?」
曹操「……どうして、そんなこと聞くのかしら?」
赤斗「もしかして、知っている人かなと思ってね。……それに」
曹操「それに?」
赤斗「何だか曹操が、司馬懿に冷たいなって思ったから……」
曹操「我が軍の優秀な軍師よ。それ以上でも、それ以下でもないわ」
赤斗「そうなんだ。……変なこと聞いて悪かったね」
赤斗(……曹操は司馬懿のことを良く思っていないみたいだな)
赤斗は曹操の態度から、そう思えてならなかった。
その後、袁紹の軍は偵察をしただけで南皮に引き上げていった。派手好きな袁紹にしてみたら、たった七百の相手など、相手したくなかったようだ。
郭嘉と程昱の指揮のおかげで、周囲の地形を確認されただけで済んだのである。
赤斗「……曹操」
軍議を終えて、部屋に戻る曹操を赤斗が呼び止める。
曹操「何?」
赤斗「今さらなんだけど、僕があの場に居ても良かったのか? 客分とはいえ、僕は他所の国の人間だぞ」
赤斗は、郭嘉と程昱が今回のことについて、曹操に説明する場に立ち会うことを許されていた。
曹操「別に構わないわよ。あなただって、袁紹が軍を引き上げるって分かっていたのでしょう?」
赤斗「確かに、反董卓連合の時に見た袁紹の性格を考えれば、程昱と郭嘉が取った策は正解だろうとは思っていたよ」
曹操「ならば、あなたが軍議に参加していて問題なかったわ」
赤斗「そういうものかねぇ?」
曹操「そういうものよ。さて、今日はもう遅いわ。あなたも休みなさい」
赤斗「分かったよ。お休み……曹操」
そう言って、赤斗は曹操と別れた。
赤斗「さて、これからどうなるかな………」
部屋に戻る際、廊下から夜空を見上げて赤斗は呟く。
司馬懿「必ず袁紹は、また攻めてくるでしょうね」
赤斗「誰だっ!」
誰もいないと思っていたところ、急に声が聞こえた為、赤斗は驚いた。
司馬懿「申し訳ありません。驚かしてしまいましたね」
赤斗「司馬懿!?」
司馬懿「こんばんは。風見赤斗さん」
赤斗「あ、あぁ。……こんばんは」
赤斗は司馬懿を警戒する。司馬懿と黒ずくめの男が同一人物かもしれないと、赤斗はまだ思っていた。
赤斗「………司馬懿……さん。以前、どこかで会ったことありますよね?」
司馬懿「はい。反董卓連合の軍議で会いましたね」
赤斗「それより……前に…」
司馬懿「さあ。ないと思いますが……」
赤斗「……………なら、これに見覚えは?」
赤斗は、この世界に来る前、黒ずくめの男に付けられた左肩の傷を見せる。
司馬懿「さあ」
赤斗「……そう」
赤斗は司馬懿から距離をとった。司馬懿の言葉が信用できなかったからだ。
司馬懿「そんなに身構えないでください。何もしませんよ」
赤斗「……………………」
司馬懿「何故、そんなに警戒しているか知りませんが、風見赤斗さん。あなたも曹操様のもとで働きませんか?」
赤斗「……断る。以前、曹操にも言われたが断っている」
司馬懿「そうですか。……残念です」
赤斗「……要件はそれだけ?」
司馬懿「はい。仕方がありませんね」
司馬懿は赤斗に右手の掌を向けた。
赤斗「?」
それを見て赤斗は、さらに警戒を強めた。
そして、赤斗の身体が夜よりも暗い黒い光で包まれた。
赤斗「何だ!?」
張遼を傀儡にした司馬懿の術である。
黒い光が収まる。
赤斗「一体何をしたんだ!?」
司馬懿「!?」
司馬懿(何故、術が効いていない!?)
赤斗は張遼とは違い、司馬懿の人形になっていなかった。
赤斗「答えろっ!!」
司馬懿「ふふ…ただの悪戯ですよ」
赤斗「それを信用すると思う?」
司馬懿「申し訳ありません。あなたが、あまりにも警戒をしていたので、つい悪戯をしたくなってしまいました」
赤斗「……………………」
司馬懿「では、私は失礼致します」
司馬懿は何事も無かったかのように、立ち去って行った。
赤斗「あいつ………」
司馬懿と黒ずくめの男が同一人物かどうかの確認は出来なかったが、赤斗はより一層に司馬懿を警戒することを心の中で決めた。
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
次回は関羽が登場予定です。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。黒髪黒眼。
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
また、諸葛瑾(藍里)と仲が良い。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
能力値:統率5・武力?・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に
脱線することもあります。
赤斗が曹操の保護下に入ったので、ただ今は魏√に脱線中です。
主人公も含めてオリジナルキャラクターが多数出てきます。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。