No.203990

仮面ライダーEINS 第三話 武器

この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。

執筆について
・隔週スペースになると思います。

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2011-02-27 08:32:31 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:535   閲覧ユーザー数:525

――2011年9月18日

――学園都市中央区、多目的ホール

――世界医療学会

 その学会は拍手喝采で幕を閉じようとしていた。

今講演を行っていた博士が壇上から降りると握手と名刺の嵐にもまれた。

その嵐を抜けた先に一人の青年の姿を見つけた。医療に携わるものにしては若すぎる。しかし彼の実績は博士が一番良く知っていた。

「お久しぶりです。華岡先生」

「雨無君、元気そうでなによりだ」

 

 

EPISODE3 武器

 

 

「日本は何年ぶりですか?」

「何、二年ぶりくらいさ。一昨年パーティに居ただろ?」

「ああ、そういえば……」

 ということは横にいる博士は二年間海外で医療に従事していたことになる。

「どうですか、日本の外は?」

「様々な難民キャンプを回った。いや、酷いなんて言葉では形容できないよ」

 華岡と呼ばれた博士は、世界中の紛争地域や難民キャンプ、まともな治療もままならない地域にいる人々に対して医療行為を行っている。

一騎と華岡博士は世界を旅しているときに偶然出会い意気投合したのだ。

「ははっ、医療の礎になるのであればこの体差し出しても構わんよ。ただ……」

「指一本も動かせないくらい頑張って死んだ後、ですね」

 そう、やや物騒で言い方も悪いが……それが華岡博士の口癖だった。

「ほほう、言うようになったじゃないか」

「まだまだですよ」

「君がもっとも尊敬する人……だったかな。彼には追いつきそうかい?」

「あの人は遠すぎます。もちろん先生だって尊敬していますよ。難民キャンプやマラリア蚊が飛び交う中で手術をするなんて正気の沙汰じゃない」

 言い方が悪いのはいつもの事か?華岡博士も一騎のそういうところを知ってか、二人は小さく笑うのであった。

「さて、今日はお昼から豪華な立食パーティーが楽しめる。雨無君、君もどうだい?」

「会員ですけど遠慮しておきます。今回は何も発表していない上に先生の講演しか聴いてませんから」

「ははっ、では私は再び名刺の紙吹雪に揉まれてくるとするか」

 そう笑い合った時、華岡博士の携帯が着信を知らせた。

「……何、心停止?状況は?」

 医者の顔に変わった。いや、戻ったと言うべきか?

一騎は小児外科医ではなかったが聞こえてくる単語は全て火急のものというのが分かった。

「先生、時速100キロでかっ飛ばした後にその処置をする自信ありますか?」

「……私を誰だと思っているんだい?」

 

 * *

 

――都市立大学病院

――急患搬入口

「……?」

 亜真菜はちょうど急患搬入口にいた。医長に言われ高名な医師を出迎えて欲しいとのことだった。先ほど小児患者が手術室に移されたのを考えるときっとそれの執刀医だろう。

そこに響いてきたのはバイクの爆音。たぶんこの音は違うと思って、自分が執刀するわけでもなくいそいそとし始める。

しかし次の瞬間、爆音の主は亜真菜に突っ込んでくるのであった。

「どけぇ!和泉!!」

「ええ!?」

 バイクは器用に亜真菜を避け病院の中に突っ込んだ。もちろんガラス戸とかは物理的に突破されている。まあ弁償するのは誰なのかはあえて言うまでもない。

「先生!手術に遅刻は厳禁ですよ!」

「分かっているよ!」

 とても暴走していたバイクに搭乗していたとは思えない足取りで華岡博士が病院に駆け込んでいった。

「雨無くん!?」

「ははっ。すまんな、和泉」

 亜真菜の記憶にある型破りと云われそして何より若い一騎が、スーツを来ているのに違和感と似た可笑しさを感じた。ちなみに日本人は学会にスーツでびしっと決めているのに対し日本人以外は比較的ラフな格好が多い。

そんなスーツ姿にバイクで暴走しながら医師を連れてきて、自分がたたき割ったガラス戸を見て笑顔を浮かべているのは彼らしいと感じるのであった。

 

 

 亜真菜は同僚と昼食を取っていた。

先ほどの出来事はあまりにも衝撃的……どちらかといえば物理的に……だったがもちろんその話で持ちきりだった。

「よう、相席でも構わないかな?」

 そんなところに声をかけたのは事件の当事者である一騎であった。同僚達にもすんなりと同席の了承を得た一騎は、見慣れた顔のマスターに注文をいれる。

「沢木マスター、今日は何がおすすめだい?」

「今日はカロリーたっぷりのフルーツサンドイッチだよ」

「なんて物勧めるんですか。2500kcal越えてたら訴えますよ」

 といって一騎の目の前に置かれたのは普通のハムサンドとツナサンドであった。

サンドイッチとはいえ既に料理ができあがっているのと、マスターとの顔見知りということを考えるとよっぽどの常連なのだろう。

「授業前に胸焼けしたらたまりませんよ」

「え、授業?」

「……ああ、名刺も渡してなかったな」

 サンドイッチを咥えながら鞄をゴソゴソをあさり名刺入れを取り出す。

「一応こういうことになっている」

 そしてそのまま名刺を亜真菜たちに差し出した。

亜真菜は差し出された名刺に書かれていることを口に出して読み始める。

「雨無一騎、学園都市警察警部、医療学部生体力学科客員准教授……え?」

「まあ肩書きなんてそんなもんさ。授業なんて結局三つしか受け持ってないし研究室もこぢんまりとしているしな」

 はい、これ、どうぞ。と言いながら亜真菜の同僚二人にも名刺を手渡す。

「准教授が病院のガラス戸割らないでよ」

「心停止だったんだろ?華岡先生じゃないとダメだと思ってな。まあいいじゃないか、直せるガラスより治せない人の身体さ」

 玉の輿か、それとも興味か、女性陣が盛り上がるが、当の本人は手を合わせてごちそうさま、と続け席を立とうとしたそのときだった。

「一騎くん、授業前だけど大丈夫かな?」

 沢木と呼ばれたマスターが、一騎に資料のような紙の束を差し出した。

・・・

・・

 沢木マスターがこれを手渡すとき決まってそれは厄介事だ。亜真菜達とは違い席に移った一騎はマスターを向かい合っていた。

三枚ほどの束であったが、一騎はそれを読み始めると同時にマスターが話し始める。

「陣内佐繪貴。彼、学園都市に来ているそうだね」

「あの腹の中どころか頭の中も真っ黒の政治屋。それがどうしました?」

「彼に対しての襲撃予告があってね」

 そこまでは資料に書いていた。ご丁寧に時間と場所を指定している。少し調べれば要人のスケジュールは分かるかもしれないが、書かれている犯行予告は綿密に調べていることを感じさせていた。

資料にある陣内佐繪貴のスケジュールと予告がぴったり合っているのだ。

「確か裁判になってましたよね?例のモバイルニュースは騒ぎ立ててるんじゃないですか?」

「大久保さんも仕事だからね。まあけどこんなこと取り合ってくれるの一騎くんしかいないから」

「いなくなった方がいいんじゃないですか?日本の寄付がいい加減なことを逆手にとって、募金をピンハネして着服してたんでしょう?」

「あーテレビで見たよ。すっごい豪邸だったね。寄付寄付言うならあの豪邸売っぱらったら子供何人救えるか」

「あれで政治屋とはね。俺がやったほうがまだクリーンな政治が出来ますよっと」

 腕時計を見ながら一騎が立ち上がった。どうやらそろそろ授業の時間のようだ。

 

 

――学園都市文系学区、法学科

――講演堂

「うわ……随分殺気立ってるじゃない」

 講演堂には聴講者ではなく警備部でごった返していた。

その壇上を上部席から一騎がのぞき見る。その視線の先には先ほど話の中心であった陣内佐繪貴が講演を行っていた。

『アローアロー?聞こえる?』

「ああ、聞こえているよ。どうやら今宵のパーティはガンパウダーの品評会らしい」

 そもそも講演会を夕方に行うこと自体が珍しい。

聴衆は僅か。どちらかと言えばスキャンダルを追っているメディアの方が多い。そんな場面で襲われたのであればそれこそ注目を浴び、加えて告発など行われたのであれば彼の社会的地位はガタ落ちだ。

「ハル、監視カメラはどうなっている?」

『今のところは問題ないね……いや、問題発生』

 無線の先の相棒がこう言った瞬間爆音が鳴り響いた。講堂に横穴が穿たれ杖を持った怪人が現れる。

あたりは騒然とするが、次の瞬間には応戦が始まりメディアがこぞってスクープをねだり始める。

「警備部の連中、避難が先だろうが!」

 一騎は上部席から飛び降り聴衆を避難させる。メディアはおそらく死んでもスクープを撮ろうするだろう。日本のメディアはそんなもんだ。放っておく。

『一騎、タイプセルの怪人だ。どうやら超速再生能力を持っているみたいだ。銃弾が殆ど効いてない』

 聴衆の避難が完了した一騎が壇上を見るとタイプセルの怪人が、警備部を一人一人なぎ払っているところだった。

そして次の瞬間、杖を掲げたと思うと先端から二本の大きな鞭を形成しあたりを……警備部とメディアのカメラをなぎ払った。

陣内佐繪貴だけが壇上に取り残された。

「陣内佐繪貴……」

 基の形状に戻った杖でタイプセルの怪人は陣内佐繪貴に突きつけた。

「おりゃぁぁあ!!」

 どこに一騎がドロップキックで飛び込んだ。

もっとも今回は怪人ではなく陣内佐繪貴を吹き飛ばした。実は目測を誤っていたのだが結果として被害が少なかったのでよしとする。

それを見ていたタイプセルが動きを止め一騎と向き合った。

「よう、この通り陣内はふっ飛ばしておいたぜ。まあ単にミスっただけだけどな」

 いつもの軽口。そう、そこまでは彼のパターンであった。

「雨無君……」

「え?」

 タイプセルの怪人が変身を解除した。その顔は一騎が尊敬しているその人であった。

「そんな……華岡博士」

 そう、つい先ほどまでその技術で子供を一人救った生ける医聖と呼ばれる人物だったのだ。

「なぜ……」

「君は……眩しすぎる」

「答えになっていない、先生!」

 華岡博士の変身が解かれてその場は騒然としていた。だがこの状況を見ているのは一騎と華岡博士、そして監視カメラを通している一騎の相棒だけだ。

あとは全員気絶している。

「子供達の!子供達の未来を守り……子供達を救い続ける!それが貴方だ!先生!」

「それは幻さ。だが幻であっても私は許せなかったのだ。子供達を使って私腹を肥やし吐き捨てる。そんな政治家共をな!」

「政治家……そうか、それで陣内佐繪貴を」

 そう、彼の募金は国内外の子供達への慈善事業が目的であった。

「やらせてくれ、雨無君!奴には天誅を……否、人誅を下す!」

「たとえそれが子供達のためとはいえ、人を殺すことを許すことはできない!」

「……そうか、なら」

 簡易型注射器。糖尿病患者が使用するインスリン注射器によく似ている。どうやら自分の意志で変身解除するとそれは手に残るようだ。

「止めてみたまえ!仮面ライダー!!」

「違う……止めるんじゃない!救ってみせる!!」

 アインツコマンダーを取り出しコードを入力、ベルトを腰に召喚する。左手を右の天に突き上げ叫んだ。

……中途半端な覚悟のままで。

 

――変身!!

 

 

次回の仮面ライダーEINSは……

 

――一騎、君に彼が倒せるかい?

 

――偉大な先輩達がそうしてきたように。

 

――超変身!!

 

EPISODE4 錫杖


 
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