桜井家では家主の智樹と居候のイカロス、ニンフ、カオス、そしてお腹がすいてご飯を食べに来たアストレア。
この5人はいつもどおりの朝食を取っていた。
「ニンフ、漬物とってくれ」
「はい」
ニンフが漬物の皿を取り、智樹に手渡そうとする。
「サンキュー」
その時智樹の手がニンフの手に触れた。
「きゃっ」
ニンフは思わず手を放してしまい、漬物の皿は落ちそうになるも、アストレアがすんでのところでキャッチする。
「ふう…危なかった……」
アストレアは漬物の皿を置いて、冷や汗をぬぐう。
「どうしたんですか、ニンフ先輩」
「だって……トモキの手が……」
「?」
智樹は何のことかよく分からなかった。
「お兄ちゃんの手がどうしたの?」
カオスが気になって智樹の手を触ってみる。
「カオス、あんたねえ……」
「? お兄ちゃんの手、あったか~い」
カオスが智樹に対して甘える。
その様子を見たイカロスの心境は複雑であった。
(そう言えば、マスターの手、随分つないでない…)
イカロスは最近智樹の手を触っていないことに気付く。
(マスターにつないでもらいたい……)
イカロスは自分が珍しく何かを欲する気持ちが芽生えていることに気付く。
(マスターと手をつなぎたい……)
「天使達の律動(オモイ)の行方」
季節は秋。
空美中学校は文化祭の準備に取り掛かっていた。
「今年も文化祭の季節だね」
そはらが智樹達と一緒に歩きながら文化祭でやる模擬店を作っている様子を見学している。
「はいはーい! 文化祭ってなんですか?」
アストレアがそはらに文化祭のことを尋ねる。
「う~んとね……」
「すごく簡単に言えば、学校で楽しく祭りってことだな」
そこに臨時教員として(一応)働いている秋山がやって来る。
「まあ、そんなところかな…」
「お祭りか~」
「言っておくが、いつも神社とかでしてる祭りとは違うからな」
秋山がアストレアに釘を刺すようなことを言う。
「マスターは参加しないのですか?」
「めんどくせー」
空美中学校ではクラス単位での催し物は有志で行い、それ以外の催し物は部活動がメインである。
「それに俺、部活に入ってないからな~」
そんな事をぼやいている智樹の肩を後ろから叩く人物がいた。
新大陸発見部部長の守形である。おまけに美香子までいる。
そんな守形は「新大陸発見部、人力飛行機で大気圏突破を目指そう」とかかれた看板を持っていた。
「絶賛パイロット募集中」
「断る。殺す気か」
人力飛行機の強度云々以前に生身の人が大気圏突破なんてまず無理である。
エンジェロイドであるイカロス達や明らかに人間越えている秋山なら話は別であるが、智樹は普通の人間。まず死ねる。
「そういうな。多くの新大陸発見部員の中で選ばれたことは名誉あることだぞ」
「ちょっと待て、俺いつの間に入部したことになってるんだ?」
「生徒会の名簿によれば部員扱いになってるわよ」
美香子がどこからか生徒会で記録してある名簿を取り出し、智樹の項目を確認する。
「これは陰謀だ! 誰かの陰謀だ!」
「ふっ」
慌てる智樹を見て、鼻で笑った秋山。
「おやぁ~」
そんな智樹達の前に賓はあるがどこか嫌味が混じってそうな少年の声が聞こえてくる。
「何だい、このみすぼらしい門構え」
「見て、義経お兄様、貧乏人の癖していっちょ前に文化祭ですって…。文化の意味、お分かりなのかしら?」
そこに秋山が見慣れない少年と少女がやって来る。少女の会話からして二人は兄妹であると察しがつく。
「なんだあいつら? この学校の生徒ではないようだが……」
秋山が智樹達に尋ねようとすると…。
「出た! 私立の奴ら!」
「私立?」
よく見てみるとその兄妹の後ろにはその私立の奴らと言ってもいい複数の男女がいた。
「何なのあいつら?」
ニンフがそはらに尋ねた。
「お隣の私立空美学院の生徒よ。この辺は田舎で生徒数が少ないから毎年合同で文化祭をやってるんだけど…」
「ふぅ~ん」
その私立の生徒を率いている兄妹、兄の名は鳳凰院 キング義経。妹の名は鳳凰院 月乃である。
智樹とその私立の人間である義経の眼前で赤い閃光がぶつかり、火花が散る。
「仲悪そうですね」
「火花散ってるし」
「よくある貧民と富豪の格差意識みたいなもんか」
智樹達の様子を見て冷静に分析するイカロス、ニンフ、秋山。
「ははは、ご覧月乃。ダンボールで花なんか作ってるよ」
「火の起し方も知らないサルに文化の表現が出来るか心配だわ」
「サルでも表現は出来るし、ダンボールで作るなんてある意味良いと思うぞ。金かければいいというわけでもないからな。
それが人の知恵、文化とも言えると思うけどな」
秋山が割ってはいる。
「あら、あなたはこの学校の先生ですか?」
「臨時教員だがな」
「ははは、こんな中学でも臨時教員を雇うなんて、格が落ちたな」
「悪いが俺は好きで来てるんだ。どうこう言われる筋合いはない」
秋山は下がる。
「じゃあお前らは今年の文化祭で何をするんだよ! どうせ気取ったくどい……」
「私達は……」
「フルオケの演奏なのさ」
智樹が「フルオケ」と聞いて笑い出す。
「はははははは! 聞いたかそはら、こいつら馬鹿だぜ」
「何?」
義経が少し動揺する。
「はははは! だってよ、文化祭で風呂に入るってんだぜ。銭湯行けっての、バーカ、バーカ!」
智樹のあほな答えにそはらがチョップする。
「それは風呂桶だ!」
守形がツッコミを入れた。
「フルオケはフルオーケストラのことだよ! 智ちゃん」
「え、そうだったんですか!?」
その事を聞いたアストレアも驚いた。
「デルタ、あんたなんだと思ってたのよ?」
「てっきり美味しいものかと……」
「はぁ~」
アストレアの答えにあきれ返るニンフ。
「フルオケの意味も分からないなんて、貧乏人はほんと可哀想」
「帰ろうか、everyone。ここにいるとサルがうつりそうだ」
『ははははは!!』
私立の少年少女たちは笑いながら帰っていった。
「もう、智ちゃんのせいで余計馬鹿にされちゃったじゃない」
「バーカ、バーカ」
アストレアが智樹に対して馬鹿発言するが…。
「あんたもよ、デルタ」
ニンフがアストレアに対してちょっとしたツッコミを入れた。
「くそ、そはら! こうなったら俺達も文化祭で何かやってやるぞ!」
「何かって何するの?」
「それはええっと……秋山、何かない?」
「ない!」
秋山は即答した。
そんな時であった。少し強い風が吹いてきた。
「会長、カッチーンと来ちゃったわ」
「え?」
「生徒会長として、このまま引き下がるわけにはいかないわね。
あっちが音楽でくるならこっちも音楽にしましょう。バンド演奏なんてどうかしら?」
「ば、バンド演奏」
こうして智樹達はバンド演奏で戦うことになった。
音楽室で智樹達はバンド演奏の練習を始めた。
しかしイカロスはタンバリンを叩くも、明らかにおかしい音色ばかり出てくる。
(どうしたらタンバリンでそんな音出せるんだ?)
智樹は傍から見てそう思った。
智樹の隣には守形がほら貝を吹いていた。
(バンドじゃなくて民謡だな)
秋山はそう思った。
智樹が周りを見てみるが、そはらはドラムを担当するもスティックを落とすどじをしたり、美香子はベースだがそこまでうまいわけでもない。
アストレアはトライアングルで鳴らすというかなり幼稚であった。
(無理。こんなんでバンド演奏なんて出来ない)
智樹は諦めムードであった。ちなみに智樹はギターである。
(けど、やるしかないか)
智樹も自身の練習に励む。
そんな智樹の手を見るイカロス。
(マスターの手、どうしたら、マスターと手をつないでもらえるのかな?
そうだ、いっぱい頑張ってマスターに褒めてもらえたらきっと……)
そう考えていると綺麗な音色が聞こえてくる。
(え?)
イカロスがその音色の聞こえてくる方向を見る。その音色はニンフがキーボードを操作して出していた音であった。
「すげえよニンフ」
「え」
「すごいニンフさん」
「ニンフ先輩、こんなに上手だったなんて…」
「あなたにそんな特技があったなんてね…」
「私、機械系とか得意だから…」
「流石だな」
「これで曲の難しいところとかカバーしてもらえればバンドの付け焼刃感は消せるんじゃないのか?」
「よし、いいぞ。これで私立の奴らに目にものを見せてやれる」
智樹はニンフの手を握る。
「頼りにしてるぞ、ニンフ」
「べ、別にバンドなんて興味ないけど、暇つぶし程度なら付き合ってあげる」
(素直になったらって…無理な話か)
秋山は心の中で笑った。
「おう、よろしくな」
そんな智樹とニンフのやり取りを見たイカロスの顔は少し寂しそうであった。
秋山はそのイカロスの表情も見逃してなかった。
(………)
それからひとまずの練習を終え、美香子は父などに今回のことを報告。
美香子の父は自分の一家に喧嘩を売られたも同然とし、総力を挙げて美香子達の応援をする。
それに対して私立の方もPTAが総力を挙げて応援。それは空美町の一般人達の心にも火をつけ、対立は目に見えるものとなった。
「なんかすごいことになってるよ智ちゃん」
「やばいマジで練習しないと……」
智樹も真剣に練習をする。
しかしイカロスは何度やってもタンバリンでおかしな音しか出せない。
「もうすぐ本番なんだから、もっと練習しなさい!」
「すみません、マスター」
「まあそういうなって」
「あんたも練習しろよ」
「俺練習しなくても大丈夫だ」
「え?」
すると秋山はバイオリンを召還する。
「みてな」
秋山はバイオリンを演奏しだす。そのバイオリンから出る音色はとてもすばらしいものであった。
「す、すげえ…」
「まあ闇の魂のお陰なんだけどな。適当にお前達に合わせることも可能だ。言っておくがこの力は俺限定だから、分けてくれとかは無理だからな」
「ちぇ…まあ練習しよ」
智樹達も練習に励む。イカロスはしょんぼりとした顔をしていると……。
「イカロースさん」
そはらが声をかけてきた。
「そはらさん」
「どうしたの? 元気ないね」
「私、ちっともマスターのお役に立てなくて…」
「そんなこと気にしなくて大丈夫だよ。私だってドラム超初心者だし……」
「…ですが……」
「役に立とうと思えば思うほど役に立たない時だってあるんだぞ」
秋山もイカロスを励まそうとすると…。
「すげえ、完璧だなニンフ」
智樹がニンフを褒める声が聞こえてきた。
「べ、別にこのくらい…」
「よーし、もういっちょいってみよう」
そんな様子を見てそはらはイカロスにある提案をする。
「そうだイカロスさん、一度他のパートをやってみたら?」
「え?」
「もしかしたらぴたっと来るのがあるかもしれないよ」
「……はい」
そしてイカロスは他のパートをしてみることにした。
「♪~♪~」
最近智樹達の帰りが遅いのでわざわざ学校にまで来て迎えに来ているカオス。
「お兄ちゃ~ん」
カオスが音楽室の扉を開ける。すると呆然としていた一同がいた。
「? どうしたの?」
「す、すげえ……」
「?」
カオスは状況が理解できてなかった。
それから一同は練習を再開。
そんなこんなで文化祭の日が訪れたのであった。
智樹はステージまで時間があるとして楽しみまくろうとし、メイド喫茶に行ってみたらイカロス、ニンフ、アストレア、そはらまでおり、スケベなことをしようとしたためにそはらチョップをくらった。
それからしばらくしてステージの時間が迫って来て会場に行ってみると生徒だけでなく一般人も一緒になってそれぞれの陣営に対してのエールを送っていた。
「それでは合同文化祭メインステージ音楽対決を開催します」
放送を聴いて客は興奮する。
ブザーが鳴り、幕が開かれる。
「私立空美学院有志によるフルオーケストラの演奏です」
私立の生徒達は音楽を奏でる。その音楽とは「ドボルザーク」であった。
その音楽を聴いた秋山はこう思った。
(ああ、すんげえむかつく奴思い出してきた)
秋山はこの世界に来る前にとある世界でロボットに乗って戦ったことがあり、多数あった敵勢力の一つでボスの一人が乗っていた機体の名前が似ており、そのボスはとても外道なため秋山の怒りの炎を注いだのだ。
とは言ってもそのボスを倒したのは秋山でないのはまた別の話。
私立の演奏が終わると私立サイドは興奮し、公立サイドの興奮は醒めた状態になっていた。
「すごかったな、私立の演奏」
空美中学の男子生徒の一人が自信なさげにつぶやく。
「あーあ、また私立の奴らに馬鹿にされるんだろうな」
「ううん、大丈夫。うちだって今年は桜井君がいるもの」
「桜井君なら何とかしてくれるよ」
いつもは女子の目の仇にされている智樹が珍しく女子に応援されていた。
「続きまして新大陸発見部+αによるバンド演奏を行います」
アナウンスとともに幕が開き、それと同時に桜井コールが飛び交う。
「桜井! 桜井!」
「皆ありがとう、俺を呼ぶ声聞こえてるぜ! 俺の生き様、たっぷりと見せてやるぜ!」
まだ暗い中で智樹は上着を脱ぎだす。
それと同時にライトアップがされた。
「曲はチクチク、ビーチック!」
智樹の服は乳首が開いていた。
智樹は歌いだす。
そはらは演奏せずに振るえ、美香子もドン引きであった。
しかも客もドン引きであり、まともに相手に相手をしていたのが守形、秋山、イカロス、ニンフ、アストレア、そして途中で加わったカオスであった。
ちなみにカオスは手にカスタネットを持っており、それを鳴らしていた。
ドン引きの中、そはらが溜まりに溜まってチョップを智樹の後頭部に当て、智樹は埋まる。
「智ちゃん、打ち合わせしてた曲と違うよね」
「すみません、どうしてもやりたくて…」
「俺は構わんけどな」
私立のほうからは笑い声が飛び交ってきた。
「いやぁ~お疲れ様。随分と楽しませてもらったよ」
「貧乏人に相応しいコミックバンドだったわね」
「僕達の圧勝のようだね。これに懲りたら貧乏人は貧乏人らしく…」
「悪いけど!」
智樹がマイクでその声を遮る。
「何勘違いしてやがる?」
秋山が右手を顔に当てて顔を隠すようにするが、その顔は珍しく険しかった。
「今までのは単なる余興だよ」
智樹は破れている服を脱いで着替える。
「何?」
「何なのあの余裕は?」
「さてと……」
秋山がいつも来ている黒上着を瞬時に黒マントに替えた。
「へ」
智樹と顔を合わせ、智樹は笑う。
智樹は他の皆とも顔を合わせ全員が笑う。
守形はいつの間にか楽器変更しており、ベースになっていた。
ちなみ美香子はギターになっている。
「本番はこれからさ」
智樹がマイクを外し、イカロスにマイクを渡す。
「やろ、イカロスお姉様」
「イカロス先輩、あいつら見返しちゃいましょ!」
カオスやアストレアからも激励をもらう。
イカロスは智樹を見て、智樹も頷く。
智樹は後ろに下がり、ギターを持つ。そしてイカロスは一番前に出る。
「曲は……fallen down」
そして歌と演奏が始まった。
ギターやドラム、ベースにキーボードはともかく本来合わないはずのトライアングルとカスタネット、そしてバイオリンも絶妙な音色を出していた。
秋山は自分の技術を与えることは出来ないが、音色をよくすることは出来るので、アストレアのトライアングルとカオスのカスタネットをいじっていたのだ。
しかしそれはあくまで補助、一番の目立つのはイカロスの歌声である。
イカロスの歌声に全ての観客は魅了された。
それは私立側の人間もである。
『イーカロス! イーカロス!』
歌が終わると全員がイカロスコールをする。
智樹とそはらは嬉しさのあまり抱きつく。
イカロスは呆然と演奏をしてくれた仲間達を見る。
皆が微笑んでくれていた。
『かんぱーーーーい!!』
新大陸発見部の部室で全員が集まって打ち上げパーティーをした。
「見ました? 私立の奴らのあの顔」
智樹は今でも思い出せる。イカロスの歌声を聴いた私立の生徒達は皆感動のあまり呆然とし、言葉も出ない顔をしていたのだ。
「ええ、会長スッキリよ~」
「イカロスさんのお陰だね」
「いえ、そんな……皆さんの演奏があったから歌えたんです」
イカロスが支えてくれた皆を見て言う。
智樹と美香子のギター、守形のベース、ニンフのキーボード、そはらのドラム、アストレアのトライアングル、カオスのカスタネット、秋山のバイオリン。
アストレア、カオス、秋山の楽器は不調和音と思われつつも絶妙なハーモニーを引き出されており、イカロスの歌をより際立たせたのだ。
「そうだよな。先輩も会長も、ニンフもアストレアもカオスもそはらも皆頑張ったよ。本当ありがとう。
まあ、何より俺の余興があったからこそ引き立ったというか…」
「うん♪」
「それはない!」
カオスは肯定するのにそはらは否定し、チョップの構えを取る。
「そうでもないんじゃね?」
「え?」
秋山が意見する。
「変な言い方だが、『絶望の後の希望は絶品』。智樹の歌で客のテンション下げてイカロスの歌でテンションアップ。……上等だな」
「何かそれ、悪者の台詞みたいですね」
「俺はともかく俺の中にある闇の魂は元々悪者だ」
「…ところで智樹、後夜祭には行かないのか?」
守形が智樹に聞いて来た。
「後夜祭?」
「こう野菜?」
アストレアが明らかに何かの野菜かと勘違いする。
「ああ。カップルで手をつないでないと会場に入れない決まりなんだ。俺には関係なし」
智樹がしぶしぶな顔をする。
(後夜祭…トモキと…手をつないで……私行きたい!)
ニンフは決断する。
「ねぇ、トモ…」
「智ちゃん、私と……」
「はいはーい! 私も……」
ニンフ、そはら、アストレアが何かを言い出そうとすると……。
「あ、あの……」
そこにイカロスが割って入ってきた。
イカロスの乱入で周りが静まり返る。
ニンフとそはらとアストレアは一斉にイカロスを見る。
「あらあら桜井君モテモテね」
「何すか?」
美香子は皮肉りながら言うのに肝心の智樹はまったく気付いていない。
(ダメだこいつ…。こういうのにはよくあるけどさ……)
秋山は色んな漫画などを読んだり、色んな世界を巡っているので智樹のように鈍感な男を何度も見てきている。今更感はあっても恋に関しての鈍感な者を見るとやはり呆れてしまう。
ニンフとそはらとアストレアはアイコンタクトをして考えを改めて固めた。
「ねえ智ちゃん…」
「アルファーを連れてってあげたら?」
「何で?」
「だって今回一番頑張ったのはアルファーでしょ?」
「そうそう、ご褒美に一緒に行ってきたらどう? ね、イカロスさん」
「そうですよ。本当なら私がご褒美欲しいくらいですけど、今回だけはイカロス先輩に譲ります」
「イカロスお姉様、お兄ちゃんからご褒美もらえるの?」
「そういう話ってことだな」
皆に言われて智樹は静かに飲み物を口に含む。
そして飲んですぐに答えを出した。
「行こうぜ」
智樹は優しくイカロスに手を差し出す。
「はい……」
イカロスは智樹と手をつなぐ。
「よし、つないだな。じゃあ行くぞ…っていいっ!?」
イカロスの目から涙が流れていた。
「ちょ、お前何泣いてるんだよ?」
「あらあら、桜井君鬼畜ね~」
「いやいやいや!!」
智樹は何とか泣くイカロスをなだめて会場へと向かった。
そして後夜祭会場にいる智樹とイカロスを見てニンフは一人つぶやいた。
「これでいいのよ……。トモキはアルファーのマスター。これでいいの…。
それに私はエンジェロイド…、人間よりよっぽど高級に造られてるんだからヘーキよ……ヘーキなんだから……」
寂しそうな顔をしているニンフを遠くから見る秋山。
(とてもそういう風には見えないけどな……)
秋山も静かにその場を去っていった。
おまけ
作者「どうだったかな?」
智樹「原作の漫画とアニメの台詞や場面が混じってたな」
作者「そりゃあ両方見ながら書いてたもん」
智樹「ところでほとんどまんまで大丈夫なのか?」
作者「さあな。その時はその時だ。
まあ何はともあれ原作があったからすごく書きやすかった。
それでは!」
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今回の話は原作やアニメであった話を本来いなかったキャラを交えてのものとなっています。
またこの小説には作者の分身とも言えるオリジナルキャラクター(秋山総司郎)も出てきます。