―稟Side―
「まったく、風ときたら・・・・」
先ほどの風の一言には肝が冷えました。
何も華琳様の前であのような事を言わなくても良いではありませんか。
どうせ風のことです、適当に言ったのでしょうけど・・・・・・。
あながち間違いではありませんね。
「・・・・・・はぁ。私としたことが」
北郷一刀。
私はあなたに会ってから何処かおかしくなったのかもしれません。
あなたに会うまでは華琳様に仕え自分の策や知略が生かせればそれだけで良かったのです。
それなのに、華琳様に仕えるようになり、そしてあなたに出会ってからは何かが狂い始めたように思えました。
華琳様との閨に関しての相談をまさか男である貴殿に相談することになってからはそれが加速した気がします。
華琳様と、華琳様に、それだけで良かった私の中にいつの間にか貴殿は住み着いていました。
「・・・・はぁ、私は一体どうすれば」
華琳様は重症だとおしゃられていましたね。
確かにそうなのかも知れません。
以前の私であれば華琳様の口から閨という言葉を聴いただけでそれはもう・・・・・・。
「・・・・・・・」
やはり私は重症のようですね。
いくら妄想しても鼻がむずむずすることもありませんし・・・・・・。
一刀殿、貴殿の所為ですよ。
私は華琳様の御傍に仕え知を奮い、そして寵愛を受けることができればそれで満足だったはずなんですから。
でも今は貴殿がいないとダメなようです。
一刀殿、今どちらにいらっしゃるのですか?
私は雲一つない真っ青な空を見上げてみる。
「今、貴殿はそこにいらっしゃるのですか?」
返事なんて返ってくるはずありませんね・・・・・。
私としたことが本当に重症です。
どうすれば貴殿は帰ってくるのですか?
私の智謀と知略をもってしても貴殿のいる天には届かないのですか?
沸々と涙がこみ上げてきた。
「この私が、たかが一人の男のために涙を流すとは考えもしませんでした・・・・・」
あの小川で私は貴殿と一つになりました。
貴殿の腕に抱かれた感触は今でも忘れていません。
私を抱いたただ一人の男なのです。
その腕はもう私を抱いてはくれないのですか?
戻ってこれるのなら直ぐにでも戻ってきてください。
そしてその腕でもう一度抱いて・・・・・抱いて・・・・・・・
・・・・・それからその腕で私の大事な・・・・・・
ブファ・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
「やれやれ、またか、しょうがねーなこの嬢ちゃんは」
「そう言わないであげてください宝譿、稟ちゃんは寂しくて仕方ないのですよ。ほーらトントンしますよー、トントーン」
―季衣Side―
「ねー流琉、ご飯まだー?」
流琉は今日も僕のご飯を作ってくれてる。
「もー季衣ったら、もう少しで出きるから待ってて」
最近の流琉の料理は何時にも増して美味しくなってきてる。
暇を見つけては兄ちゃんの教えてくれた天の国の料理の練習をしてる。
その味見は僕がいつもしてるんだ。
流琉の作る天の国の料理はどんどん美味しくなって来てるけど
ボクはそれがちょっと嫌かな。
「ねぇ、流琉、たまには青椒肉絲が食べたいなー」
「も~、わがまま言わないの!今日は兄様が教えてくれた『はんばーぐ』なんだから。
いつもよりも手間をかけたから美味しくなってるはずだよ」
ねぇ流琉、美味しくなってるはずなのにどうして辛い顔するの?
そんなに辛いなら他の料理を作ればいいじゃない。
ボクはそんな流琉を見てるの辛いよ。
そして兄ちゃんの教えてくれた料理を見ると兄ちゃんを思い出すから辛いよ。
ボク達と一緒によく三人でご飯食べたよね?
その時は兄ちゃんがいなくなるなんて考えたこともなかった。
兄ちゃんが流琉に天の国の料理を教えて、流琉はそれを一生懸命作って
そしてそれを皆で食べてるときのこと今でもはっきりと思い出せるよ。
その時は皆笑ってた。
美味しい美味しいって、流琉はすごいねって。
「季衣、お待たせ。盛り付けるからお皿並べて」
「うん、わかった」
ボクが並べたお皿に綺麗に盛り付けられていく『はんばーぐ』
「よし、それじゃ季衣も座って」
「・・・・・うん」
「それじゃ」
「「いただきます」」
そう言ってボク達は『はんばーぐ』を食べ始める。
うん、美味しい。
流石流琉の作った料理だと思う。
「・・・・・あれ?でも、なんかしょっぱい気がする」
「そんなこと、・・・・・・季衣」
ねぇ、兄ちゃん。
何でいなくなっちゃったの?
流琉はこんなに『はんばーぐ』作れるようになってるよ?
早く帰ってきてまた三人で一緒に食べよーよ。
また美味しい美味しいって言いながら笑おうよ。
せっかくこんなに美味しい『はんばーぐ』なのに冷めちゃうよ・・・・・。
だから早く、兄ちゃん早く帰ってきてよ。
早くしないとボクが全部食べちゃうから!!
んーん、やっぱり兄ちゃんと一緒に食べたいや。
「・・・・・兄ちゃん」
早く帰ってきてね。
そしてまた三人でご飯食べよ?
待ってるよ兄ちゃん。
―流琉Side―
「よいっしょ、しっかりと真ん中を窪ませて」
私は今兄様に教えてもらった『はんばーぐ』を作っています。
兄様に教えてもらっていっぱい練習しました。
(兄様天の国の料理食べると本当にうれしそうだったなぁ)
だから私はがんばるんです。
兄様にもっと美味しいって言ってもらうために。
でも、最近あることに気づいたんです。
ねぇ、兄様?
天の国の料理はいっぱいあるんですよね?
私、まだちょっとしか作れないんです。
もっといっぱい教えてもらうつもりだったんですよ?
戦も終わって平和な世がきたらいっぱいいっぱい教えてもらいたかったんですよ?
でも、兄様は急にいなくなっちゃいました。
「ねぇ、流琉、たまには青椒肉絲が食べたいなー」
少しむっときました。
季衣が兄様との思い出の味よりも青椒肉絲が食べたいなんて・・・。
「も~、わがまま言わないの!今日は兄様が教えてくれた『はんばーぐ』なんだから。
いつもよりも手間をかけたから美味しくなってるはずだよ」
そう、美味しくなってるんです。
兄様に食べてもらうために練習したんです。
兄様が何時帰ってきてもいいように。
兄様に美味しいって言ってもらえるように。
私の料理はいつも喜んで食べてくれた兄様の笑顔が忘れられません。
色々と考えている間に『はんばーぐ』は焼きあがりました。
完璧です。
これでいつ兄様が帰ってきても問題ありません。
季衣に食器を並べてもらって盛り付け。
そして、
「「いただきます」」
うん、前よりも上達したと思います。
兄様、私はまだまだ天の料理が知りたいです。
「・・・・・あれ?でも、なんかしょっぱい気がする」
「そんなこと、・・・・・・季衣」
季衣は泣いていました。
私の作った『はんばーぐ』せいですよね。
兄様、私の料理の所為で季衣を泣かせちゃいました。
季衣、ごめんなさい。
そうだよね、季衣も兄様との思い出の味だもんね。
兄様、天の国の料理で季衣を泣かせてごめんなさい。
でも、天の国の料理は兄様との大切な繋がりだったんです。
天の料理を作ってそれを食べて喜んでくれたの兄様の笑顔が私大好きなんです。
季衣と兄様と私の三人で食事する時間は大切な宝物だったんです。
天の国の料理を作っていれば兄様との繋がりが切れる事はないんじゃないかって思ってたんです。
でも、その所為で季衣を泣かせてしまいました。
兄様、私の『はんばーぐ』もなんだかしょっぱくなってきました。
次に作るときはちゃんと美味しい『はんばーぐ』を作ります。
それに、兄さまに会えないのが悲しくて我慢できなくなっちゃいそうです。
だから。
だからね。
兄様、早く帰ってきてください。
そしてまた三人で『はんばーぐ』を食べましょう。
季衣と二人で待ってますから。
あとがきっぽいもの
7度目まして獅子丸です。
あれ?おかしいな?どうしてこうなった?
残された者 後編・・・・・・ではなく中篇です。
中途半端な人数になってしまいました。
本当に申し訳なく思いますorz
いけると思っていた三羽烏、意外と強敵です。
役満姉妹にいたっては手も足も出ません。
申し訳ないですが役満姉妹ファン方々、三人いっぺんで書かせていただくことになりそうです。
そして残るは華琳、桂花どちらも癖が強い。
原作の性格を何処まで崩すかそれとも原作に忠実に行くべきか・・・・・・。
どちらにしろ頑張って残りの彼女達を書きたいと思います。
さて、毎度の一言
生温い目で読んでいただければ幸いです。
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残された者中編です。
やっぱり心情を本人に語らせるというのは難しいですね。
果たしてうまく書けたかどうか自身がありません。
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