No.203347

真・恋姫無双 萌将伝 ~外伝~ 麗羽編

狭乃 狼さん

どもども。

例のお酒シリーズ第三弾です。

北朝伝の執筆に詰まったので、息抜きにこれを、と。

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2011-02-23 20:07:51 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:18646   閲覧ユーザー数:14691

 

 それは、とあるうららかな日のことだった。

 

 この俺、北郷一刀はただいま執務室にて、月と詠に補佐をしてもらい(監視されとも言う)つつ、政務に励んでおりました。

 

 「・・・・・・なあー、月~、詠~。少しぐらい休け」

 

 「お仕事終わってからですよ?」

 

 「これが全部片付くまで、お茶は無し!・・・ほら!手が止まってる!休みたかったら、とっとと働く!」

 

 「・・・・・はい」

 

 しくしく。

 

 おれ、ここの主のはずだよなー?なのにこの扱いって・・・どうなんだろう?

 

 と、泣く泣く仕事に戻ろうとしたときだった。

 

 彼女が、血相変えて飛び込んできたのは。

 

 バタンンッッッッ!!

 

 「!?な、何だ?!」

 

 「桃香さま?どうかされたんですか?」

 

 「ご、ごごご、ごご、ご主人さま~!!大変!大変!大変なの~~~~~~っっっっ!!」

 

 「うを!?」

 

 がしいっ、と。振り向いた俺の胸に飛び込んでくる桃香。・・・うん、おっきなのが当たって、とっても気持ちいいです。

 

 「・・・どうしたんだよ、桃香?大変って、また、五胡が攻めてきたのか?」

 

 「違うの!そんなかわいいものじゃないの~!!あのね、あのね!!」

 

 その次の桃香の台詞。

 

 それは、まさしく天変地異の訪れでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「麗羽さんが、”お仕事”してるのおおおおおっっっっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・えと。

 

 いま、この方はなんとのまたいました?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麗羽が。

 

 ”あの”麗羽が、”仕事”を、している?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ぅええええええええええええええええええええええっっっっっっっっ?!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「斗詩さん?こちらの書類はこれでよろしかったの?」

 

 「・・・は、はい。・・・え、えと、問題ないです・・・」

 

 「なら今度は税金の件ですわね。・・・ふむ、特に問題もないようですわね。来期もきちんと、予算を組むことが出来そうですわ」

 

 「そ、そうですね・・・・・・・」

 

 たら~っと。

 

 額に変な汗をかきつつ、麗羽に答える斗詩。

 

 正直言って、いま、自分の目で見ている光景が信じられません。

 

 普段、全く、何の役にも立っていない、蜀のお荷物こと、あの麗羽が。

 

 机に座って、きちんと事務仕事をしているんですから。

 

 それも、その仕事内容は見事としか言いようのないもの。

 

 ・・・これ、ほんとに、麗羽?

 

 「あら?ご主人様じゃありませんの。一寸斗詩さん?!ご主人さまがお越しだというのに、お茶の一つも出さずになにぼうっと突っ立っていらっしゃるの!?早くお茶の支度をなさい!胸がでかい以外、何の取り柄も無い知力38の貴女は、お茶汲み以外は大して使えないんですから!」

 

 「あうう・・・・・麗羽さま、ひどいです・・・くすん、くすん」

 

 「泣けばいいってものでもないですわ!早くなさい、このおかっぱの胸でか!!」

 

 ・・・・・・・え~っと。

 

 「あら、ご主人様。申し訳ありません。こんなはしたない姿をお見せしてしまって。・・・ちょっと斗詩さん!?貴女のせいですわよ!!貴女が愚図でのろまだから、ご主人様にこのようなお姿をお見せしてしまったではありませんの!!」

 

 「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!謝りますからせっかんは許してください~!!」

 

 ・・・・・・・・この、俺に対する態度と、斗詩に対する、あの態度の違い。

 

 ・・・・・まさか。

 

 「・・・麗羽。ちょっと、ごめん」

 

 す、と。麗羽のそばに近づいて、彼女からするはずの”あの香り”を確かめる。

 

 「や、やですわ、ご主人様。こんな昼間から、衆人環視の前で、そんなこと」

 

 「(くんくん)・・・う、酒臭い。・・・・・・・・・・・・星。その辺に居るんだろ?・・・・・・メンマ一月禁止にされたくなかったら、すぐに出てこい」

 

 「主!それはいくらなんでもあまりに無体と言うものですぞ!?」

 

 すた、と。

 

 どこからとも無く現れる星。その手には、予想どおりの代物が、しっかりと握られていた。

 

 

 

 「・・・・星、”それ”をどこで手に入れた?」

 

 「これでございますか?さて?どこで手に入れたかと申されても」

 

 「・・・メンマ、半年禁止にされたい?」

 

 「雪蓮殿からです(あっさり)」

 

 「やっぱしか。・・・で、それを麗羽に飲ませたわけは?」

 

 「面白そうだったからですが」

 

 「・・・・・・・・・・メンマ一年禁止」

 

 「そんな殺生な~~~~~!!主は私に死ねともうされますか~~~~!?」

 

 ひょい、と。半泣きで抗議する星の手から、ことの原因であろうそれを、無造作にひったくる俺。

 

 ”それ”って何かって?

 

 ・・・・・・・・・酒瓶ですよ。ただし、その銘柄は、いつぞやかの”あれ”。

 

 『性格反転酒』

 

 「・・・・・・こんなもの、まだ残ってたんだな」

 

 「ご主人様?それ、なに?」

 

 「簡単に言えば、飲んだ人間の性格を、真反対に変えちゃうものだよ。・・・これの効果、今までは人に対する想いへの効果しか見てなかったけど、本当に、性格そのものが変わっちゃうんだな」

 

 仕事嫌いの麗羽が、真面目な仕事人間になるほどに。

 

 「へ~。変わったお酒があるものね。・・・で、これ、元に戻るの?」

 

 「今までのを見てる感じだと、飲んだ量に比例して、その持続時間も変わってくるみたいだけど。・・・星?彼女、どれだけ飲んだんだ?」

 

 「・・・・・・・・・・・その瓶一本」

 

 「うわ」

 

 

 

 これ一瓶全部飲んだとなると、戻るまで相当かかるんじゃないか?

 

 「・・・・・・あの、そういえば、猪々子さんの姿が見えないんですけど」

 

 「そういえば。・・・斗詩?彼女は?」

 

 「・・・文ちゃんですか?さあ?」

  

 「失礼します!訓練終了の報告に参りました!!」

 

 「あ、うん。ご苦労様、猪々・・・・・・しぇえええええええっっっっ?!」

 

 びしっ、と。

 

 しっかりと敬礼をし、俺に訓練をしてきたと報告をする猪々子。

 

 きらきらと。

 

 その目はまるで、子供のように輝いている。

 

 「・・・・・・えと。訓練・・・して、来た?ほんとに?競馬じゃなくて?」

 

 「何をおっしゃいますか、一刀さま!競馬などという賭け事など、この文醜、この世でもっとも嫌いなものです!人生はこれ、堅実こそが一番!賭け事などもっての他です!」

 

 ・・・・・・うそ。

 

 あの猪々子が。

 

 堅実が一番?

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・てことは、まさか。

 

 「・・・・・・・・・星。まさか、彼女も?」

 

 「一緒に飲んでおりましたが」

 

 「・・・・・・・・・斗詩は?」

 

 「私は飲んでないです。・・・仕事(麗羽たちの始末書)が溜まっていて、それどころでは無かったもので」

 

 

 

 

 

 「へう。・・・でもご主人様?逆に考えれば、これはこれでいいんじゃないでしょうか?」

 

 「え?」

 

 「そういえばそうよね。無駄飯ぐらいがお酒一つで真面目に仕事するようになるんなら、かえって好都合かも」

 

 『・・・・・なるほど』

 

 ぽん、と。手をたたいて納得する俺と桃香。

 

 「なら、早速華琳に頼んで、この酒を売ってる店を教えてもらうとするか」

 

 と、思わぬ棚ボタ効果に嬉々とした俺たちだったんだけど。

 

 

 

 「・・・・もう、無理?」

 

 「ええ。あれはたまたま、どっかの行商人とか言うのから買ったものだし、どこで手に入るのかわからないわ」

 

 「そっか~。・・・でも仕方ないよね。物に頼ってたら、本当の解決にはならないもん」

 

 「あら?桃香にしてはいいこというじゃない?」

 

 「えへへ、そっかなー?」

 

 「・・・桃香、そこ、照れるところじゃないから」

 

 

 

 で、その翌日。

 

 「お~ほっほっほっほっほ!さあ~、斗詩さん!今日もお買い物に行きますわよ!お金?そんなもの、一刀さんにつけとけばよろしいですわよ!」

 

 「斗詩~!これから競・・・じゃなくて、馬の品定めに行くから、こづかいくれよ~!」

 

 

 

 「・・・・・・・・なあ、朱里。大陸中から、あの酒を売ってた商人、探し出せないかな?」

 

 「はわわ。いくらなんでもそれは」

 

 「無理だよねー。・・・・・・・・・・・・・・はあ~」

 

 

 で。

 

 

 そのころ、とある町の一角。

 

 「・・・そこのお嬢さん?」

 

 「・・・・・・・・・・?」

 

 「おいしくて珍しいお酒はいかがかな?いまなら、おまけに饅頭を十個つけるよ?」

 

 「・・・・・・・・・・買う」

 

 「まいど」

 

 ぴこぴこ、と。

 

 頭の触覚(?)のような髪を、上機嫌に揺らしながら、その少女は饅頭の詰まった袋を抱え、その場を立ち去っていく。

 

 その少女の腕に、ぶらぶらとぶら下がる、一本の酒瓶。その酒の銘柄は。

 

 

 『性格反転酒』

 

 

 

 「・・・・・・・・くれぐれも、飲みすぎにはご注意を。ひひひ」

 

 

                                ~続・・・く?~ 

 

 


 
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