黄巾賊でめまぐるしい戦績を挙げた明星に兵が大陸各地から募りはじめた。少数で苦しい戦を繰り返してきただけに吉報だが、同時に居城を持たない明星に相応の負担が増えたのも事実。そこで将軍たちを集め軍議を開いた。その中には新たな将として昇格した、
「太史慈と申します。真名は昴。この力を主様に捧げます」
黒髪のポニーテールした凛々しい少女が礼儀正しく名乗り、
「……高順。……真名は椛」
右上から斜めに包帯を巻いた寡黙の少女も名乗る。新加入した仲間でこの二人がとびぬけた力を持っていた為、将軍に抜擢した。
「……それなら城を攻めればいい」
寡黙の椛が最初に案を出した。皆がそれに驚く。
「悪政を働いている王は何人かはいるが、攻め落とすとなると被害は出るのは道理じゃな」
各地に送っていた斥候の情報を書き纏めた書簡を台に置いた。
「となると、攻めるのはこいつか」
江東の地を治める袁術を示す。兵力は名家だけあってかなりだが練度、何よりもそれを指揮する将に力がない。それに袁術には鎖で縛られた眠る虎がいる。眠りから醒まさせれば十分に勝機はある。むしろこちらが有利だ。
俺たちは江東の地に移動することを軍議で決定したのと同時に一枚の檄文が届けられた。内容は董卓の討伐。文章に関しては癇に障るとこだったので覚えていない。これだと当面は居城計画は凍結になりそうだ。
「それで主はどちらに味方するのかえ?」
聖の言葉が引鉄で皆の視線が俺に送られてきた。考えるまもなく連合軍側につくのが軍事的にも政治的にも有利にたつが
「俺たちは董卓殿に借りがある」
援軍と宿泊で借りはイーブンとなったが、縁があるのはもちろん。
「俺たちは董卓殿につく!」
俺たち明星の未来の明暗が分けられた道だった。
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黄巾賊が崩壊してひと時の平和が訪れるかと思えた大陸だが、霊帝が他界したことで時代は新たな乱世に突入しようとしていた。