董卓の元で世話になっている最中に王朝から一通の檄文が届いた。王朝の時代を翻しそうな勢いに恐怖を感じ始めたらしい。だがもう遅い。黄巾賊に打ち勝った所で現況を打破することは難しく、天下を狙う諸侯たちがそれを許さない。
討伐連合に参加することを決めた明星は遠征の準備を始めていた。
「黄巾賊を滅ぼした後が試練じゃな」
遠征の準備にかかっている兵たちに指揮を執っている最中、聖が声をかけてきた。
「……天は時代をどう転ばせるのか……」
「その天に主は従順するのかえ?」
「定められた運命に何の意味がある? 天が俺を亡き者しようとするなら天さえも討ってみせよう!」
今の時代、天に未来を見据える者はいれど敵に回す者は存在しないだろう。
「それこそ我が主。共に創りましょうぞ、争いのない永遠の世界を」
明星の行く末の再確認をした聖は忠誠を誓い、そして俺と聖はさらなる契りを交わした
太平道の信者が集わせたのは張角という者らしく、それ以外の情報は一切なし。その現状でどうして居場所が割れたのか、それは膨れ上がった軍勢を統率できなかった故の失敗。おそらく張角も予想にしていなかった事態だろう。ただその士気は恐れるべきものがあるのも事実であり、舐めてかかれば返り討ちにされる可能性も十二分にある。
黄巾賊は捨てられた砦に集結しており、その場所を発見した官軍は連合軍を向かわせ、陣を敷く。官・曹・孫・劉・袁×2・董・馬・陰の旗が荒地にざわめく。各軍の代表が陣幕に集う。総大将何進を中心に軍議は進行していく。表向きは。しかし代表の腹中は未来を見据えての駆け引きが考え、ただこの戦いで名声、稀有の才能を持つ者を探し、近い未来に敵となる者を見出す。
仲間同士腹の探り合いをする中、聖から斥候の情報が届けられた。
「どうだった?」
小さなことでも張角の情報がほしかった。
「娘三人が歌い、賊が喜んでいたようじゃ」
「……はい?」
理解に苦しむ斥候の答えに疑問符が浮かび上がる。
「どういう意味か訊かれても困るぞえ。実際、斥候から聞かされて私も理解しておらぬかのう。しかし、士気が異常に高いのはその娘が原因らしいのう」
自慢でないが明星の斥候は優秀と自負している。それだけに今回の情報はありのままの黄巾賊内でのことなのだろう。
「これ以上、軍議も無駄のようですから先に退散させてもらいます」
陣幕を後にした。怒鳴り声に近い呼びとめの声が聞こえたが無視した。
明星の陣営に戻り、主力メンバーを集合させる。以前より兵が増加したとはいえ、僅か千の小部隊。真正面から渡り合って負ける気はしないが、被害は甚大であるのは火を見るより明らか。何より我らは陰。陰は陰なりの戦いがあり、また義勇軍に明星と名付けたことに矛盾を生じさせるのは捨てきれない人間の心がそうさせている。
「……何か気に障る点でも?」
軍議で挙げられた数々の情報に疑問を感じた俺に気づいた聖は問う。
「その三人の一人が張角として、太平道を民に説いたとも思えない」
彼女らは好きな時に歌う自由気ままな生活は民というよりも自分たちのための行動としか思えない。
「もう一人、張角が存在すると?」
「おそらく三人の一人が張角であることは間違いないだろう。ただ、その名を使って民を操っている者がいるはずだ」
推測の域でしかないが、どうしてもそれが真実としか思えなかったのだ。それについて聖たちも思うところがあるらしく、納得する形で軍議は終えた。
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王朝から黄巾賊討伐連合の檄文が届いた。