「はぁ、はぁ、はぁ」
その場所にようやくたどり着いた刀は、息を切らせながら、周囲を確認する。
だが、すでに夜の10時前……この冬の寒さでは誰もいない。
手に綺麗にラッピングされた小さな箱を持っていた。
三国志の時代から戻って早6年。
一刀は、やっと覚悟を決めたのだ。
いや、最初から覚悟はあった。
だが、それを示せるだけの力がなかった。
アルバイトを掛け持ちし、ようやくそれが出来る……はずだった。
最期のアルバイトで残業を頼まれ、どうしても抜けられなかった。
失敗したかと思ってため息と共に肩を落とす。
だが、一縷の望みを携帯で伝えようと携帯を開く。
「遅いわよ、馬鹿」
電柱の影から、1人の少女が出てきた。
一刀が振りえると、そこには最愛の女性、華琳がいた。
だが、ミニのスカートで、コートも羽織っていない。
それを見て一刀は、後ろにまわって、自分のコートを広げ、抱きつくように華琳を中に入れた。
「華琳、ごめん」
「別に良いわよ。
どうせ、また長引いたんでしょ」
華琳は優しく、そう笑った。
何故、彼女がここにいるのか。
その理由は分らない。
ただ、一年前の今日、自分のベッドにいつの間にか現れた。
どうやってとも、何時の間にとも思わず、夢でも放さないように抱きしめ続けた。
いつもより遅い息子を心配して、母親が部屋をのぞき、大声で叫んだ。
「一刀!! あんた、何時の間に彼女を作ったの?」
「いや、その前に何時連れ込んだのかだろ?」
夜まで、華琳の事をある程度誤魔化しながらか説明をする。
そして、最終的には、迷子で調査する事になったのだ。
その夜、一刀は、あの三国が五胡によって滅ぼされ、華琳も死んだはずだったと聞く。
「それなのに、私は天に……一刀の寝台にいた」
それ以外は全く分らない。
ただ、分っている事と言えばただ1つ、華琳はこれからこの世界で生きなくてはならない。
一刀がまずやったのは戸籍を取る方法だ。
もちろんそんな方法を知らないので、両親に任せた。
申請は出したが、その間にこの世界……日本での常識を教える。
華琳は、その途中で三国志の存在に気づいた。
「わ、私たちが男ですって!?」
「いや、だから別の世界だから」
華琳は激昂したが、別人だと最終的に納得した。
そして、これこそが一刀の『天の知識』の元であると。
もちろん、今知っても意味はないがそれでも楽しみがあった。
その後、戸籍を手にする。
『曹華琳』……それが今の彼女の名前だ。
一刀は、真名を乗せる事に難色を示すと思っていたが、華琳はあっさりと受け入れた。
様々な要因はあるが、一刀が自分の真名にあたるのは『一刀』と言っていたため、自分もそれに倣ったのである。
その後、聖フランチェスカ学園の定時制で通う事になった。
もっとも、元々は女子高だったので定時制も女の子が多い。
場所が変わっても彼女が彼女である以上、女性を惹きつけるのは必然であった。
「……本当に手を出してないんだよな?」
「あら? 男の嫉妬は醜いわよ」
抱きついている一刀の心配を華琳は笑いながら流した。
結論から言うと、華琳も手は出していない。
その手前まではやっているのが彼女らしいと言えば彼女らしいが。
中には、一刀の事を認めないと言う者もいる。
その女性の言葉遣いが桂花そっくりであった。
他にも春蘭、秋蘭とよく似た雰囲気の生徒もいる。
普通に通う方には凪や流琉のような生徒もいるかもしれない。
ひょっとしたら、自分とは別の方法で全員がこっちに……一刀の側に来ているのではないか。
華琳は、そんな事を考え、内心苦笑を浮かべた。
どちらにしても一刀を渡す気はなかったからだ。
その為の準備をしてきたのだ。
一刀に抱きしめられながら、華琳はコートの中で小さな箱を一刀の手に乗せる。
「はい」
「これって」
今日は、2月14日……一刀もコレが何なのかわかった。
だから、更に強く抱きしめる。
「ありがとう」
「ふふ、ちゃんと味わってね」
そして、一刀は自分のコートを華琳に羽織らせて、そのまま家へと帰っていった。
その日の夜、一刀が華琳を美味しく頂いたかは、定かではない。
ただ、その次の日、華琳の肌は艶々で、一刀が若干疲れていたようである。
何とか、その日の内に滑り込めました。
和兎さんの作品を見て、『これだ』と、浮かんだ物です。
事後となりましたが、勝手にインスパイアしたのに、和兎さんから許可もいただけました。
ありがとうございます。
Q.何で定時制なの?
A.年齢の問題。
華琳の背丈だと18歳以上には見えない。
しかし、年齢は18歳以上。
そこで妥協点として定時制を考えました。
Q.戸籍って簡単に取れるの?
A.わかりません。
ただ、戸籍が取れないと物語が出来なかったので取れました。
実際には、難しいんじゃないかなと思っています。
Q.前の恋姫の奴の連載は?
A.独自ルートで連載する予定です。
では、失礼します。
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和兎さんの作品を見て、思いついた作品。
事後になってしまいましたが、和兎さんからも許可を頂きました。