No.201318

真・恋姫†無双~二人の王佐~一章第七話「宝物」

syoukiさん

どうもいつも読んでいただきありがとうございます!

今回は一刀と桂花の誕生日についての話です。


続きを表示

2011-02-13 10:39:40 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:11231   閲覧ユーザー数:8630

注意!作者は三国志に詳しくありません。主な知識は恋姫からです。

 

 

ちなみにこの作品にはオリキャラを何人か出そうと思っています。

 

 

そしてキャラの仕官時期が違ったり所属が違ったりするかもしれません。(そのあたりはまだ未定です。)

 

 

あと一刀にオリジナル設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。

 

 

それと一刀には前世の記憶がありません。

 

 

ですが一度読んでみてください!それで「おもしろい」と思ってさらに読み続けていただけたらうれしいです。

王佐の才>

 

『帝王を補佐するにふさわしい才能、又はそれを持つ者のこと言う。(辞書引用)』

 

 

 

 

 

これは、平和な世を作ろうと乱世を駆け抜けた双子の男女の物語りである。

華琳達が帰ってから数ヶ月が過ぎた済南国は来る前と変わらず平和だった。一刀達も元の生活に戻っていたが、ただ一つだけ変わった所があった。

 

 

 

早朝

 

 

「二七九六!・・・二七九七!・・・二七九八!・・・」

 

城の庭の外れにある小屋から剣を振っている声が聞こえてくる。ここは空夜が師範として琴に剣を教えている道場である。だが剣振っているのは琴ではなかった。では誰か?もちろん空夜ではない。今剣を振っているのは空夜の息子の一刀だった。彼は今まで父に誘われても剣を学ぼうとはしなかった。だが先日家族を傷つけられたことで怒り、そして己の未熟さで気が暴走して制御できず死ぬ寸前までいったことがきっかけで父に剣を習うことにしたのだ。

 

「二八三八!・・・二八三九!強くなるんだ!みんなを二度と傷つけないために、そして傷つけさせないために!!」

 

しかも一刀は父から習い始めてからほぼ毎日朝早くに起きて一人で剣を振っていた。琴や春蘭が幼少から剣を振っていたと聞いた一刀はそんな二人に追いつくため、そしてそんな二人を超えるためにはもっと剣を振る必要があると考え、朝早くから素振りをすることにしたのだった。

 

「二八九八!!・・・二八九九!!・・・二九00!!・・・あと百回!!」

 

だが一刀は毎朝三千回も剣を振っているがいつも一人ではなかった。実は一刀が剣を振っているのを陰ながら見守っている者がいるのだった。

 

「(あ~お兄様!剣を振っている姿も素敵です!!)」

 

目をハートにしながら道場の下にある柵の間から見ているのは一刀の双子の妹の桂花だった。ある日、桂花が偶然朝早くに目覚めると隣にいる筈の兄の姿がなかったので探してみると父の道場で剣を振っている兄の姿があった。声を掛けようとしたが兄は真剣な眼差し剣を振っていたので声を掛けるのを止め見守ることにした(最も剣を振る兄の姿が素敵だったのでずっと見ていたかったのもあるが・・・)

「二九九八!・・・二九九九!・・・三千!今日も終わりっと!」

 

一刀の素振りが終わるのを見計らった桂花は道場内に入った。

 

「お疲れ様ですお兄様!!はいどうぞ!手拭いとお水です」

 

桂花から手拭いと水を受け取った一刀は礼を言うと汗を拭き、水を飲んだ。

 

「んぐっ、んぐっ、ふぅ~生き返った!いつもありがとう桂花!でも朝早くて大変じゃないかい?」

 

「いえ、お兄様のお役に立てるのなら早起きなんて苦になりません!」

 

「そっか、あまり無理をするなよ?」

 

「それはこちらの台詞ですよお兄様!毎日朝早くから素振りをしてそのあとかあさまとお勉強、それが終わればとうさまと修練、食事の後だって復習と夜の素振り、お兄様こそお体に気をつけてくださいね?」

 

「ああ、無理はしないよ。でも強くなるにはもっと頑張らないと。桂花を、みんなを守るって誓ったからね」

 

「お兄様♡」

 

「じゃあそろそろ行こうか。もうすぐ朝餉の時間だからその前に汗を流すために水浴び場に寄りたいからね」

 

「ならお、お手伝いします!!」

 

「いや大丈夫だよ。ただ汗を流すだけだからさ」

 

「で、でも~!!」

 

「じゃあ手拭いをもう一つ持ってきてもらえるかい?」

 

「はい!」

 

そう言うと桂花は走って行ってしまった。

 

「さてと僕も急がないとな」

 

一刀も道場を出て水浴び場に向かった。

 

 

 

 

 

 

水浴びを終え、桂花が持ってきてくれた手拭いで体を拭いた一刀は桂花と一緒に朝餉の準備がしてある部屋へと向かっていた。

 

「あっ、お兄様あれ!」

 

桂花が指を指した方に顔を向けるとそこには数枚の葉が紅葉になっている銀杏の木があった。

 

「紅葉ってことはもう秋か、どうりで肌寒いわけだ。てことは」

 

「はい、私達の誕生日ももうすぐですね」

 

「ああ、たしか僕らが生まれたのはあの日だから・・・・・うん、だいたい十日後くらいだね」

 

「そうですね。多分それぐらいですね」

 

「なら急がないとな!今年もあれをやるんだろ?」

 

「もちろんです!毎年お兄様の楽しみにしていますよ♪」

 

「当然僕だって桂花からの楽しみだよ!」

 

「「桂花(お兄様)からの贈り物!」」

 

「あはははは」

 

「うふふふふ」

 

そう笑いあいながら朝餉のある部屋に入っていった。

朝餉を終えた一刀は庭の木陰で桂花に何を贈るか悩んでいた。

 

「う~ん、今年は何を贈ろう?去年は前から欲しがってた服を買ってあげたし、一昨年は確かお人形をあげたんだよな~」

 

以前あげたものと被らないよう、そして桂花に喜んでもらえるものを贈るために考えるがなかなか出ないでいた。

 

「どうしよう?」

 

そんな風に悩んでいると向こうから一人の侍女が歩いてきた。

 

「あら、荀鳳様おはようございます。唸っておりましたが何かお悩みですか?」

 

「あ、おはようございます!えっと・・・」

 

「徐悠(じょゆう)です荀鳳様」

 

「徐悠さん実は・・・」

 

一刀はもうすぐ自分達の誕生日のこと、そして妹に贈り物をしたいが何を贈ればいいのか悩んでいることを伝えた。すると

 

「ならご自分でお作りなってみてはどうですか?」

 

「自分で?」

 

「はい、きっと兄であられる荀鳳様の手作りならきっと荀彧様もお喜びになると思いますよ!」

 

「そうかな?」

 

「はいもちろん♪」

 

「そっか、ありがとうございます!お礼にこれからは一刀って呼んでもらえますか?」

 

「そ、そんな恐れ多いです!?私は荀家の方々に仕えるのが仕事なのです。当然のことをしただけなのに真名を預けていただけるなんて!!」

 

「いいえ、大事な妹への贈りものについて相談に乗ってくれたんですからそれくらい当然ですよ」

 

「ですが!」

 

「大丈夫、僕が良いって言ったんだから心配しないで。それに預けるっていうに断るほうが無礼にあたるよ?」

 

「そうですね、わかりました。ではこれからは一刀様とお呼びいたします。それとこれから私のことは鏡佳(きょうか)とお呼びください」

 

「うん、これからもよろしくね鏡佳さん!」

 

「は、はい!」

 

一刀が微笑むと鏡佳は顔を赤くした。実は侍女達の間で一刀は『可愛い』とか『将来が楽しみ』など言われているらしい。特に一刀に微笑んでもらえた侍女はその日一日幸せな気持ちで仕事ができるとまで言われているほどの大人気ぶりだった。そして彼女もそれに漏れずに一刀の微笑みで幸せになれる侍女だった。ちなみに桂花もこのことは知ってはいるが彼女達が侍女であることと遠巻きから見ているだけなので黙認しているのであった。

 

「相談に乗ってくれてありがとう!それじゃあ僕は行くね!!」

 

一刀はそう言って城へ入っていった。鏡佳も頭を下げていたが一刀がいなくなったので顔をあげた。その顔が満面の笑みだったのは言うまでもない

 

「あ~~荀鳳様、じゃなくて一刀様とお話しただけじゃなくて真名まで交換していただけるなんて夢見たいだわ!!ふふっ、みんな羨ましがるだろ~な!そうだ!彩佳ちゃんにも教えてあげよ♪」

 

そんな事を言っていると後ろから今彼女にとって最悪な声がした。

 

「なにが教えてあげよ♪なのですか?」

 

「じ、侍女長!?」

 

「何やっているんですか!この時間貴女の担当は確か掃き掃除だったと思いますが?」

 

「す、すみません!今すぐやります!!」

 

そう言って鏡佳は箒を取りにいった。

 

「まったく!与えられた仕事はしっかりやってほしいですね。それにしても・・・・・荀鳳様とお話どころか真名まで交換するなんて鏡佳さん羨ましいですね」

 

鏡佳を叱った侍女長だったが実は彼女も一刀に憧れる女性の一人だった。なので彼女が一刀と話をし真名まで交換したのでいつもよりきつく注意したのだった。

 

場所は変わってここは書庫。中では兄への贈り物を何にしようか考えていたがなかなか決められない桂花がいた

 

「今年のお兄様への贈り物何にしようかしら♪一昨年はお花の冠をあげたし去年はお兄様の欲しがっていた本をお送りしたのよね。そういえば今年はお兄様剣術を始められたからそれに関連があるものがいいかしら?でも・・・」

 

「おや、桂花様じゃないですか。書庫でぼ~としてどうしたのですか?」

 

すると琴が本を抱えて書庫に入ってきた。

 

「琴姉様、実は・・・・」

 

桂花は兄に何を贈ろうか悩んでいることを伝えた。

 

「なるほど、それでしたら手作りの首飾りとかどうですか?」

 

「手作りの首飾り?」

 

「はい、実は今巷では手作りの物を贈るのが流行っているんですよ」

 

「そうなの?全然知らなかったわ!?」

 

「まぁ、流行り始めたのはごく最近ですから知らないのも無理ないですよ。それよりどうですか?」

 

「そうねぇ首飾りならいつもお兄様に身に着けてもらえるから・・・・・・うん、いいかもしれないわね」

 

「それはよかったです♪」

 

「そうと決まればこうしてはいられないわ!お兄様に喜んでもらえるよう今から準備しないと!それじゃあ失礼します琴姉様。助言してくださってありがとうございました!」

 

桂花は少し早口で琴にお礼を言ってから書庫を出て行った。

 

「さてと、私も早くあれを完成させないとね♪」

 

琴も一刀と桂花に贈り物をと考えていた。今日書庫に来たのはそれについてだったが当日まで秘密にしたかったので本を隠して桂花の相談に乗ってあげていたのだった。

侍女の鏡佳から助言をもらった一刀は街へと来ていた。

 

「さてと、まずはこの店を見てみよう」

 

実は一刀は壊れたものを直したり自分や妹達の服が破けたりした時に繕ったりできるくらい手先が器用なのだ。しかし今まで一から物を作ったことがないので手作りできそうなものがどいうのかわからないためお店の商品を参考にしようと街へと来たのが目的だった。

 

「へい、いらしゃい!!おや、これはこれは若様じゃないですか!いつもは鄧艾将軍か太守様と一緒なのに今日はどうしたのですか?」

 

「うん、実は妹に手作りの贈り物をしたいんだけど、どういうのにしようか悩んでて。それでお店の商品を参考にしようかと思って」

 

「なるほどそうですか。ところで製作期間はどれくらいですか?」

 

「大体九日くらいかな」

 

そういうと店の主人は考える素振りをしてから

 

「そうですね~それくらいの期間でしたらこの辺りにあるものなら若様でも作れると思いますよ!」

 

そう言って店の一角を指差した。そこには首飾りや帽子、髪飾りなどが置いてあった。

 

「ありがとうござます!」

 

「それでは私は仕事に戻るので何かあれば言ってください」

 

「ありがとうございます」

 

店の主人が戻ってったので一刀も商品を観察することにした。

一刻後

「う~ん、やっぱり『   』かな桂花きっと似合うと思うし、よし決めた!!」

 

「若様決まりましたか?」

 

「うん、『   』にしました」

 

「そうですか、それならあの店に行くと良いですよ。あそこなら材料も良いもの使っていますし種類も豊富ですからこれと思うものが見つかりますよ」

 

「わかりました、行ってみます。色々見せていただいてありがとうございました!」

 

店の店主にお礼を言ってその場を後に教えてもらった店へ行き、その店で材料を買った帰り道に一刀は桂花に出会った。

 

「あっ!お兄様!!」

 

「よう、桂花お前も街に来てたんだな!」

 

「お兄様への贈り物のことで参考になると思って」

 

「そっか、それで収穫はあったかい?」

 

「はい、当日を楽しみにしていてくださいね♪」

 

「うん、僕も材料を買ったから楽しみにしていてね」

 

「にゃ~」

 

そんな話をしていると一匹の猫がやってきた。

 

「あれ?ここら辺では見ない顔だな、お前新入りか?」

 

「にゃん!」

 

「そっか、そっか。ほ~ら撫でてあげるなうりうり♪」

 

「にゃう~ん♪」

 

「お、お兄様!私もなでなでしてもいいですか?」

 

「ほら、桂花も触ってごらん」

 

「はい!うわ~とってもふわふわしてかわいいです」

 

すると猫は桂花の手を離れ頭の上に乗ってきた。

 

「も~だめだったら♪頭が重いじゃないのもう♪」

 

猫は桂花にじゃれついていた。それを見て一刀は何かを思いついた。

 

「そうだ!あれをこれに変更して・・・・ぶつぶつ」

 

そうして少しの間かまっていた一刀達だったがやることがあるのを思い出したので行こうとすると

 

「にゃうにゃあ~ん」

 

足に擦り寄ってきた。

 

「ごめんな、もう行かなきゃ。お前もお家に帰りな」

 

「にゃう~ん」

 

「ごめんね、また遊んであげるから」

 

後ろ髪を引かれながらも二人は猫と別れた。

 

「お兄様先ほど何かを考えていましたがどうしたのですか?」

 

「いや、ちょっとね」

 

「桂花には秘密ですか?」

 

「そうだね、それについては時がきたら教えるよ」

 

「絶対ですよ!」

 

「まぁ、教える必要ないかもしれないけどね」

 

「???」

 

一刀と桂花の誕生日当日

 

 

「「「一刀様、桂花様お誕生日おめでとうございます!」」」×?

 

「おめでとうございまちゅ!おにいちゃま、おねえちゃま!!」

 

沢山の拍手と歓声が一刀と桂花を包む。

ここは玉座の間、普段ならば謁見などでしか使われない神聖な場所だが、今は派手に装飾され机の上には沢山のご馳走が置かれており、城の中の者が集まっていた。

 

「みんなありがとう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「お誕生日おめでとう一刀、桂花」

 

「本当に時が経つのが早いな、ちょっと前まで赤ん坊だったのにもうこんなに立派になって」

 

凛花と空夜は二人の頭を撫でた。

 

「かあさま、とうさま僕達はこれからも勉強も武術も頑張ってかあさまととうさまを超えられるよう精進していきます!!」

 

「そうですかあさま!私は武術はできないけれどその分いろいろ勉強をしてお兄様を支えていきます!!」

 

「一刀、桂花」

 

凛花は二人の決意に涙を流しながら抱きしめた。それを見守る空夜に琴が、

 

「空也様、一刀様も桂花様も立派になられて、本当に将来が楽しみですね」

 

「ああ、一刀はすごく飲み込みが早いからいずれ僕を超えていくと確信しているよ」

 

実際一刀の成長は著しいものだった。空夜が教えたことをすぐに理解し次々と自分のものにしており、まるで乾いた砂に水が染み込んでいく勢いだった。

 

「そうですか、それはうかうかしていられませんね。私は誓いましたから一刀様と桂花様、それと今は蘭花様を守れるくらい強くなると」

 

「うん、君も僕を超える逸材だよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

「さて、次は二人に贈り物をあげるわよ!」

 

「それではまずは私達使用人一同から贈らせていただきます。私達からはこの部屋の飾りつけと一刀様と桂花様のお好きな料理をお出しすること、それとこちらをお聞きください」

 

そう言うと侍女長が合図を出した。その合図を受け他の侍女達が一斉に動き出す。そしてあっという間に舞台ができあがり演奏の準備が整った。

 

「それではお聞きください」

 

 

 

♪♪~♪~♪♪~♪♪♪~~

 

出だしは侍女長による四胡の独奏、

 

♪♪~♪~~♪♪~♪~~♪♪♪~~♪♪~~♪

 

それに古筝、揚琴、琵琶、月琴、笛などが加わっていく、

 

♪♪~♪~~♪♪♪~♪~♪♪♪~♪~♪♪♪~~~

 

時に優しく、時に弾むように奏で

 

♪♪~♪~~♪♪♪~~♪♪~♪~~♪♪♪~~♪♪♪~~♪

 

侍女達の心のこもった演奏が玉座の間に響き渡る。

 

~~♪♪♪♪~~♪♪~♪♪~~♪♪♪~~♪~……。

 

最後は侍女長の独奏に戻り、静かに奏で終えた。

 

 

 

静寂の後、一刀を始め桂花、蘭花、凛花、空夜、琴そして他の使用人達が大きな拍手をした。

 

「ふぅ、これで終わりです。御清聴ありがとうございました」

 

侍女長がお辞儀をすると他の侍女達もお辞儀をした。

 

「やるわね~思わず聴き入ったわ!一刀と桂花に聴かせたいって気持ちが感じられたわ!」

 

「ありがとうございます荀緄様」

 

「すごく綺麗な音色だったよ!!僕達の為にこんな素晴らしい演奏してくれてありがとうございます」

 

「とても素晴らしかったです!」

 

一刀と桂花は椅子から立ち上がり頭を下げた。

 

「そ、そんな!?お顔をお上げください荀鳳様、荀彧様!!私達一同はお二方が喜んでいただければそれでいいのです!」

 

そう言われたので頭をあげた二人はもう一度お礼を言った。

 

「「ありがとうございます」」

 

「その御言葉が何よりの褒美です」

 

そう言う侍女長の目には涙が浮かんでいた。それは今まで仕える主達の為に一生懸命した練習が報われた為のうれし涙だった。

「それでは次は私がいかせていただきます!」

 

琴は元気にそう言うと手に持っていた大きな袋から二つの色違いの鞄を取り出した。形は肩掛け仕様で小物が入れられる小袋がいくつかついていた。

 

「こちらの白い鞄は一刀様に、薄い緑色の鞄は桂花様にです!」

 

一刀と桂花はもらった鞄を掛けてみた。紐の長さは調整できるようなっておりいつまでも使えるようになっていた。

 

「これ琴姉ちゃんが作ったの?」

 

「はい、一つ一つ丁寧に作りました。どうですか?」

 

「うん!すごく気に入ったよ!!なっ桂花」

 

桂花も笑顔で、

 

「とても気に入りました。大切にします琴姉様!!」

 

「それはよかったです♪」

 

「はい!は~い!次は蘭にゃの~!!」

 

「いいよ、次は蘭花からもらおうかな。お兄ちゃん達蘭花からの贈り物凄く楽しみだな~!」

 

「ふふっ、蘭花からの贈り物どんなものかしら?」

 

「あのね!あのね!お兄ちゃま、お姉ちゃましゃがんでくだちゃい!」

 

「いいよ」

 

「わかったわ」

 

一刀と桂花がしゃがむと蘭花は後ろに持っていた色とりどりの花で作った冠を二人の頭に乗せた。

 

「可愛いお花の冠ね。蘭花、ありがとう」

 

「ありがとう蘭花」

 

「あとね、これもなのっ!!」

 

服についてる小袋から綺麗な色の石を取り出し二人に渡した。二つとも傷一つなくまるで宝石のように光輝いていた。

 

「お花の冠だけじゃなくてこんな綺麗な石まで、探すの大変だったろう?ありがとう大事にするな!」

 

一刀が頭を撫でてあげるとくすぐったそうにしながらも蘭花は撫でられていた。

 

「えへへへ~♪蘭頑張ったよ!ちゅごい?」

 

「ああ、すごいぞ蘭花」

 

「えぇ、蘭花ありがとうね」

 

「よかったわね蘭花、一刀と桂花に喜んでもらえて」

 

「はい、おかあちゃま♪」

 

「さて、最後は私達ね。私達からはこれよ!!」

 

そう言って取り出したのは一つの書簡だった。そしてそれを一刀に渡し、「読んでみなさい♪」と一言だけ言った。

 

「????わかりました、かあさま。なになに、この度名門荀家の荀緄殿の・・・・・ええええぇぇぇぇぇぇっ!?これってどういうことなのですか!かあさま!!」

 

簡単に言うと内容はこうだった洛陽で鄭玄(ていげん)が私塾を開くのでそれに参加しませんか?というものだった。

 

「すでに参加するって返信してあるから二人共大体半月後くらいに出発するわよ♪」

 

「そんな!?かあさま急すぎです!」

 

「そうです!それに洛陽といったら往復するだけでどれだけかかると思うんですか。そう何度も通学なんてできませんよ!?」

 

「そんなの向こうで寮住まいするに決まっているじゃない♪」

 

「おにいちゃまとおねえちゃまいなくるんでちゅか!ちょんなのい~やでちゅ~!!!!」

 

兄と姉がいなくなるとわかり蘭花がぐずりだした。

 

「かあさま!蘭花をかな「これは良い機会なのよ二人共」でも!!」

 

「貴方達は私以上の才能を秘めているわ。だから私以外の人からも沢山のことを学んでほしいの。それに鄭玄といったら六経の経典を解釈した人だからきっと貴方達も良い経験になると思うのよ。それとごめんなさいね、蘭花。貴女が寂しい思いをするかもしれないけどこれはあの子達にとって必要なことなのよわかってちょうだい」

 

「・・・・・・・う、ん。わかりまちた」

 

蘭花は弱々答えた。まだ幼いながらも蘭花も兄達と同じく母から少しずつ勉強を教えてもらっているので言っていることは理解はできていた。それに蘭花にとって頭の良い兄達は自慢なのだ。なのでそんな兄達の足をひっぱるようなことはしたくなかったのでいなくなるのが寂しいが耐えることにしたのだった。そんな蘭花を凛花が優しく抱きしめた。

 

「ありがとうね」

 

「蘭は良い子だから我慢ちまちゅ」

 

「うん、うん」

 

「わかりましたかあさま!私頑張ります!!」

 

「僕も桂花と共にしっかりと鄭玄様の所で学んできます!!」

 

二人の決意を聞いた凛花は嬉しそうな顔で微笑んだ。

 

「嫌々行かせるのは気が引けていたからこれで安心できるわ♪」

 

すると今まで黙って静観していた空夜が、

 

「話がついたみたいだね。実は一刀にはもう一つ贈り物があるんだ」

 

そう言うと空夜は一本の木刀を取り出した。だがこの木刀はただの木刀ではなく全身が真っ黒で柄に白い布が巻かれている特殊な木刀だった。そしてそれを一刀に渡した。

 

「ありがとうございます!うっ!?普通のより重い!!」

 

「これは黒牙刀という樹齢千年を超える大木で作られた木刀で強度は剣と打ち合えるくらい堅く、重さも普通より重い木刀だよ」

 

「振りにくいです」

 

一刀は黒牙刀を振ってみるが重さで自在に操れず、ただ振り下ろすのが精一杯だった。

 

「だけどこれを自在に操ることができれば一刀はもっと強くなれるはずだよ」

 

「わかりましたとうさま!!この黒牙刀を自在に操れるようがんばります!!」

 

「その意気だよ。一刀ならきっと使いこなせる信じているからね!」

 

「はい!!」

 

「さてと、話しはこれくらいにしてここから先は楽しみましょう!それじゃあまずは乾杯からね♪さあさあみんな盃を持って!!」

 

凛花の一言でしんみりしていた空気が薄れていき、誕生日会が始まった時のような賑やかになってきた。

 

「それじゃあいくわよ!かんぱ~い!!」

 

「「「かんぱ~い!!」」」×?

 

その後みんな料理を食べたりお喋りなどをして誕生日会を楽しんだ。ちなにに曹家からも贈り物が届いていた。琳奈からは服、春蘭と秋蘭からは桂花には香と良い匂いの石鹸を何種類か、一刀には本となぜか挑戦状が送られてきた。どうやら一刀と次に会った時勝負するために書いたものらしかった。そして華琳からは茶器が送られてきていた。桂花は最初華琳からの贈り物を受け取ろうとしなかったが中身の茶器が一刀とお揃いだったので結局受け取っていた。

 

夜になったので誕生日会はお開きになり、みんな各自の部屋に戻っていった。

 

~一刀と桂花の部屋~

 

「ふぅ~少し食べ過ぎたかな~」

 

「お兄様ったら沢山食べていましたものね」

 

「あはは、だってみんな僕の好きな料理だったからついね!」

 

「今日の誕生日会楽しかったですね」

 

「ああ、楽しかった。でもまだ終わってないぞ?」

 

「はい!まだ私達の贈り物が残っていますものね♪」

 

実はまだ一刀と桂花はお互いに贈り物を渡していなかった。それは初めてお互いに贈り物を渡したのが二人きりの時だったのでそれ以降も渡すのは二人きりの時ということになっていた。

 

「ところでどちらから渡す?僕は先でも後でもどちらでも構わないけどどうする?」

 

「それじゃあお兄様!私が先に渡していいですか?」

 

「いいよ、今年の桂花からの贈り物は何だろう楽しみだなー!!」

 

そう言うと一刀は目を瞑った。一刀が瞑っているのを確認してから桂花は机の引き出しの中から綺麗に包まれた小箱を取り出し一刀の手の上に乗せた。

 

「お兄様、もう目を開けてもいいですよ♪」

 

桂花から許可が出たので一刀が目を開けると目の前に小箱があった。

 

「お兄様!お誕生日おめでとうございます!!」

 

「ありがとう!開けてもいいかい?」

 

「もちろんです!!」

 

「それじゃあ・・・・・わぁぁぁ~~首飾りだ!!しかもこれ!もしかして桂花の手作りかい?」

 

「はい!お兄様に喜んで貰えるよう一生懸命作りました!!どうですか?」

 

一刀は桂花からもらった首飾りを身に着けてみた。首飾りには木で彫って赤く塗った鳥の羽と白く塗った羽がついており、それぞれの羽の真ん中には緑色の石がはめ込まれていた。

 

「うん、とても気に入ったよ大切にするね!よ~し、それじゃあ次は僕の番だね」

 

「お兄様、期待してます!!」

 

桂花が目を瞑ったのを確認し、一刀も机の引き出しから贈り物を取り出した。

 

「桂花、着けてあげるから動かないでね」

 

「えっ?は、はい(お、お、おお、お兄様が私の髪に触れてくださってる!!何が何でもお風呂に入っておいて正解だったわね!)」

 

「それにしても桂花から良い匂いがするね」

 

「実はさっき秋蘭からもらった贈り物の石鹸を使ってみたんです(ところでお兄様からの贈り物って何かしら?頭に着けるもののようだけど?早く見たいわ~~~~~!!)」

 

「そうだったんだ。よし!もう目をあけていいよ桂花」

 

「(やった!!)・・・・・わあぁぁぁぁ♪♪」

 

桂花が目を開けるとそこには鏡に写った自分が頭に見たことのない帽子を被っていた。帽子の色は桂花がいつも中に着ている服と同じ薄い緑で猫の耳のような出っ張りが付いていた。

 

「ほら、この前一緒に猫と遊んだ時があっただろう?」

 

「はい」

 

「その時猫が桂花の頭によじ登ったのを見て思ったんだ。きっと桂花に似合うだろうなってね。それで帽子に猫の耳みたいな出っ張りを付けてみたんだ。」

 

「えっ!?これってお兄様が作ったんですか!!」

 

「うん、破けた所を繕ったりはした事あるけど一から作るのは初めてだったんだけど、どうだいどこか変な所はあるかい?あったら直すけれど・・・・」

 

「いえ、いえ!!すごく良くできていますよお兄様!お店で買ったものと勘違いするほどの出来です!むしろお店のものより良く出来ています!!」

 

桂花はお世辞抜きで答えた。実際とても良く出来ており、糸も飛び出ておらず縫い目なども隠されていたりと桂花の言う通りお店で売っていても周りと一味違うくらいの出来だった。

 

「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいよ。それとお誕生日おめでとう桂花!自分で作っておいてなんだけどその帽子とてもよく似合っているよ!!」

 

「ありがとうございますお兄様!!この帽子は私の宝物にして肌身離さずいつも被っていることにします!!」

 

桂花は嬉しくなって兄に抱きついた。

 

「ありがとう、嬉しいよ桂花。でもそうだないつも被ってくれるならもう二つ三つ作るかな。そうすればあまり汚れずに済むし」

 

「えっ!?いいんですか?」

 

「ああ、そこまで気に入ってくれるならお安い御用さ!それに型紙も布も余っているから大丈夫だよ」

 

「全部大事にしますお兄様♪♪」

 

そんな自分の為にここまでしてくれる兄の姿に桂花は、

 

「(やっぱりお兄様は最高に素敵で私の自慢です!そして大大だ~~~~い好きですお兄様♡)」

 

贈り物を渡し終えた二人は寝床に座って今日のことについて話すことにした。

 

「それにしてもかあさまからの贈り物には驚いたね。いきなり洛陽の鄭玄様の私塾で学んで来いだもんね。しかも寮住まいでなんて」

 

「本当に驚きました。でも寮ですか一体どのような場所なのでしょうね(もしかして向こうでも同じ部屋なのかしら?もしそうだったらいいのにな)」

 

「洛陽か、行ったことないんだよな。どんな所なんだろうちょっと楽しみだな!」

 

「(私はそれよりも私塾でお兄様に興味をもつ女が出ないか心配です)」

 

「でも蘭花には寂しい思いをさせてしまうね」

 

「はい、あの子泣き虫だから心配ですね」

 

そんな話をしていると外から声が聞こえてきた。戸を開けるとそこには蘭花がいた。

 

「おにいちゃま、おねえちゃま一緒に寝てもいいでちゅか?」

 

「いいよ、おいで」

 

「いらっしゃい蘭花」

 

蘭花を真ん中にして川の字になって床に入った。

 

「蘭、おにいちゃまとおねえちゃまがいなくても我慢ちゅるからあちたも一緒に寝てもいいでちゅか?」

 

「もちろんいいよ。だいたい半月くらいしかないけど明日から毎日一緒に寝よう。桂花もいいよね?」

 

「もちろんです!蘭花とはしばらく会えなくなるから大歓迎よ!」

 

「ありがとうございまちゅ。ふわぁぁ~~~うにゅ~~~」

 

「夜も遅いからねもうお休み蘭花」

 

「うん、おやちゅみなちゃいおにいちゃま、おねえちゃま」

 

そう言うと蘭花は目を閉じ、すぐに寝息が聞こえてきた。

 

「おやすみ蘭花」

 

「おやすみなさい蘭花。良い夢をみなさい」

 

一刀と桂花が蘭花の頭を撫でた。

 

「むにゃ~むにゃ~おにいちゃま、おねえちゃまだいちゅきでちゅ~~」

 

「どうやら良い夢みたいだね」

 

「そうみたいですね」

 

「さて、僕らももう寝るか」

 

「そうですねお兄様」

 

「おやすみ桂花、それと蘭花」

 

「おやすみなさいお兄様、あと蘭花もね」

 

一刀と桂花はもう一度頭を撫でてから目を瞑った。家族と離れる寂しさと洛陽で様々な出会への期待、相反する想いを抱きながら・・・・・

あとがき

 

真・恋姫†無双~二人の王佐~一章第七話「宝物」いかがだったでしょうか。一刀達の誕生日とか日にちの計算とか調べてもよくわからなかったので曖昧にしてしまいました。なのでこのことについてはあまり触れないでさらりと流してくれると嬉しいです。

 

それと今の今まで桂花が何も被っていないの気がついていたでしょうか?一応一章第一話での自己紹介の時に帽子の事は書かなかったので気付いててくれれば行幸です。

 

 

最後に次回の予告です。ついに一刀と桂花は洛陽に到着し鄭玄先生の私塾に入門することに。だがそこには既に二大金髪ドリルの姿が!?(笑)洛陽で一刀と桂花を待ち受けるものとは?出会いあり、修羅場ありの賑やかな洛陽での生活が始まる。

 

次回[真・恋姫†無双~二人の王佐~]一章第八話 「袁家襲来!」

 

 

『洛陽に子供達が集まる時、賑やかな日常が始まる』なんてね!

 

 

 

それではまた次回!


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
76
4

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択