No.201134

真説・恋姫演技 ~北朝伝~ 第四章・序幕

狭乃 狼さん

みなさんこんにちは~。

これより北朝伝、四章に突入でございます~。

新キャラが二名登場します。

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2011-02-12 14:57:33 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:22698   閲覧ユーザー数:16972

 「それじゃあお二人とも、俺たちに力を貸してくれるんですね?」

 

 『はい』

 

 南皮城、その玉座の間。今、玉座に座る一刀の前に、張郃と高覧の二人が、揃って跪いて一刀に対し臣下の礼をとっていた。

 

 この地から袁紹を追放してはや一月。

 

 その間、今後の自分たちの態度を中々決めあぐねていた、張郃と高覧の二人であったが、一刀たちの尽力によって、見る見るうちに活気を取り戻していく、南皮の街の人々を見ているうちに、自分たちもその輪に加わりたいと思うようになっていった。

 

 さらに、政務の合間を縫って、頻繁に街中へと出ては人々と気さくに話し、どんな小さなことにも真剣に対応し、自らすすんで奔走する一刀の姿に、二人は完全に惹かれていった。

 

 旧主である袁紹への義理とか、後ろめたさみたいなものは、いまだ二人の中にくすぶってはいる。だが、旧友であり、今は隠居生活を行っている荀諶と、茶飲み話をしていたとき、その彼女からこう言われたのである。

 

 「……あんたら、相変わらず馬鹿よね。……どうせ脳みそ足りていないんだから、考えるだけ時間の無駄でしょうが。……下手の考え休むに似たり。……やりたいようにすればいいじゃない」

 

 と、相も変らぬ、口の悪さで。

 

 その言い方に少々腹の立った二人ではあったが、この、猫耳のついたパーカーを着た少女は、こういう言い方しか出来ないことを、二人はよく知っている。その言葉の裏には、本気で相手のことを考えている、彼女の真剣な想いがあることを。……そして、本気で嫌いな相手には、口すら開かないということも。

 

 そして、二人は決心した。一刀の、その正式な幕下に加わることを。その事を、この日の朝議に顔を出した二人が、一刀に申し出ていたのである。

 

 「わかりました。お二人のこと、喜んで迎え入れたいと思います。……皆、異論はないね?」

 

 「はい」

 

 「うむ。……二人とも、今後はともに頑張ろうの?」

  

 徐庶と李儒に続き、姜維、徐晃、司馬懿、華雄らも、彼女らに笑顔でうなづいて見せた。

 

 「ありがとうございます。では改めて、張郃、字を儁艾。北郷殿にこれより忠誠を近い、我が真名をお預けいたします。我が真名は沙耶にございます。どうか、お受け取りのほどを」

 

 「私高覧も、北郷さまに忠義をお誓いいたします。私の真名は狭霧にございます。ぜひ、お受け取りくださいませ」

 

 「ええ、もちろん、喜んで受け取らせてもらいます。あと、俺のことは一刀と、呼んでくれていいです。俺は真名がありませんから、一刀が真名に相当すると思いますから」

 

 『はい!ありがとうございます!』

 

 一刀の笑顔に、その頬を赤く染めつつ、満面の笑顔で応える張郃と高覧であった。

 

 

 

 その場で二人は、李儒の正体も、仮面を外して見せた、その本人から明かされた。もちろん、とんでもない事実に衝撃を受けた二人であったが、李儒本人のその明るい笑顔と、一刀たちのその、元皇帝である人物への気軽さに、二人も幾分か、気が楽になったのを感じていた。

 

 そして、話は韓馥のことに変わった。

 

 「……結局、あやつからはたいしたことは聞き出せなんだか」

 

 「ああ。……王允から手ごまになるよう誘われた。その、俺たちの推測が当たっていた事ぐらいだよ。……またこれで、真相は闇に消えてしまったな」

 

 「ですね。……”死者”に口無し、ですから」

 

 韓馥は結局、王允の尻尾程度の存在でしかなかった。ただ、死にたくないためだけに、彼の使い走りとして、命じられたままに動いていただけだった。……真の黒幕に通じる、何がしかでも聞き出せないものかと、一刀たちは彼を尋問したのであるが、彼は本当に、何も知らなかった。

 

 そして、その翌日。

 

 韓馥は重犯罪者専用の強制労働所である、鄴の鉄鉱山に送られた。……のであるが、その移送途中、どこからか飛んできた一本の矢によって、その命を絶たれた。ご丁寧に毒まで仕込んであったそれにより、韓馥は悶絶しながら息絶えたという。

 

 「……それで、一刀。これから、どうするんだ?冀州はこれで、完全に我々の支配するところに成ったわけだが、積極的に、”動いて”行くのか?」

 

 徐晃がそんな質問を、厳しい表情で一刀に問いかける。冀州は確かに、一刀たちの手で平定はされた。しかし、河北だけを見ても、争いの火種となっても不思議ではない事柄が、青州や并州で起こっていた。

 

 「青州では、元・黄巾軍の者たちがいいように暴れておりますし、并州では異民族-五胡の一氏族である匈奴が、度々進入してきては好き放題に荒らして回っているとのことです」

 

 「……黄巾軍のほうは約二十万、匈奴の方は進入してきているだけでも、十五万は下らないと報告が来ています」

 

 徐庶と司馬懿が、その手に持った書簡に目を落としながら、両州の現状をそう報告する。

 

 「……幽州の方は?確か公孫賛さん……だっけ?動きは?」

 

 「情報やと、幽州もまた、異民族への対応に追われとるっちゅうことや。ただし、向こうは匈奴や無くて、烏丸やけどな」

 

 「しかも、だ。公孫賛の配下は、彼女の妹である公孫越と、文官の取りまとめ役である単経という人物だけ。……人手は、確実に足りていないだろうな」

 

 

 幽州の牧に現在は就任している、公孫賛という人物。その彼女とは、以前の反董卓連合戦にて、一度だけ顔をあわせている。白馬義従と世に名高い、彼女のその白馬のみで構成された騎馬隊は、おそらく大陸でも一・二を争う、強力な戦力であろう。

 

 とはいえ、一刀の彼女に対する第一印象は、とりあえず、”普通”だった。

 

 見た目が派手というわけでもない。何か惹きつけるような、そんな魅力を感じるわけでもない。だが、将と呼べる人材がたった三人しかいないという、そんな状況にありながらも、彼女は幽州をうまく纏め上げていた。それは、並大抵の能力で出来ることではない。

 

 あらゆる面で、平均的に、高いレベルで、十分な能力を持っていなければ、そんなことは不可能である。

 

 「……人材さえ揃えば、彼女がこの大陸で、もっとも警戒すべき相手かもしれないな」

 

 「……ちょっと評価しすぎじゃないですか?」

 

 「手厳しいね、輝里は。けど、人ってのはさ、少々高く見積もるぐらいで見定めないと、後から手痛いしっぺ返しを食らうこともあるものさ。……よく知らない相手を過小評価する。それが一番怖いことだよ」

 

 そう。

 

 正史において、当時はまだ無名だった”ある人物”を軽く見たがために、最終的に死に追いやられてしまった、そんな人物がいたことを、一刀はその脳裏に思い浮かべつつ、徐庶にそう指摘した。

 

 「で?結局どうするのだ?……冀州とて、完全に落ち着いたというわけではないぞ?他方に兵を出すのは、さすがに…と思うがの」

 

 冀州-特に、平定したばかりの南皮周辺では、未だに賊が出没している。そんな状況下で、ほかの地への出兵となれば、いささか負担が大きいのではと、李儒がそう懸念を示す。

 

 「そう……だね。二兎を追うものは一兎をも得ずっていうし」

 

 結局、一刀が選んだのは無難な選択だった。鄴に残してきた一万の戦力はそのままにし、華雄が向こうに戻って、賈駆ら共に万一のことに備える。南皮は一刀と徐庶、李儒が張郃・高覧の二人と共に政務と治安に従事。そして、青州に徐晃と姜維、司馬懿を三万の兵と共に派遣し、賊の鎮圧に当たる。数こそ多いかもしれないが、結局はまともな戦闘経験の少ない、統率も碌に取れていないであろう賊たちが相手である。さほど苦労することもないだろうとの、一同の一致した意見であった。

 

 

 

 そうして一刀たちが動き出していた頃。

 

 幽州は北平城にて。

 

 幽州牧である公孫賛は、現在その頭を思い切り抱え込んで唸っていた。

 

 「う~~~~~。……あ~~~っっっ!くそっ!どうしてこうも忙しいんだあっ!?」

 

 執務室にて、思わずそう叫んでしまった、公孫賛の目の前には、これでもかというくらい大量の書類が、文字通り山積みとなっていた。

 

 「……せめて、趙雲のやつが残っててくれていたらなあ……。はあ。どうしてこう、うちには人材が集まらないんだろう……」

 

 つまりはそういうことである。徐晃が言ったとおり、公孫賛の下には、とにかく人がいなかった。妹である公孫越は、武に関してこそ信頼は置けるものの、政務となるとてんでからっきしなのである。一応、単経という文官筆頭の人物が、彼女の補佐を勤めてくれているものの、人手不足な状況に変わりはないわけである。

 

 その上、彼女にとって、ここ最近では最も頼りなっていた、客将の趙雲も、

 

 「伯珪どのに魅力を感じぬわけではない。だが、私はもっと多くの人物を見てみたい。……そのうえで、伯珪どのが主たるにふさわしいと判断したなら、また、戻ってくることもあるでしょう」

 

 そう言って、北平の地を旅立ってしまったのである。

 

 さらにさらに、である。彼女の頭を悩ませているのが、北の地の異民族である、烏丸の存在である。

 

 「……連中、最近はこちらからの話し合いには、一切応じる気配を見せやしない。……少なくとも、以前は話し合いに応じるぐらいはしてくれたのに、使者を送っても全くなしのつぶてとは」

 

 少し前。まだ彼女が北平の太守になったばかりの頃は、烏丸の族長である丘力居は、彼女らに対して好意的な態度を見せていた。たとえそれが、彼女を油断させるためのポーズであったとしても、である。

 

 「……白蓮さま、よろしゅうおますか?」

 

 「美音か。ああ、大丈夫だ、入ってくれ」

 

 そこに現れたのは、一人の女性。真っ白なその髪以外は、特に目立った特長のない、普通の文官服に身を包んでいる。

 

 彼女の名は単経。

 

 公孫賛にとっては(本~当に)数少ない、配下のうちの一人である。

 

 「……あ~、まだたっぷり残ってはりますな」

 

 「私一人で処理できる量なんて、たかが知れてるっての。……で、どうした?また、書類の追加か?」

 

 「いえ。……けど、悪い報告どす。……また、烏丸が動き始めたそうですえ?」

 

 「!!……またか。……水蓮は?」

 

 「もう対応するために動いてはります。……行かれますか?」

 

 「ああ。……すまんが、後は頼む」

 

 「はい。……お気をつけて」

 

 今年に入ってもう何度目か。……ほとんど毎月のように、烏丸のものたちが遼東半島へと侵攻し、その度に彼女は自ら出陣して、彼らを追い払ってきていた。そのお陰といって良いかわからないが、彼女率いる幽州軍は、文字通りの精兵ぞろいとなっている。……それもまた、皮肉な話ではあったが。

 

 彼女は今日もまた、戦場へとその身を踊らせる。……ある事を、その頭の中で、考えながら。

 

 

 

 時は確実に刻まれていく。

 

 そう。

 

 人の思惑など関係なく、歴史は着実に、戦乱の時代の到来を告げ始めていた。一刻一刻、ゆっくりと、その時の針は刻まれていく。

 

 河北の騒乱。

 

 それは、一刀たちに何をもたらすのか。

 

 その先に待つは、輝きしき未来か。

 

 それとも、闇に包まれた地獄の日々か。

 

 時は何も語らない。

 

 ただ、無常に過ぎていくのみ。

 

 そして、

 

 光をもたらすもの。

 

 闇を剥ぐもの。

 

 そは、日輪。

 

 そは、太陽。

 

 そは、天。

 

 

 北郷一刀という名の、強く、そして、暖かく、すべてを包む光。

 

 

 ……多くの史家は、口を揃えて言う。

 

 

 帝国の勃興は、まさに、この時を起点とすると。

 

 河北の平定。

 

 それこそが、始まりのときであった、と。

 

 

                                  ~続く~

 

 

 といった感じの序幕でございます。

 

 輝「まずは沙耶さんと狭霧さん、正式参戦ですね」

 

 由「・・・またライバル増えた」

 

 負けたくなかったら頑張ってください。一刀が一刀である以上、増えないということはありませんから。

 

 命「わかっちゃおるけどの。・・・妾は”まだ”、手もつけてもらっとらんのに」

 

 だいじょぶ。もうちょっとだけ辛抱してくれ。

 

 命「・・・親父殿がそういうんなら、まあ、がまんはするがの」

 

 

 輝「で、新登場キャラは、公孫越さんと単経さんですか?」

 

 いーえ。越っちゃんはまだ名前だけですので、違います。

 

 由「ほな、後は荀諶はんかな?」

 

 まあ、せりふがちょこっとあっただけですがね。正式な参加はも少し後です。

 

 瑠「・・・やっぱり、桂花さんと同類ですか?」

 

 そりゃ、姉妹ですからw彼女の活躍(?)は、今後をご期待くださいませ。

 

 輝「・・・朔耶の時みたいにならないといいけど」

 

 う。

 

 

 と、とりあえず、次回予告。

 

 由「まずは青州の賊討伐に向かったうちと蒔ねえ、そしてるりるり」

 

 瑠「次回はその様子からお伝えするそうです」

 

 あわせて、ハムたちのことも少しだけ、お送りする予定です。

 

 輝「それでは次回、真説・恋姫演技 ~北朝伝~」

 

 命「第四章・第一幕じゃ。楽しみに待っておれよ?」

 

 コメント等、いつもどおりお待ちしてます。それでは、

 

 

 『再見~!!』


 
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