今日はここまでー、先生の間延びた声とチャイムが授業の終わり、昼休みの始まりを告げる。
「お腹すいたー。」
「あたしも。」
昼食はたいていユズと一緒にとる。
なんでも気兼ねなく話せる友人の存在はありがたい。
今日は母特製弁当だ。
卵焼きとウインナーと野菜炒め、ごはんが入っている。
まあ、つまるところ普通の弁当である。
ユズは購買のいちごパンとあんパン。
ユズは超が付くほどの甘党だ。
見かけとのギャップでよく驚かれている。
「ねえ、今度見に行かない?」
ユズがいちごパンをかじりながら言った。
「ふぁにおー?」
「サッカーの練習試合。」
ブ――――――――
「ちょっ、スイカ汚い!」
汚いだと!?
って、違う、違う!
サッカーの試合だと!?
ユズが隣で私が吹いてしまった卵焼きと思われるものを見て、ありえない!ありえない!と言って
いる。
私からすればサッカーの試合の方がありえないんだが。
「あ、新手の悪戯?吹きはするけど笑えないよ。」
「悪戯でも何でもないから。あんた、一回ぐらいサッカーしてる門倉見たら?彼なかなかだと思う
けど。あと、笑っていいから吹かないで。殺意が芽生えるから。」
ユズさん、目がマジなんですが…。
それにしても、ユズが人を褒めるなんて珍しい…。
もしかして…。
「大丈夫、門倉がなかなかのヤバイやつだってことは重々わかってるよ。…あのさ、もしかして、
ユズ、門倉のこと好き?」
「はあー!?なんでそうなるの!それはあんたの方でしょ!」
あんたの方…………あんたの方!?
つまり、それは私が門倉のことが好きだという…。
…あ、ありえねー!!
一体どう考えたらそうなるのか…。
まったく、女子の考えることは恐ろしいぜ!
「…ユ、ユズ?いつも、私と門倉がどんなことをしてるか見てる…よね?それで、どうして私プラ
ス門倉イコール好きという方程式が導かれるのかな?」
「あれ?あんた門倉のこと好きじゃないの?」
ユズは、はあ?みたいな表情をしている。
いやいや、そこは私が、はあ?な表情すべきじゃないか?
「ありえない!!ユズ、日頃のやつと私の死闘を知ってるでしょ!」
「もちろん知ってるわよ。あんたと門倉の夫婦漫才。」
「夫婦漫才――――!?」
あれのどこが漫才なんだ!?
この前は襟引っ張られて殺されかけたし…。
しかも、夫婦とな!?
あれが夫なら私は間違いなく棍棒で撲殺ツッコミを炸裂させるね!
「みんながあんた達のことそう言ってるの知らなかったの?」
「そんなの知らないよ!ユズ、知ってるのなら言ってよー!」
「もう知ってると思ったのよ。ま、そういうわけであんた達の仲は周知されてるから。だから、サ
ッカーの試合に行くわよ。」
…はい?
「いやいや!!明らかに接続詞おかしいでしょ!周知されてることがサッカーを見に行かなくちゃ
ならない理由にならないからね!」
「そう、サッカーの試合見に来てくれるのね。」
…え?
「あ、あのー、大変申し訳ないけど私行きませんよー?」
ユ、ユズさんー?
「私も楽しみにしてたのよ。」
聞いてねえ!!
おいおい、今の状態こそ、ありえない!ありえない!だろ!!
そんなこと思っているうちに、ユズは、嬉しいわ、とか意味不明なコメントを勝手にくれた。
そんなコメント全然いらないから!
くれるならのんびりできる安息の週末を!
「もしもーし?ユズさーん、聞こえてますかー?」
「じゃあ今度の週末、13時30分に学校に集合だから。遅れないでね。」
いや、遅れるも何も行かないからね?
っていうか、お願いだから話聞いて?
「あのー、だか「門倉の活躍をしっかり見なさいよ。」
だから…
「人の話を聞け―!!」
こうして、今日も平和な一日が過ぎてゆく。
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私プラス門倉イコール好きという方程式の今世紀最大の発見をした主人公スイカが教室の中心で人の話は聞きこうぜと叫ぶ話。
本日はすれ違い注意報part4です。
まだまだ切なくない&甘くない(笑)
最近は恋愛タグを外そうか真剣に悩んでます…!