No.200759

真・恋姫†無双〜虚像の外史☆三国志演義〜(魏編)

アインさん

最終章

2011-02-10 19:18:03 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1923   閲覧ユーザー数:1817

 キッカケは修行の旅で、出会った軍師だった。

 その軍師は、曹操に仕える事を望んでいた。

 しかし当時の彼は、まだ曹操の事をあまりよく知らなかったため、軍師がなぜ曹操に仕えたいのかよくわからず、しかもまだ見ぬ曹操を妄想して、鼻血を流すことに理解することはできなかった。

「これは稟ちゃんの病気ですので、気にしないでくださ~い」

 軍師の友人は気にする必要はないと言う。

 だけどそんな軍師の姿に彼はいつしか恋をしていた。

 だが、告白をしようとは思ってはいなかった。

 自身は未熟の身。

 告白するならちゃんと一人の『人間』として成長してから告白しようと決めたからだ。

 しかし、その決意は無駄となった。

 突然の病死。

 彼は墓前の前で誓った。

『貴方の代わりに、必ず曹操を天下統一させる』

 そして決意の表れとして、彼は曹操の僕となった。

 彼は曹操の発言はすべて正しいと信じ、それを逆らうものをすべて憎んだ。

 そんな矢先、北郷という男に出会った。しかも曹操はいつしか彼を『パートナー』と認識して。

 彼はそれに気づくと北郷に自身の思いを告げた。

『曹操様を守ってほしい』

 しかし、その思いは裏切られた。

「俺は桃香の考えこそ、平和の道へと繋がると思う」

 許せなかった。例え、曹操が北郷を許しても彼は許せなかった。

 現にそれが原因のように、曹操は心の病で死んでしまい、仲間も後を追うように死んでしまった。

「北郷を殺せっ! 奴は平和の使者なんかじゃない。裏切り者で、不幸を呼ぶ人間だっ!」

 一人の兵士が曹操の墓前で前で叫んだ。

「殺せっ!殺せっ!」

 一人の叫びに周りは共鳴する。

 そして―――。

「ああっ、北郷を殺そう! それが華淋様の意思であり、天の意思だっ!」

最終章

 

『終焉、そして始まり』

 五ヶ原の中心で、北郷と曹仁の二人が対面する。

 北郷の右頬が殴られた痕跡が見え、”なぜ、顔が赤い?”と尋ねた。

「これは真実を話した代償みたいなもんさ」

 曹仁は腰にかけていた鞘を抜き、北郷に突き出して”自害”しろと言った。

「悪いけど、俺にその意思はない。俺は死ねない」

 北郷の言葉に曹仁は突き出した鞘を懐に戻して、”貴様はいつもそういう人間だ”と睨み付け”常に貴様には自害をさせないための仲間がいる”と言葉を繋げる。

「曹仁にも仲間はいるはずだ。お互い様だよ」

 北郷は人懐っこい笑顔を見せるが、曹仁にはそれが大嫌いため”その笑顔でどれだけの人間を泣かした?”と質問した。

「……俺はそんなつもりはない」

 曹仁は、空を見上げた。

「貴様が死ねば、我が魏は今後一切蜀と戦争しないという条件をだす」

「………」

 北郷は腰にかけている剣を抜く。

「さっきも言ったはずだ。俺はもう死ねないって……」

「………」

 曹仁も剣を抜く。

「一対一の勝負だ、曹仁。それでこの長きに渡る闘いに終わりを迎えよう」

 曹仁は笑い、叫んだ。

「……待っていたその言葉、その決意。これでようやく―――」

 二人は剣を振り落とす。

「貴様を殺せるっ!」

 互いの剣がぶつかり合った。

 この闘いが終わったら結婚しましょうと言われた。

 

 しかし、彼は”闘いが終わったら自害するつもりだ”と答える。

 

 彼女も負けずに”表向きでも、空の部下なのだから拒否権はないはずですよ~”とのほほんと述べた。

 

 だから彼は”好きにしろ”と承諾した。

 勝負は一瞬でついた。

 倒れこむ北郷。北郷を見下す曹仁。

「終わりだ。北郷」

 剣が振り下ろそうとした瞬間、誰かが曹仁の腕を掴んだ。

「待て。曹仁」

 腕を掴んだのは夏侯惇だった。

「なぜここにいる? 貴様は、後方から攻めてくる呉を迎えつくはずだ」

「それは我々の勝利として終わり、私自身はお前を止めにここまで来たんだ」

「……こいつの死は華琳様の願いであり、俺の望みだ」

「確かに北郷のせいで華琳様は死んだのかもしれないが、証拠は何もない」

「だが、北郷が魏を去ったために華琳様や桂花達は死んだ」

「………もう一度言う。証拠は何もないし、奴自身も魏から離れることは華琳様はお認めになったことだ」

 剣は動かず、曹仁の瞳も動かない。

「なぜ、北郷に勝てたと思う?」

「何?」

「それは北郷と同じく背中に『背負い込む』ものが生まれたからだ」

「………」

 曹仁は剣を収め、北郷に”その服を脱げ”と命令した。

 

 

 

―――そして、それから二年が過ぎた。

 曹仁は二柱の墓石に、水袋の水を注ぐ。

 ……郭嘉と程昱の墓に。

 そして、墓石の前に腰を下ろした。

 あれからまだ二年しかたっていないのに、ずいぶんと昔のことのような気がすると曹仁は感じた。

 彼はあの後、天の御遣いの象徴である北郷の服を燃やすことで『北郷は死んだ』と宣言。逆らう者は誰もなく、また北郷や蜀の武将達も納得して和平へと話を進めた。

 今では呉とも手を取り合ってこの大陸を平和に保ち続けている。

「……ここに来るまでずいぶん、寄り道をしたと思う」

 曹仁は剣を墓石の前に置く。

「でも、これでもう憎しみで戦う戦は終わりだ。そしてこれからは平和のための戦いへと始まる」

 手を合わせ、膝をついて目を閉じた。

「……俺は二度、墓前の誓いを果たすことができなかった。でも、今一度誓う。俺はこの華琳様や二人が守ろうとした魏を守ることを」

 ―――返事はない。

 だが、なんとなく二人が曹仁を応援するような風が流れるのだった。

 

 

―――極めて近く、そして限りなく遠い物語。

 

 子供達は大人達を呼んだ。

 呼ばれた大人達も次々と呼び集め、あっという間に、その場所の周りには村人達の輪が作られた。

 息を呑み、見つめる村人達の真ん中で、濡れた女性が倒れている。

「異国の女じゃ」

 杖をついた村の長老が現れ、言った。

「この戦国の世に、こんな形で女が流れてくるなど不吉じゃ。きっとこの女は災いを起こすのじゃ」

 村人達はどよめく。

 好奇心の強い子供が一人、見たこともない服装を着た女性に、そっと近づく。

「気をつけよ!」

 長老は声を上げた。

「もはや時は乱世。ここも戦場になってしまうのじゃろう。こやつはその時代の盾になってもろうかの」

「……うっ」

 女は気付く。

「わ……私の名は……華雄」

 そして再び気を失った。

時は戦国時代。

 

今、新たなる物語が始まる。


 
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