No.200698

真・恋姫無双another 風ストーリーその22

ぴかさん

真恋姫無双の二次小説です。
風の視点で物語が進行していきます。

今回初のオリキャラが登場します。
うまく書けているといいのですが……。

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2011-02-10 11:03:13 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:4708   閲覧ユーザー数:3731

 孫策軍の謀反によって、揚州を西へと逃げ出した私達。

目指す場所は、劉表さんが治める荊州です。

心配なお兄さんの容態ですが、孫策さんが手加減をしたのかそこまで大事には至ってません。

それでも、一番大きな馬車の寝台で寝続けることになっていますが…。

 

 道中障害もなく、私達は順調に歩みを進めていきました。

そんな中、白蓮さんが疑問を投げかけてきました。

 

「しかし、急に訪れて劉表は助けてくれるのか?」

「大丈夫だと思いますよ~」

 

白蓮さんの疑問に、私は軽く答えました。

 

「それはどういう事だ?」

「この事態を想定して、あらかじめ劉表には使いの使者を出していたのよ」

 

私の代わりに詠さんが答えました。

 

「そんなのいつの間に……」

「孫策の考えが判れば自ずと答えは導き出されるのよ」

 

詠さんは、まるで自分の手柄のように言います。

 

「まあ、今はとにかくみんな無事に荊州に着くことを考えよう」

 

お兄さんの言葉にみんなが頷きました。

発言をあっさりと流されて、詠さんだけは不満そうでした。

 

 

 その後も追っ手に追われたり、盗賊に襲われたりなどの障害もなく、荊州の襄陽に辿り着きました。

門番さんに事情を説明して、劉表さんに取り次ぎをお願いしました。

しばらくして、入城の許可が出たので、私達は劉表さんに謁見する事になりました。

ですが、全員で行くのは多すぎなのでお兄さんと私、それと白蓮さん、星ちゃんの四人で行くことになりました。

その他の皆さんは、城外で待機です。

麗羽さんや美羽さんは行きたがっていましたが、斗詩さんや七乃さん、それに加えてお兄さんの説得でなんとか納得してもらいました。

 

 文官さんに案内された謁見の間は城の一番奥にありました。

そこで私達を待っていてくれたのは、二人の女性でした。

女性と言うよりは、少女というのが適切かもしれません。

この二人のどちらかが劉表さんでしょうか?

 

「お待ちしておりました、天の御遣い様とそのお供の皆さん。私は劉表の娘、劉琦(りゅうき)です」

「同じく、劉琦の妹の劉琮(りゅうそう)です」

「天の御遣い様がいらしてくださっているので、本来は母が出迎えるべきではあるのですが、母は体調が優れないので微力ながら私達が務めさせていただきます」

 

そう言って二人は頭を下げました。

こういう言われ方をしてしまうと、こちらも逆に恐縮してしまいます。

 

「頭を上げて。俺達こそ、突然来たのに受け入れてくれてありがとう」

 

お兄さんが、頭を上げるよう二人に言います。

その言葉に二人は頭を上げて、笑顔で答えました。

 

「いえ、困っている時はお互い様。ましてや天の御遣い様を受け入れるなど断る理由もありません」

「そう言われると、照れるなぁ」

 

お兄さんは、頭をかいています。

 

「今日はお疲れでしょう。皆さんのお部屋を用意してあります。外でお待ちの皆さんも城内にお入り下さい」

「皆さん、旅の疲れを癒して下さい。これからの事は明日にでもお話ししましょう」

 

お二人の好意に甘えて、外で待っている皆さんも城内に入ってもらいました。

野宿続きだったからでしょうか、久し振りのきちんとした部屋に皆さんの気持ちが浮き足立っています。

特に麗羽さんや美羽さんは、色々と文句を言いながらも割り当てられた部屋で大喜びしています。

かくいう私も、まともな寝台に思わず飛び込みたくなります。

ですが、劉琦さんと劉琮さんが必要以上に親切なのが少し気になりました。

 

 

 荊州でお世話になるようになった私達。

美羽さんのところと同じく、それぞれが得意とする分野で手伝いをすることになりました。

曹操さんの猛攻を何度も退けているので、優秀な武官さん、文官さんがいるのかと思ったら、全て劉表さんの力だというのです。

内政はもちろん、外交から軍事に至るまでの全てをです。

なので、今体調を崩して劉表さんが動けない以上、私達のように経験のある人が手伝うのが非常にありがたいようでした。

 

 私は文官さん達を統括することになりました。

要するに、文官さん達の面倒を見ることになったのです。

面倒を見ていくにつれて、ここの文官さんは決して劣っているわけではないことが判りました。

これも劉表さんの良い影響でしょう。

おかげで、正直手持ちぶさたです。

ですが、これもここがいかに素晴らしい場所かという事の表れでしょう。

しかし、一つ気になることがありました。

劉表さんのことです。

いくら体調を崩しているといっても、全く姿を現さないのはおかしいです。

劉琦さんと劉琮さんの必要以上に親切な態度と、何か関係があるのでしょうか。

そんな時、ある文官さん同士の噂話を聞きました。

 

「劉表様、早く良くなるといいですね」

「あら、あなた知らないの? 劉表様はもうお亡くなりになっているという噂よ」

「えっ!? それってどういう……」

「そのままの意味よ。劉表様は既にお亡くなりになっていて、それを劉琦様と劉琮様で必死に隠しているって」

「でも、なんで……?」

「外敵対策でしょう。この国は劉表様の評判で成り立っているようなものだから、亡くなっているなんて知られたら曹操辺りがまた攻めてくるわ」

「そうは言っても、隠し通せないでしょう?」

「だから、時期を見て天の御遣いに譲るという事じゃないかしら」

 

かなり興味深い話ですが、このままでは色々と問題ありそうです。

なので、話の腰を折ることにしました。

 

「その話は本当ですか~?」

「て……程昱様」

「……あくまでも、噂ですわ」

「それにしては、やけに具体的な気がしましたが、それは風の気のせいですか~?」

「それは……」

「あっ、私達やる事がありましたわ!! 失礼します」

 

何かを取り繕うかのような態度を取って、二人はその場を離れました。

私は、二人に感謝しつつ歩みを玉座の間に向けました。

そう、先ほどの噂話の真相を確認するためです。

それは、この内容がお兄さんを含め私達にとってとても大事なことだからです。

 

 

 しばらくして、私は玉座の間に着きました。

ここでは、劉琦さんと劉琮さんの二人に加え、白蓮さんと星ちゃんが政治的な事に携わっているはずです。

 

「失礼しますよ~」

 

一応断りを入れてから、私は中に入りました。

 

「おお、風、珍しいな。どうしたんだ?」

「あれ~、白蓮さん一人ですか~?」

「そうなんだよ。星はいつもようにどこかでお酒でも飲んでサボっているんだろうが、劉琦と劉琮は珍しいな」

「そうですか~」

 

用事のあった二人が不在とは、運が悪いです。

 

「なんだ、劉琦と劉琮に用事があったのか?」

「そうなんですよ~」

「しばらくすれば、来ると思うが……」

 

そんな事を白蓮さんと話していた時です。

突然、兵士さんが入ってきました。

 

「失礼します!! 大変です!!」

「どうしたのですか~?」

「劉琦様と劉琮様がさらわれました!!」

「なんだって!!」

「そして、このようなものを……」

 

そう言って、私に書簡を渡しました。

それを読んで、私は何度か頷くと言いました。

 

「判りました~。後は、私達で何とかしますから、あなたは持ち場に戻ってください~」

「はっ!!」

 

兵士さんは、持ち場に戻っていきました。

横にいる白蓮さんは、慌てています。

 

「さらわれたって……、風どうする?」

「大丈夫ですよ~、何となく事態は飲み込めていますし~」

「風、ずいぶんと冷静だな」

「焦っても仕方ありません」

「それはそうだが……。しかし、こんな時に星はどうしたんだ」

「そのうち戻ってくるでしょう~。今回の件は、風に任せてください~」

「……北郷には言うか?」

「お兄さんには言わなくていいと思いますよ~。いらぬ心配をかける必要もないでしょうし~」

「わかった。風、頼むぞ」

「わかりましたよ~」

 

白蓮さんにそう言って、私は玉座の間を後にしました。

 

 玉座の間を離れた私は、修練所へと向かいました。

ここには、今回の件で協力して欲しい人がいるはずです。

 

「あ~、いましたね~。霞さん、ちょっといいですか~?」

「おぉ、風やないか。こんな所に珍しいな。どないしたんや?」

「実は……」

 

私は、劉琦さんと劉琮さんがさらわれたこと。

危険が伴う可能性があるので、一緒に来て欲しい事を霞さんに言いました。

 

「そう言う事なら、うちにまかしとき」

 

霞さんは一緒に来てくれる事を了承してくれました。

あんまり大勢で行っても大げさなだけなので、声をかけるのは霞さんだけにしました。

こうして、私と霞さん二人で劉琦さん達がいるという郊外の森へ向かう事にしました。

 

 

 私達が、城の門を出たところで、遠くから声が聞こえました。

 

「風!! 待ってくれ!!」

「お兄さん!?」

 

そう、それはお兄さんでした。

私達の元に駆け寄ると、体をかがませて息を整えています。

しばらくして、お兄さんが言いました。

 

「白蓮から聞いたぞ!! 劉琦と劉琮がさらわれたそうじゃないか」

「そうみたいですね~」

「なんで、俺に言ってくれないんだ!!」

「お兄さんに、不要な心配をかけさせたくなかったんですよ~」

「せやせや、一刀は心配しいやからな」

 

霞さんがこう言うと、お兄さんの後ろから白蓮さんが申し訳なさそうに言いました。

 

「風、すまない。北郷には黙っておくつもりだったんだけど……」

「仕方ないですよ~。それで、お兄さんはもちろん……」

「二人についていく」

 

お兄さんの言葉に、大きな溜息をつきたくなりました。

ですが、それを見せるのは私の役目ではありません。

 

「一刀は相変わらずやなぁ」

 

そう言って、霞さんは大きな溜息をつきました。

 

「相変わらずって……、霞それはどういう意味?」

「そのまんまの意味や。自分の胸に聞いてみればわかるはずやで」

 

そう言って霞さんは笑いました。

 

「ダメと言っても来るでしょうから、お兄さんも一緒に行きましょう~。霞さん、よろしくお願いします~」

「うちにまかしとき!!」

 

霞さんは槍を天高く掲げました。

こうして、結局お兄さんを含めた三人で劉琦さん達がいるという郊外の森に向かいました。

 

 

 森の中は不気味なくらい静まりかえっています。

聞こえてくるのは、私達が歩くときに踏んでいる小枝の折れる音と鳥たちの鳴き声くらいです。

それでも、私は兵士さんの持ってきた書簡を頼りに、歩みを進めます。

そして、その場所にたどり着きました。

 

「風、こんな所に劉琦達はいるのか?」

「この書簡によるとそうみたいです~」

「あやしい雰囲気は感じへんなぁ」

 

霞さんは槍を構えて警戒していますが、その表情には緊張感がありません。

それもそうでしょう。

ここには特に危険はないはずです。

霞さんに来てもらったのは、念のためですから。

 

「……そろそろ出てきたらどうですか~?」

 

私がそう言うと、少し奥から劉琦さんと劉琮さんが出てきました。

その表情は、非常に申し訳なさそうにしています。

私が、事情を確認しようと思ったときです。

突然お兄さんが駆け出して、二人を抱きしめました。

 

「二人とも!! よかった!!」

 

そう言いながら、目には涙が見えます。

 

「えっ!!」

「きゃっ!!」

 

劉琦さんと劉琮さんは、突然の事に驚いたようです。

ひとしきりした後、お兄さんは自分の行動が場違いな事に気付いたのでしょう。

気まずそうに、二人から離れました。

私は、一度深呼吸をすると、二人に聞きました。

 

「どうしてこんな事をしたのですか~? もしかして、劉表さんが亡くなっている事と関係しているのですか~?」

「なぜ、それを……」

 

私の言葉に、二人は先ほどとは明らかに違う意味で、驚きの表情をしました。

 

「風、劉表が亡くなっているって……」

「噂ですよ~。文官さん達が話をしていました~。ですが、この二人の表情を見るとあながち嘘でもないみたいですね~」

「せやな」

 

霞さんが冷静に答えました。

 

 

 私達の態度に、劉琦さんと劉琮さんはお互いを見合い決意をしたかのように強く頷きました。

そして、劉琦さんがその重い口を開きました。

 

「……程昱さんの指摘通り、母劉表は既に亡くなっています」

 

ある程度の確証があったとはいえ、劉琦さんの口から実際に聞かされるとやはり驚きます。

 

「なぜ黙っていた……?」

「ご存じの通り、この国は母の力でのみ成り立っているような所があります。なので、母が亡くなったと知られると必要以上の混乱が起きると思ったのです」

「それに、私と姉。どちらかを祭り上げ互いが争いを起こすかもしれません」

 

劉表さんが亡くなれば、劉琦さんか劉琮さんがその跡を継ぐことになります。

ですが、おそらくそれは簡単なことではないでしょう。

劉琮さんの言うとおり、劉琦さん派と劉琮さん派で分かれて内戦のような状態になるかもしれません。

 

「せやけど、なんでこんなさらわれたなんちゅう芝居をうったんや?」

「一刀さんに、この国を継いでもらうためです」

「俺?」

「はい」

 

二人は笑顔で言いました。

 

「さらわれた二人を救い出せば、一応恩人になります~。そのお礼に劉表さんが自分の跡をお兄さんに継いでもらうと発表でもするつもりだったのでしょうか~」

「……そんな感じです」

 

私の指摘に、劉琦さんはバツの悪そうな表情で答えました。

 

「姉を責めないでください」

 

劉琦さんの表情に感じることがあったのでしょう。

劉琮さんが言いました。

 

「安心してください~。私は劉琦さんを責めていませんから~」

 

私の言葉に、劉琮さんは胸をなで下ろしました。

 

「なんでこんな面倒なことをしたんや? 一刀なら引き受ける思うけどなぁ」

「民に向けてのものだと思いますよ~」

「それってどういう……」

「いくら天の御遣いといえども、いきなり太守になるというのも納得はいかないでしょう」

「なるほどなぁ。確かに、いきなり変わったっちゅー事になれば納得いかん奴もいるやろうなぁ」

 

そう言って、霞さんは何度も頷きました。

こんな私達のやり取りを見て、劉琦さんが不安そうに言ってきました。

 

「……それで、一刀さんは引き継いでいただけるのでしょうか?」

「それは、お兄さん次第だと思いますが、多分引き継いでくれるでしょう」

 

私の言葉に、劉琦さん達に笑顔が戻りました。

反面、お兄さんは不満そうです。

 

「風、勝手に決めないでくれるか?」

 

お兄さんの言葉に、私は反論します。

 

「では、お兄さんはここまでやったお二人を見捨てるというのですか~?」

「いや……、そう言うわけじゃないが……」

「なら、決まりやな」

 

霞さんも、私の意見に同意しています。

劉琦さん達は、お兄さんに向けて訴えかけるような表情を見せています。

 

 しばらくして、お兄さんが重い口を開きました。

 

「分かったよ。俺で力になれるなら、やってやるよ」

「よかった!!」

 

お兄さんの言葉に、劉琦さんと劉琮さんはお互いの手を取って喜びました。

 

 こうして、お兄さんが劉表さんの跡を継ぎ荊州の地を治めることになりました。

 

 

 22話をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?

当初の予定とは若干異なる内容になってしまいましたが、結果は一緒です。

初のオリキャラとして、劉琦と劉琮の二人を登場させました。

今後の絡みは未定です。

あとがきを利用して、いくつか説明していきたいと思います。

 

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劉表について

 

 劉表は、当初から死んでいる事にするつもりでした。

 病弱な薄幸の美少女なんかを期待されている方がいたらごめんなさい(m_m)

 自分の中のイメージは、真面目な雪蓮という感じかな。

 姿は出ないけど、孫堅や馬騰と同じ系統だと思っています。

 

劉琦と劉琮について

 

 オリキャラを出す事には抵抗があったので、当初は文章のみの登場で、ここまで絡ませるつもりはありませんでした。

 ですが、前話のコメントでちょっと期待されているようなふしがあったので思い切って書いてみました。

 イメージは朱里と雛里かな。

 母の死をひた隠しにして思い切った行動が取れるのは、劉表の血を引き継いでいるからではないかなと思います。

 

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 次は、三国志史上最大のあの戦いの話になるのかなぁ。

そこに、例の白装束連中をどう絡ませるか。

なかなか難しそうです。

結構期間が空いてしまうかもしれませんが、次も見ていただけると幸いです。

 

 今回もご覧いただきありがとうございました。


 
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