No.200486

孤高の御遣い Brave Fencer北郷伝25

Seigouさん






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2011-02-09 00:28:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:24032   閲覧ユーザー数:14582

蜀との和解という任務を一刀の仲介という嬉しい誤算でなんとか成し遂げた百合達一行

 

帰りは迷わずに呉へと帰還することができ、雪蓮達に事の顛末を簡潔に説明した

 

 

 

 

 

 

 

 

呉玉座の間

 

 

 

百合「・・・・・・・・・というわけです~」

 

雪蓮「そう・・・・・また一刀には世話になっちゃったわね」

 

冥琳「いままでのこともあるし、荊州のことはこれで帳消しにしてやるか」

 

純夏「そうね」

 

蓮華「それにしてもシャオ、一刀とは本当に偶然会ったの?」

 

小蓮「うん、そうだよ」

 

明命「蜀への道は、見当違いにも交州へ行ってしまい、そこで山賊に襲われているところを助けていただきました」

 

蓮華「・・・・・まるでわたし達の行動を最初から知っていたみたいね」

 

思春「確かにあの男は不自然なところが多すぎます、樊城の時でも、あいつはそれを知っていたかのように関羽を助けました」

 

冥琳「・・・・・以前あやつは洛陽で、自分はこの時代の人間ではないと言っていたな」

 

穏「それと何か関係があるのですかね~?」

 

百合「そういえば~、蜀で一刀君はこんなことを言っていましたよ~」

 

穏「どんなことですか?」

 

百合「なんでも~、自分は1800年後の世界からやってきたとか~」

 

穏「・・・・・ということは~」

 

冥琳「・・・・・ああ、あやつは樊城で戦が起こるとこを知っていたということになるな」

 

亜莎「さらに言えば、反董卓連合、あの戦いが起こることも知っていたということになりますね」

 

冥琳「・・・・・それが本当なら」

 

亜莎「はい、敵に回ればこれほど恐ろしい相手は居ないでしょう」

 

祭「先を知っている以上、こちらの手は全て筒抜けということになるからの」

 

百合「・・・・・それはおそらくないでしょうね~」

 

冥琳「?・・・・・何故そのようなことが言えるのだ?」

 

百合「本来一刀君は、戦そのものを好みません~」

 

小蓮「それに交州でも言っていたよ、この先自分はなるべく人を斬りたくないって」

 

明命「はい、あの方は本来なら、人を斬る事にはまるで向かない人です」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一同は考える

 

何故そこまで争いごとが嫌いなのに、剣を振るい続けているのだろうと

 

百合「一刀君は、凄く優しいのですよ~」

 

蓮華「?・・・・・優しいなら、何故武器を取って戦い続けられるの?」

 

小蓮「一刀はね、目の前に困っている人が居たらほうっておけない性格なんだよ」

 

明命「他の人が手を汚すくらいなら、自分が率先して手を汚す、そんな人です」

 

雪蓮「・・・・・それが本当なら」

 

冥琳「ああ、もはや病気だな、それは」

 

祭「そんなことを続けていれば、いつか壊れてしまうぞ」

 

純夏「そうなる前に、一刀を止めないと」

 

雪蓮「・・・・・それはそうと、蜀の件は一件落着ということでいいかしら?」

 

百合「はい~、劉備様は荊州の件については、もう何も言わないと仰っていました~」

 

冥琳「それはどういうことだ?」

 

百合「蜀の南には、南蛮という孟獲が統治する地があります~」

 

亜莎「それは聞いたことがあります」

 

百合「はい~、その南蛮を一刀君の策と助力で併合したんですよ~」

 

小蓮「蜀の税収は、益州と荊州を合わせたものを超えたらしいよ」

 

明命「劉備さんは、荊州を管理しなくてすんだから、むしろ喜んでいましたね」

 

雪蓮「・・・・・劉備らしいっちゃらしいか」

 

冥琳「領土が広くなったからといって、それで楽が出来るというわけでも無いからな」

 

亜莎「はい、より狭い領土で高い税収ができればそれに越した事はありませんから」

 

祭「どんな政策をしているのか見てみたいものじゃ」

 

雪蓮「それは次の機会にとっておきましょ」

 

冥琳「そうだな、今は魏の動きが気になるからな」

 

純夏「なんでも、魏と涼州の交渉は上手くいったとか?」

 

冥琳「そのようだな、涼州の馬寿成は魏と不可侵条約を結んだらしいからな」

 

雪蓮「あたし達もうかうかしていられないわね」

 

蓮華「もちろんです、姉様!穏、確か美羽達の兵が近いうちにこちらに来てくれると聞いているけど?」

 

穏「はい~♪河南の治安も美羽ちゃん達の頑張りもあってか、凄く良くなりましたからね~♪」

 

純夏「洛陽で一刀に叱られてから、美羽も変わったからね」

 

祭「彩のやつも美羽の成長ぶりには喜んでおったからの」

 

亜莎「美羽さんには叱ってあげる人が必要だったんですね」

 

思春「魏は兵の募集をしていて、兵力はかなり増強されているという話ですからね」

 

雪蓮「近いうちに魏と戦をするかもしれないか・・・・・冥琳」

 

冥琳「分かっている、しかし遅くなるなよ」

 

雪蓮「りょーかい」

 

そう言って雪蓮は席を立ち玉座の間を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮華「姉様、またお母様のお墓に行くのね」

 

思春「そうですね、大きな戦の時には雪蓮様は必ず孫堅様の墓参りに行きますので」

 

冥琳「・・・・・あまり遅くなると心配だ、後で誰か迎えに行ってやるとよい」

 

そして孫呉の将達はそれぞれの持ち場へと戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魏の玉座

 

 

 

 

 

 

 

華琳「そう、馬騰との交渉は上手くいったのね」

 

月「はい、葵さんは聖様を保護下に置くという交換条件をつけました」

 

霞「葵のばっちゃんらしいで」

 

詠「聖様を保護下に置けば、涼州は魏に干渉はしないといっていたわ」

 

華琳「あくまで漢王朝の忠臣であり続けるということか・・・・・いいでしょう、聖様は馬騰に保護してもらいましょう」

 

桂花「しかし華琳様、涼州はいつも五湖との戦に晒されていて安全なところでは決してありません、その様な所に帝を預けるのは如何なものかと」

 

華琳「それは浅はかな見方よ、桂花」

 

桂花「と、いいますと」

 

零「それはそうでしょう桂花、洛陽だっていつ戦場になるか分からないのよ、もはや洛陽も安全とはいえなくなってきているのよ」

 

華琳「そうよ、今は乱世、この国の中で完全に安全といえるところはもはやないわ」

 

風「昔から洛陽でも様々な戦いが起こりましたからね~」

 

春蘭「あの馬寿成が守る涼州でしたら任せられましょう」

 

秋蘭「あの者は、恋と並ぶほどの腕を持っているという話ですからな」

 

稟「はい、帝もここに居るよりは安全でしょう」

 

桂花「・・・・・・・・・・」

 

次々と他の軍師達に指摘され桂花は憂鬱になる

 

華琳「それにしても、呉の手際には驚いたわね」

 

桂花「はい、荊州を守っていたのは蜀の関羽将軍だったらしいのに」

 

稟「情報では、呉の呂蒙という軍師が荊州攻略の策を打ったらしいですが」

 

零「呉にもかなり優秀な軍師が居るようね」

 

霞「それで、関羽はどないなったんや!?」

 

霞も愛紗とはいつか戦いたいと思っていたから愛紗の生死については是が非でも知りたかった

 

稟「落ち着いてください霞殿、関羽は死んではいません」

 

霞「ほっ・・・・・良かったわ~~~、ウチもいつか関羽とは戦ってみたかったからな」

 

風「なんでも、関羽さんが捕まった後、お兄さんが助け出したらしいのですよ~」

 

月「え!!?」

 

詠「一刀が!!?」

 

霞「一刀は無事なんか!!?」

 

董卓軍の将達も稟と風が一刀の知り合いだったことは知っていたのでその驚きようは半端なかった

 

風「ええ、この情報は確かですよ~」

 

月「良かった~~」

 

詠「まったく、無事なら無事でとっとと帰ってきなさいよ、あの馬鹿」

 

霞「でも、もし一刀が戻って来ていたら、関羽は死んでいたっちゅうことにならへんか?」

 

華琳「関羽は、劉備と張飛と儀姉妹の契りを結んでいると聞いているわ」

 

零「はい、もし関羽が死んでいたら呉に報復していたでしょうね」

 

華琳「・・・・・この場合、一刀が次の戦争への連鎖を断ち切ったと見るのが妥当でしょうね」

 

「・・・・・・・・・・」

 

そう考えてしまうと、一刀が一つの国に留まることはかえってこの国のためにならないような気がしてしまう

 

霞「・・・・・それにしても、ここにみんながいないのは悔やまれるな~」

 

月「はい、そうですね・・・・・」

 

詠「一刀の無事を知ればみんな大喜びしたでしょうしね」

 

雫と菖蒲と嵐は、麗羽が治めていた領土へ行きその地を統治していた

 

さらに、徐州の陶謙との交渉も音々音と悠が進めていていつかは除州も魏の傘下に入りそうだった

 

音々音は恋と一緒にいると駄々をこねたが、恋に『・・・・・我が儘言っちゃダメ』と一蹴されしぶしぶ徐州へと赴いたのだった

 

徐栄と張済は魏国内の治安維持活動に忙しくしていた

 

最近、北郷隊の人気が異常なまでに高く、北郷隊入隊志願者が次々と入ってきているのでてんてこまいな忙しさであった

 

華琳の意向により、凪、沙和、真桜も北郷隊に加わって頑張っているが、なかなか追いつかない状況なのである

 

ちなみに今の北郷隊の上下関係は、凪と徐栄が一刀の代わりを務め、沙和と真桜と張済が副官という状態になっている

 

凪か徐栄かどちらが隊長をするかでしばらくもめたが、月と華琳の仲介によってこのような形となっていったのである

 

恋はというと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼州北部

 

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

「「「「「GOBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」」」」」

 

恋「・・・・・ここから先は、通さない」

 

月達との交渉が成立したとき五胡の兵が攻め込んできたので葵は月に援軍を要請

 

帰りがてら翠と蒲公英と一緒に恋率いる呂布隊が同行して今に至る

 

翠「・・・・・相変わらずでたらめな強さだぜ」

 

蒲公英「凄い凄い!恋さーーーーーーーん♪」

 

葵「な~~~~るほど、天下無双と言われるだけあるぜ」

 

翠「何言ってんだよ、母様も昔はあれくらいやっていたぜ!」

 

馬家一同は天下無双の恋の力に感嘆の声を上げる

 

葵「それにしても、なんで呂布の奴は背中の大剣を使わないんだ?」

 

そう、恋は一刀から渡された龍滅金剛刀を使わず、新しく作った方天画戟だけで戦っていたのである

 

翠「なんでもあれは、北郷一刀から預かっているものらしくて呂布もなるべく使わないでいたいらしいぜ」

 

蒲公英「うんうん、月様から聞いた話だと恋さん一刀さんのこと本当に大好きらしいからね♪」

 

葵「それはまずいな、翠の恋敵が増えちまうぜ」

 

翠「なななな何言ってんだよ!!////////」

 

蒲公英「あ~~~~~、お姉様赤くなってる~~~♪」

 

翠「蒲公英!余計な事言うな!!///////」

 

葵「いいじゃないか翠、俺もあいつのことは気に入っているからな・・・・・だから・・・・・・・・・・」

 

翠「・・・・・だから・・・・・何だよ」

 

葵「翠がいらないんだったら・・・・・俺が貰っちまうぞ♪」

 

翠「★■※@▼●∀っ!?////////」

 

蒲公英「おば様♪その時は蒲公英も呼んでね♪」

 

葵「おういいぜ♪」

 

翠「戦場で何話してるんだよ!!////////」

 

恋「何話してるの?」

 

翠「うわおおおおおおおおお!!??呂布!!?////////////」

 

蒲公英「わああああああああ!!??恋さん!!??///////////」

 

葵「だああああああああ!!??呂布!!??/////////////」

 

恋「???」

 

いきなり傍に現れた恋に馬家三人組は驚く

 

葵「い、いやな!どうして呂布が背中の剣を使わないのか話していたんだ!なぁ翠、蒲公英!」

 

翠「そ、そうだぞ!」

 

蒲公英「その通りだよ!恋さん!」

 

恋「・・・・・・これ・・・・・一刀から預かっているもの・・・・・恋の戟壊れないと使わない」

 

葵「そうかそうか~~~~」

 

恋「・・・・・それに・・・・・」

 

葵「???」

 

翠「???」

 

蒲公英「???」

 

恋「これ持っていると・・・・・かずとが近くに居るような気がする///////」

 

葵「(どうやら恋敵は多いようだな)」

 

翠「(天下無双の呂布が惚れちまっているのかよ)」

 

蒲公英「(恋さん、本当にお兄様のことが好きなんだね♪)」

 

三人は恋の純粋な思いを改めて再確認した

 

葵「それにしても呂布、戦はどうしたんだ?」

 

恋「あいつら・・・・・退いて行った」

 

そういいながら恋は戦場を指差した

 

葵「うおっ・・・・・」

 

翠「おいおい・・・・・」

 

蒲公英「すっご~~~い」

 

そこには死屍累々、見渡す限りの五胡の死体が埋め尽くされ、呂布隊が意気揚々と凱旋している光景があった

 

こうして魏は涼州に誠意を見せ、信頼を獲得していったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「そういえば華琳さん、麗羽さんはどちらへ?」

 

華琳「ああ、麗羽なら・・・・・」

 

華琳が言おうとしたその時

 

 

 

 

 

 

麗羽「月様ぁ~~~~~~~~~!!!」

 

月「へう!!??」

 

詠「・・・・・またか」

 

霞「物凄い変わりようやな・・・・・」

 

玉座の間にメイド服を着た麗羽、斗詩、猪々子が入ってきて月の傍へと寄り添った

 

ちなみに三人ともミニスカである

 

麗羽「月様!道中賊に襲われはしませんでしたか!?」

 

月「は、はい、大丈夫です」

 

麗羽「はぁ~~~~~、よかったです、この麗羽、心配で心配で夜も眠れませんでしたわぁ~~~」

 

官渡の戦いの後、月の優しさに触れて改心した麗羽は、月に忠誠を誓い侍女として毎日を忙しくしていた

 

ちなみに麗羽がメイド長で斗詩と猪々子がメイドその一その二である

 

斗詩「月様~~、申し訳ありません~~」

 

猪々子「月達の到着を聞いたら、物凄い勢いで飛んでいってしまうんだからな」

 

月「いいえ、麗羽さんにはいつもお世話になっていますから」

 

麗羽「ああ~~~、なんとお優しい、わたくしは生涯あなた様に尽くしますわ~~~」

 

月「へぅ~~~」

 

詠「・・・・・まったく」

 

霞「ここまでくると、過保護を通り越して清清しいな」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

華琳も以前の麗羽を誰よりも知っている者であるがゆえに、麗羽の豹変振りには誰よりも驚いていた

 

華琳「・・・・・あの麗羽がここまで変わるなんて・・・・・」

 

桂花「はい、正直信じられません・・・・・」

 

かつて麗羽に仕えていたことがある桂花も同じ思いであった

 

華琳「それはそうと、これ以上呉の領土拡大をほおっておくわけにもいかないわね」

 

桂花「はい、荊州を奪われたとあっては、呉は目と鼻の先ですから」

 

零「こちらから仕掛けなければいつかは侵攻されてしまうでしょうね」

 

華琳「月、この戦いには霞を貸してもらうわよ」

 

月「霞さんをですか?」

 

詠「そうね、華琳の将には騎馬の運用に長けた者がいないしね」

 

霞「ウチはかまへんで♪」

 

華琳「では、明朝には出発します!全員準備に掛かれ!」

 

「御意!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「(ふふっ♪江東の小覇王、孫伯符か・・・・・英雄同士の戦いがこれほど胸躍るとはね♪)」

 

この時の華琳は高まる高揚感によって足元が見えていなかったのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「・・・・・母様の墓参りに行くのも久しぶりね」

 

馬に乗り雪蓮は自分の母親、孫文台の墓へと赴こうとしていた

 

雪蓮「前に行ったのは、母様が死んだ直後だったから・・・・・二年ぶりかしら」

 

自分の母が荊州の劉表に討ち取られたと聞いた時は、憂鬱な気分になったが、それも仕方ないと割り切った

 

母は、それまであまりにも多くの人間を巻き込んできたのだ

 

天罰が下らないわけがない

 

雪蓮「あたしもいつか、母様のように天誅を受ける日が来るかもね・・・・・」

 

そう言いながら、馬を進める雪蓮だったが

 

雪蓮「・・・・・ん?」

 

自分の勘がいつにも増して騒ぎだして足を止めた

 

雪蓮「ん~~~~~~~・・・・・まいっか、墓参りは後でも♪」

 

雪蓮は母の墓とは別の道を歩いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「この辺りは、確か小川があったっけ」

 

かつて冥琳と城を抜け出しては色んなところで遊んだものであるため、呉国内は雪蓮の庭のようなものであった

 

雪蓮「さ~~~~て、何があるのかな~~♪」

 

雪蓮が小川を見渡してみると

 

ジャプジャプジャプ

 

遠くから洗濯物を洗う音が聞こえてきた

 

雪蓮「(あれは・・・・・一刀!?)」

 

小川では上半身裸の一刀が自分の上着を洗っている後姿があった

 

雪蓮「・・・・・・・・♪」

 

雪蓮は気付かれないように気配を絶ちつつ近付いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「(それにしても、一刀の身体ってホント逞しいわね♪)」

 

林の中から雪蓮は一刀の体を観察していた

 

一刀の体は決して筋肉が付きすぎてなく引き締められていて、見事なバランスを保っていた

 

それはまるで日本刀の折り返し鍛練法のように、筋肉を増やしそれを引き締める、それをただひたすらに繰り返したような、柔軟かつ強靭な肉体だった

 

雪蓮「(・・・・・それにしても)」

 

雪蓮は、一刀の体を見て一つの結論に達した

 

雪蓮「(あれは・・・・・実戦で鍛えられた体ね)」

 

そう、その鍛えられた筋肉の中でも実戦で使う筋肉が異様に発達しているのだ

 

しかも、その肉体に舐めるように付いた数々の痛々しい傷跡

 

雪蓮「(一刀もこの乱世のしきたりには逆らえないということか・・・・・)」

 

いくら天の御遣いと呼ばれても一刀も一人の人間でしかないということである

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

一刀は上着を近くの岩に掛け、立て掛けていた忠久を手にした

 

そして

 

一刀「・・・・・ふっ!」

 

雪蓮「!!??」

 

一気に雪蓮との間合いを縮めた

 

一刀「誰だ!!?」

 

雪蓮「きゃっ!!?」

 

一刀は忠久を鞘に納めたまま相手に突きつけた

 

一刀「・・・・・って!雪蓮!?」

 

雪蓮「や、やっほ~~~、久しぶり、一刀」

 

尻餅をついたまま雪蓮は答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに会った一刀と雪蓮は川辺で話し合った

 

 

 

 

一刀「そうか、お母さんの墓参りに来たのか」

 

雪蓮「そっ♪その途中で一刀を見つけたのよ♪」

 

実際には少し違うが嘘も方便である

 

一刀「そういえば、文台様ってどんな人だったの?」

 

雪蓮「一刀も聞いたことない?江東の虎の話を」

 

一刀「それは聞いたことがある」

 

雪蓮「そう、その名の通り僅かな時間で江東を制覇して孫家の礎を築いたのよ」

 

一刀「尊敬していたのか?」

 

雪蓮「ん~~~~、どうだろ?あたしがまだこんな小さい時から戦場に一緒に連れて行かれてたしね」

 

一刀「そりゃ凄いな」

 

雪蓮「母様が戦うところを始めて見た時は、あたし腰を抜かして動けなかったのを今でも鮮明に覚えているわ」

 

一刀「そ、そんなに凄かったのか?」

 

雪蓮「凄いなんてものじゃないわよ!鬼よ鬼!いいえ!あれは鬼なんて生易しいものじゃないわね!鬼神に闘神よ!」

 

一刀「・・・・・・・・・」(ブルッ)

 

一刀はその姿を想像して震えが来た

 

雪蓮「昔は、涼州の馬寿成と並んでブイブイいわせていたのよ」

 

一刀「そうか、寿成さんと・・・・・あれ?それじゃあ雪蓮と寿成さんは面識があるんじゃ?」

 

どうして真名で呼ばないのかと疑問に思う一刀

 

雪蓮「それはあたしが生まれる前とあまりにも小さかった時の話、真名なんて預けられるはずないじゃない」

 

一刀「なるほど、そういうことか」

 

雪蓮「とにかく、そうしてあたしは戦場で育ったのよ、それでも今のあたしは母様にぜんぜん届いていないわね、一刀もかなり良い所まで行っていると思うけど気迫と存在感で言えば母様には及ばないわね♪」

 

一刀「そんな大英雄と一緒にしないでくれ、俺はただの臆病者だよ」

 

雪蓮「臆病者にしてはえらく強いじゃない」

 

一刀「俺は、昔から家の家訓に習って鍛錬を怠らなかっただけだ、人を斬る感覚には未だに慣れないよ」

 

雪蓮「逃げ出したいと思わないの?」

 

一刀「逃げてどうなるんだよ、こんな世界じゃどこに行ったって厄介ごとに巻き込まれちまうし、元の世界に帰る方法も分からないしな」

 

雪蓮「・・・・・ねぇ、一刀の世界ってどんな世界なの?」

 

一刀「世界と言うより、俺の国といったほうが正しいかな、俺の国は昔はあったけど戦争もなく、人々は衣、食、住その三つをほぼ保証されているんだ」

 

雪蓮「嘘!?そんな国があるの!?」

 

一刀「あと、この国では文字の読み書きができない人が殆どだろ?」

 

雪蓮「ええ、将軍職についている人間でさえ文字を読めないのもいるわね」

 

一刀「俺の国は、全ての国民、重要な職についている者から庶民まで文字の読み書きができるんだよ」

 

雪蓮「・・・・・それで、反乱は起こらないの?」

 

一刀「え?」

 

雪蓮「えじゃないわよ!そんな庶民に無闇に知識を付けさせたら国家を転覆させられてしまうわよ!」

 

一刀「・・・・・俺の国では、国家は国民に三つのことしか求めていないんだ」

 

雪蓮「三つ?」

 

一刀「そう、それは・・・・・1教育を受けること、2働くこと、3税金を払うこと・・・・・この三つしか求めていないんだ」

 

雪蓮「それは、つまりどういうこと?」

 

一刀「つまり、この三つを求める代わりに衣・食・住を保証するということなんだよ」

 

雪蓮「ああなるほど、ちゃんと保証すれば反乱も起こらないということね」

 

一刀「そういうこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「・・・・・それにしても、ずいぶんと長く話し込んじゃったわね」

 

かなり長く話し込んでいたみたいで、日はかなり移動していた

 

雪蓮「・・・・・そうだ一刀!遅くなっちゃったけど蜀との交渉、手伝ってくれてありがとね♪」

 

一刀「あれは偶然百合さん達と交州で会っただけだからね、大したことはしていないよ」

 

雪蓮「・・・・・本当に偶然だったの?」

 

一刀「そうさ、まさかあんなところで呉の重鎮達と出会うなんて思わなかったよ」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

嘘を付いているようには見えなかったので信じることにした

 

雪蓮「・・・・・まぁいいわ、それより一刀♪一緒に母様の墓参りに来て♪その後で城に招きたいから♪」

 

一刀「え?」

 

雪蓮「またそこで、え?って言う!あたし達は今まで一刀に散々借りを作ってしまっているんだから!このまま一刀を返したら信賞必罰ができないわよ!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

一刀「・・・・・分かったよ、行くから」

 

雪蓮の背後に見えるオーラに一刀はあっさり折れた

 

一刀は外套を纏って雪蓮の後をついていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「ここよ、一刀」

 

一刀「ずいぶんと質素なんだな・・・・・」

 

雪蓮「母様の遺言なのよ、なるべく地味にしろって、きっと死んだ後も大騒ぎされたくなかったんでしょうね」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

一刀は思う

 

小さい頃から戦場に連れ出されてはいたものの、やはり雪蓮は自分の母親が好きだったんだと

 

雪蓮「一刀、母様に挨拶してくれるかな?」

 

一刀「・・・・・分かった」

 

一刀は片膝をつき雪蓮の母、孫堅文台の寝むる墓に向かい合った

 

一刀「はじめまして、孫文台様、雪蓮の友達の北郷一刀です」

 

雪蓮「(そこは嘘でも恋人ですって言いなさいよ!)」

 

雪蓮はそんな都合のいい妄想をしていた

 

一刀「文台様・・・・・自分は、あなたのことを全く知りません・・・・・もし自分が、あなたが生きている時にこの世界にやってきてあなたに出会っていたら、今とは違う生き方をしていたのかもしれません・・・・・あなたと出会って、あなたと一緒に雪蓮達と過ごすような生活もあったのかもしれません」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

一刀「でも自分は、この生き方を選びました、その果てにどんな未来が自分を待っているのか分かりません・・・・・それでも自分は、自分がお世話になった人々、自分が守りたい人々のために、できることをやっていきたいと思います」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

一刀「申し訳ありません・・・・・あなたの顔すら見ることができなくて・・・・・最後に・・・・・ごめんなさい・・・・・あなたが生きているうちにこの世界に来れなくて・・・・・」

 

そして一刀は両手を合わせ、しばらく経ってから立ち上がった

 

一刀「ありがとう、雪蓮」

 

雪蓮「ううん、お礼を言いたいのはこっちよ」

 

一刀「ん?どうしてだい?」

 

雪蓮「母様とお話をしてくれてありがとうって事よ♪」

 

一刀「・・・・・どういたしまして・・・・・さて、次は雪蓮の番だな」

 

雪蓮「ええ♪」

 

一刀と入れ替わるようにして雪蓮も墓の前に跪いた

 

雪蓮「母様、一刀ってどう?かなりいい男でしょ♪ちょっと・・・・・いいえ、かなり損な性格だけど」

 

一刀「(ほっとけ)」

 

雪蓮「でも・・・・・一刀が言った通り、もし母様が死ぬ前に一刀に会っていれば母様も一刀のことを絶対認めていたと思う・・・・・そうしたら、一刀と母様と一緒に楽しい毎日が送れていたのかな?」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

雪蓮「それはそうと、母様が死んで、一時は袁術・・・・・美羽ちゃんの軍門に下ったけど今は一刀のおかげもあって立場が逆転しちゃった・・・・・母様は、こんなやり方で江東を取り戻したあたしを認めてくれないかもしれない・・・・・でも、あたしは母様じゃない!母様のようになれるかもしれないけど、母様にはなれない!」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

雪蓮「母様、見ててね、あたしはあたしのやり方で孫家の夢を実現して見せるわ、次にここに来るのはその夢が実現した時よ」

 

相して雪蓮は手を合わせ、目を瞑った

 

そんな中

 

一刀「(・・・・・なんだ?)」

 

墓参りの雰囲気の中に僅かに漂う僅かな違和感

 

一刀「(何かが見ている?)」

 

その違和感の正体は視線だった

 

そして

 

キリキリキリ

 

一刀「(この音は、まさか!?)」

 

次の瞬間

 

シュバババ!!

 

茂みの中から数本の矢が雪蓮に向けて放たれた

 

一刀「雪蓮!!!」

 

雪蓮「え?」

 

キキキン!!

 

一刀は忠久を抜き、矢を叩き落す

 

しかし

 

ドスッ!!

 

一刀「ぐあっ!!」

 

とっさのことだったので、間に合わず腹に一本矢が突き刺さり一刀は蹲った

 

雪蓮「一刀!!?・・・・・おのれ何奴だ!!!」

 

「「「「「ひいっ!!」」」」」」

 

茂みから一目散に逃げ出したのは魏の兵達だった

 

雪蓮「魏の兵ですって!?」

 

一刀「っく・・・・華琳・・・が・・雪蓮を・・・暗殺する・・・・だって?・・・・そんな・・・・馬鹿な」

 

自分の知っている曹操こと華琳はそんなことをする人間ではないはず

 

一刀は痛みをこらえながら必死に考えていた

 

雪蓮「一刀!!大丈夫!!?」

 

一度は魏の兵を追おうとした雪蓮だったが、一刀に寄り添った

 

一刀「~~~~~っ・・・・・急所は・・・・・外れている・・・・・みたいだな」

 

掠れた声で何とか一刀は答えた

 

雪蓮「喋らないで!一刀!」

 

そこに

 

蓮華「お姉様!魏が攻めてきました!」

 

思春「雪蓮様、そ奴は?」

 

純夏「って!?一刀!?」

 

魏が攻めてきて雪蓮を呼びに来たのは蓮華と思春と純夏だった

 

蓮華「一刀!!?どうしたの!!?」

 

思春「雪蓮様!!これはいったい!!?」

 

雪蓮「魏の兵士がわたしを暗殺しようとしたの、それを一刀が庇ってくれたのよ」

 

蓮華「なんですって!!?」

 

純夏「一刀!!しっかりして!!」

 

思春「北郷!!」

 

蓮華と思春と純夏も一刀のそばに寄り添った

 

一刀「ぐぁっ!!」

 

雪蓮「三人とも!!動かしてはダメよ!!思春!!今すぐ医者を呼んできて!!」

 

思春「はっ!!」

 

思春は一目散に城へと戻っていった

 

雪蓮「・・・・・蓮華、純夏・・・・・一刀をお願い」

 

蓮華「お姉様、どうするのですか?」

 

雪蓮「ちょっと曹操に挨拶に行ってくるわ」

 

そう言って雪蓮は、馬に飛び乗り走り去って行った

 

一刀「雪蓮!ダメだ!・・・・・ぐあっ!」

 

ボトボトボト

 

一刀は雪蓮を追おうとしたが、激痛と大量の出血で片膝をついてしまう

 

純夏「一刀!!動かないで!!」

 

蓮華「そうよ!!急所は外れているけど、毒が塗ってあれば命に関るわ!!」

 

一刀「・・・・・蓮華・・・・・」

 

蓮華「何!!?一刀!!?」

 

一刀「・・・・・雪蓮を・・・・・止めてくれ・・・・・」

 

純夏「何を言っているの?一刀?」

 

一刀「おか・・・・しいんだ・・・・・俺の・・・・知っている・・・・曹操・・・・華琳は・・・・こんなことを・・・・・する人間じゃ・・・・・・ないはずだ」

 

蓮華「・・・・・・・・・・」

 

純夏「・・・・・・・・・・」

 

一刀「きっと・・・・・これは・・・・・華琳の・・・・・意思じゃない・・・・たのむ・・・・雪蓮を・・・・止めてくれ」

 

蓮華「・・・・・分かったわ、一刀・・・・・純夏さん、一刀をお願いします」

 

純夏「分かったわ」

 

蓮華は一刀を純夏に託し雪蓮を追っていった

 

一刀「くそっ!・・・・・ふっ!!」

 

ズボッ!!

 

一刀は渾身の力で矢を引き抜いた

 

純夏「一刀!!?何やっているの!!?矢を抜いたら出血が酷くなるだけよ!!」

 

一刀は矢を投げ捨て、外套を包帯代わりに腹に巻きつけた

 

一刀「っ!・・・・・狛煉!!」

 

狛煉「ぶるん!」

 

一刀の呼びかけに近くにいた狛煉が寄ってきた

 

一刀「純夏・・・・・俺を・・・・狛煉に・・・・・乗せてくれ」

 

純夏「そんな体で何するつもりなの!!?」

 

一刀「俺は・・・・・曹操・・・・・華琳に・・・・会いに行く」

 

純夏「そんなことさせられるはずないでしょ!」

 

一刀「純夏・・・・聞いてくれ・・・・このままいけば・・・・・魏軍と・・・・呉軍の・・・・総力戦に・・・・なってしまう・・・・・そうなって・・・・・しまえば・・・・無駄な・・・・・犠牲が・・・・・増えるだけに・・・・・なる・・・・・」

 

純夏「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

一刀「そうなる・・・・前に・・・・俺が魏軍を・・・・・・退かせて・・・・みせる・・・・・だから・・・・純夏・・・・・・いや・・・・太史慈子義・・・・・行かせてくれ!」

 

純夏「!!・・・・・・・・分かったわ」

 

一刀「・・・・・ありがとう」

 

純夏は一刀に肩を貸し、狛煉に乗るのを手伝った

 

一刀「ありがとう・・・・・純夏」

 

純夏「べ、別に一刀の心配をしているわけじゃないわ!あたしはあんたに借りを返すと言った!その約束を破るのが嫌なだけよ!//////////」

 

一刀「・・・・それでもだよ・・・・・」

 

純夏「・・・・・まったく・・・・・手伝わなくたって無理やり乗ったくせに」

 

一刀「・・・・・すまない」

 

純夏「もういいわよ・・・・・でも死ぬんじゃないわよ、あたしはあんたにまだ何の借りも返していないんだから」

 

一刀「・・・・・分かっているよ」

 

そう言って一刀は狛煉を走らせた

 

その後には、血痕が続いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純夏「・・・・・ホントに損な性格ね、一刀」

 

純夏も雪蓮の下に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥琳「雪蓮!大事無いか!?」

 

美羽「雪蓮!大丈夫かや!?」

 

雪蓮「あたしは大丈夫」

 

雪蓮が墓参りに行ってる間に、美羽率いる袁術軍も到着していた

 

明命「雪蓮様!一刀さんが矢を受けたのは本当ですか!?」

 

雪蓮「・・・・・本当よ」

 

明命「そんな・・・・・」

 

亜莎「北郷さんが・・・・・」

 

美羽「・・・・・・・・・・」

 

小蓮「一刀・・・・・」

 

百合「一刀君・・・・・」

 

穏「・・・・・・・・・・」

 

祭「・・・・・北郷には、また多大な借りを作ってしまったな」

 

冥琳「・・・・・・・・・・」

 

雪蓮「冥琳!穏!亜莎!すぐに兵の準備を!魏軍に目に物見せてやるわよ!!」

 

冥琳「ああ!」

 

穏「はい!」

 

亜莎「御意!」

 

雪蓮「思春!医者は!?」

 

思春「はっ!ここに!」

 

雪蓮「よし!すぐに「お姉様!」・・・・・蓮華!?」

 

蓮華「お姉様!出陣するのは待ってください!」

 

雪蓮「蓮華!あなたそんなこと本気で言っているの!?」

 

蓮華「これは一刀の願いなのです!どうか心をお静めください!」

 

雪蓮「・・・・・蓮華・・・・・あなたに孫呉を担う資格はないわ」

 

蓮華「!!??・・・・・お姉様、何を・・・・・」

 

雪蓮「一刀は、あたしを庇って自ら矢を受けたわ、それなのに、ここで何もしなかったら国として、いいえ!人としてあまりに無神経だと思わないの!!?」

 

蓮華「・・・・・そ、それは・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一同はそろって複雑な気持ちになる

 

雪蓮の言うことは正論であり、人として当たり前の感情だからだ

 

純夏「それくらいにしたら?雪蓮」

 

雪蓮「純夏!?」

 

蓮華「純夏さん!?どうしてここに!?一刀はどうしたんですか!?」

 

純夏「一刀なら、戦を止めると言って魏軍の方へ走っていったわ」

 

明命「純夏さんは止めなかったんですか!?」

 

純夏「止めたけど、言っても聞かなかったのよ」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

殺気を放ちながら、雪蓮黙って純夏との距離を縮めた

 

その眼は、なぜ止めなかったのかという意思をありありと示していた

 

雪蓮「・・・・・純夏・・・・・」

 

純夏「分かっているわ、後で好きなだけ殴っていいから」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

純夏「とにかく今は、一刀を追うのが先決よ」

 

雪蓮「・・・・・そうね・・・・・みな!!!行くわよ!!!」

 

「「「「「「御意!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞「♪♪~~♪♪~~~♪~~~」

 

春蘭「霞、やけにご機嫌だな」

 

霞「そりゃそうや♪久しぶりの戦やで♪」

 

この戦いで霞と春蘭は先方を務め、馬を走らせていた

 

霞「それに・・・・・」

 

春蘭「それに、なんだ?」

 

霞「一刀が生きててくれてめっちゃ嬉しいねん♪」

 

春蘭「・・・・・霞にとって北郷とはどういった奴なんだ?」

 

霞「せやな~~~・・・・・ウチにとって一刀は初めてときめいた相手やな♪」

 

春蘭「ときめいた?」

 

霞「せや・・・・・一刀はウチが初めて男として見た相手、ウチが初めて自分自身を女として意識した相手なんや♪」

 

春蘭「・・・・・・・・・・」

 

霞「・・・・・・・・・・」

 

霞はかつて一刀と馬上訓練した後のことを思い出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

一刀「それにしても、やっぱり馬上じゃ神速の張遼には敵わなかったな」

 

霞「いんや、一刀もなかなかええ筋しとるわ、ウチも暫くしたら追い抜かれると思うで」

 

一刀「・・・・・けど、やっぱり馬の上じゃ霞には一生かなわないような気がするな」

 

霞「なんでや?」

 

一刀「俺の前居たところでは、馬に乗って移動する人はまずいないんだよ」

 

霞「なんやて!?それじゃあ遠出するときはどうするんや!?」

 

一刀「俺が前居たところでは馬に代わる乗り物があったからな」

 

霞「どんな乗り物なんや?」

 

一刀「自動車っていう乗り物なんだけど、一つの箱に車輪が四つ付いてて雨も気にしないで走れる代物なんだよ」

 

霞「へぇ~~~~、便利やな~~~」

 

一刀「だから、俺はそういった便利すぎる世界に慣れすぎていて馬の上で戦うことには向いていないんだよ」

 

霞「なるほどな」

 

一刀「それにしても霞」

 

霞「なんや?」

 

一刀「霞って本当にかわいいよな」

 

霞「・・・・・へ?」

 

一刀「いや、なんていうか凄く女性らしいというか・・・・・」

 

霞「ちょ、ちょい待ちいな!」

 

一刀「どうしたんだ?」

 

霞「ウチが女性らしいて、そんなん嘘やろ?」

 

一刀「何で嘘なんかつく必要があるんだよ?」

 

霞「だ、だって、こんな格好しとるし、女の子らしいことなんてこれっぽっちもしたことあらへんし・・・・・」

 

一刀「・・・・・俺から見たら、霞は十分に魅力的な女の子だよ」

 

霞「・・・・・//////」

 

一刀「どうしたんだ?霞?」

 

霞「う・・・・うるさいわ、ウチかて一刀とやりあって疲れとるんや、とっとと歩き!」

 

一刀「・・・・・分かったよ」

 

霞「//////////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上回想終了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞「(せやからウチにとって、一刀は月と同じくらい大切な奴なんや)」

 

今まで武を極めることのみに人生を費やしてきた霞

 

しかし、このとき初めて女として生きるということを意識し始めたのである

 

春蘭「霞!そろそろ呉の領土に入るぞ!」

 

霞「ああ、せやな!」

 

辺りが戦場の色を付け始めてきた

 

まさにその時

 

霞「・・・・・ん?なんや?」

 

春蘭「・・・・・正面から誰かが来るな」

 

自分達の正面から白い馬に乗った誰かが来ていた

 

春蘭「しかし、あれは完全に一人だぞ」

 

霞「ええ根性しとるやないか、よっしゃ!ウチがもろうた!」

 

春蘭「な!?ずるいぞ霞!」

 

霞「こればっかりは早い者勝ちや♪」

 

そう言いながら霞は春蘭の前を走り始めた

 

霞「(さあ、たった一人で戦いを挑む奴は肝っ玉の塊かただの馬鹿か、どっちや!?)」

 

霞は目を凝らしその人物を見据える

 

霞「(・・・・・あれ?なんやあの馬見覚えあるような?)」

 

その白馬は見事な体躯をしていた

 

霞「あれは・・・・・」

 

さらにその白馬に跨っている人物を見据える

 

霞「・・・・・って!?一刀!!?」

 

春蘭「何!?北郷だと!?」

 

見覚えがあるはずである

 

その白馬はまさしく狛煉、跨っているのは紛れもなく一刀なのだから

 

霞「張遼隊!!停止や!!」

 

春蘭「お、おい霞!!」

 

霞「うっさい!!黙れ春蘭!!張遼隊!!停止や!!止まれーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

霞の怒号にも似た命令で張遼隊とそれに続いて夏侯惇隊も一気に停止した

 

霞「一刀!!」

 

一刀「・・・・・霞か・・・・久しぶりだな」

 

霞「久しぶりやな・・・・・って一刀!?その傷どないしたんや!?」

 

霞は一刀の腹に巻かれ、赤く染まった外套を見て仰天した

 

一刀「・・・・霞・・・・どうなっているんだ?・・・・魏の兵士が・・・・雪蓮・・・・孫策を・・・・暗殺しようとしたぞ」

 

霞「な!?なんやて!?」

 

春蘭「そんな馬鹿な!?でたらめを言うな!!我らが覇王、曹孟徳はそんな卑怯なことをするお方ではない!!」

 

ザワザワザワザワザワ

 

霞と春蘭の後ろに控えている張遼隊と夏候惇隊も一刀の話を聞いてざわめき出した

 

一刀「俺だって・・・・・華琳が・・・・そんなことをする・・・・・奴じゃないということは・・・・・知っている」

 

霞「・・・・・その傷は、孫策を庇った傷か?」

 

一刀「もっと・・・・うまくやっていれば・・・・こんなへまを・・・・しなくて・・・・すんだのにな」

 

霞「・・・・・・・・・・」

 

春蘭「・・・・・・・・・・」

 

一刀「霞・・・・どうするんだ?・・・・孫呉の兵達は・・・・切れているぞ・・・・このまま・・・・・戦を始めてしまったら」

 

霞「せやな、こっちもただではすまんやろな」

 

一刀「霞・・・・・俺は雪蓮・・・・孫策を説得する・・・・霞は・・・・」

 

霞「分かっとる、ウチらは華琳に撤退を進言するわ」

 

春蘭「ちょっと待て霞!勝手なことをするな!」

 

霞「・・・・・春蘭、夏侯惇っていうのは曹操きっての忠臣と聞いていたけど、ありゃデマか?」

 

春蘭「な!?何を言っているのだ!?わたし以上に華琳様に忠誠を捧げている家臣などいてたまるか!!」

 

霞「なら分かるやろ!華琳がこんな戦望まんことくらい!!」

 

春蘭「・・・・それは・・・・」

 

霞「一刀、華琳は任せい、一刀は孫策の方を頼むで」

 

一刀「ああ・・・・・任せて・・・・おけ」

 

霞「・・・・・張遼隊!!撤退や!!!」

 

霞は、苦虫を噛み潰す顔をしながら撤退していった

 

春蘭「北郷!」

 

一刀「なんだ?・・・・夏侯惇?」

 

春蘭「わたしの真名は春蘭だ、この名をおまえに預けよう」

 

一刀「・・・・・どういう・・・・・風の吹き回しだ?」

 

春蘭「華琳様はお前に敬意を表して真名を預けた、ならばわたしも預けるというのが道理というものだ・・・・・それに、お前には以前命を救われているしな、かなり遅れてしまったが礼を言う・・・・・ありがとう」

 

一刀「・・・・・俺のことは・・・・・一刀と・・・・呼んでくれ・・・・春蘭」

 

春蘭「ああ、ではまた会おう!一刀!」

 

そうして張遼隊と夏侯惇隊は撤退していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞「~~~~~~~~~~っ!!!」

 

撤退をしている最中の霞の心は、憂鬱を通り越して曇天だった

 

霞「(・・・・・なんでや・・・・・なんでこうなるんや?)」

 

せっかく一刀と再開できたのに、また別れてしまう

 

まるで神がそこに居て、自分達と一刀を会わせないようにしているかのように

 

霞「(・・・・・もしそうなら・・・・・恨むで・・・・・神様)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桂花「華琳様!霞がとんでもない情報を持ってきました!」

 

華琳「どうしたの!?」

 

桂花「なんでも!我が軍の兵士が孫策の暗殺を謀ったらしいです!」

 

華琳「何ですって!!?」

 

秋蘭「なんだと!?」

 

季衣「ええええ!?」

 

流琉「そんな・・・・・」

 

華琳は飛び上がらんばかりに驚いた

 

華琳「それで!孫策はどうなったの!?」

 

風「なんでも、お兄さんが孫策さんを庇って重症らしいですよ」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

華琳は、みるみる顔面蒼白になっていった

 

稟「華琳様!調べた結果、我が軍の新兵達が功を焦って、孫策の暗殺を謀ったようです!」

 

華琳「その者達の首を刎ねよ!!!」

 

零「華琳様!!?」

 

華琳「英雄同士の戦いを汚されて!・・・・・おまけに一刀を!・・・・・わたし達に数々の恩ある人を傷つけたのよ!!」

 

零「・・・・・・・・・・」

 

華琳「零!!命令よ!!その者達の首を刎ねなさい!!!」

 

零「ぎ、御意!」

 

霞「華琳!」

 

春蘭「華琳様!」

 

華琳「霞!春蘭!一刀はどんな状態だったの!?」

 

霞「ありゃ酷いで、血を流し過ぎとる」

 

華琳「~~~~~~~~っ!!」

 

春蘭「華琳様、いかがいたしますか?」

 

華琳「・・・・・撤退するわ」

 

稟「そうですね、幸いにも一刀殿が早く知らせてくれたおかげで素早く撤退できそうです、楽進隊、于禁隊、李典隊も撤退を始めています」

 

華琳「・・・・・一刀には、また大きな借りが出来てしまったわね」

 

風「そうですね~・・・・・」

 

こうして魏軍は呉軍との衝突は一切せず撤退していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「そこをどきなさい!!!一刀!!!」

 

一刀「・・・・・どかない!」

 

一方の呉軍は、一刀に阻まれ侵攻できないでいた

 

一刀「頼む雪蓮・・・・・兵を退いてくれ」

 

雪蓮「・・・・・どうして!?どうしてそこまでできるの!?」

 

一刀「前にも・・・言ったはずだよ・・・・雪蓮・・・・俺は・・・・憎しみ合いは・・・・・嫌いだって」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

一刀「特に・・・・俺なんかのために・・・人死にを・・・出してほしくなんか・・・・ない・・・・だから・・・・・」

 

ドサッ

 

言葉の途中で気絶し一刀は狛煉から滑り落ちた

 

冥琳「北郷!!」

 

蓮華「しっかりして!一刀!!」

 

純夏「死ぬな一刀!!」

 

思春「北郷一刀!!」

 

小蓮「一刀!一刀!!」

 

明命「一刀さん!!」

 

祭「北郷!!」

 

穏「・・・・・北郷さん」

 

亜莎「・・・・・・そんな」

 

美羽「・・・・・北郷」

 

狛煉から落ちた一刀に呉の将達が駆けつけた

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

雪蓮は馬の上から倒れた一刀を見下ろすことしかできなかった

 

冥琳「・・・・・拙いぞこれは・・・・・雪蓮!!」

 

蓮華「お姉様!お願いです!ここは退いてください!!」

 

純夏「雪蓮!!これで一刀が死んだらあたしは一生あんたを許さないわよ!!」

 

思春「雪蓮様!!」

 

小蓮「お願いお姉ちゃん!!」

 

明命「雪蓮様!どうかお聞き届けください!!」

 

祭「策殿!!」

 

穏「雪蓮様、ここは退いた方が得策です」

 

亜莎「わたくしもそう思います!」

 

美羽「雪蓮!わらわからもお願いするのじゃ!!」

 

七乃「雪蓮さん・・・・・」

 

彩「雪蓮殿・・・・・・」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

呉の将達の表情を見て、なにより瀕死の一刀を見て雪蓮は

 

雪蓮「~~~~~~~~~っ!!・・・・・撤退よ・・・・・」

 

あまりに悔しい命令を出すしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮「ぐすっ・・・・・一刀ぉ・・・・・・ひっく・・・・・ごめんなさい・・・・・一刀ぉ・・・・・」

 

その後一刀は、3日間眠り続けて建業で一番の医者につきっきりで診てもらった

 

その隣では雪蓮がずっと一刀の手を握っていて、四六時中泣いていた

 

呉の将達は自分の母、孫文台が亡くなった日でも涙を流さなかった雪蓮が一刀が死にそうになっている事に涙を流していたことに驚いた

 

それほど雪蓮は一刀のことを愛していたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方華琳は、呉へ謝罪として暗殺を謀った兵士達の首と、使者として零、稟、風、凪、沙和、真桜を呉へと送ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもseigouです

 

少し遅れてしまいましたね

 

最近執筆をする時間が限られていてなかなか前に進みません

 

というわけで、今回は雪蓮暗殺未遂事件でした

 

よくよく考えてみると自分の書いている小説って戯曲っぽいような気がしてきましたね

 

というわけで次回もお楽しみに


 
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