「まてぃ!」
だ、誰だ!
「っ!」
「だ、誰だ!」
あ、盗賊の人と同じこと言いそうだった。
声に出さなくてよかった。
「たった一人の庶人相手に、三人掛かりで襲いかかる
などと……その所業、言語道断!」
やけに美人のお姉さんだ。
役者さんかな?
髪の毛青いのが似合うってすごいな。
胸元は大きく開いてるし、スカートも短いけどそこ以外は露出は多くないな。
ってか槍でけぇ。生で見たのは初めてだけど、あんなもんなのかな?
「そんな外道の貴様らに名乗る名前など、ない!」
勇ましいなぁ。
どうでもいいけど、三人掛かりじゃなかったら名乗ったんだろうか?
「ぐふっ!」
え
「な……っ! 何だコイツ! ぐはぁっ!」
お姉さん超強い。 まじ槍が見えない。
盗賊が血を流していないのは槍が偽物だからなのか、
お姉さんが峰打ちしてるからなのかさえもわからん。
「なんだなんだ。所詮は弱者をいたぶることしか出来
ん三下か?」
すごい大物っぽいな。
なんかやらせっぽい。
やっぱりドッキリなんだろうか。
でもいいかげん手が込み過ぎてるよなぁ。
「くっ……おい、お前ら! 逃げるぞっ!」
ああ、わからん。
「へ、へぇ……」
とりあえずドッキリだった時のために、
あんまりみっともないことはしないようにしつつ、
相手の機嫌を損ねないようにしよう。
「だ、だな……」
とか考えてる間に盗賊たちが逃げ出した。
「逃がすものか!」
そして誰もいなくなった。
「ちょ、待って下さーい」
慌てて追いかけようとすると、
「大丈夫ですかー?」
声をかけられた。
「怪我は……無いようだな」
また美人さんが出てきた。
まぁ一人は子供なのでかわいいって感じだけど。
「え、あ、はい。 どうも。 大丈夫です」
小さい方はなんかふわふわした感じの服だ。
そして頭に太陽の塔の模型のようなものを乗せている。
テディベアを持ち歩く少女みたいなものかな?
そして金髪だ……
いや、似合ってるけど。
美人さんの方はなんか秘書っぽいな。
パッと見普通だけどブレスレットがゴツイ骸骨だ。
パンクな人だなぁ。
この人は黒髪なんだね、パンクなのに。
「そうですかー。こないだ稟ちゃんが包帯全部使っ
ちゃったから、よかったですー」
そんな包帯使うような怪我したのか、美人さん。
盗賊にやられたのかな?
「……そうだったっけ?」
覚えてないのかよ。
「やれやれ。すまん、逃げられた」
青い髪の美人さんがもどってきた。
やたらでかいやつも逃がしたんだろうか。
あんまり機敏そうにはみえなかったけど……。
「お帰りなさい。……盗賊さんたち、馬でも使ってた
んですか~?」
金髪の子がきいている。
でも、近くに馬なんていなかったし、
馬に跨る前に追いつくだろう。
「うむ。同じ二本足なら負ける気はせんが、倍の数で
挑まれてはな」
えー
「まぁ、追い払えただけでも十分ですよー」
まぁ、そうだよね。
誰も怪我してないし、それが一番大事だよね。
「それにしても災難でしたね。この辺りは盗賊は比較
的少ない地域なんですが……」
少ないだけで居るのは居るんだ……
「ありがとうございました。 しかし、この辺りは山賊が出るんですねー。
初めて見ました」
お礼は言っとこう。
「ふむ? 山賊のいないところから来たのですか?
そういえば、変わった服ですがどちらの出身ですか?」
黒髪の美人さんが聞いてくる。
どうでもいいけどこの人の名前が稟ってことと、
青い髪の人の名前が星ってことしかわからん。
女の人を下の名前で呼ぶのは抵抗あるなぁ。
でも、自己紹介のタイミング逃したな。
隙を窺おう。
「えっと、京都市の伏見区に住んでるんですけど、
寝て起きたらここにいて。
ここがどこか教えてもらえますか?」
タイミングがつかめない。
自己紹介って難しい。
俺にもっとコミュ力があれば……。
「きょうとしのふしみく? 星ちゃん、この辺りにそういう地名
ってあるんですかー?」
どうでもいいけど基本女の子って下の名前で呼び合うよね。
「いや、聞いたことがないな。」
うん、うすうす察しはついてたけど、日本じゃないだね。
でもめっちゃ日本語通じてるしなぁ……。
やっぱりドッキリかな?
「あ、えっと日本って国から来たんです。
ジャパンって言った方がわかりやすいかな?」
「むー。 稟ちゃん知ってますか?」
「いえ、知りませんね。
あ、あとここは陳留という町の近くです」
そもそも日本を知らないらしい……
日本語喋ってるじゃんって突っ込むべきなんだろうか……
「ちんりゅうですか。聞いたことがないですねぇ……。
あ、遅れましたが、俺の名前は山田太郎です」
言えた!!
「これは申し遅れました。私は戯志才と名乗っております」
三国志っぽい名前だなぁ。
「程立と呼んでくださいー」
苗字だよね?
「趙雲と呼んでくだされ」
すごく……。 三国志です……。
程立も三国志の登場人物の名前なのかな?
いよいよドッキリっぽいな。
もう確定でいいかな。
でも、もしかしたら運命の神様のいたずらで、
女の子だらけの三国志の世界に迷い込んでるのかもしれないし!!
むしろ、そうだったら楽しそう!!
もうちょっと様子を見てみよう。
あれ? 戯志才とか趙雲ってそれでフルネームなんじゃなかったっけ?
「戯志才さんと程立さんと趙雲さんですか、
やっぱり日本ではあまり馴染みのない名字ですね」
「そうですか? 戯なんて特に珍しい性ではないんですが」
戯志才さんが答えてくれたけど戯が苗字なのか。
司才が名前だったら稟ってなんだろう。
「あれ? 戯が性なんですか。
戯志才で性なのかと思ってました。
さっき呼ばれていたのが名前なのかと」
「稟ちゃんですかー。 稟ちゃんというのは真名のことですよー」
マナってなんだろう。
字みたいなもんなのかな。
「マナですか。 知らない単語ですねぇ」
「真名の風習がない土地から来たんですか。
真名とは家族や親しい人しか呼んではいけない、神聖な名」
「その名を持つ人の本質を包み込んだ言葉でしてー。
親しい人以外は知っていても口に出してはいけないのですよー」
「もし許しもなく呼べば、頸を落とされても文句は言えませんな」
怖!!
そんなに呼ばれたくないなら隠せばいいのに!!
初見殺し過ぎるだろ!!
コミュ力の低さに助けられたな……。
「ずいぶん恐ろしい習慣ですね。
教えていただいて助かりました」
「いえいえー。考えたこともなかったですけど、
確かに真名のことを知らない人にとっては危険なものかも知れませんねー」
「……ふむ。まあ、後のことは……陳留の刺史殿に任せるとしようか」
「そうですねー」
「……しし?」
え? らいおん?
「ほら。あれに曹の旗が」
戯志才さん指さす方向を見れば、もうもうと砂煙を立ち上らせる騎馬武者と
その上にひるがえる大きな旗が見えてきた。
「……」
え? すごいいっぱい馬いるよ?
重厚感半端無い。
逆にドッキリ感が薄れてきた…。
え? ホントに運命の神様のいたずらなの?
神隠しとかにあった人ってこんな感じの体験してんのかな。
っていうか。
「皆さんもう行ってしまわれるんですか?」
超心細いんですけど……。
「すいません。 山田殿はかなり怪しい風体なので……」
「面倒事は楽しいが、官が絡むと途端に面白みがなくなるのでな」
「なので、自分で説明して身の振り方を相談してくださいねー。
でわでわー」
行ってしまった……。
しかし曹の旗か……。
たぶん曹操陣営だよな。
あれ? さっきの盗賊って黄色の頭巾だったけど黄巾党?
そんなことを考えてる間に騎馬武者は近づいてきて……。
「えー」
取り囲まれました。
威圧感半端ない。
つぶらな瞳だけど馬でかいし怖い……。
「華琳様! こやつは……」
「……どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年男と聞いたわ」
あとがき
たぶん普通の人はこんな感じになると思います。
華琳様がちょっとだけ出ました。
どうでもいいんですけど、初対面の女の子の名前って敬称つけても呼びにくいよね。
あと、稟って華琳様に仕官する前から髑髏装備してるよね。
でわでわーノシ
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華琳様がちょっと出ました。
そこまでです。
主人公は普通の人です。