第1章
『こらーっ、そこを歩いてるあんた達、この中に美少女、柴犬、神奈川県人がいたら、
私のところに来なさいっ!! 以上!!』
メガホンで道行く人混みに向けて大声で呼びかけている《超監督3(スリー)》の腕章が
恥ずかしいのは誰あろう、リーナお嬢様だ。
横浜の中華街まで出向いて、お嬢様が何をやっているのかと言うと、
とある事情から、地元、大須のテレビ局が深夜に放映する小ドラマのコンペに、
短編ムービーを出品する事になり、書店に行ってたまたま平台に置いてあって、
目にとまった小説を元にして、短編ムービーを作ってやろうと
スタッフ集めにのり出したわけ。
実は来なさいとか言いながら、この美少女、柴犬、神奈川県人のお三方には、
一度大須へ来て貰ったことがあり(某ホームページ5000人突破記念の撮影時に(笑))
その時からすでに目を付けていたので、大衆の面前で恥ずかしい思いをさせる
この、人集めは全くの蛇足だった。
『やあ~瞳ちゃんお久しぶりぃ~っ、突然だけど瞳ちゃん朝比奈ミクル役ね、よろしくっ!!』
『えっ、えっ、突然、何のこと!?』
『そんなハルヒからひどい目にあわされる役、瞳ちゃんに押しつけなくても、お嬢様が
ご自分でやればいいのでは?!』
『なに言ってるの、私は監督で大忙しなの。主演兼監督なんてぇのはクリントかタケちゃんに
まかせとけばいいの! それと、あんたに一つ断っとくけど、このハルヒ役は演技だからね』
いやいや、地でそのまんまですよ。
『あっ、香ちゃん、あなた長門ユキ役ね、それとあなたのゴスロリのメイド服
あれ、瞳ちゃんに貸してあげて』
『いいですよ』
香ちゃんはなにやら意味深にニヤリと笑い、手持ちのデジカメをゴソゴソ
やっている。
『うわ~っ、瞳ちゃん相変わらずグラマーね~!!、着せてあげる~。そりゃあえいえいっ』
『えぇーっ、香ちゃんの服って……、サイズ小さすぎて着れないよぉっ! ああっ、そんな
強引な……いやあぁぁ~っ』
パッッンパッッンながらも、それはそれでバッチリ似合ってるのはさすが瞳ちゃん。
『よぉ~しっ、これで正義のスーパーメイドの完成ね!! 後はNASAの開発部から借りてきた
極超小型荷電粒子銃を額に付ければ武装も完璧!!』
『リーナちゃんやっぱ恥ずかしいよぉ』
『しょうがないなあ、どうしても嫌なら妥協したげる。瞳ちゃん、ケロロだっけ、カエルの
衣装持ってたでしょ、あれ着てもいいわよ』
『ふぇ~ん、それはそれで嫌ぁ~っ、やっぱこれでいいですぅ』
カエルの衣装を着て、仲間達に見せていたのはいいけど、あとで冷静になったらひどく
恥ずかしくなったらしい。
お嬢様も、よくやらかしてるコスプレイヤーズ・ハイの精神的リバウンドって奴かな。
『それとピースちゃん、あんた三毛猫のシャミセン役ね、香ちゃんの肩にちゃんと
しがみつくのよ』
『アゥゥ?』
お嬢様、柴犬に猫役振りますか?
『あとは小泉くん役ね、うーん、工場長よろしく!! あと小泉くん役はレフ板持ちも兼任だから』
『光栄です。喜んでお引き受けしましょう』
何かと役得があるので大乗り気の様ですが菊丸さんホントに安請け合いしていいん
でしょうか? それに兼業している漫画の仕事もあるでしょうに。
『最後に雑用とナレーションのキョン役だけど、もちろん誰のことだか判ってるわね』
『あの、一番危険で疲れる役ですか? 僕はいつも、ホームズに対するワトソンの役で、
目立たず、控えめな役所だから今回は通行人役で………』
『あんたよハルロー!! あんたがキョン役に決まってるでしょっ!! よぉしキャステイングは
大体決まったわ。あと、足りないキャストは随時補充。さあっ、やるよぉ~っ!!!!』
こうして、なにやらとんでもないドラマが展開しそうな気配になってきた。
第2章
『ハルロー、今回、朝比奈ミクルの冒険の短編ムービーを作るにあたり、
必要な物って何だと思う?』
『友情・努力・勝利』
『なに寝言言ってるの、スポンサーよスポンサー。高一にしてはお金持ちの方だと思うけど、
私のお小遣いだけじゃフォローしきれないわよ。スポンサーにお金出してもらうの!!』
『そんな上手い具合に行くわけがーー』
『実はもう、私がスポンサー見つけて話つけてあるの。短編ムービーの中で
お店のCM流すって事で前金も頂いちゃった。(*^_^*)』
『はやっ!! 原作そのまんまじゃないですか!!』
『さあ、みんな行きましょ!!』
リーナお嬢様の後について、ぞろぞろ街中を撮影隊が歩いていくと禍々しい店の前に到着した。
『紀伊国屋銃砲店……って、なんですかここは?!』
『てっぽう屋さんに決まってるでしょ?! さあ、ハルローじゃないや、キョン、
カメラ回して回して!!』
僕がハンディカムを回し始めるとご主人の紀伊国屋さんが店から出てきた。
『ああ、リーナちゃんだっけ。せいがでるねぇ。それじゃあCMお願いね。
派手に宣伝してよ。ほんじゃよろしく』
挨拶が済んだらあっさり奥へ引っ込んでしまった。
『じゃあ、瞳ちゃん、この宣伝用のライフル持ってカンベ見ながらで
いいからこのお店のCMするの。試し撃ち忘れないでよ』
黒い魔法使いの格好をした香ちゃんが肩に柴犬のピース嬢をぶら下げて
紀伊国屋銃砲店のプラカードを持って、瞳ちゃんの横でスタンバイしている。
シュールな光景だな。
『ええっ、これ撃つの? なんか凄い大きいよ、立ち撃ちして大丈夫かなぁ。
うーん、それじゃあ始めるよ。 えぇ~っと、最近の社会情勢の悪化から、
一般市民の武器のけーたい、使用が国会で認められて、はや1年。
売り上げも前年比500パーセントオーバー。
まさにウナギ……じゃなかったコイの滝登りでぇ~す。
このお店のご主人紀伊国屋さんもウハウハなのでもっとウハウハになりたいそうで~~す。
えぇ~っとこれ、重っ…… なんかめっちゃ重たいんだけど……。
これはァ、ステアー HS.50対物小銃といいまぁーーす。
どのあたりが《小銃》なのかわかりませーーん。
一家に一丁あると安心で~~す。備えあれば憂いなしと思いまぁ~~す。
えっと、えっと、人に向けて撃たない様にして下さぁい。危ないでぇーす。
空き缶でも撃って我慢しましょう!、それじゃあ一発試し撃ちしまぁーーす。えいっ!!』
《カチャッ》
ズドッグァ~~~~ン!!!!!! キュキュゥーーーーーーン!!!!!!
『きゃうぁ~~~ぁっ!!』
ライフルのものすごい反動と煙で、体重の軽い瞳ちゃんは
後方に強制バク転してしまい、近くにあったカーネルサンダースおじさんの
持っていたチキンの入れ物を吹っ飛ばし、代わりに抱き止められた。
道ばたに置いてあった空き缶を狙って発射された弾丸は、ハズれたにも関わらず、
横を通り過ぎただけで、吹き飛ぶ時間も与えずに空き缶を粉砕して、近くにあった
消火栓を貫通し、たまたま横を通った銀行強盗が乗ったキャデラックのエンジンを
木っ端みじんにぶち壊した上に横倒しにしてようやく停止した。
あまりの衝撃音と水浸しの惨状に、近くのハンバーガー屋からホットドックをくわえた
しかめっ面した長身の刑事が慌てて飛び出してきて、あたりがパニック状態になってきた。
『みんなぁーっ、一時退却っ!! 急いでずらかれーーっ!! 』
お嬢様に言われるまでもなく、僕たち撮影隊は一目散に撤収した。
『はぁ、はあ、このくらい離れればいいでしょ、どう、ハルローじゃなかった、キョンいい絵
撮れたでしょ!? 正真正銘、衝撃映像よ!!』
『あまりの衝撃でハンディカム、ブレまくりじゃないですか!! 大体、現代版対戦車ライフルを
女の子に街中で撃たせるなんてハルヒだってしませんよ!』
『手ブレ機能ついてるんでしょ、安物買うからブレるのよ』
瞳ちゃんに撃たせる前に、誰かお嬢様を止めようというチャレンジャーはメンバーに
いないのか?という話なのだが、触らぬ神にタタリなしが統一した見解だった。
『よぉ~し、義理のCMも作ったし、よいよ本編に突入よ!! みんな覚悟決めなさい!!』
『秋○書店の顔を立てて、ここで叫ぶ台詞はもちろんただ一つ!!《覚悟完了!!》』
元気にシャウトしているのは小泉くんこと菊丸工場長。
ピース嬢の重みでつらそうな香ちゃんを初め、早くもグロッキー気味のメンバーの中で、
原作やアニメを見て、この後の役得を知ってるだけに一人、元気一杯なんですが、
果たしてそう上手くいくのかな……?
第3章
本編の撮影が始まってしまった。
原作及びアニメの朝比奈ミクルの冒険には
色々な名(迷)シーンがあり、猛スピードでストーリー展開されていたけど、
今回の朝比奈ヒトミの冒険の進行は、それをさらに上回るすっ飛ばした展開。
なにせ10分程度の短編ムービーだ。ハショるハショる。
大きな池のある公園でゴスロリのメイド服を着た正義のメイド朝比奈ヒトミちゃんが、
黒い悪の魔法使い宇宙人長門香ちゃんと対峙する場面がいきなりオープニングだ。
しかも最近のアニメ最終回によくある、時間がないからオープニングで主題歌
(この作品にもなんと主題歌がある(笑))を流しながら本編がスタートする例のパターンだ。
スターリング・ルミックスとかいう、ズームレンズのところに切り抜いた星がセロテープで
くっついた謎の《宇宙デジカメ》を瞳ちゃんに向けて香ちゃんは淡々とつぶやいた。
『彼(工場長のこと)は私がいただく。おまえは私の力によって血の池地獄に落ちるがよい』
『わ、私がいる限り、あ、あ、あなたの思い通りにはさせません!!……って、
恥ずぃよぉ~~!!』
真っ赤になる瞳ちゃん。
安心していい、瞳ちゃん。君だけじゃない。
聞いてる僕も恥ずかしい。
『いいわよ、二人とも、私の台本通りよ!!』
お嬢様、なに台本に書いてるんですか。
シュワンシュワンシュワン……
《宇宙デジカメ》から、まるでストロボのような催眠光線が発射されて、
香ちゃんの後ろから瞳ちゃんの仲間である真希さんと悠美々(ゆみみ)ちゃんに
笑い玉室長の3人がフラフラ前にゾンビのごとく歩いてきた。
『瞳ぃ、ごめんな~~、今おれ操られてるんだってさ。笑えるよな』
『瞳ちゃ~んごめんなさ~~い、でも瞳ちゃんに触れるって聞かされて操られに
来ちゃったぁ~~』
『私は操られているのだ~~私は操られているのだ~~私は操られているのだ~~』
『香さん、な、なんてことを……、真希さん正気に戻って下さい!!』
思わず役になりきって叫ぶ瞳ちゃん。
『パッッンパッッンのメイド服着たおまえに正気に戻れって言われてもなぁ。
しっかし似合ってるぜ。ププッ』
笑いをこらえて涙目の真希さん。
ズイズイ前にやってきた3人に抱えられる瞳ちゃん。
『みんな、何するの、や、やめて~~!!!! わーーっ!!! 』
悪のりした3人に桟橋から思いっきり池に放り込まれてしまった。
ただ悪のりしすぎて勢いを付けすぎた3人が瞳ちゃん共々、池にはまって
しまったのは、ちとマヌケだったけど。
『よぉ~~し、お姫様だっこだぁー(笑)、俺の…いや、小泉の出番だァーー!!、
どうしたのですか、ヒトミちゃん……って、うぉぉぉぉぉっ!?』
意気揚々と現れた菊丸工場長の前に想定外の光景が現れた。
ヒトミちゃんは実に楽しそうに悠々とクロールで泳ぎまくっていたのである。
『ちょ、ちょっとそこは溺れなきゃいかんじゃないかっっ!!!!、
それで僕がだっこして運んで、その後お風呂に入れてあげて、着替えさせて
寝ているところをキスする手はずで………って
き、君は一体そこで何をしているですかっ!!?』
凄く不満な表情で泣き叫ぶ菊丸工場長。
『アハハハ、あー、気持ちよかった。よいしょっと』
自分一人でさっさと桟橋に上がって元気はつらつな朝比奈ヒトミちゃんだった。
『しっ、しまった!! 瞳ちゃんは運動神経抜群だった!! おだやかな性格につられて
つい忘れてた!! ちくしょぉぉーーっ!!』
ところがこの後、菊丸工場長の誤算は、僕まで巻き込んで予測不可能な結末に
向かって転がっていくのだった……
第4章
カチンコ代わりにメガホンをバコンと叩いてお嬢様が叫んだ。
『カァーット!! 次のシーン行くよ。それじゃあ、瞳ちゃん、香ちゃん、今度はその場で
トォーーっ!!とか言いながら、空へ向かってジャンプして!! あとで編集するから』
『そ、そんじゃあ……とぉっ!!』
『とぉ』
ピョコンと跳ねる瞳ちゃんと香ちゃん。
『よーし、じゃあ撮影場所チェンジね! みんなついてきて』
今度はお嬢様のツテでレンタルしてきた大型ミニバン(ストリーム?)に
みんなで乗り込み、20分ほど走り続けると、有刺鉄線のフェンスで囲まれた
大きな採石場に到着した。休日らしく人気はない。
入り口の看板に≪立入禁止。危険。入ったら死ぬで≫と書いてある。
『どうせお嬢様のことだから、ここで撮影する気なんでしょうけど、なんか物騒なこと
書いてありますよ、いいんですか?!』
『いいに決まってるじゃない、気にしない気にしない。大体、このメンバーで簡単に
くたばりそうな人いると思う?』
『そりゃあ、僕以外マシンガンの弾撃たれても当たらない様な人たちばっかり
揃ってるけど……』
『ならいいじゃない。時間オしてるんだから、さっさと中に入って撮影するよ。
ガンガン、マイてくからね!!』
昼1時から撮影初めて1時間しか経ってないのにもう押して巻き入るんですか?
リーナ超監督3様には《ティク2》という概念はないらしい。クリントイーストウッドも
ビックリの超速撮り監督だ。
お嬢様は警報装置を解除して、懐から、どこかで見たことがある、凄く斬れそうな
大型ナイフを取り出し、峰の部分に付いているギザギザの刃で太い有刺鉄線を
サクサク裁ち斬り、メンバー共々、ダイハードの悪役がハイテクビルに侵入するが
ごとく、採石場内に颯爽と侵入した。
あまりの手際の良さに真希さんがすっかり感心していた。
最初お嬢とか呼んでいたのに今では《リーナちゃん》になってる。
お嬢様は今回初めて真希さんに会ったんだけど、いい友達になれそうだ。なんか
只者じゃなさそうな女(ヒト)なのに。困ったもんだ。
『さあて、瞳ちゃん、私が額に貼り付けた緑色のビームランプね、NASA開発部に、
瞳ちゃんが新発明のモニターのプロだって話したら、喜んで貸してくれた宇宙開発用の
優れ物なの。 あっ、不安げな顔しないでいいわよ。軍の秘密兵器ってわけじゃないから安心して。
それでね、音声操作で、なんか良くわかんない光線がドバっと出るらしいの。
《ヒトミビーム》って叫ぶと中くらいの光線が出て
《ヒトミ・ファイナルアルティメットビーム》って叫ぶと最大出力で光線が出るの』
『うん、わかった。モニターのプロか……、なんかカッコイイ響きがするね。頑張る!!』
モニター……、良い言葉だ。早い話がモルモ……、いや、ここでそれを否定するのは
やめておこう。今回の主演女優と、とり巻きおじさん2名の日常を全否定することになる。
『シーン3は公園から飛んできて、採石場に降りた朝比奈ヒトミと長門香が対峙する
最終決戦シーンね。セリフは車の中で教えたとおり。 ハルローの後ろで工場長は
レフ板持って立っててね。それじゃあ始めるわよ、シーン3、ア~~クション!!』
しかし大変だ。
撮影用の台車やレールなんてないから当然レフ板とカメラ持ちは画面に映る
人物の間をなるべく手持ちの道具を揺らさず大急ぎで移動する必要がある。
『よいよ、最後の決着をつける時が来た』
『私は負けません、小泉君も地球も守って見せます!! 受けてみなさい正義の光線、
ヒトミビィーーム!! へやっ!!!!』
ズバーーーッ!!
危険を予知して慌てて伏せた香ちゃんと、カメラ持ちの僕の上を通り過ぎた
殺人光線は、レフ板を掲げた工場長のレフ板と被っていた帽子を綺麗に真っ二つにし、
そのまま近くの巨岩まで熱したフライパンに入れたバターの様に溶かし斬っていた。
さすがに瞳ちゃんとリーナお嬢様以外の撮影メンバーは無言になり背筋が凍りついた。
『あははは、なんかこれ面白ーいっ、ヒトミビィーーム!! たりゃっ!!』
ズバーーーーーッ!!
みんなの慌てぶりと破壊力が思ったよりスカッとして楽しくなってきたのか
ヒトミビームが止まらない。
いくらここが広いとはいえ僕達がいることを忘れないように。
『それっ、ヒトミビィーム!! ヒトミビィ~~ム♪』
ズバーーーーーッ!!
ズバーーーーーッ!!
ズ…ドッカーーーン!!!! ズゴォーーッ!!!!
突然、大爆発が起こった。
『きゃははは、何これーっ、爆発したよ、面白ーい!!』
『休み前に作業員が仕掛けたダイナマイトに発火したのね
さすが業務用凄い!! 最高!! ちゃんと撮りなさいハルロー、この大スペクタクル!!』
瞳ちゃんとリーナお嬢様は大喜びだ。
子供の頃、ヒーロー特撮物のオープニングの背景で、もの凄い黒煙が登るのを
よく見たけど、まさか自分が当事者になるとは思わなかった。
恐ろしい爆煙に爆音、それに爆風と衝撃が押し寄せてくる。
『ひ、瞳ちゃーん!!、ちよっと調子に乗りすぎーっ!! やめてくれーぃっ!!』
『あははははーーっ!!』
ドドドドド!!!!
駄目だ、爆音がうるさくて聞こえてない。
中止のゼスチャーも煙で隠れて伝わらない。
『よぉーし、NASAの力を借りて今必殺の、《ヒトミ・ファイナルアルティメット
ビィーーム!!!!》』
ドババーーーーーッ!!
『うわぁぁぁーーっ!!』
ズ…ドッカーーーン!!!! ドッカーーーン!!!!!!!!
『無念』
敵の長門香といっしょに全撮影メンバーが吹き飛ばされ、
ここで撮影は中止になった。
第5章
大騒ぎのグダグダがあって、数日後、僕と香ちゃんは映像編集パソコンを使って
みんなで撮った10分程度の映像データを切り貼りして編集していた。
しかしいくら短編ムービーとはいえ無茶苦茶な内容だ。
爆発メインのストーリー本編が5分弱(注.オープニング含む)
紀伊国屋銃砲店のCMが3分。これでは間が持たないから、
残りは香ちゃんの≪秘蔵瞳ちゃん映像≫と、僕が大須で撮った瞳ちゃんと
リーナお嬢様の≪24時間密着映像≫から厳選した映像をつないだものが12分。
う~む、こんな短編がテレビ局のコンペを通過して、深夜の小ドラマとして
放映されるんだろうか?
まあ、いい。リーナお嬢様の気がすむまでやってみよう。コンペ落選の通知でも
くれば二度とこんな事しないだろう。
エピローグ
結果からすると僕の予想は大ハズレだった。朝比奈ヒトミの
冒険はテレビ局のコンペで、そのあまりにも斬新すぎる内容(笑)が
大ウケで楽々通過、約20分のこの作品は放映されるやいなや、
視聴者のハートを鷲掴みにし(笑)、
深夜放送にも関わらず視聴率15%をたたき出しホームページも
初日でカウンター50万人をヒットした。
テレビ局の担当が原作の出版社に、パロディコントのつもりで見せたところ
大ウケで正式にDVDを出すとか、第2弾のスポンサーになるとか大きな話になってしまい、
正直マネージャーの僕もとまどっているところだ。
でもDVDなんか販売して大丈夫なんだろうか。
とりあえず僕は一番で予約したんだけど。
大須の事務所でパソコンに向かい、表計算ソフトをはじいていた僕のそばへ、
リーナお嬢様と瞳ちゃんがやってきた。
『先日はども!! お久しぶりでーす。おじゃましま~す!!』
『へっへ~っ、どうねハルローくん、スーパー監督スリーの腕前は?
もうあと、瞳ちゃんとフュージョンするしかないぐらい凄いでしょ?!』
『ヘイヘイお見それしました』
『この勢いで第2弾も作るわよっ、今度はアカデミー賞取るわよ。
そんで辞退するの!! 今流行ってるんだから。ねっ、瞳ちゃん』
『うん!』
うん!って……
『じゃあ、第2弾の原作は何にする?《笹の葉ラプソディ》なんてどうかな?』
『リーナちゃん、《孤島症候群》とか《涼宮ハルヒの消失》なんかもいいんじゃない?』
2人ともいい加減にして欲しい。
『《サムディ イン ザ レイン》にしなさいっ!!』
朝比奈ヒトミの冒険
【劇終】
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【ご注意下さい】
このお話は以前、私が菊丸秘密工場の掲示板に書き込んだもので、3つの作品をひとつにまとめてパロディ化した前代未聞の作品です。
リーナお嬢様シリーズと菊丸秘密工場の笑い玉制作室及び、涼宮ハルヒの憂鬱の《朝比奈ミクルの冒険》のアニメ・原作小説をある程度知らないと何のことやら訳が判らず楽しめないという、見る人をかなり限定するお話です。
読まれる前に、ある程度の視聴をオススメします。
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