No.197300

リーボーフェンの平和な日々(聖霊機ライブレード)

いず魅さん

ライブレ同人誌『ハーモニーラヴ』より、戦闘を離れて平和な日常風景を描いてみました(^^)

2011-01-22 23:42:38 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1004   閲覧ユーザー数:995

 ここ最近、リーボーフェンのクルーにとっては平和な日々が続いていた。ゼ=オードもこのところ

 

なりを潜め、テロリストやジグリム軍も何も仕掛けてくる様子はなかった。

 

 クルーたちは思い思いに平和でまったり~な日々を過ごしていた。

 

「ニャンかこう平和なのも退屈ニャもんね」

 

「まあ、な」

 

 生あくびを噛み殺してヤマトが問えば、ちょっと不謹慎かなと思いつつも頷いてしまうトウヤで

 

あった。

 

「ニャンか面白いことニャいかしらねー」

 

 部屋にいてもつまらないので、ふたりはぶらぶらと艦内を回ってみることにした。

 

 カスミの所へでも、と一瞬考えたが、近頃はライブレードのコクピット争奪戦も激しさを増して

 

来ており、女の子たちの視線が痛い。誰か特定のひとりと必要以上に仲良くしようものなら、どん

 

な報復が待っているのやらわかったもんではない。今の所、トウヤ自身気持ちが固まらないため

 

に、日替わりランチではないが出撃の度にパートナーをローテーションしている始末であった。

 

 トウヤはぶらぶらと艦内を巡りながら、パートナーの女の子達をひとりひとり思い浮かべてみ

 

る。

 

 まず、カスミ。幼馴染で一番付き合いが長いから、故に気心が知れている。一緒にいてとても楽

 

だ。だからといってカスミのことが好きかというと、異性としてみるには余りに近しすぎる存在、

 

というのが本音である。

 

 次は・・・そうだな。アイ。ヘコむことを知らない先天性お気楽女子コーセーである。アイか・・・

 

な、なんか尻に敷かれそうかも(滝汗)

 

 我ながら飛躍した発想だとは思ったが、事実なのだからしよーがない。

 

 ユミール・・・一回りは年上だが、時にはそんなことを感じさせないくらい子供っぽい一面を見せた

 

りする。姉のようでいてそうではない。とても気になる大人の女性である。

 

(ユミールから見たら、俺なんかすっげーガキなんだろうな。眼中になんかねーかも)

 

 うー、いかん、なんかネガティヴな気分になってきやがったし・・・・・・。

 

 それじゃあ、セリカは? アガルティア王国の王女の癖に全っ然らしくねーヤツで。メカフェチ

 

で元気がよくて。そして誰よりも心配性で。以前、口移し(平たく言っちまえばキスなんだが)で

 

プラーナを補給してもらったことを思い出して、トウヤはひとりで真っ赤になった。

 

(まさか、ああ来るとは・・・)

 

 全く予想だにしないセリカの行動だった。

 

「ねー、ちょっとちょっとトウヤ」

 

「あん?」

 

「あん? じゃニャいわよ。何意味もなく同じ階をぐるぐる歩いてんニョよ。一体どこへ行きたい

 

わけ?」

 

 思いっきり自分の世界に浸っていたトウヤは、ヤマトの呆れたような声音にハッと我に返った。

 

「いや、どこへって言われても、なあ」

 

「呆れたわねー」

 

「うー」

 

 今もってコイツには頭が上がんねえな。トウヤは"自称姉"のヤマトをちらりと見て首を竦めた。

 

『じゃあ、おまえさんはどんなのがタイプなんだ?』

 

『い、いや、俺は、だな』

 

 食堂の前を通った時に、中から賑やかな声が聞こえ、トウヤは思わず足を止めた。

 

『僕は興味ないんだな。なんせ僕には心に決めた女(ひと)が・・・』

 

『おまえにゃ聞いてねーよ!」

 

 クロビスとフェイン、それにデロックもいるらしい。

 

「ニャンの話をしてるのかしら。面白そうだから入ってみニャい?」

 

「ああ」

 

 ヤマトに勧められるままにトウヤは食堂に足を踏み入れた。ヤマトはクロビスに気を遣ってか、

 

素早くトウヤの懐に潜り込む。

 

「いつも悪いな」

 

「ニャンのこれしき」

 

「よう、トウヤじゃねーか」

 

 トウヤに気が付いたクロビスが声をかけてきた。

 

「随分盛り上がってるようだが何の話をしてたんだ?」

 

「ふふふ・・・なーに、男同士の健全な話だ」

 

「健全、ですか・・・」

 

 アーサーが深~いため息をついて肩を竦めた。

 

「リーボーフェンギャルズの品評会、とでも言おうか」

 

「り、リーボーフェンギャルズぅ?」

 

 トウヤは全身の力が抜けそうになった。

 

 この間、コルネル村で女湯を覗いて、ユミールに散々説教を食らったばかりだというの

 

に・・・・・・。

 

(メゲないヤツだよなー)

 

 尤も、らしいと言えばらしいのだが。

 

「オホン、で、俺としてはユミールかメリッサあたりがよろしいのではないかと・・・」

 

「メリッサ?」

 

 その名前にすかさずシィウチェンが反応する。

 

「い、いやぁ、ほれ、メリッサは魅力的だからな。だから、シィウチェン、おまえと言うイケてる

 

彼氏もいるワケで・・・」

 

「ふ、当然だ」

 

「クロビス、ユミールさんとメリッサさんのどこが具体的に良いと?」

 

 アーサーの冷静なツッコミに、クロビスはここぞとばかりに声を張り上げた。

 

「ズバリ、胸だっっ!! ふたりとも優に90は超えてると見たっ!」

 

「待て」

 

 怒りのオーラに包まれたシィウチェンが、背中を預けていた壁からゆらりと身を起こした。

 

(地雷を踏んだな)

 

 誰もが心でそう思った。

 

「クロビス、おまえはメリッサをそんな破廉恥な目で・・・」

 

「わー、落ち着け、シィウチェン! 男なら巨乳が好きなのは当然じゃないかっ?! おまえだっ

 

て好きだろー?」

 

「婦女子の胸の価値は大きさではない! か・た・ちだっっ!!!!!!!!!」

 

(おい・・・・・・・)

 

 シィウチェンって、一体・・・

 

 クロビスをビシリと指差して叫ぶシィウチェンの姿に、トウヤは激しい眩暈を覚えた。

 

「ト、トウヤ、おまえは誰がタイプなんだ?」

 

 救いを求めるようにクロビスが擦り寄ってくる。

 

「な、なんで俺に振るよ?」

 

「ライブレードの操者としてそろそろパートナーを決めなきゃいけないんじゃないのか?」

 

 ここぞとばかりにトウヤに話題を振るクロビスであった。

 

「いや、俺は・・・。第一、誰かひとりに決めるなんて」

 

「ふん、ちょっともてるからっていい気になるなよ。何故におまえばかりが・・・」

 

 フェインの鋭いツッコミにデロックも便乗する。

 

「そーなんだな。メルヴィまで守備範囲なんてロリコンなんだな」

 

「てめーが言うな!」

 

 ついにトウヤはキレた。

 

「カスミはおまえなんぞに渡さん!」

 

 フェインが再びトウヤに食ってかかる。

 

「カスミとは別になんでもねぇっ!!」

 

「じゃあ、誰が好きなのだっっ!」

 

 喚くフェインにトウヤも負けじと怒鳴り返す。

 

「ひとりに決められねーって言ってるだろーがっっ!」

 

「優柔不断」

 

 それまで黙っていたアーサーがポツリと言った。

 

「女性の敵ですね」

 

「な!?」

 

「そういう不誠実な態度は、相手に対して大変失礼なことです。私はフェミニストではありません

 

が、こう言う事柄に対しては・・・云々・・・」

 

 来たーーーーーーーーーーーーッ!!

 

 アーサーの薀蓄の始まりである。

 

 男たちは蜘蛛の子を散らすように食堂を飛び出した。出遅れたトウヤが慌てて踵を返そうとした

 

途端、アーサーに首根っこを掴まれる。

 

「どこに行くのですか? 話はまだ終わってませんよ。大体、誰にでも優しいということは裏を返

 

せばですね、八方美人で誰にでもいい顔をしているということであって、それは逆に相手を傷つけ

 

てしまうことに・・・云々・・・」

 

「トウヤ~~~」

 

 ヤマトがぴょこりと顔を出して、泣きそうな声を上げた。

 

「おう」

 

 アーサーは一度話し出すと、数時間は延々と話し続けるハズだ。

 

 これじゃあ、ライブレードで出撃していた方がよっぽど楽だと、トウヤは心から思うのだった。

 

 

 

 

                                ~END~


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択