No.196613

真説・恋姫演義 ~北朝伝~ 幕間の五

狭乃 狼さん

北朝伝拠点、第五弾。

今回は白亜こと劉弁のお話です。

明かされる衝撃(?)の事実とともに、

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2011-01-18 18:14:53 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:23570   閲覧ユーザー数:17853

 「……侍女の服?」

 

 「うむ。おぬしの知識の中に、良い意匠の物はないかとおもうてな」

 

 それは、虎牢関を出る少し前のこと。突然、夜中に劉弁に呼び出された一刀は、彼からある相談を持ちかけられた。

 

 侍女用の、良い意匠の服の案。そんなのが無いかというのである。

 

 「……そりゃ、無いことは無いけど。どうすんだい?そんなもの」

 

 「……月じゃ」

 

 「月?」

 

 月、とは、先の相国である董卓のこと。その彼女が、侍女の服と何の関係があるのか。

 

 「洛陽を奪還した後、月には朕の側仕えをして貰おうと思っておる。とはいえ、今までの衣装は何かと目立つでの。かと言って、普通の侍女の服ではつまらん。そこでじゃ、一刀の天の知識で何か新しいものをと、そう思うてな」

 

 少々長い台詞を、早口で一気にまくし立てる。……すっごく生き生きした顔で。

 

 「ん~。……侍女ってことは、ようはメイドさんだよな……。何か、書くものってある?」

 

 「おう。引き受けてくれるか。ちと待っておれよ」

 

 一刀の返事に嬉々とし、劉弁はいそいそと机のほうに向かう。その引き出しの中から、何枚かの紙と、筆と硯を一刀に渡す。

 

 「ありがと。ちょっと待ってくれな。すぐにいくつか描いてみるから」

 

 「うむ」

 

 サラサラと。

 

 手馴れた感じで服のデザインを描き始める。それを見た劉弁が、

 

 「……随分手馴れておるの。天界でもやっておったのか?」

 

 「……デザインそのものは、子供のころから好きで描いていたからね。さすがに、造ったことまでは無いけど」

 

 別にレイヤーってわけじゃないし。と、そんなことを言いつつ、それを書き上げていく。レイヤーという言葉が何のことかはわからなかったが、劉弁はとりあえず、黙ってそれを見守る。そんな劉弁の視線を気にしつつも、半刻ほどして、一刀は四・五枚のデザイン画を描きあげた。

 

 「……この位、かな?うん。我ながらいい感じのメイド服だ」

 

 「めいど……?侍女のことか?」

 

 「そだよ。……じゃあ、はい。後はここから、白亜が好きなのを選んでくれ」

 

 「おう。すまんの、時間をとらせて」

 

 ホクホク顔でそれを受け取り、一刀に礼を言う劉弁。

 

 (……月に着せるって割には、なんか、随分嬉しそうだけど……。実は自分で着てみるつもり、とか?……ふむ。白亜のメイド姿か……やべ、ちょっと、可愛いかも)

 

 劉弁が、自身のデザインしたメイド服を着ているところを、その脳内で再現してそれに思わず萌える一刀。だが、その頭に浮かんだ姿を、あわてて脳内から消し去る。

 

 (いや、まてまてまて!白亜は男!そう、男なんだ!断じて俺には、”そっち”の趣味は)

 

 「……どうしたのだ、一刀?急に一人で悶えおって」

 

 「いへ?!いや、なんでもない!なんでもないよ!うん!じゃ、じゃあ、俺はこれで!うん!おやすみ!」

 

 そそくさと。挨拶もそこそこに部屋を出て行く一刀。それを見送った劉弁はというと。

 

 「……どうしたのじゃ、一刀のやつ。顔を真っ赤にして。……熱でもあるのかの?」

 

 一刀の苦悶など知る由も無く、ただ、首をひねるのであった。

 

 

 

 それから数日後。

 

 

 炎上した洛陽から、旧都・長安への遷都が決まり、劉弁は妹の劉協や、元・董卓軍の将兵たちとともに、そちらへ遷ることとなった。

 

 

 連合諸侯も解散し、それぞれの領地へと戻っていく。そこにはもちろん、一刀も含まれる。その一刀と硬く握手を交わし、次の再会を約して、劉弁は長安へとその歩を進め、二日後には新都に入った。

 

 そして、その日の深夜。

 

 

 「ふ~む。こっちが良いかのう……。いや、こちらもなかなか……いや待て、これも捨てがたい……」

 

 その手に”例の”侍女服の試作品をいくつか持ち、姿見の前で自身の体に当てて悩んでいる、劉弁の姿があった。なお、それらの試作品を作ったのは、王凌である。……夜な夜な夜なべしての、力作だそうである。

 

 「どれもなかなかに可愛らしいの~。一刀の話では、これを普段着にしておる者たちも、天の世界にはごろごろしておるらしいが。……気持ちはわからんでもないの」

 

 注(一刀の捏造です。

 

 「どれ。こうして眺めているだけもなんだしの。実際に着てみるとするか」

 

 そう言って試作品のメイド服を寝台の上に放り投げ、自身の着ている衣装をするすると脱いでいく。

 

 すらりと伸びたその手足。背はさほど高くないものの、均整の取れた、細身のその体。そして、胸に巻かれた”さらし”を、しゅるりとほどく。すると、その下から、豊かな二つのふくらみが現れる―――。

 

 「……また少し、大きくなったきたの。まったく、背は伸びんとこんなところばかり大きくなりおる」

 

 そう。

 

 劉弁、彼は、いや、”彼女”はれっきとした”女”であった。なぜ、男の姿をし、男として振舞っているのか。それは一重に、周りに侮られないため。

 

 

 彼女の父である霊帝、さらにはその前の、前の皇帝の代から、宮内にはびこりだした、宦官という名の寄生虫たちにより、皇帝は名ばかりの”お飾り”にされてしまった。

 

 権威はあっても、権力は無い―――。

 

 後世になって成立する、立憲君主、などといういいものではなく、君主という名のただの人形。

 

 ましてや、次期皇帝たる皇太子が女人とあっては、それこそ利用される存在以外の何者でもなくなってしまう。

 

 彼女はそう考え、女であることを隠して、今まで生きてきた。この事を知るのは、母である何太后と、妹の劉協、そして幼馴染である王凌の、三人のみ。

 

 「……なぜ、朕は女子に生まれてきたのかの……。一刀のいうように、”向こう”の朕のように、男として生まれておれば……」

 

 と、そんなことを考えいると、頭の中に、一刀の姿が浮かんできた。

 

 「……いや、まあ。……男子であったなら、こんな気持ちも味わえなんだか。そこのところは、女子であることに感謝すべきかの」

 

 一刀のあの笑顔。

 

 それを見た瞬間、劉弁は思わずどきりとした。平静を保つのがやっとという位に。”それ”が、世間で言うところの”一目ぼれ”というものだったと気づいたのは、洛陽に戻ったその日の夜のこと。

 

 「……いつか、この事を打ち明けることのできる日が、来るといいがな……。ふふ。これを知ったときの一刀の驚く顔が、目に浮かぶようじゃ」

 

 くすくすと。

 

 目を見開いて唖然とする、一刀のその顔を想像しつつ、劉弁はほほを紅くして笑う。

 

 「……くしゅっ!……いかん。よく考えてみたら、素っ裸のままだった。ま、今日のところはこのまま寝るとするか。あれは明日にでも、月に渡すとするかの」

 

 寝着に袖を通し、寝台へともぐりこむ。そして仰向けになって目を閉じ、そのまぶたに一刀の顔を思い浮かべる。

 

 「……おやすみ、じゃ。一刀」

 

 劉弁は夢の中へと入っていく。”友”であり、”最愛の人”である一刀と、その中で楽しく語らう。そんな、ささやかな幸せに包まれた、その夢の中に。

 

 

 いつかそれが、現実のものとなることを願って……。

 

  

                              ~了~

 

 

 

 てなわけで、ちょっと短いですが、白亜の拠点をお送りしました。

 

 輝「なんか、すごいこと思い切りぶっちゃけてるけど」

 

 由「ちょっと早すぎちゃう?ばらすん」

 

 そーおもったんだけどね。まあ、読者の皆様は、大体予測済みだとおもうし。

 

 瑠「いいですけど。・・・・・で、白亜さん、これからどうなるんでしょう?」

 

 それは今後の展開をお楽しみに、ってことで。一刀に食われる日が来るかこないか。おたのしみにww

 

 

 さて、次回から物語りは第三章に入ります。

 

 輝「それぞれの領地へと戻った諸侯」

 

 由「それぞれの今後はどうなるのか?」

 

 瑠「それでは次回、真説・恋姫演義 北朝伝」

 

 第三章、序幕にて、お会いしましょう。それではみなさん、

 

 

 『再見~!』

 

 

 

 

 


 
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