とある日の夜である。
「………」
イカロス達エンジェロイドは智樹の家の屋根に居た。
「……」
エンジェロイドは眠らない。正確には眠れないと言ったほうが良いかもしれない。
そして眠らないが故に夢を見ることを禁忌としてきた。
だがそれは第一世代のエンジェロイドに当てはまることであり、第二世代であるカオスは禁忌である夢を見ることが出来る。
しかしそんなカオスもイカロス達と一緒に起きていた。
そこに一人の男が声をかけてきた。
「よ」
下から声が聞こえてき、イカロス達が下を見る。そこには秋山が居た。ついでに何故かアストレアも居た。
「秋山さん、それにアストレア」
「何か用?」
「用がなくて俺が声をかけると思うか?」
「だから何の用よ?」
「まあとりあえず降りて来い。出来れば俺は家の中に入りたいんだが……」
「先輩~、寒いです~」
「分かりました」
イカロス達が下に降りて来て、家の玄関の鍵を開け、秋山とアストレアを家の中に入れた。
「それであんた達何の用?」
「私は特にないです。秋山に呼ばれてきましたから」
「用というのはな、お前達を眠らせてみようと思った」
「は?」
エンジェロイド全員が同じことを思った。
「あんた正気なの? 私達エンジェロイドは夢を見ることはタブーなのよ」
「第一私達、眠れませんよ」
「よくある言葉がある。『約束、ルール、タブーは破るためにある』」
「それって良い意味では……」
「あのな、要は使い方だ。この言葉は良い破り方と悪い破り方がある。まあそれを判断するのは個々それぞれだからなんとも言えんが、俺は良い意味で破ろうと思ってる」
「どうやって?」
「俺を何だと思ってる? 『邪悪なる闇の魂』の力を持ってる人間だぞ。それくらい造作もないぜ」
「でも私達が眠っていることがばれたら…」
「安心しろ。そうならないためにも俺が居る」
秋山が指を鳴らす。すると家を中心に何らかのフィールドが展開され、フィールドはすぐに消滅した。
「今この家をこの世界に属さない空間にした。これならお前達が寝た事はこの世界でばれることはない。
例え誰かに言ったとしても世界自体がそれを認識してないから調べる事は出来ない。安心しろ」
「本当に大丈夫なの?」
「お前は夢の世界にいけるから、あまり問題ないだろ」
「ところで私達をどうやって眠らせるんですか?」
アストレアが秋山に聞いて来た。
「簡単だ。お前達の意識を人間が眠っているのと同じようにするだけだ。
複雑な仕組みとかは俺もよく分からん。感覚的にやってるからな」
「そう……」
「まあそれはそうと……」
秋山は適当に布団を召還し、四人分のふとんを敷いた。
「とりあえず布団に入って寝ろ。ああ、後な……」
「?」
「お前達が見た夢、俺特製のダイブゲームで見れるようにするからな」
「そう…」
「ついでに俺の夢も見せるつもりさ」
「あんたも寝るの?」
「ああ」
秋山はエンジェロイド達と違い、眠ることが出来る。
それでも秋山は邪悪なる闇の魂の力により、眠らなくても良い体になっている。
しかし秋山は力を手に入れる前から眠ること自体が好きだったので、よく夜は寝ている。
「さっきも言ったが、とりあえずは布団で寝ろ」
「はい」
イカロス達は布団に入る。
「それじゃあ……」
秋山はイカロス達の額に手をやる。するとイカロス達は機能停止のように眠った。
「さてと、俺も寝るか」
秋山はイカロス達の眠る部屋から出て行き別のところで寝ることにした。
ダイブゲームの機械を操るイカロスとニンフ。
ダイブゲームの穴を見る智樹。
ダイブゲームの穴から出てくるアストレアとカオス。
智樹に抱きつくカオス。
「天使達の見た世界(夢)」
タイトルが上から降ってくる。
ダイブゲームの穴から歩いて現れる秋山。
翌日。
「ふぁ~あ……」
智樹が目を覚ます。
智樹が横を見るがイカロスが居ない事にすぐに気付く。
智樹はいつもイカロスに起されているのだが、そのイカロスが居ないのだ。
「あれ? イカロスが居ない。それにそはらも…」
イカロスが起さなくても隣の家に居るそはらが家にやってくるのはいつものことである。
というよりイカロスが来る前はそはらがいつも起しに来ていた。
そはらはイカロスが来てからも智樹の家にいつもやって来る。
そんなそはらも来ていないのに智樹は若干不審がった。
「どうしたんだ?」
智樹が布団から出、2階にある自室から1階に降りる。
すると1階にある部屋の襖が全て閉じている居る事に気づく。
「なんだ?」
智樹が襖を開ける。
その部屋にいたのは既に起きていた秋山であった。
「よ」
「よっじゃないでしょ! 何でうちに居るんだ!」
「お前が寝てる間に用があってな。その用の一環で俺はこっちに寝てたんだ」
「…それはそうとイカロスは? それにニンフにカオスも…」
「あいつらは隣の部屋で寝てるぞ」
「へ?」
秋山が部屋から出、イカロス達が寝ている部屋の襖を開ける。
「なんじゃこりゃ? イカロス達、ひょっとしてどこか悪いのか?」
「そうじゃないさ。寝てるだけだ」
「寝てる? エンジェロイドは眠らないんじゃ……」
「俺の力で眠ってるんだ。そんでもって今この家は俺の隔壁フィールドの中にあるから誰も入れん状態になっている」
「そはらが居ない理由って…」
「単純にフィールドに邪魔されて入れないだけだ。ま、それはそうともう起しても良いだろ」
秋山が寝ているイカロス達の額に手をやる。
するとイカロス達は目を覚ます。
「……」
「イカロス!」
「おはようございます、マスター」
「おはよう、トモキ」
「お兄ちゃん、おはよう♪」
「ふぁ~あ」
それぞれが起床する。
「どうだった? 寝てみた感想は?」
「体が少し楽になった気がします」
「眠ることは体の疲れを取るための行為でもあるからな」
「でも夢のせいで少し疲れたかも……」
「夢? エンジェロイドって夢見るのはいけないことじゃ…」
「この隔壁フィールドないなら問題ない。それにイカロス達に渡した枕は必ず何かの夢を見るようにしてある。どんな夢を見るかは俺もわからんがな。
ちなみに俺が使った枕も同型だ」
秋山が枕を紹介する。
「まあそれはそうと、それじゃあ約束通りお前達の夢+俺の夢にダイブゲームするとするか……。
その前に……」
秋山はそう言うと玄関の方に行く。
秋山が玄関の扉を開ける。すると桜井家の敷地前にはそはらに守形に美香子が居た。
「あら、秋山さんが出てきたわね」
「となるとこれの原因はやはり……」
「あの~秋山さん、智ちゃんの家に入れないんですけど……」
「そりゃ、俺の隔壁フィールドに包まれてるからな。俺が認識したもの以外は入れないさ」
「随分と大掛かりなことをしているようだが、何をしたんだ?」
「まあ入ってみれば分かるさ。今ならお前達は入れるぞ。お前達の認識を入れておいたからな」
「それじゃあ…」
そはら達は秋山の言うとおり智樹の家の敷地に入ってこれた。
皆で部屋のほうに戻り、事情は説明した。
「面白そうね~」
「まあ最初に誰のに入るかだけど、平等にするためにランダムルーレットにしようと思う」
秋山がニンフの持つダイブゲームするための装置とは全く違う装置を召還する。
その装置を適当な場所に置く。
「ボタンはお前が押せ、智樹」
「俺?」
「ああ」
「仕方ねえな」
智樹は装置のボタンを押す。するとダイブゲームのときのような入り口が現れる。
「それじゃあ、行ってみよう!」
秋山が掛け声をかけて、皆でその入り口に入った。
智樹達は誰かの夢の中に入る。
辺りは草原ではあるが、メルヘン的に食べ物が空に浮かんでいた。
「随分とメルヘンね~」
「これって誰の夢?」
「何となく察しがつくが……」
全員が辺りを見回してみる。すると巨大なおにぎりがいくつもあった。
「でかいおにぎり……」
「うわ~い! おむすび山盛りだ~~~~!」
するとどこからか声が聞こえてくる。その声の主はアストレアであった。
しかし智樹達と一緒に居たアストレアはすぐ側に居る。
つまりは夢の中のアストレアである。
夢のアストレアはそのおにぎりにかぶりつき、瞬く間に巨大おにぎりの一つを平らげた。
そしてそのまま別の巨大おにぎりにかぶりつき、またすぐにそのおにぎりを食べ尽くした。
「アストレアちゃんらしいわね~」
「うん?」
夢のアストレアがおにぎりに夢中になっていると、巨大なアイスクリームが空から降ってきた。
「うわ~い!」
夢のアストレアはそのまま巨大アイスクリームにかぶりついた。
「とりあえずこんなもんでいっか」
秋山が指を鳴らすと全員が智樹の家に戻る。
「食べてばっかだな、お前」
「夢くらいいいじゃん」
「さてとそれじゃあ、次だ」
智樹が装置のボタンを押し、全員次の夢の世界に行った。
全員が現れた場所はどこかの墓地であった。
しかし墓地とは言っても西洋のような墓場であり、墓石は日本のものという東洋と西洋の墓場の合体したものであった。
「これは誰の夢だ?」
「あれを見れば分かる」
秋山がある方向を指差す。
するとそこにはよくある特撮の悪の組織の戦闘員達が何かをしていた。
そしてそのすぐ近くには夢の秋山が隠れ伏せていた。
「お前の夢か」
「ああ」
夢の秋山は敵に見つかったとし、姿を現し、敵戦闘員と戦う。
夢の秋山は特撮主人公のように正当な戦い方をしていた。
夢の秋山は一つの小屋で戦闘員達と戦うも戦闘員と共に閉じ込められてしまう。
「ああ、秋山さんが!」
「大丈夫だ」
小屋は大爆発を起す。それを見た怪人や戦闘員達は勝利を確信した。
しかし夢の秋山はいつの間にかその戦闘員達の中に紛れており、そこから怪人と戦闘員達と戦い始めた。
「あれ、どうなってるんですか?」
「俺もよく分からん」
「能力を使ったんじゃないのか?」
「いくら俺でも寝てる最中の夢で能力は使えないさ。つうか俺は闇の魂を手に入れる前からあんな夢は比較的見てたぞ」
「つまり、秋山さんは夢の中じゃ無敵なのね~」
「夢の中じゃなくてもほとんど無敵だけどな」
しばらくすると夢が終わり、全員が再び部屋に戻る。
「残りはイカロス、ニンフ、カオスだな」
「次は誰になるかな?」
「こうなったら次は2連続にするか。そして最後になった」
智樹が装置のボタンを押し、再び夢の世界に行った。
次に来たのはどこかの相撲会場であった。
「土俵?」
「あ、これ私だ」
カオスが名乗り出た。
「これ、カオス?」
「一体どんな展開になるんだ?」
「う~んと……」
カオスが答えようとすると……。
『うぉおおおおおお!!』
観客が歓声を上げる。
すると土俵の方にはカオスとニンフが現れた。当然夢の世界のである。
「はっけよぉおおおおおい! のこった!」
行司は秋山であった。
夢のカオスと夢のニンフが相撲を始める。
夢のニンフがそのまま直進して夢のカオスの体を取ろうとするが、夢のカオスは夢のニンフの目では捉えきれない速さで夢のニンフの後ろを取る。
「RIKISHIを肉眼で捉えようとする事は愚かしい」
夢の秋山がそう言った。
夢のカオスは夢のニンフの後ろを取り、そのまま土俵の外に投げ飛ばした。
すると夢のニンフが落ちた場所からものすごい地震が起こり、そこから火が燃え上がっていた。
決して夢のニンフが爆発したわけではなく、あまりの激しい攻撃のためそこが燃えただけである。
「では次! イカロス!」
夢のイカロスが現れる。
「はっけよぉおおおおい! のこった!」
夢のカオスと夢のイカロスがぶつかり合う。
二人がツッパリなどをしているうちに二人は空を飛び始める。
「ちょっと、あんなのあり?」
ニンフが秋山に尋ねる。
「空中戦こそSUMOUの醍醐味である」
夢の秋山が解説を入れた。
「そんな相撲ありなの?」
そはらが疑問に持った。
「そはら、これは相撲じゃない、SUMOUだ」
秋山がツッコンだ。
場面が突然変わり、夢のカオスと夢のイカロスは空を飛びながら戦いを続け、いつの間にか駅のホームで戦っていた。しかも夢の秋山や観客達も居た。
二人が電車の線路に入り込む。すると猛スピードで電車が二人に突っ込もうとする。
「心配すべきは電車である」
夢の秋山が言うと、電車は二人に跳ね飛ばされた。
「あらら……」
「さてとそれじゃあ次へGO!」
秋山が次の夢へ飛ばす。
全員が次の夢に飛ぶ。
その場所はどこかの平原だが、雲などが若干メルヘンな物になっていた。
「なんかアストレアの夢の世界に似てるな」
「これは誰の夢だ?」
(これ…私だ……)
ニンフはすぐに自分の夢だと悟った。
(という事は……)
ニンフがそう思っていると全員が一つの家を発見。窓から家の中を覗いてみる。
「見てみてトモキ! ついに大きくなったわ!」
その家の中には夢の智樹と夢のニンフがいた。
しかしその夢のニンフは智樹達が知っているニンフより若干大人びており、何より胸が大きい。
その大きさはそはらに匹敵するほどのものであった。
「トモキ……揉んで……いいよ」
「いやあああああああああ!!」
ニンフは恥かしさのあまり、その場に居た全員を素手で殴りつける。
秋山、美香子、そはら以外は全員ニンフに殴られた。
「もう! トモキのエッチ! あんたが夢見るなんて!」
「いや、これ俺の夢じゃ…」
「トモキのエッチ!」
ニンフはひたすらに隠す。
しかし夢のニンフは暴走を続ける。
「トモキ、ご飯にする? お風呂にする? それとも……わ……た……」
「きゃあああああああ!!」
ニンフはどこからかバットを出し、男勢を吹っ飛ばした。ちなみに秋山も今回は飛んでいった。
「どこかで味わったな~これ…」
(そはらと変わらんな。ニンフ……)
全員が部屋に戻る。
「さてと、最後はイカロスだ。ここまで来てダメってのはなしだ」
秋山が装置のスイッチを押し、イカロスの夢の世界に飛んでいった。
イカロスの夢の世界に来た智樹達。
そこは教会であった。
「教会だ」
「あの時みたいね~」
イカロスの顔が赤くなる。会場には立派な服を着た智樹がいた。
よく見ると客として空美中の学生や近所の商店街の人達、それにそはら、守形、美香子、ニンフ、アストレア、カオス、秋山も居た。
全員がきちんとした服なのに夢の秋山はこんな時でもいつもの格好であった。
「新婦の入場です」
そして扉が開けられる。
そこから出てきたのはイカロスであった。
「バージンロードは一人で歩いてるのね~」
夢のイカロスはバージンロードを歩き終え、智樹の側に来る。
「新郎新婦。いついかなる時でも互いを愛す事を誓うか?」
「「誓います」」
「では誓いの口づけを……」
夢の智樹と夢のイカロスの顔が近づき、口と口が近づこうとする。
「!」
イカロスの顔は真っ赤になり、はずかしさのあまりArtemisを撃ち、会場を破壊しようとした。
しかし会場は壊れない。
「やれやれ……」
秋山はそう考え、夢を強制中断させた。
全員がまた部屋に戻った。
「あれ? 戻ったぞ」
「夢はあれで終わりだったようだな」
「………」
イカロスの顔はまだ赤かった。
「まああれは夢だからな。どうしようもできんさ」
「でもこれでイカロスさん達も眠れるようになったんだよね」
「それなんだけどな…。これやると結構苦労するんだ」
「苦労とは?」
「まだ初回だから俺の負担ですむが、これを何度もするとこの世界によからぬことが起こってくるぞ」
「よからぬことって?」
「世界崩壊による本来ありえないことが起こるって事だ。多分俺の負担ですむのは後1、2回くらいだろうな」
「1、2回か……」
「まあ眠る大切さが分かったと思うけど…」
「そうね。そんなに悪いものじゃなかったしね…」
「また見てみたいな~」
こうしてエンジェロイド達の夢めぐりはひとまず終わるのであった。
余談だが、秋山の見た夢は作者(BLACK)が数ヶ月前に見た実際の夢です。
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この作品はアニメ「そらのおとしものf」の最終回後を二次創作で考えたものです。
そのため映画に出てくるであろう要素は一切入りません。
原作キャラクターの性格や口調が一部変わっていたりするかもしれませんが、その事はご了承下さい。
またこの小説には作者の分身とも言えるオリジナルキャラクター(秋山総司郎)も出てきます。
今回はニ○ニ○動画であるネタを一部入れています。