No.196033

レベル1なんてもういない 3-1

hutsyさん

ゲーム脳とリアル脳との差異、言われてみればそれもそうだ、みたいな。

2011-01-15 11:01:34 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:512   閲覧ユーザー数:432

 

「なあ葵

 次の街までは未だあるの?」

 

「私ラフォード

 空の決戦場が沈むまでには街が見えてくる

 それよりも…」

 

「よりも?」

 

「どうして2人してそんなに仲良くしてるの?」

 

「だって葵、ウチ等はラクチンだよ

 フィンさんの呼び出したこの動物、フカフカしてて柔らかくて気持ちいいよ~」

 

「フィンでいいよ。

 私達もう友達だし。

 ラフォードも乗せてあげるって言うのに~

 仲良く行こうよ~」

 

街を出てフィンの召喚したダチョウを一回りも大きくした、体長にして数mはある二足歩行の動物に乗ってしばらく経ったところで今更ツッコミが来た。

 

「そうだよ

 葵も乗って行った方がいいって」

 

「乗らない。

 楽をするなんて言葉、私には無い」

 

ストイックで複雑な奴だ。

元いた世界なら車や電車をも使う事を拒否しそうだ。

全てを自分の足で、自分の力で行く。

その信念で最悪自転車すら使おうとしないかもしれない。

 

「それとエル

 さっきからずっとキョロキョロしてるけど

 どうしたの」

「だってこういう世界だとさ、

 モンスターとか出るんじゃないかなって」

 

「?」

 

「物語を進めるに当たってさ、ウチ等のお金をためたりレベルを上げてかなきゃだろ

 そのためにうち等の経験地稼ぎの為のザコ敵とか出てくるんじゃないかなと思ってさ」

 

「私達が旅人や動物を襲うって事?」

 

「そうじゃないよ

 逆に襲われるのを返り討ちにするんだ」

 

「旅人の荷を狙う野党や盗賊や泥棒や怪盗の事?」

 

「う~ん、そいつらを含めた奴らみたいなさ、

 雑魚モンスターとかいるじゃん」

 

「戦いは今までの練習の成果を発揮する機会

 強い相手ならこちらも得る物はあるけど周りに八つ当たりしても何一つ得るものなんてない」

 

「え…」

 

「それに動物がお金を持っているなんてあり得ない」

 

「…まあそうだよね」

 

「エル単純」

 

「それは今までやってきたゲームが…そんなだったから…」

 

「ゲーム?」

 

ジッとして考えれば尤もな一文だ。

 

ゲームみたいな展開を現実と重ねてはおかしいんだ。

お金を持ち歩く熊やコアラがいたらたちまちテレビの人気者だ。

光り物を集める癖があるという動物も決して人間が定めた価値を解っていてやっている事ではないだろう。

しかもその動物からお金を巻き上げる人間って…

略奪者だ。

偽善者だ。

最悪だ。

 

それにこれはゲームじゃないし遊びでもないんだ。

世界を救うなんて突飛した目標が出来たものだから、非現実と結び目が捩れてしまったようだ。

 

「ごめん…別のものと一緒になってた

 でも安心した。」

 

「?」

 

「出てくる動物を倒して進まなくてもいいんだね」

 

「始めからそう言っていた」

 

「難しく考えなくてもいいよ~

 はは」

 

こちらが難しいと思う事を簡単に笑いながら言ってくるフィン。

 

この世界ではそういうものなのか。

「あ…」

 

忘れていた事を思い出した、やや間の抜けた「あ」の声がラフォードから漏れた。

 

「エル

 モンスターとかよくわからないけど魔物ならいる」

 

「え?」

 

ラフォードが指をさした先には初めて見る動物がノシノシと道を反れた森を闊歩しているのが見える。

 

「魔に侵されて凶暴化した動物」

 

「うへえ…あれって…」

 

禍々しくグネグネと曲がった角や髭でも2mはある。

その角を支える体は像よりも大きい。

森の木々の上からはみ出して見えるくらいだ。

 

「恐竜みたい…」

 

「ああいいうのってそこら中にいるの?」

 

「いない

 ああいう類の動物は存在してはいけない」

 

「じゃあアイツはどうするの?」

 

「殺す」

 

「は?」

 

「あのように魔に侵されてしまっては脅威の存在。

 この地に生息している他の動物に影響をもたらして生態系がおかしくなる」

 

「だからって単純に殺すとか…っ

 他に方法はないの?

 あるんでしょ?」

 

ラフォードはしばらく魔物と呼ばれる動物を眺めている。

 

「あの子を助ける方法はあるよ」

あっさりと言うフィン。

 

「あーやって凶暴化した子はどこかに在る刻印を潰せば戻る事もあるよ」

 

「うんうん、あるんじゃない

 それでいこうよ、葵」

 

「やるのは私

 エルは見てる」

 

やっぱり力仕事はラフォードに任せられ

そのままの足で歩いて森の中に入っていった。

 

「すぐ行っちゃったよ

 ウチ等も行こう」

 

「え~待っていればいいよ

 足引っ張るだけだよ」

 

「そんなことないよ

 葵の手に負えないほどだったらどうするの」

 

「ふふ あははは」

 

ラフォードを心配しているのを見て急に笑い出した。

場の展開を無視してとにかく笑うフィンだから気にしているとキリがない。

 

「エルってラフォードのこと信用していなの?」

 

「仲間として気になるのは当たり前だよ」

 

「うふふ 仲が良いんだね

 あれ位に負けるわけないとか思わない?」

 

「葵なら負けるわけないさ

 それでもウチは行くよ

 葵はウチの代わりにも戦うんだから」

 

「ふふ、やっぱり仲がいいんだね。

 私はここにいる。

 行ってらっしゃい」

 


 
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