No.195996

真・恋姫†無双~二人の王佐~一章第五話「一刀暴走!華琳覚醒!」

syoukiさん

本日最後です!

今回でついに華琳が覇王への第一歩を踏み出します!しかしその前に一刀が大変なことに・・・


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2011-01-15 01:09:40 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:12392   閲覧ユーザー数:9461

注意!作者は三国志に詳しくありません。主な知識は恋姫からです。

 

 

ちなみにこの作品にはオリキャラを何人か出そうと思っています。

 

 

そしてキャラの仕官時期が違ったり所属が違ったりするかもしれません。(そのあたりはまだ未定です。)

 

 

あと一刀にオリジナル設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。

 

 

それと一刀には前世の記憶がありません。

 

 

ですが一度読んでみてください!それで「おもしろい」と思ってさらに読み続けていただけたらうれしいです。

王佐の才>

 

『帝王を補佐するにふさわしい才能、又はそれを持つ者のこと言う。(辞書引用)』

 

 

 

 

 

これは、平和な世を作ろうと乱世を駆け抜けた双子の男女の物語りである。

食事を終えて市を見ていると近くの店から大きな声が聞こえてきた。

 

「今から全部半額!ついている値の半額大安売りを始めるよ~!今からたった三刻だけの大安売りだー早い者勝ちだよ!!」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

この声に反応したのは三人、凛花、琳奈、琴だった。

 

「華琳!ちょっとそこで待っててもらえる?お母さんちょっといってくるから」

 

「はい、わかりました」

 

「春蘭、秋蘭もおねがいね!」

 

「「おまかせください!」」

 

「三人共ちょっとそこの広場で待っててもらえるかしら?すぐに帰ってくるから」

 

「わかりました。かあさま早く行ったほうがいいですよ」

 

一刀以外の二人も頷いて答えた。

 

「ありがとう。みんなの新しい服手に入れて帰ってくるからね!」

 

三人の頭を撫でてから琳奈の後を追って凛花は走っていった。そして残った琴も何かを言おうとしたが、

 

「う~どうしよう。私は一刀様の「行ってきていいよ琴姉ちゃん!」えっ!!で、でも」

 

「琴姉ちゃんも行きたいんでしょ?」

 

「でも私には一刀様達をお世話するという使命が!」

 

「でも行きたいんでしょ?」

 

「うぅぅぅ、はい、行きたいです」

 

ついに折れた琴はすまなそうに言うが、

 

「心配ないよそこの広場にいるし琴姉ちゃんだってすぐに帰ってくるでしょ?」

 

「はい!すぐに帰ってきます!!」

 

「なら大丈夫だよ、安心して。それにそんなに後ろめたいなら今度今日買った服着て見せてよ!きっと琴姉ちゃんなら似合うからさ!ね。」

 

と琴に微笑んだ。するとその笑みと一刀の口説き文句にやられた琴が勢いよく方向転換し、

 

「そ、それではいってきます!」

 

「いってらっしゃい~」

 

と物凄い速さで店に向かっていった。琴の顔が真っ赤だったのは一刀には見えなかったようでのんきに手を振っていた。

 

それを見逃さなかったのが蘭花を除く子達だった。その中でも春蘭は、

 

「なぜ、琴は赤くなったのだ?」

 

「それはな姉者、一刀くんが琴殿のことを褒めたから琴殿が照れたのだ」

 

「なに?たったそれだけで照れたのか?まったく華琳も琴もあんな男のどこがいいのか、女の私よりひ弱そう奴に照れるなんてどうか「しゅ~んら~ん?それ以上お兄さまの悪口を言うとただではすまないわよ?」し、なんだ桂花お前もあい・つが・いい・と」

 

話している途中に桂花から後ろから話しかけられたので不機嫌になりながら振り向いた春蘭は桂花の姿をみて固まってしまった。もちろん春蘭の隣にいた秋蘭も同様に固まっている。それもそのはず振り向いた先には般若の幻を背負い不気味な笑いをした桂花が立っていたからだ。

 

「しゅ~んら~ん?お兄さまが何だって?」

 

「だ、だからお前の兄はひ弱で・・・・・・・すまん、桂花のお兄さんはとても素晴らしい人だな!うんうん。な、秋蘭もそう思うよな?」

 

秋蘭も急に話を振られたが聞いていたのでしっかりと答えた。

 

「も、もちろんだ。桂花さんのお兄さんはかっこよくてすばらしい人だ!!」

 

「そう、わかればいいのよ。わかれば。でも好きになっちゃ駄目よ?♪」

 

優しく言ったがそうは見えない笑いをする桂花に凄い速さで首を振る春蘭と秋蘭。

そんな二人の答えに満足し出してた般若を引っ込めた桂花に華琳が、

 

「貴女も苦労しているのね?」

 

「ええ、お兄さまの悪口を言う人を懲らしめるのも、好意をもって近づいてくる悪い虫を駆除するのも大変よ。そういえば華琳、貴女もお兄さまに近づく悪い虫として駆除しなければならないのかしら?」

 

「さあ、一体何の事かしら?」

 

「それならいいのだけれどね」

 

「「ウフフフフフフフフ」」

 

「「「(怖い子達だ。関わるのはよそう!)」」」

 

そう思い笑いあう二人を周りにいる大人たちは見ない振りをして通りすぎていった。

 

 

 

 

早く遊ぶために広場への移動を開始した一刀達だが、みんなさっきと少し違った雰囲気をしていた。春蘭と秋蘭は未だに桂花に対し少し怯えており、その桂花と華琳はあの後すぐに一刀気がつき声をかけたので止め、今はお互いに何も無かったかのように振舞っているがたまに桂花が華琳を睨んでいたり、華琳が一刀をちらりと見てたりしており変わらないのは一刀と蘭花だけだった。

 

 

そうして広場に着くとそこには既に他の子達が遊んでいた。折角なので仲間に入れてもらい一緒に遊ぼうということになったので一刀が代表で聞きにいった。

 

「ぼく達も一緒に遊びたいから仲間に入れて!」

 

すると仕切っているっぽい子がきて、

 

「いいぞ!じゃあ今はかくれんぼ中だからお前達も隠れていいぞ!鬼はもう決まってるからな!」

 

「わかった!じゃあみんな隠れろ!」

 

そう言って散らばっていった・・・・・・はずっだが、

 

 

 

 

「なんで二人は僕と一緒に隠れてるんだ?」

 

そう小声で言う一刀。今いるのは広場の奥の茂みの中。そこで身動きせずにじっとしている一刀の両側には同じようにじっとしている女の子が二人いた。

 

「だって大好きなお兄さまと一緒に隠れたかったんですが駄目ですか?」

 

「そっか、そう言ってくれて嬉しいよ桂花。う~ん、別に一緒に隠れちゃ駄目なんて決まりがあるわけじゃないからいいんじゃないか?」

 

「ありがとうございますお兄さま!!」

 

そう言ってもらいとても嬉しそうにする桂花。かくれんぼの途中でなければ抱きつきそうな喜びようだった。

 

「まぁ桂花はいいとしてなんで華琳までここにいるんだ?」

 

桂花とは逆側にいた華琳は一刀に言われても何でも無いように、

 

「あら、桂花は良くて私がここにいてはいけないのかしら?」

 

「いや、別にそうじゃないけど他にも隠れられる所沢山あるよ?」

 

「い、いいじゃない!私はこの場所に隠れたかっただけよ。それに男がそんな細かいこと一々気にするものじゃないわ!」

 

「わ、わかった」

 

一刀が華琳の勢いに押されて了承したが、

 

「何よ偉そうに!この場所に隠れたかったなんて嘘のくせに」

 

不満大の桂花が敵意を持って華琳に噛み付いた。

 

「あら、何のことかしら?」

 

「白々しい。今日初めてきた場所なのにどこに隠れるのが一番いいのかなんてわかるわけないないじゃない」

 

「簡単なことよ。子供がかくれんぼで探す場所なんてたかが知れているわ。近くの茂みとか物の陰といった近場だけ。こんな奥に隠れているなんて思いもしないわよ。それに一刀が見つからないように何か細工をしたようだしね」

 

と勝ち誇った顔で桂花に言った。確かに隠れる前に一刀が何かをしていたようだったが桂花は一刀と一緒にいられる喜びで気にしていなかった

 

「くっ、」

 

「まぁいいじゃないか桂花。それより始まったみたいだぞ。二人共静かにしてろよ!」

 

桂花の頭を撫でながら言った。さっきまで聞こえていた鬼の子の声が聞こえなくなったのでかくれんぼが開始したようだ。なのでこれから鬼の子が探しにくるから喋っていると見つかってしまうからだ。

 

「はい!」

 

「そんなのわかっているわよ」

 

二人が素直に返事をして黙ったので一刀も静かにじっとしていた。しかしすぐに鬼の子以外の子の声が聞こえてきた。

 

「う~やっぱり私はかくれんぼはあまり好きではない!あんな風にじっとしているのは性に合わんのだ!」

 

と聞いたことのある元気な声が聞こえてきた。

 

「あの声は春蘭ね」

 

「ああ、間違いないな。それにしても見つかるの早くないか?」

 

「春蘭はじっとしているのが苦手なのよ。だから予想はしていたわ」

 

「あいつもう見つかったの?ほんと単純ね」

 

三人が素直な気持ちを言っていた。そのあとも徐々に他の子も見つかったようで春蘭以外の声も聞こえてきた。

 

「姉者、もう少し頑張ってほしかったのだが」

 

「それは無理だ秋蘭!私にはあれ以上じっとしていることはできなかったのだ!それにしてもやっぱりかくれんぼはつまらんな、じっとしていなければいけないなんて。やはりわたしは鬼ごっこがやりたいぞ!!」

 

「待つのだ姉者!次は姉者が探す番だ。これなら動き回れるから姉者も楽しいぞ!」

 

「そ、そうだった!次は動き回れるのだったな。よ~し全員見つけてやるからな!!わーはははは」

 

「あれ?まだおにいちゃまとおねえちゃまは見つかってないのでちゅか?」

 

秋蘭に続き蘭花の声まで聞こえてきた。

 

「ああ、まだ華琳さんも見つかっていない。あの三人は頭がいいからな。きっと誰にもわからないよう完璧に隠れているのだろう」

 

秋蘭が三人を褒めていると不意に一刀が疑問を口にした。

 

「華琳」

 

「なにかしら一刀?」

 

「ずっと気になっていたんだが華琳と春蘭達ってどういう関係なんだ?」

 

「ど、どうしたのよいきなり」

 

「お兄さま?」

 

桂花はどういう意味かわからず、華琳は突然答えにくい質問をしてきたので一瞬どもってしまった。

 

「だって春蘭と秋蘭って華琳のお母さんの妹さんの子なんだよね?」

 

「ええ、そうよ。それが何か?」

 

華琳が少し緊張して答えた。

 

「それが今は華琳達と暮らしている。華琳は陳留の太守の娘だ。そんな華琳に二人は友達感覚で話している」

 

「それのどこがおかしいの?私達は従姉妹なのよ。当たり前のことじゃない?」

 

「それはそうだけど、それだとおかしいんだ。春蘭と秋蘭の琳奈さんに対する姿勢はどうみても母親のお姉さんに対する態度じゃなくて陳留の太守、主に仕える家臣の対応だった。」

 

「それは・・・」

 

華琳は何かを言おうとするが何も言えなかった。

 

「華琳のお母さんには敬意を払うのに華琳には遠慮がない。それってどういうことなの?」

 

そこまで言うと桂花はすべてを理解したのかぼそりと呟いた。

 

「仕えるべき主と認められていない」

 

「!?」

 

桂花に言われ華琳の体が強張った。そんな華琳に桂花はさらに畳み掛けた。

 

「なんだ貴女あの二人に主として認めてもらえてないの!太守の娘として情けないわね!」

 

華琳は下を向き震えていた。もっと言おうとしたが、

 

「桂花。それ以上は駄目だよ」

 

と優しくだけど少し怒ったように言ったため。

 

「ごめんなさいお兄さま。少し言い過ぎました」

 

素直に謝り静かになった。

 

「ごめんね華琳。桂花が言いすぎちゃって」

 

一刀がさらに謝ったが華琳は顔を上げ、

 

「いいえ、本当のことよ。私はまだあの二人に認められていない。だから言われて当然よ。」

 

強気に振舞っているが目には涙が溜まっていた。そして華琳は自分の過去と春蘭と秋蘭との出会いなんかを語った。

 

「私はおかあさま、曹嵩の娘として生まれてからずっと大人達から好奇の目で見られてきたわ。かあさまは戦場では大将を務め、戦陣を切って数多の敵兵を倒し死神と恐れられていた人。そんな人の子供なんですもの周りの大人は私に期待をし、そして将来のために媚びへつらってきたわ。私だって褒められるのが嬉しいから期待に答えようと必死になって色々したわ。だけど結果を出せば出すほど周りの大人達が私を恐れ始めた。当然よね、子供のくせに大人より優秀なんですもの。そして私はそんな大人達を見下し始めたわ。子供の自分より劣るなんてってね。それに同い年の子達にも興味がなくなっていったから友達もいるはずもなくいつもおかあさまがいない時は一人で過ごしていたわ。」

 

「酷いなそれは」

 

「ええ、私もそう思うわ。そんなある日おかあさまが二人の女の子を連れてきたのよ。」

 

「それが春蘭と秋蘭?」

 

「ええそうよ。あの日おかあさまは、初めは話相手として、将来は片腕として私に仕えてくれる者として春蘭達を連れてきたのよ。だけどその顔合わせの時・・・・・」

 

~華琳の回想~

 

「私は姓は夏侯、名は惇、字は元譲、真名春蘭といいます」

 

「私は夏侯惇の双子の妹の姓は夏侯、名は淵、字は妙才、真名は秋蘭と申します」

 

「春蘭ちゃん、秋蘭ちゃん、この子がさっき話した私の娘よ。ほら華琳挨拶しなさい」

 

「はじめまして、私は姓は曹、名は操、字は孟徳、真名は華琳といいます。よろしくおねがいします。」

 

 

 

(「あの時の私は別に友達なんか欲しくもなかった。私がみんなより出来るとつまらないと言って去っていったから二人もどうせそうなると思って少し適当に挨拶をしたのよ。そうしたら春蘭が、」)

 

 

 

「なんだその挨拶は!もっと堂々と挨拶をしたらどうだ!!それでも陳留の太守の娘か!」

 

 

 

(「って言っていきなり説教をし始めたのよ」

 

「あの春蘭が?」

 

「信じられないわね」

 

「本当のことよ。それで私もいきなりそんな事言われたものだから頭にきたから言い返したのよ」)

 

 

「今会ったばかりなのにいきなり私に説教なんていい度胸しているわね?」

 

「ふん、私は本当のことを言っただけだ。なぁ秋蘭もそう思うだろ?」

 

「ああ、姉者。私もそう思うぞ。誇りである名を交換しているのにそのような態度ではこちらも不快だ。」

 

 

 

(「たしかにそうだよね」

 

「あの時の私はすべてに嫌気がさしていてのよ。今思えば酷いことをしていたと反省しているわ。」)

 

 

 

「なによ!私のこと何も知らないくせに!どうせ貴女達も私から距離を取るようになるんだから!」

 

「大体のことは曹嵩様から聞いたがそんなの知るか!」

 

「!?」

 

「まだお前のことを何も知らないのにそんなことわかるはずなかろう。それに私達を甘く見るな!たとえどんなにお前が優秀だろうと神童だろうと一度友達になったからにはそう簡単に止めはせん!そんな恥ずべきことこの夏侯元譲死んでもやらん!!」

 

「そうだな、私達も舐められたものだ」

 

「申し訳ありませんが曹嵩様、先ほどのお話ですがもう少し待ってもらっていいでしょうか?話相手になるのは構わないのですが今の彼女にお仕えすることはできません」

 

「仕えるってかあさま!それってどういうことですか?」

 

「あのね華琳、この子達は将来貴女がこの陳留の太守になった時に貴女の補佐として仕えてもらうために連れてきたのよ」

 

「なんですって!?おかあさま、私そんなの聞いていません」

 

「当然よ。だってこれは私と私の妹、つまり春蘭ちゃん達のお母さんとで決めたことなんだから♪」

 

「そんな!貴女達はそれでいいの?」

 

「ん、一体何のことだ?」

 

「姉者、彼女は私達が親の言いつけで無理やりここに連れてこられたのではないかと心配してくれているのだよ。」

 

「なんだ、そのことか。確かに初めは突然のことで母上に文句を言ったりもしたが、途中で考えるのをやめた」

 

「や、やめたって」

 

「だってそうだろう?会ったことのない者とのことなんて決められるはずなかろう!だから会って決めることにしたのだ」

 

 

 

(「そう春蘭は胸を張って答えたのよ」

 

「確かに正論だね」

 

「ただ考えるのが面倒になっただけじゃないの?」

 

「かもしれないわね。でもあの時の私にはとても衝撃だったのよ。当時の私は知らない人達に会うのが怖かった。また嫌われるのではないか、また怖がられるのではないかって思っていたからよ。だから「会って話してみなければわからない」なんて春蘭に言われて私は今までの自分が間違っていたことに気がつく事ができた。本当に二人には感謝しているわ。それでその話を聞いていたおかあさまが・・」)

 

 

 

「それで会ってどう思ったの?」

 

「失礼を承知で言いますが今の曹操には仕えたくはありません」

 

「それは何故かしら?」

 

「姉者と私は修練をし、将来立派な武官になって戦場を駆け抜けていくでしょう。しかしその時命を預けることのできない主の元では実力を出し切る前に命を落としてしまうでしょう」

 

「ええ、その通りだわ。真に仕えるべき主でなければ生き残ることはまず不可能」

 

「はい、なので主選びは慎重にしなければなりません。曹操様は学も武も大変素晴らしいと聞き及んでいますが、民を束ねる王としての素質を未だに有していないと感じました。なので仕えることはできません」

 

「そう、さすがあの妹の子ね。やっぱり見抜かれちゃったか」

 

「おかあさま!?」

 

「わかったわ春蘭ちゃん、秋蘭ちゃん。主としてではなく話し相手として華琳をよろしくね!」

 

「「はい、それでしたらお任せください!」」

 

「華琳」

 

「はい」

 

「聞いた通りよ華琳。貴女にはまだ王としての覚悟と王になってどうしたいのかこの二つが足りないわ。だからこれから見つけていきなさい。そして二人に認められた時、貴女は私の真の後継者になれるのよ。だからがんばりなさいね」

 

 

 

 

 

~華琳の回想終了~

 

 

「そう言って私の頭を撫でてくれたわ。それから私の王としての覚悟を探す日々が始まったのよ」

 

「そんなことがあったのか。ごめんな無責任な事言ったりして」

 

「・・・・・・」

 

「気にしていないわ。むしろ今は感謝すらしているもの。あの出会いのおかげで私は自分がまだ未熟であると知ることができた。だから私はまた外に出るようになったわ。街を見て、人を見て私に足りないものは何なのかを知るために。そして必ず春蘭と秋蘭に私が仕えるに足る主であると認めさせ、おかあさまから太守を受け継ぎ陳留を治める王になるためにこんな所で挫けていられないのよ!!」

 

華琳は先ほどとは違った顔つきをして言い放った。

 

「それで見つかったの?王としての覚悟ってやつ」

 

「あと少しと言った所かしら。あれから色々見て、聞いて、考えて私が王として何を成したいか見つかりそうなのよ。」

 

「そっか、早く見つかるといいね」

 

「ええ」

 

そう頷いた華琳だったが何かを思い出したように、

 

「そういえば貴方達だって済南国の太守の子でしょう?貴方達はその辺どう考えているのかしら?」

 

突然質問をされた一刀だったが少し考えた後、

 

「僕は守りたいかな」

 

「えっ?」

 

「王とか関係なく、とうさま、かあさま、桂花、蘭花、琴、それに城にいるみんなや街の人たち。みんなを守れるようになりたい」

 

「守る、ね。でも貴方弱いじゃない鬼ごっこだって春蘭にすぐに捕まっていたしそんな貴方が戦に出てもきっと何も守れないわ」

 

「確かに僕は弱い。でも前線に立つだけが戦いじゃないよ。状況を読み敵に合わせて策を考えて実行する。後ろにいたって守ることはできるよ!それに」

 

「わ、私だっているんですもの!」

 

「僕は一人じゃない。桂花もいるからね」

 

そう言って桂花の頭を撫でた。一瞬羨ましそうな顔をした華琳だったがすぐに我に帰り、

 

「そう、それが貴方の目指すものなのね」

 

「あぁ」

 

「そう、参考になったわ。ところで鬼はまだ私達を見つけられないのかしら?大分時間が経っているし私達結構大きな声で喋っていたのだけど」

 

「そうだね、ずっとここにいるのも退屈だから一度戻ってみようか」

 

「そうね」

 

「はい、お兄さま!」

 

みんなの所へ戻った一刀達だったがすぐに様子がおかしいのに気がついた。

 

「ねぇ、何か様子が変じゃない?」

 

「うん、人数もさっきより増えているしそれに・・・」

 

「険悪な雰囲気です。お兄さま」

 

「うん、僕も感じた。もうちょっと近づいてみようか。」

 

一刀、桂花、華琳の三人は近くの茂みに隠れて様子を見ることにした。

 

「ここまでくればいいだろう」

 

そう言って茂みから顔を出そうとすると近くから声が聞こえてきた。

 

「よかった見つかって!」

 

「「秋蘭!?」」

 

「秋蘭!貴方どうしたの?」

 

秋蘭は慌てたように、

 

「華琳さん、一刀さん、桂花さん実は・・」

 

秋蘭が何かを言おうとしたときとても大きな声が聞こえてきた。

 

「貴様ら!やって良いことと悪いことがあるだろうが」

 

「!?、この声は春蘭だわ!」

 

華琳達は声を聞き急いで草むらから顔を出すとそこには予想外の光景が広がっていた。

 

一刀たちのやり取りから時は少し戻って蘭花が見つかり暇そうにしていたので春蘭が遊び相手をしている所まで時はさかのぼる。

 

~春蘭SIDE~

 

「よ~し、次はこれでどうだ!」

 

「なんどきてもおなじでちゅよ春蘭おねえちゃん♪」

 

「姉者も蘭花も頑張れ!」

 

かくれんぼですぐに見つかってしまった私と秋蘭は一刀と桂花がまだ見つかっていないので寂しそうにしていた蘭花の相手をしていた。

 

「次こそ勝つ!この草ならばきっと切れはしないはずだ!うおぉぉぉりゃぁぁぁ!!なぁにぃ、また負けただと!?」

 

「春蘭おねえちゃんとてもよわいでちゅね、くさずもう」

 

「うっ、確かに今のところ全敗しているがそれは草が悪いんだ草が」

 

「姉者、草を選んだのは姉者なのだからそれで負けるのは姉者が負けたのと同じ気がするぞ」

 

「そ、そうか、私は年下に負けたのか、ははは。ん?」

 

年下に遊びとはいえ負けたので打ちひしがれていると向こうから人がやってくるのが見えた。どうやら私達より年上のようだった。すると私達を仲間に入れてくれた奴が彼らの元に向かって話をし始めた。

 

「君達も仲間に入れて欲しいのかい?」

 

「そんなわけないだろう!今から俺たちが遊ぶからお前達は出て行け!!」

 

どうやらあいつらは私達を追い出して遊ぶつもりらしい。なんてやつらだ!!

 

「そんなことできないよ。初めに遊んでいたのは僕たちだよ!」

 

「なんだと!舐めたこと言いやがって。いいか俺の父はこの町の商人を仕切ってるんだぞ!俺に逆らえばこの街で何も買えなくしてやるからな!」

 

「そんな!?」

 

「それが嫌ならさっさとここから出ていけ!」

 

(全くどの街にもあのような者がいるのだな。しょうがない、私がなんとかするか。)

 

私が前に出ようとすると秋蘭に肩を掴まれた。

 

「姉者、行っても構わないが我らの素性はけして明かしては駄目だぞ!」

 

「なぜだ?」

 

「我らは荀棍様の客人でこの街の人間ではない。その我らが問題を起こせば荀棍様だけでなく曹嵩様にも迷惑をかけてしまうからだ」

 

「そ、そうか。わかった。絶対に素性は明かさないと誓うぞ!」

 

私は荀棍様や曹嵩様達に迷惑をかけまいと心に決め、男の子達の所に向かった。

 

「貴様ら!さっきから聞いていればなんだ!」

 

「誰だお前は!」

 

「不届きな者に名乗る名などないわ!それよりなぜ後から来たお前達のため我らが出ていかなければならないのだ、早い者勝ちという言葉があるだろうが!そんなこともわからないのか馬鹿者め!!」

 

「なんだとー!!」

 

私は後から来たのに私達を追い出そうとする奴らに腹を立てていたので言いたい事を言ってやった。

 

「大体、貴様は偉そうにしているが偉いのは貴様ではなく貴様の父上だろうが!それなのに自分の事のようにえばりおって。恥ずかしいと思わないのか馬鹿者め!!それになんだその頭は、火事にでもあったのかちりちりしているではないかとても変だぞ?」

 

「姉者、少し言いすぎだと思うのだが」

 

「そうか?私はただ思っていたことを言っただけだぞ!」

 

「それはそうだが・・」

 

「これは地毛だ!火事にあったわけじゃない!!てめぇ俺が気にしていることを~女だからって調子に乗るんじゃねぇ!!おい、お前らあの女に痛い目見せてやれ」

 

「ほらみろ姉者、彼らを怒らせてしまったではないか」

 

「別に構わん、丁度私も体を動かしたかった所だ。それにあいつ等全員ぶっ飛ばして追い出せば全部解決だ!!」

 

「解決ではないぞ姉者、もし今追い出したら狙われるのは姉者なのだぞ?だが私達は数日でここを離れてしまう。」

 

「大丈夫だ秋蘭!きっと何とかなるさ!!」

 

そう言って私は奴らめがけて走り出した。

 

「あ、姉者!!このままではまずいな・・・・しょうがない華琳さん達をの力を借りるしかないようだな。」

 

秋蘭が何かを言っていたが私には聞こえなかった。

 

「この野郎!食らいやがれ!!」

 

「甘いわ!!」

 

私は相手の拳をかわし、さっき拾った木の棒で相手の頭を思いっきり叩いた。

 

「うぐっ!」

 

「てめぇ!?」

 

「どうした、もう終わりか?」

 

私は下でうずくまっている者達を見てから言った。すでに四、五人倒しているが私は息一つ乱してはいなかった。

 

「強いなあいつ。こうなったら・・・・」

 

奴らが何か相談していたが気にしなかった。どうせどうやったら私に勝てるか話し合っているだけだろうと思ったからだ。私は自分の武に自信を持っている。母上や琳奈様に修練してもらっているので同年代には負ける気がしないからだ。

 

「さぁどうした!私を痛い目にあわせるんだろう?」

 

「ふん、いい気になるなよ。お前らかかれー!!」

 

奴らはバラバラになって四方から攻撃してきた。

 

「それがさっきの話し合った作戦か?こんな攻撃何ともないぞ!!」

 

私は四人のうち一人に突撃してそこから脱出し他の者達を殴ろうと木の棒を振り上げようとした。しかし、

 

「おい女!こいつがどうなってもいいのか?」

 

「何?」

 

私が振り返るとそこには、

 

「ぐすっ、じゅんら゛んお゛ね゛え゛ぢゃん~!」

 

「蘭花!!!」

 

そこには奴らに捕まって泣いている蘭花の姿があった。

 

「その子を離せ!その子は・・・」

 

(「姉者、行っても構わないが我らの素性はけして明かしては駄目だぞ!」

 

「なぜだ?」

 

「我らは荀棍様の客人でこの街の人間ではない。その我らが問題を起こせば荀棍様だけでなく曹嵩様にも迷惑をかけてしまうからだ」

 

「そ、そうか。わかった。絶対に素性は明かさないと誓うぞ!」 )

 

そうだった!離してはいけないんだった。危ない所だった。もう少しで秋蘭との約束を破る所だった。

 

「その子はなんだ?

 

「その子は・・・その子は関係ないだろう離してやれ!」

 

「いや、関係あるね!知っているぞこいつはさっきお前と楽しそうに話していたのを。こいつがいればお前は動けまい!」

 

「貴様らぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「おっと、動くなよ?動くとこいつ殴るぞ?」

 

「くっ!?」

 

「だじゅげで~じゅんら゛んお゛ね゛え゛ぢゃ~ん!!」

 

「うるさいぞ!」

 

バシン!

 

「!?」

 

「う゛ぇ゛~ん」

 

私は我を忘れそうになるのを必死に留めていたがもう限界だった。奴は蘭花の顔を叩いたのだ。私に笑いかけてくれたあの蘭花のかわいい頬を。

 

「貴様ら!!!!やって良いことと悪いことがあるだろうがぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

 

私は怒りのあまり大声で叫んでいた。

 

 

~春蘭SIDE終~

春蘭の声を聞き一刀達が近くの茂みから顔を出すとそこには蘭花が男の子に押さえつけられて泣きながら春蘭の名を呼んでいた。、その春蘭は年上らしい男の子達に囲まれていた。

 

「何よ!これ!!」

 

華琳はこの光景に驚いていた。

 

「「蘭花ーーーー!!!!」」

 

「姉者ーーーー!!!!」

 

その時姉と妹の姿を見つけた三人が我を忘れて茂みから出ていってしまった。

 

「待ちなさい貴方達!!・・・全くもう!!」

 

華琳も突っ込んでしまった三人を追いかけるように出てきた。

 

「お゛に゛いぢゃま~お゛ね゛えぢゃま~!!」

 

蘭花の元へ向かった一刀と桂花だったが蘭花の頬が赤くなっているのに気がついた。

 

「蘭花!?その頬が赤いのは・・」

 

「奴らが叩いたのだ。すまない一刀、私がついていながら蘭花に怪我をさせてしまった。」

 

春蘭が経緯を話すと一刀が怒りを込めた声で喋った。

 

「そうか、奴らがやったのか」

 

その時風が吹いていないのに砂塵が巻き起こった。

 

「な、なんだよこれ!!!」

 

「こ、怖いよぉ~」

 

相手の子達も訳がわからず怯えていた。春蘭はその隙を見逃さず蘭花を助け出した。

 

「もう大丈夫だぞ蘭花!」

 

「じゅんら゛んお゛ね゛え゛ぢゃ~ん」

 

蘭花を助け出した春蘭は華琳達の元へ合流した。

 

「蘭花!!」

 

「桂花おねえちゃ~ん怖きゃったよ~」

 

「よしよし、でもお兄さまが・・・」

 

「これは一体なんなのよ!?」

 

華琳も驚き近くにいた桂花に尋ねた。

 

「そんなの私にもわからないわよ!!ただわかっているのはお兄さまがとても怒って言うことだけよ。いつも優しいお兄さまがあんなに怒っている姿なんて今まで見たことがないわよ」

 

「そう、それほど蘭花を傷つけられたのが許せないのね。でもそれならあの砂塵は何なの?」

 

「華琳さん、おそらくあれは「気」によって巻き起こった風だと思います」

 

華琳達に近づいてきた秋蘭が言った。

 

「「気」って、気であんなことが起こせるものなの?」

 

「並の武人なら不可能ですが極めた者の中には気を打ち出したり纏ったりできる者がいると琳奈様から聞いたことがあります」

 

「でも一刀は武術をやっていないのよ?」

 

「おそらく才能だな」

 

「春蘭!?」

 

「一刀には武の才能があったのだろう。それが蘭花を傷つけられた怒りで表に出てきたのだ」

 

「つまり、あれは・・・」

 

「気の暴走だ」

 

春蘭がそう告げると慌てた桂花が、

 

「そ、それじゃあお兄さまはどうなってしまうのよ!!!」

 

「このままではまずい。もし体中の気を全て放出し切ってしまうと最悪命に関わるぞ」

 

「そんな!?」

 

「だから早く暴走を止めなくてはいけない」

 

「でも、どうやるのよ!」

 

桂花が涙目になって叫んだ。すると秋蘭が、

 

「はい、おそらく一刀さんは今意識を失っているはずです。なので意識を取り戻せば暴走も止まると思います」

 

「ほ、本当に?」

 

「ええ、多分ですが」

 

秋蘭もあまり自信がないようだったが策がこれ以上出なかったので話はどうやって一刀の意識を取り戻すかということになった。すると、

 

「それなら私がお兄さまの元に行くわ!!」

 

桂花がそういうと華琳達が慌てて止めにはいった。

 

「それは危険よ桂花!!武術の心得がない貴女じゃ風に飛ばされてしまうわ!」

 

「そうだぞ!我々に任せておけ!!」

 

「それは嫌よ!」

 

「なんだと!」

 

「私は一刀お兄さまの双子の妹荀文若よ!その私が止めなくて誰が止めるのよ!!」

 

「覚悟はあるようね。なら見せてもらおうじゃない、私達が盾になるから貴女が一刀を止めなさい」

 

「「華琳(さん)!!」」

 

「今の桂花には何を言っても無駄よ」

 

「当たり前よ。絶対にお兄さまを救ってみせるわよ!」

 

「なら早くやるわよ!今この瞬間にも一刀の気が放出し続けているのだから」

 

「「「ええ!(おう!)(うむ!)」」」

 

そうして縦に春蘭、秋蘭、華琳、桂花の順で並び砂塵の中心にいる一刀の元に向かった。

 

「くっ、やはり風が強い」

 

「姉者しっかり!」

 

「まかせておけ!!うおぉぉぉぉぉ」

 

すでに春蘭だけで半分以上進んでいた。

 

「す、すごいのね春蘭って。遊んでいる時はただの体力馬鹿かと思ったけどやる時はやるのね」

 

春蘭の予想外の実力に驚いている桂花に華琳が、

 

「春蘭は私達の中で一番強いわ。それに剣を持たせれば陳留には敵はいないほどよ」

 

「でも、馬鹿よね?」

 

「えぇ、馬鹿よ。でもそこが良いと思わない?」

 

「全く思わないわ!」

 

「そう、それは残念ね」

 

「華琳さん、姉者はもう駄目だ」

 

「わかったわ。春蘭!ここまででいいわ戻りなさい。秋蘭お願い」

 

「うむ、姉者あとは我々に任せておけ」

 

「くっ、秋蘭!頼んだぞ!」

 

そう言って春蘭は列から外れ、風に押されて後ろに下がっていった。

 

「わかっているさ姉者!うおぉぉぉぉぉ」

 

秋蘭がさらに半分進んだところで脱落しあとは華琳と桂花のみとなった。しかし風は中心に近づけば近づくほど風が強くなりかまいたちのように二人の服を切っていったため二人の服はぼろぼろになっていった。

 

「うっ、私はここまでのようね、あとは貴女次第よ!」

 

「わかっているわよ。絶対に辿り着いてみせるわ!!」

 

「そう、じゃあ任せたわよ」

 

華琳は桂花から離れ徐々に下がっていった。

 

「待っててくださいお兄さま!!桂花が必ずお兄さまの目を覚まさせます!!!」

 

桂花は強風の中を少しづつ進んでいき、ついに兄のいる中心に辿りつくことができた。

 

「抜けた!!お兄さまーー!!」

 

桂花が目を向けるとそこには白い光に包まれ虚ろな目をした一刀が少し宙に浮いており、それを中心に風が吹いていた。しかも一刀の肌は気の放出しすぎのため以前より白くなっており事の深刻さを物語っていた。

それを見た桂花は泣きながら一刀に抱きついた。

 

「お兄さま起きてください!」

 

「ぐすっ、お兄さま起きてくださいってば。桂花またお兄さまと、ぐすっ、また一緒にお勉強もしたいし、ぐすっ、街に行って一緒にご飯も食べたいしもっと色々したいですーー!」

 

桂花が何度も呼びかけるが反応はなくただ一刀を呼ぶ声だけが響いた。

 

「(こうなったら)」

 

桂花は何かを決意すると抱きついていた手を離し一刀の顔を引き寄せ唇を重ねた。

 

「(お兄さま。帰ってきてください)」

 

その瞬間一刀を包んでいた風が次第に勢いを無くしていき浮いていた一刀が降りてきた。桂花はそれを受け止めた。そして完全に風が消滅すると一刀が意識を取り戻した。

 

「んっ、こ、ここは?」

 

「お兄さま!気が付かれたのですね!!」

 

「気が付く?あれ?なんで僕は桂花に膝枕してもらっているんだ?確かみんなとかくれんぼをしていて鬼の子がなかなか探しに来ないから桂花と華琳と一緒にみんなの所に戻ろうとしたのは覚えているんだけどそのあとどうなったっけ?」

 

「それは」

 

「桂花ーーー!!一刀ーーー!!無事かーー!!」

 

春蘭が叫びながら走ってきてその後ろから華琳、秋蘭、蘭花も一刀と桂花の元にやってきた。

 

「一刀ーー私と戦えーー!!」

 

「な、なんでだよーーー!?」

 

「姉者、一刀さんはさっきのことで疲れているのだ。それに姉者も見栄を張っているだけで本当は立っているのがやっとだろう?」

 

「そ、それは・・・わかった、今日は諦めるとしよう。だがいずれ勝負だぞ!!」

 

「?よくわからないがそのうちな。」

 

訳のわからないままうなずくと華琳が前に来た。

 

「どうやら上手くいったようね。ところでなんで貴女が膝枕をしているのかしら?」

 

華琳が不機嫌そうに言うと桂花が、

 

「お兄さまは疲れているから少し横になった方がいいのよ。だけど枕代わりになるものがないから私の膝を枕の代わりにしているのよ。何か問題あるかしら?」

 

と胸を張って答えると華琳は「くっ」と悔しそうにうなった。

 

「それよりあんた大丈夫なの?」

 

「あら、心配してくれるの?」

 

「と、当然よ!あんた達のおかげでお兄さまを救えたのだから」

 

「そう、でも心配無用よ。この程度の風に吹かれただけで怪我をするほど弱くはないわよ。なにせ私達はあの死神と恐れられていたおかあさまから直接指導を受けているんですもの。そう簡単に怪我はしないわ!そうよあの修行に比べたら・・・・・」

 

そう言ってぶつぶつ呟いたあとはっと我に返り

 

「そ、それはそうと一刀、貴方調子はどうかしら?」

 

「調子?ああ、なんかすごくだるいし体も鉛のように重くて動かせないんだが」

 

「そう、それだけで済んだのならよかったわ。あと一歩遅かったら貴方は死んでいたかもしれないのよ!」

 

「えっ!?」

 

「なにも覚えていない様ね」

 

「いや、さっき桂花にも言ったけどかくれんぼの途中で桂花と華琳と一緒に外の様子を見に行った所までは覚えているんだがそのあとは・・・」

 

「なら蘭花、と言えば思い出すかしら?」

 

と言って後ろにいた蘭花を前に出した。

 

「蘭花、そうだ!!様子を見にいったら蘭花が知らない男の子に捕まっていて春蘭が囲まれていて危なかったんだ!!」

 

「私は危なくなんてなっていないぞ!!」

 

「春蘭、少し静かにしてもらえるかしら?」

 

「うっ、わかった」

 

華琳に睨まれたので春蘭は大人しくなった。華琳はそれを確認したあとまた一刀に続きを促した。

 

「それでそのあとは?」

 

「確かそれを見た時とっさに飛び出して・・・・駄目だ、そのあとが思い出せない」

 

「そう、なら思い出させてあげるわ。貴方は蘭花の打たれた頬を見て怒り気を暴走させたのよ!」

 

「気を、暴、走?」

 

「周りを見ればわかるわ」

 

そう言われた一刀が今まで見ていなかった周りを見渡すと自分を中心に窪みができており周りの者が散乱していた。そして視線を元に戻した時一刀はやっと気が付いた。桂花に華琳、春蘭と秋蘭の服が所々破けていてうっすらと血が滲んでいるところがあるということに。

 

「!?まさかこれを僕が?」

 

「そうよ。貴方の気が暴走して砂塵を作り広場をこんなにした。そして貴方を救うために私達が怪我をした。全部貴方のせいよ!!」

 

「華琳!!そこまで言うことないじゃない!!私はお兄さまを助けることができたからこんな怪我大した事無いわよ!!」

 

「桂花、私は一刀と話しているの。黙っててくれるかしら?」

 

「嫌よ!なんであんたなんかの言うこと聞かなきゃいけないのよ!お断りだわ!!」

 

「そう、私とやろうというのね?」

 

華琳が怒気を含んだ声で言うが桂花は何でもないという風な顔で、

 

「やってやろうじゃない!」

 

と立ち上がって構えようとしたが、

 

「大丈夫だよ桂花」

 

「お兄さま!?」

 

「大丈夫、全部理解したから。ごめんな、妹のお前にこんな怪我させちゃって。それと蘭花」

 

桂花に触れた後、蘭花を呼び抱き寄せた。

 

「ごめんな。僕が側にいなかったばっかりに怖い目に合わせてしまって」

 

「お兄さま」

 

「おにいちゃま!蘭花はだいじょうぶでちゅよ!だってちゃんとおにいちゃまは蘭花をたすけてくれましたもん!!」

 

「そうです!ちゃんとお兄さまは蘭花を助けました!」

 

「ありがとう二人共」

 

桂花と蘭花の頭を撫でた後よろよろと立ち上がった一刀は、

 

「そっか、僕がこれを全部したんだね」

 

周りを見渡したあとに自分の手の平を見ていた一刀に、

 

「さっき貴方は自分は弱いと言っていたけど本当は力があったわね。普通の人には無い力が。それで貴方はこれからその力をどうするつもりかしら?」

 

「うん、こんな力があったなんて僕自身でも驚いているよ。だから」

 

そう言ったあと顔を上げ華琳を見つめた。

 

「父様に剣を習おうと思っているよ。今のままじゃまた暴走してみんなを巻き込んでしまう。だから剣を習い強くなってこの力でみんなを守れるようになりたいと思う」

 

「そう、なら一刀、貴方私に仕える気はないかしら?」

 

「あんた本気で言ってるの!お兄さまは将来この済南国の太守になるのよ!それなのになんであんたなんかにお兄さまが仕えなきゃいけないのよ」

 

「確かにそうね。でも私達が跡を継ぐときこの国は今のような世の中なのかしら?」

 

「な、何が言いたいのよ!」

 

華琳の言葉に戸惑いを見せた桂花にさらに追い討ちをかけるように、

 

「賢い貴方達なら薄々感じているのでしょう?私達が成人する時ぐらいに歴史に名を残すような大きな出来事が起きそうな予感が」

 

「・・・・・」

 

「そ、それは・・・」

 

「その様子だと貴方達にも心当たりがあるようね」

 

桂花は黙ってしまった。ここ最近城壁の外の話を聞く度に不安な気持ちになるのだ。そしてその時は決まって兄の元に行き頭を不安が無くなるまで撫でてもらっていたからだ。

 

「今回の事で私は自分がどのような王になりたいか見つけたわ!春蘭!秋蘭!」

 

「「はい」」

 

華琳の話を聞いて何かを考えていた春蘭と秋蘭を華琳は呼んだ。その表情は先ほどの一刀が無事だった時の朗らかな感じではなくこれから儀式をするような真剣な空気が流れていた。

 

「春蘭、秋蘭。以前貴女達は言ったわよね?私には王としての覚悟が足りないと。では今はどうかしら?」

 

「はい、その前に一つお答えください。貴女は王になった時どのような国を作りたいですか?」

 

いつもならこういう難しい話をしている場面では秋蘭がいうのだが今は春蘭が話をしていた。

 

「そうね、私は強い国を作りたいわ!他国に侵略させず、飢餓にもならず、盗賊にも奪われない。そして火の粉が降りかかってくるのなら火種ごと消せる、そんな誰にも負けることが無く、そして民達の笑顔が溢れる。そんな国を私は作りたいわ。そしてそのためならば私は人をも殺そう。死神と恐れられようとも民を、そして仲間を守るために戦ったおかあさまのように」

 

華琳の決意の言葉を聞いた春蘭と秋蘭は互いを見て頷いたあと跪き手を胸の前に出し『握拳』の礼とり、

 

「私は姓は夏侯、名は惇、字は元譲、真名は春蘭」

 

「私は夏侯惇の双子の妹、姓は夏侯、名は淵、字は妙才、真名は秋蘭」

 

「我らの名と真名、今一度曹操様に預けます。そして曹操様の手となり足となり」

 

「仇名すものを蹴散らし、曹操様の願いを叶える為」

 

「「生涯曹操様にお仕えさせていただきます!!」」

 

そう言うと華琳は、

 

「わかったわ、私は姓は曹、名は操、字は孟徳、真名は華琳この名もう一度二人に預けましょう。そして私も誓うわ!必ずこの大願叶えて見せると!!」

 

そう叫んだ華琳から物凄い気が流れてきた。一刀達は後で聞いた話だがこのとき放っていたのは覇気という王だけが持つ事を許された特別な気だった。

 

「ところで一刀、貴方からはまだ返事をもらっていないのだけど?」

 

覇気を収め振り向いた華琳は先ほどまでのぴりぴりしたものではなく、先ほど一刀に質問した時の華琳だった。

 

「その話だけどそれって今じゃないと駄目かな?」

 

そう言うと春蘭が怒りだし、

 

「貴様!華琳様が折角誘ってくださるのに断るつもりか!!」

 

「別に断るわけじゃないさ。僕はまだ弱いし知識も不十分だ。こんな僕が王になろうとしている華琳の家臣になるわけにはいかない。だからもう少し答えを待ってもらいたいんだ」

 

「そう、わかったわ。なら貴方が自ら誇れるくらいになったらもう一度聞くわね」

 

「ああ」

 

「お兄さま!桂花はお兄さまに一生付いていきます!」

 

「う~ん、お兄ちゃんは桂花の幸せを願っているんだけどな」

 

「桂花の幸せはお兄さまと共にあることです!」

 

間を置かずに答えた桂花に一刀は苦笑いをしていた。

 

「華琳様!私も華琳様に仕えるのは幸せです!!」

 

「そ、そう、ありがとう春蘭私も嬉しいわ」

 

突然春蘭に話を振られて驚いたが華琳は幸せと言われて嬉しかった。今まで母以外そう言われたことが無かったのだ。

 

「所で春蘭あんたさっきまで華琳って呼び捨てにしてたのになに変えているのよ!しかも話し方まで違うし」

 

「それは当然だろう?華琳様は私が仕えるべき主なんだ。その主に呼び捨ては不味いだろう?」

 

「それにしては切り替え早くない?」

 

「べ、別にこんなの普通だぞ!!!」

 

「今だから言うが実は姉者は初めから華琳様に仕えるつもりだったのだよ。」

 

「し、秋蘭!!」

 

「本当なの春蘭?」

 

驚いた華琳が尋ねると春蘭は恥ずかしそうに、

 

「は、はい。一目会った時から私と秋蘭は華琳様に仕えよと思っていました!!ですがその時の華琳様は今のように自信に溢れていらしゃらなかったので時が来るまで我々は待つことに決めたのです。」

 

「もう!そんなこと言われたら、ぐすっ」

 

華琳の目から涙が流れてきた。

 

「へ~あんたでも泣くことあるのね」

 

「う、うるさいわね!」

 

潤んだ涙を拭った華琳は、

 

「春蘭、秋蘭これからもよろしくね」

 

「「はっ、この命最後まで華琳様と共に!!」」

 

 

こうして問題が全て解決したように思えた・・・・がまだ最後の問題が残っているのに一刀達は気が付いていなかった。


 
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