「かぁぁぁずぴぃぃ!!」
その声が聞こえた瞬間
「・・・もうひと眠りしよう・・・」
時計に目をやるとまだ早朝、一刀は再びベッドに潜り込んだ
「かぁぁぁずぴぃぃ!!」
また正月早々、不愉快な声が聞こえた
(あー、無視無視。俺は眠いんだ!)
「かぁぁぁずぴぃぃ!!おらへんのかぁぁぁ!!!」
(おらへんおらへん)
心の中で返事を返し、いつになったら帰るんだろうなーと、一刀が考えていると
カンカンカンカンカン・・・・・
寮の備え付けの階段を上ってくる足音が聞こえる
(・・おいおい・・)
カツカツカツカツ・・・・
足音は一刀の部屋の前で止まった
そして
ガチャ・・・ガチャガチャガチャガチャガチャ!!!・・・・・
(怖っ!!怖ぇよ!)
しばらくしてドアノブを捻っている音が止んだ
(まったく・・昨日の夜、鍵かけといてよかったぜ・・というかあいつはなにがしたいんだよ・・)
一刀が昨晩の自分に感謝しつつ呆れていると
・ ・カチャカチャ・・・カチャカチャ・・・
さっきとは違う音がドアから、もっと細かく言うとドアノブからしていた
(な、なんか嫌な予感が・・・)
そしてその予感は的中する
カチャン・・・・
ドアの鍵の部分が横の状態から縦に変わった
ガチャッ!!
「かぁぁぁずぴぃぃ!!!初詣いこうや(ヒュンッ!!)ぐふぉぁっっ!!」
一刀はその不法侵入者に一切のためらいもなく木刀を投げつけていた
そして鳩尾にクリティカルヒット!
しかし及川は耐え抜いた!
「ぐ、ぐふっ・・さすがに・・容赦ないなぁ・・だけどなぁ・・か、かずぴー・・・・まだまだ甘いでぇ・・・」
よろよろと鳩尾を抑えながら立ち上がりやがった及川
「ピッキングして部屋に無断で入ってくるようなやつに容赦なんかするか!」
と、言いながら電話を取る一刀
ピッピッピッ・・・ピッ
・・・プルルルル・・・プルルルル・・ガチャッ
「あ、すいません警察ですか?いやー正月早々すいません。俺の部屋にたった今不法侵入者が・・・」
「わー!わー!わー!すまん、かずピー!このとおり謝るから警察だけは堪忍したってやぁぁぁぁ!!!」
ピッ!
「はぁ・・・新年早々・・疲れた・・」
一刀はその言葉どおり、心底疲れたという顔をしてベッドに倒れこんだ
一刀は考えていた
(今日俺は道場で鍛錬をするはずだった。うん、ここまでは正しい。ならなぜ―)
「ん、かずピーどしたん?」
(こいつと一緒に初詣に行くことになってんだ?)
「まぁまぁかずぴー、細かいこと気にせんほうがええでー」
「人の心を読むな!!」
「わいとかずぴーの仲やないかー」
と、いいながら肩を組もうと近寄ってくる及川
「人の心を読める仲ってどんな仲だよ・・」
溜息を吐き頭を抑える一刀
(あ、なんか頭痛がしてきた)
「なんやかずピー?頭なんか押さえて、初詣やで?は・つ・も・う・で!!」
「なんでそんなにテンション高いんだ?」(ま、だいたい予想はついてるけど)
「かずぴーのテンションが低すぎなんや!初詣やで?かわいい女の子がぎょーさんおるかもしれへんやろ!」
(やっぱりか・・・・、ん?)
予想どおりの答えだったとはいえ、さらにテンションが下がりそうになった一刀だったがふとあることに気付いた
「及川お前・・・彼女いたよな?」
グサッ!
「彼女いるなら俺なんか誘ってないで彼女誘えばよかったじゃねえか」
グサグサッ!
「あ、もしかしてケンカでもしたのか?そういうことなら相談くらい―(やめろー!!!!)」
「もうやめてーな・・・かずピー・・優しさが痛い・・痛いでぇぇぇ・・」
突然の叫びに驚いた一刀が隣を見ると、いつのまに移動したのか10メートルぐらい先にある電柱に手を当てうなだれている及川がいた。
「ど、どうした?」
少しあせる一刀
「んなもんとっくに振られたわー!!!」
「うわっ!」
一瞬で戻ってくる及川。神速の張文遠も真っ青のスピードだった
「チクショー!!ええよなぁ勝ち組はぁ!」
及川は半泣きで指を突きつける
「勝ち組?誰が?」
きょろきょろと辺りを見回す一刀。その行為によって及川がさらにヒートアップする
「もちろんかずピーのことや!二年くらい前から急にモテるようになって、告白やて二桁やで二桁!どんなチート使ったんや?わいにだけ教えてぇな!」
ヒートアップして悶えていたかと思うと、次の瞬間には土下座する及川
忙しいやつだな、と思いつつ
「チートなんか使ってねえょ、つーか使えないし」
と、現実を突き付ける。
「えぇー!ほんまかいな?」
「ほんまほんま」
苦笑しながら答える一刀
「・・・ま、そーか。かずピーがモテモテなんは実力みたいなもんやしなぁ・・」
「実力?」
「そ、実力や実力。二年ぐらい前からかずピー、少し付き合い悪うなったと思って後をつけたら図書館で勉強やで!?自分の目疑ったわ、しかも政治やら経済やらが主やし、中国の歴史やらもやっとったし普通の学生がやる範囲超えてたで?」
「そうか?」(後つけてたのかよ!全然気が付かなかったぞ・・・、こいつ間諜とかになれるんじゃないのか?)
自分の悪友のスキルに少なからず驚きながらも冷静に努めようとする一刀
「そうや。そのくせ入った大学はあんまり勉強せえへんかったわいでも入れるような大学やし。なーんか釈然とせぇへんわ」
及川は腕を組みながら、うんうんと頷いている
「・・・・ただ将来に必要かもって思っただけだよ」
「剣術とかも必要なん?」
「覚えておいて損は無いだろ?」
「う~ん・・・・・・・女の子にモテたかったんと違うんか?」
「頼むからお前と一緒にするな」
及川ごと戯言を文字通り一蹴する
もちろん加減した蹴りなので及川には当たらずに空を切る
「まぁ・・かずぴー告白されても絶対に付きあわへんしなぁ・・」
「・・・・・・・・・」
及川の言うとおり、この二年間、告白はされても丁重に断っていた
「しかも断り方がうまいから相手に恨まれることもあらへん」
「自分で自覚はしてないんだけどな・・」
聞きようによってはモテない男達全てを敵に回すことになるようなセリフを吐く。しかも無自覚で
「かずピーは知らんかもしれへんけど・・一時期ウホッ疑惑あったんやで?」
「はぁ!?」
「そりゃ告白全部断っといてしかも特定の女性と付き合ってないときたら、そういう疑惑でてきてもしゃあないやろ?」
「ぐ・・・反論できん・・」
「まぁ噂流しとったやつらはかずぴーのファンに袋叩きにあったとかあわなかったとか・・」
「・・・嘘だろ・・?」
「残念ながらホンマや」
顔が引きつる一刀に対して満面の笑みで答える及川だった
「洒落になってねー・・」
頭を抱える一刀
「なんで誰とも付きあわへんのや?」
「なんでって・・・・」
脳裏に思い浮かぶのはもちろん彼女たちの顔
「大切な人た・・・・・大切な人がいるからだよ・・」
達と言いそうになって危うく修正する。達なんて言ったら及川のことだ、絶対に騒ぎ出す
「それは前にも聞いたでぇ・・・・。どこの誰か教えろゆーても意味わからへんこと言うし、いい加減に教えてぇな」
ぶーぶーとそっぽを向き、頬を膨らませる及川
「寂しがりやの・・・・覇王さまだよ」
一刀の、誰に向けたわけでもない呟きは青い空に溶けて、消えていった
<あとがき>
やっと更新しました
あいかわらず短くてすいません。
及川くんと一刀の日常でした。
次の話で事態を動かそうと思っています。
話の本筋がいくつかあって、どれにしようかまだ決めかねてるんですけどね。
意見、感想、ご指摘等がありましたらぜひ、コメントしていってください。
十六夜でした。
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更新がだいぶ伸びてしまいました、すいません。
他の方の作品を見て勉強させてもらっていますが、どうにも自分の文才の低さとボキャブラリーの少なさが際立ってしまうので逆効果になっています。