No.195111

俺のあやせがこんなに可愛いわけがない(3)

鳳仙鬼さん

小説第3章です。

2011-01-10 12:55:42 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3241   閲覧ユーザー数:2861

第3章 

 

 

デート(?)の途中で具合が悪くなったあやせを、タクシーで病院に連れて行き、  

 

家に着くと、家の中は真っ暗で、誰もいなかった。

 

部屋まであやせを送っていき、着替えたあと、ベットに寝かせた。

 

 

「ありがとうございました。・・・私はもう大丈夫ですから、帰ってください

受験生に風邪うつしたら大変です」

 

「俺なら気使ってくれなくてもいいよ」

「何か食いたいもんあるか?」

「いえ・・今は食欲ありません」

「そっか・・」

あんまり病人に構うのもあれなんで、俺は部屋を出た。

 

「もしもし・・?おお、麻奈美か」

『どーしたの?きょーちゃん?』

「ちょっと風邪引いた奴がいてさ」

『え!?・・もしかして桐乃ちゃん!?』

「いや、あやせのやつがさ」

『ええっ!?あやせちゃんが?』 

「家に誰もいなくて、ちょっと困ってるんだ看病ってどうしたらいいんだ?」

 

 

買い物に行った後、俺は、麻奈美から、看病のやり方を聞いて、雑炊を作っていた。

 

つくづく俺って奴は、一人じゃ何も出来ない男だよな・・・そんなことを思いながら、数時間後。

 

 

 

 

コンコン

あやせの部屋をノックする。

 

「誰?」

 

「よう」 

ガチャリと扉を開けて、入ってきたのは、土鍋を持った京介だった

「腹へってないか? 雑炊作ったんだけど」

「どうして・・」

「まぁなんだ、晩飯ぐらい作って帰ってもバチは当たらねーと思ってさ」

机の椅子を出してあやせのベットの隣りに座る。

「食欲ないなら、プリンとか買って来たけど食うか?」

「雑炊・・・食べたい」 

鍋のフタを取り、レンゲスプーンですくって息で冷ます

「ふー・・ふー・・」

こんなもんか?って・・こんな食べさせ方・・気持ちわるがられるかな・・

あやせを見ると、口を開けて待っていた

口まで持っていくとかぷっと食べた。

「どうだ・・?熱くないか?」

「・・・マズイ・・・」

「う・・・仕方ねーだろ、初めて作ったんだからさぁ・・食わないんなら片付けるけど・・」

「ん、早く次」

あやせはあーんと口を開けて待っていた。

「食うのかよ・・」 

まぁ食欲あるだけマシか。

一通り平らげた後、薬を飲ませた。コップは手でもって自分で飲んでいた。

・・・・・ 

雑炊俺が食べさせなくても自分で食えるじゃん?と思ったが今はコイツに無理させたくないしな。

茶碗を片付け、氷枕を持ってきて、一息ついた所で、そろそろ帰るかなと、思った。

「ごはん・・ありがと」

「おう、じゃぁそろそろ帰るわ、なんかあったら電話で呼んでくれ、すぐ駆けつけるから」

俺は立ち上がり、帰ろうとしたその時、

「・・・・ん?」

服の裾を、あやせがつかんでいた。

「どうした?」

「別に・・」

「いや、じゃあなんで裾つかんでるんだ?」

なんだ?コイツ・・・イマイチ要領をえない

「つかんでないもん」

は?おもいっきりつかんでるんですけど・・

風邪のせいで自分で何やってるかわかってないんだろうか・・・

無理矢理手をはがそうとしたら、さらに強く握ってきた。

うお・・顔を見ると少し涙目になっている。なんだコイツ・・・何がしたいか分からん。

そんな様子をちょっと可愛いと思った・・・。

・・まぁ今日の所は具合悪いのにいろいろ連れ回しちゃったし、

俺にも非があったから、強くは言えないが。

妹がいたらこんな感じなんだろうか・・・いるけど。

「だって、居てくれるって言ったでしょ?」

「いや・・言ってねーけど・・」

・・・・・・・・・・・・・ 

ダメだ~~~~~!!、こいつは正気じゃない!!それは間違いない。

いつもは俺を犯罪者扱いするくせに、

こんなしおらしい所見せるなんて、都合のいい女だな!

手を振り払って、帰ってしまおうか・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クソッほっとけるわけねーだろ!

俺は「はぁ~~~~っ」っとため息をついて、携帯電話を取り出した。

「もしもし?」

『何?・・あんた用がある時以外かけて来んなって言ったじゃん?』

いきなり機嫌が悪い・・お前は俺がそんなに嫌いなのか・・・高坂桐乃。俺の妹である。

「ちゃんとあるよ、用」

『何よ、さっさと言ってよ、あんたと違って私は忙しいの』

「い、いや、たいしたことじゃないんだけどさ、今日帰れなくなった」

『はぁ!?何よそれ!?』

声が大きい・・そんなに俺が帰らないのが嫌なのか・・ 

「その、・・・何と言うか・・・」

『まさかまたあの女の家じゃないでしょうね!?』

「ちげーよ!麻奈美の家じゃない」

あの女って言葉で分かる俺もどうかと思ったが、今はそう肯定しておいたほうがこの場は良かったのかも

しれない。

「その・・あやせの家なんだけど」

『なっ!あ、ああああんた!まさかあやせになんかしたんじゃないでしょうね!?』

「してねーよ!ちょっと風邪ひいたみたいで、家族もいなかったから俺が面倒見てたんだよ」

『あんたねぇ!!あやせになんかしたらぶっコロすわよ!!』 

正直に話したらものすごく怒りだした・・ギャーギャーうるさい・・・ 

「そ、そういうことだから!!じゃ!」

『ちょ、ちょっと!そん・・ブッ・・・ツー・・ツー・・・ツー・・』

要件言ったので切ってやった。電源も切った。これ以上あいつの話に付き合ってもらちがあかん、・・・・ちょっと次に顔合わせるのが怖いが、まぁなんとかなるだろ。

「・・あのあやせさん?そういうことだから、今日は泊まっていってもいいですかね?」

そう言うと、手をはなしてくれた。・・・どうやら正解だったようだ。

  

 

 

翌日、12月20日―――

 

朝から、桐乃がお見舞いに来ていた。

「大丈夫?あやせ!あいつになんかされなかった!?」

「うん・・大丈夫、それよりゴメンねお見舞来てもらって・・」

 

心配だったんだろうな、右頬が痛い・・・まさか桐乃に会ってそうそう殴られるとは・・・ 

俺は看病しただけだぞ。

「おまえ、あんまり病人に話しかけんな、気使わせるだけだぞ」

ギロりとにらまれる。う・・・

 

俺は、いったん家に帰って、仮眠して、風呂に入って着替えを持って

もう一度あやせの家に行った。勉強道具も少し持参した。

 

夕方。空が茜色になった頃―――

 

あやせの家に入ると、いい匂いがした。

もしかして、母親が帰って来たのだろうか。

ならもう俺にすることはない。ちょっと挨拶しようと、台所に行くと。

エプロン姿の麻奈美がいた。

「お前かよ・・・」 

「あ、きょうちゃんおかえり~」

「おう帰ったぞばあちゃん」

「なんでおばあちゃん!?Σ(゚д゚lll)」

 

「あやせの親御さんは帰って来てないのか?」

麻奈美は鍋をぐつぐつ煮込んだまま、答えた 

「ん~見てないけど、あやせちゃんのお母さんとお父さんって偉い人なんだよね~」 

「母親はPTAの会長で、親父は何かの議員って聞いたぞ」

「ふ~んだから忙しくて家にいないんだ~じゃぁいつも寂しだろーなー」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・ 

 

 

「寂しい・・か・・

 

 

 そうかもな・・・・・」

 

 

俺は、あやせの事、何か勘違いしていたのかもしれない・・・なんだろう・・・この引っ掛かる感じは・・・

 

すごくもやもやする・・・・。 

 

 

そんなことを思ってると、いてもたってもいられなくなった。 

「あやせは今どうしてる?」

「ん~?多分寝てると思うけど、ごはん出来たら呼びにきてね~」

「・・・・わかった」

 

 

 

 

 

俺は、あやせの部屋に向かった。

ノックをして部屋に入ると、ぐっすり寝てるみたいだ。

「・・・ん・・京介さん?」

「お・・すまん起こしちまったか」 

「熱測っていいか?」

「・・・エッチなことしちゃだめですよ?」

「し、しねーよばか」

ったく・・熱を測る。数分して脇に挟んだ体温計を取り出す。

 

39℃8分

 

・・・・・・・・

ウソだろ・・・

全然下がってねぇ・・・むしろ最初より上がってるじゃねーか

 

 

「ごはん持ってきたよ~」

麻奈美が入って来た。

「お、おい!麻奈美!」

「わっ! ど、どうしたの!?きょうちゃんっ!そんな形相で」

「あやせの熱が下がらねーんだ!だ、大丈夫なのか!?」 

「ひゃわわっ顔が怖いよう・・」

「え、えっとね風邪って言うのは、一般的に一度熱が上がりきってから、下がるものだから、

大体2~3日もすれば、下がり出すと思うんだけど。」

今は風邪を引いて2日目・・・ってことはそんな異常事態ってわけじゃないってことか

俺は、ほっとして、うなだれた

「もう・・・京介さんは心配しすぎです」

「そうだよきょうちゃん、看病する人がそんな顔して心配したら病人はびっくりしちゃうよ」

「う・・・すまん・・」 

麻奈美が、病人用の消化に良い手料理をあやせに食べさせている。

病人用と言えど美味そうだ・・・俺も食いたい。 

 

それをじっと眺めてる俺。

俺はもしかして・・・看病の邪魔になってるんじゃないだろうか・・・・

 

「あのさぁ・・・俺ってもしかして・・・帰った方がいい・・?」

 

そういうと、あやせはもじもじして、麻奈美の方を見る。

「きょうちゃんは帰っちゃダメだって」

目を見ただけでどうやって解読したのか謎だが、通訳していた。

「ほんとかよ・・」

「別に帰りたきゃ好きに帰ってください、ここにいて襲われても困りますから」

・・・・・・麻奈美と全然言ってることが違う。どうすりゃいいんだ。

「・・・・・・・・・・」

「わかった、せめて熱が下がり出すまでここにいさせてくれ、妹に誓って襲わないから」

「ぷっ・・・しすこんだね、きょうちゃん」

うるせっ

 

 

麻奈美と晩御飯を食べたあと、麻奈美は家に帰り、

俺はあやせの隣りで参考書を眺めていた。

昨日俺が使った布団もあやせのベットの隣に置いた。

 

「・・・そろそろ寝るかね・・・」

「ちょっと風呂借りるぞ」

 

風呂から上り、歯を磨き、パジャマに着替え、さて寝るかとなった時、一つのことに気がついた。

「お前さぁ・・着替えってもうしたの?」

「え?ええ、麻奈美さんが着替えさせてくれましたけど?」

「そうか・・・」

「はっ、あなたまさか自分が着替えさせたいからそんなこと言ったんですか?」

「う・・違うぞ!?もし着替えてなかったら気持ち悪いだろうな~なんて思ってだな」

「京介さんのスケベ」

見苦しい言い訳だった。

 

 

「電気消すぞ」

「はい」

 

9時就寝――

 

昨日と同じく、あやせの隣りで寝る。

・・・・・・・

当然だが、すぐには眠れない。

今日家で仮眠して来たのは、昨日全然眠れなかったからである。

しっかり寝てきたから、余計に眠れないのかもしれない。

もちろんあやせが心配だってこともある。 

「ふぅ・・・」

そんなことを思いながら1時間が立ち、2時間立ち、3時間が経過した。

そろそろ寝ないとな・・・

すると、あやせがなにやらもぞもぞ動いて布団から出て来たみたいだ。

・・トイレか? 

と思ったが、ドアが開く気配がない。

すると、俺の寝てる布団がめくれ、何か俺の所に重いものが入って来た。

「ん・・? ってうわっ!」

あやせが俺の布団に入って来ていた!

「おい、お前のベットは上だぞ、勘違いするな」

「ん~もうちょっと詰めて下さい・・・」

コイツ俺の所で寝る気かよ・・ 

ま、ま、まさか夜這い!?・・ドクンドクンと胸が高まる・・・

「・・ぅ・・・ぐすっ・・・お母さん・・・・お父さん・・・・・・・」

何か寝言のようなものが聞こえた。

「寝言かよ・・・」

俺を母か父かと勘違いしてるんだろうか?

こいつは、寂しくて、誰も頼る人がいなかったから、俺なんかがそばにいて欲しいなんて

思ったんだろうか・・?

 

「どうして・・・私を一人にするの・・・・ひっく・・・ぐす・・・」 

あやせは苦しそうに、額に汗をかき、泣きそうな声でつぶやいた

 

「あやせ・・・・・・・・・・」

いつも凛として、しっかりしたイメージのあやせ。勉強もスポーツも出来て、垢抜けてて、

モデルでみんなから人気があって・・・まるで桐乃だ。

はたから見れば、元々持って生まれた才能で凄いやつだと思われるだろう。俺もそう思っていた。

ただ、コイツが風邪を引いてから、そうは見えなくなった。

 

 

俺には、ただ寂しさを我慢して、強がってるだけの女の子に見えた。 

 

 

昔桐乃のオタク趣味がばれて俺とあやせが戦ったことがある。あのときはマジで怖かった。

桐乃は、親がくれなかった分の愛情を注いでくれる唯一の存在だったのかもしれない。

そんな桐乃をオタク趣味があったことで、自分に注がれる愛情が嘘だったんだと思って、あんなに反発したんじゃないだろうか。

 

 

 

 

「・・・・・俺なんかで良かったら、いつでも一緒にいてやるからな・・」 

 

 

 

 

 

ごめんな、俺なんかで・・・。

 

 

 

 

 

12月21日―――

 

翌日、あやせの熱は下がり始めた。

 

 

「うを・・汗じゅっくりだ・・・・」

「着替えさせないとな・・・」

「おい、あやせ・・起きろ、そして着替えるぞ」

 

・・・・・・・・・・・・

一向に起きる気配がない。

汗がぐっしょりで気持ちわるそうだ・・・

仕方ない、寝てる間に着替えさせるか・・・

俺は、あやせのパジャマのボタンに手をかけ、ひとつひとつ外していく。

ゴクリ・・・  

 

 

コンコン、ガチャリ

 

「オっハヨーあやせ~!朝ごはん持ってきたよ~」

「あ・・」

そこには桐乃が朝ごはんを持って立っていた!なんてタイミングの悪い・・・

「お前、返事を待たずに入るなんて、ノックの意味ないからな」

冷静に突っ込んでみた。

  

「あ、あああああんた・・ねぇ・・・今度こそ殺すッ!!」

 

 

散々殴られたあと、あやせは起きて、熱を測り、朝ごはんを皆で食べた。俺をのぞいて。

 

 

「あの・・いい加減腹へったんですけど・・・許してくれないですかね・・・」

 

桐乃はゆっくりこっちを向いて嫌~な顔をしながら言った。 

「あんたがベランダから飛び降りて死んだら許してあげる」

 

それ許してないよね・・・。

 

36℃9分  

 

熱も大分下がったようで、二人ともホッとした。麻奈美にもメールを送っておいた。

  

「そういやお前、24日のイブはどうするんだ?なんか予定あんのか?」

 

 

ふっふっふと笑みを浮かべた。気持ち悪い。

「なんだよニヤニヤして」

 

「見よ!メルルのクリスマスライブのチケットが当たったの!!しかも最前列よ!」

「二枚あるからあんたも来るんだからね!!」

 

「いや、俺特に行きたくねーけど・・・それならあやせと行けよ・・・」

「い、いいよ私は、病み上がりだし、家でじっとしてるよ。お兄さんと2人でいっといで」

「そう?じゃぁ行くわよ!、ちなみに拒否権なんてあんたにないから!」

どっかの独裁者みてーな言葉だ・・・ 

 

そんな桐乃を見ているあやせが一瞬だけ寂しそうにするのを、俺は見逃さなかった。

 

 

さて、と・・・まぁこんな時のために受験勉強は終わらせてあるからな。

 

 

 

 

 

 

いっちょ動いてみるか。

 

 

 

【つづく】 

  


 
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