No.194902

星蓮船の楽しい遊覧飛行

東方二次創作です。短いです。
気軽に空をゆったりと遊覧飛行出来ると楽しそうですね。
そんなことを考えながら書きました。
一輪のギャグは昔に漫画で読んだものです。でもどこかのバスガイドさんはまだやられているのかも知れません。

2011-01-09 13:28:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:956   閲覧ユーザー数:944

 巫女や魔法使い、あるいは特別な力を持たない限りは普通の人間に空を飛ぶことは出来ない。

 それ故に、幻想郷でも多くの人間にとって空を飛ぶことは夢であり憧れであった。

 だから、こういった商売が繁盛するのも必然のことなのかも知れない。今日も星蓮船による遊覧飛行は多くの人間達で賑わっていた。

 空に浮かぶ星蓮船の上で、雲に包まれて地上を見下ろし、多くの客が歓声を上げていた。

 いや、人間達だけではない。命蓮寺が妖怪達にも分け隔て無く接する寺であるためか、妖怪の姿も少なくない。

「……繁盛しているわねえ」

「お前のところとは大違いだな、霊夢」

 凹み気味に呟く霊夢に、魔理沙はからかうように笑みを浮かべた。

「いっそのこと、博麗神社も空を飛ばせてみるか?」

「冗談じゃないわよ。そんなことしたら、おちおちのんびりお茶も飲めないじゃない。面倒くさい」

 霊夢が指さす先で、雲居一輪がガイドをしていた。あんな真似はしたくないということらしい。

「えー。私の右手を見て下さい」

 客達はその言葉に従って、一輪の右手に視線を移した。

 その反応に、一輪はにっこりと笑顔を浮かべる。

「こちらが右手でございます」

 客達の間で吹き出すような笑いが零れた。思わず、霊夢と魔理沙も釣られて吹き出す。

 その一方で、早苗は汗を流した。

「う、うわー。あんなギャグ、外の世界ではもう何十年も前に絶滅していたと思うんですが……流石は幻想郷。なるほど、外の世界で忘れられたものが流れ着くというのはこういうことなんですね」

 それはどうなんだろう? と感心する早苗を横目に霊夢と魔理沙は小首を傾げた。

 敢えてそんなことを八雲紫ら、分かりそうな者に訊く気も起きなかったが。

「でも、人間相手に信仰を集めるのでしたらこういうのも一つの手かも知れませんね」

「何? まさかあんたのところでも神社を飛ばそうとかいうんじゃないでしょうね?」

 じろりと目を細める霊夢に、早苗は頬を掻いて苦笑いを浮かべた。

「あははは、だって守矢神社は妖怪の山の上にあるんですよ? そのせいかどうしても人よりも妖怪の方が信仰が多くなってしまうみたいでして……」

「博麗神社といい、守矢神社といい、神社はどこも妖怪に占拠されてしまったみたいだな。嘆かわしいことだ」

 そんなやりとりに、魔理沙は大仰に溜息を吐いてみせた。

「でも、だからこそここで人間の信仰を得る必要があるんです」

「んで? どうするのよ? 二番煎じは芸がないわよ?」

 訪ねる霊夢に、早苗は「我に勝算あり」と言わんばかりの笑みを浮かべた。心なしかその瞳も輝いているような気がする。

「そこはそれ、やっぱりロボですよロボ。巨大ロボットです。そして人里のちびっ子達から大きなお友達までハートを鷲掴みするんです。地底の核エネルギーに河童の技術が加わって……合体、変形にドリルにビーム……うふ……うふふふ、夢が広がります☆」

 途中から自分の世界にトリップして幸せそうな笑い声を漏らす早苗を眺めながら、霊夢と魔理沙は「取り敢えず、次も異変が起きたらこいつらをまず疑おう」と思った。

「……ふむ」

「今度は何よ? 魔理沙」

 顎に手を当てて目を細める魔理沙に、霊夢は小さく嘆息を吐いた。この様子だとまた何かろくでもないことを思いついたに違いない。

「いやな。空を飛ぶというだけで、これだけの客を呼び込めるわけだろ?」

「そうねえ」

「私もなんでも屋を経営しているわけだが、近頃は経営が厳しいんだ」

「……だからといって、それで私のところにたかりに来られても困るんだけどね」

「安心しろ、紅魔館に白玉楼、それにアリスのところとかバランスよく回っているから。って、言いたいことはそれじゃない」

 にやりと魔理沙は笑みを浮かべた。

「そこで私は新しい商売を考えた。魔女の宅急び――」

「ちょっ!?」

「魔理沙さん、それ以上はいけませんっ! 危険すぎますっ!」

「もがっ!? もががああああああっ!?」

 慌てて霊夢は魔理沙の口をふさぎ、早苗も我に返って魔理沙を後ろから羽交い締めにした。

 目を白黒させる魔理沙だが、取り敢えずそれ以上はその単語を言わないであろう様子を見計らって、霊夢と早苗は魔理沙を解放した。

「いきなり酷いじゃないか。何なのぜ?」

「いいから、あんたは黙ってなさい」

 うんうんと早苗も霊夢に続いて頷いてみせる。

 そんな彼女らの態度に釈然としないものを感じながら、魔理沙は押し黙った。

「……でもまあ、空を飛ぶだけでこれだけ人が集まるのは……ねえ。流石に神社を飛ばすのはあれだけど、一回いくらで玄爺に乗せてみるってのもありかしら」

 ぶつぶつと霊夢が呟くのを見ながら、魔理沙と早苗は苦笑を浮かべた。

「でも、妖怪寺のことだから何か悪さしているかもと思ったんですが……そうじゃないみたいですね。この様子だと」

「そうだなあ。そうだったら面白いんだが……正義の味方的には。いやはや、実につまらん」

 近頃、人里でも人気の高い命連寺の弱みでも握れれば面白いのにと彼女ら三人は敵情視察に来たのだが、結局その期待は裏切られた。

 と、彼女らの背筋に薄ら寒いものが駆け上った。

 不意に現れる、何者かの気配。

 

”おどろけ~っ☆”

 

「うひゃああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 突然の声に、三人は悲鳴を上げた。

 慌てて背後を振り返る。

 そこには満足そうな笑みを浮かべる多々良小傘が立っていた。

 いや、それだけではない。小傘の他に寅丸星、雲山に聖白蓮までいた。

 霊夢達は冷や汗を流した。

「あなた達、こんなところで何をしているんですか? 屋根の上に隠れて……しかも、地上でお金払ってませんよね? 受付で見ませんでしたよ?」

 つまりは、彼女らはキセルをしてこの遊覧飛行に乗り込んでいたわけである。どうせ自分達は空を飛べるわけで、それなのにわざわざ地上でお金を払うというのも彼女らには馬鹿馬鹿しかった。もっとも、犯罪に決まっているのだが。

 詰め寄ってくる寅丸に、霊夢達は乾いた笑いを返した。

 聖は嘆息した。

「まったく……人間はいつまで経っても強顔女子であるっ! いざ、南無三っ!」

 寅丸の持つ宝塔と聖の持つ経文が激しく輝き、そして雲山の拳が大きく膨れあがるのを見て、霊夢と魔理沙、早苗は一目散に逃げ出していった。

 

 

 ―END―

 


 
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