真・恋姫無双 二次創作小説 明命√
『 舞い踊る季節の中で 』 -群雄割拠編-
第99話 ~ 届かぬ想いに惑いの詩を詠む ~
(はじめに)
キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助
かります。
この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。
北郷一刀:
姓 :北郷 名 :一刀 字 :なし 真名:なし(敢えて言うなら"一刀")
武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇
:鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋(ただし曹魏との防衛戦で予備の糸を僅かに残して破損)
習得技術:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)
気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)、食医、
神の手のマッサージ(若い女性は危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術、
(今後順次公開)
一刀視点:
大地の力強くそびえたつ木々の生命力を表すかのように、鮮やかな新緑の色と輝きを持った張りのある長い髪を緩やかに二つに分け。 途中から三つ編みで左右に垂らした髪が、彼女の溢れんばかりの生命力を和らげる役割を果たしている。
気の強さを表すかのような鋭い眼差しは眼鏡の奥に在ろうと、不可視の盾を宙に築き不審なものを寄せ付けない。
だけど、それは彼女が大切なものを守るために、長い年月をかけて小さな勇気を積み重ねてきた虚像でしかない。
彼女は己が守りたいと思うモノより弱いかもしれないと言うのに、それでも守り通してきた。
多くの外敵から……。
多くの重責から……。
翡翠や冥琳の様に深雪に耐え続けながらも、突き進むのではなく。
歯を食い縛りながら踏ん張り続け、気合の声と共に全てを跳ね返す姉御の様に。
自分は平気だと。 これくらい軽いもんだと。
軽口を叩きながらも、其の実必死に己と周りの者を騙してきた。
隣に立つ、可憐な少女を守り続けるために……。
俺はその事を知っている。 ほんの短い間だったけど、その事を知るには十分すぎた時間。
でも今目の前に立つ彼女の鮮やかな美しい緑の髪は所々解れ。
その顔色は疲労の色が濃い事が見て取れる。 最初に在った時以上に彼女は憔悴していた。
だと言うのにも拘らずその瞳には力強い意志の光が灯っており。 彼女が彼女である事を示しているのが分かり、そっと安堵の息を吐く。
彼女も俺の事に気が付いたのか。その瞳に一瞬喜びの色を見せるが、すぐに何故かその瞳を酷く悲しげな色に染めて行く。
それはほんの一瞬の出来事。 時間が止まってしまったかのような緩やかな一瞬。
彼女はすぐさま瞳を閉じたが、次の瞬間にはその茶色の瞳を真っ直ぐに前に向ける。
先程の不安げな感情を欠片もその瞳に映す事も無く、……己が使命を果たすために。
「江東を治めし偉大なる王、孫権様。 この様に御目通しが叶う事感謝いたします。
此度は我が主、劉玄徳公の使者として参りましたが、まずは故あって名を申し上げれぬ事を、心よりお詫びいたします」
「構わぬ。 その方等の事は姉孫策と北郷より聞いている。
それに同盟国からの使者とあれば会わぬ訳にもいかぬし、世辞も儀礼も不要だ」
月の涼やかなれど温かみのある声での謝罪に、事情を知らない人達が名を言わぬと言う非礼な行為に眉を潜め。一国の王を前にして無礼な行いだと声を上げそうになった所を、蓮華の固い声がその頭を押さえつけた。
王がそれを赦し儀礼も不要と言った以上。臣下である彼等がその事に言を挟むのは、余程の事でないかぎりこの様な公の場では許されぬ事。
ましてや、先代の王である雪蓮の名を出されては、二人の王に意見に異を唱える事になりかねない。
そんな些末な事に己が首を掛ける必要性が彼等に在る訳もなく。 雪蓮でそう言う事にはいい加減慣れたのか、肩で小さく溜息を吐くのが伺えた。 少なくとも、この事で彼等は此処で何かを言う事は無いだろう。
そしてその事を周りを見る事無く雰囲気で察した詠が、自分の本当の主である月の代わりに、今度は自ら前に一歩出る姿に、彼女達が来た目的が予想通りただの伝言染みた内容ではなく。 賈文和の力を必要とする程の内容だと言う事が確信に変わった。
建業へと本拠地の移転するための作業に追われる毎日を送る中、桃香の使者として突然の訪問を望んだ彼女達。
何かあった事は確かだろう。 なにしろ使者が表舞台に出る事が出来ないこの二人と言うのは不自然過ぎる出来事。
俺との面識があるぐらいでは大した理由にはならないだろうから、この二人を使者として出さざる得なかったと考えるべきだろうな。
……なんだろう、何か忘れている気がする。
詠(賈駆)視点:
前方に連れて来た僅かな護衛の兵の後を追う様に、ボクと月は馬を走らせる。
既に陽は落ちかけ、今にも陽が山の向こうに消えようとしている。
赤く染まった平原を、長い影が疾走するボク達を追いかけるように長く伸びて行く。
その影の先には彼奴が、影と同じ様にボクを追いかけて来てくれている。
……ボクを見てくれている。
「……馬鹿馬鹿しい。 そんな事ある訳ないじゃない」
在り得ない考えがふと脳裏に浮かび、そのあまりもの阿呆らしさに溜息と共に零れ出てしまう。
幸い疾走する馬の蹄の音で、隣を駆ける月にも聞こえなかったようだ。 もっとも一軍を退いての移動のため馬の駆ける音もそれなりに大きなものとなっているため、声を相手に届けるつもりで話さなければ聞こえやしない。
後ろを伺う様に振り向くと、夕日に照らされながらも、彼奴の顔がはっきりと目に映る。
霞に馬に全然慣れていないと言われていた彼奴は、今や一人で馬に慣れたボク達の後をしっかりとついて来ている。
当たり前よね。 半年もあればそれなりに成長するわ。
でもそう言った能力的な事を除けば、彼奴は相変わらずだった。
幸せそうな呑気な顔で…。
大陸の彼方此方で戦火が上がっていると言うのに…。
戦なんて知らないと言った表情で…。
逆にボク達を心配そうな目で見ている。
「……そんな訳ないって言うのにね。 あの大馬鹿」
彼奴の呑気そうな顔が、月夜の晩の彼奴の顔と重なって見えた。
敵兵の死にまで悲しみ。 それをしてしまった自分の罪に苦しみ。
それでも人の儘歩まなければいけない苦悩に、知らずと涙する彼奴の顔…。
あれだけ苦しんでいた彼奴が、そう簡単に考え方を変えるはずが無い。
彼奴はあれからも苦しみ抜いたはず。
人の心の儘で地獄を歩んだんだもの。 苦しまないわけが無い。
そして今も苦しんでいる筈。
……なのに彼奴はそれを何でも無い様に呑気に笑って見せている。
ボク達の事を本気で心配している。
人の心配なんてする余裕ないくせに。
……優しいのも大概にしなさいよね。
その事に胸が締め付けられた。 心が痛みを訴えた。
こんな痛みなんて、大した痛みじゃない。
彼奴の抱えた痛みに比べたら、痛みとさえ言えない。
本当はボクの考え過ぎだと思いたい。
彼奴はボク達と同じ様に、大切なものを守るために大切なものを捨てたんだって思い込みたい。
でも彼奴の目を見たら、そんな事は在り得ないって一瞬で分かった。
彼奴の瞳は相変わらず綺麗に清んでいるにもかかわらず底が見えない。
でも其処にある瞳の色の深みが、彼奴の決意を教えてくれた。
以前の時より一層深くなった色が、彼奴の傷の深さを教えてくれた。
捨てる事も、逸らす事も、狂う事すら許さずに地獄を歩いているんだって。
彼奴は人の心の儘で、傷だらけで今も歩み続けているんだって思い知らされた。
だと言うのに、あんな何でも無いと言った表情で……。
ボク達が無事だと言う安堵に据えに、あんな笑顔が作れる。
……まるで冗談のような奇跡。
だから、それがとても悲しかった。
自分が出来なかった事への嫉妬? その疑問が浮かんだ瞬間それを鼻で笑い飛ばす。 あんなのは大馬鹿のやる事で真面な考えじゃないわ。 だから嫉妬なんて浮かぶわけが無い。
なら憧憬とでも言うの? それこそ何にと言いたいわ。 軍師として自分の能力を生かせない事に未練はあるけど、それなら彼奴にだけそう感じるのはおかしい。 そうならば身近な軍師に矛先が行くはず。 もっとも、身近な軍師と言うと『あわわ』『はわわ』の二人だけど、……あの二人を見ているとそんなものは浮かばない。と言うか浮かんだら私の人生終わりよ。 あんな変な本ばかり読んでいる二人にだけは、そんな憧憬を浮かべたくないわ。
だったら……彼奴の隣に居るのが……。
ぶんぶんっ
私は変な事に再び思考が行きそうになったのを首を振って振り払う。
まったく、我ながら今のはない。 そんな事を考えていて良い時じゃないってのに、いったい何を考えてあんな言葉が浮かんだのか、時間があれば自問自答したい処だわ。
ボク達一行のすぐ後ろからボク達を追いかけているは彼奴だけじゃない。
彼奴のすぐ隣には孫呉の新王である孫権と周瑜がおり、そのすぐ後ろを孫呉の兵達が追随してきている。
そもそもついて来るよう頼んだのはボク自身。
ボク達を襲った事態は、とても愛紗や朱里達主要な将は手を離せる状況ではなく。他の者では同盟国の王に頼み事をするには礼に失っし過ぎる。
其処で彼奴との面識があり、事情を知られているボクと月であれば、少なくとも話を聞いてくれると踏んでくれると言う事で白羽の矢が刺さった訳だけど。
月だけではなくボクもと言う事は、ボクの軍師として能力で、何とか話し合いの場にひっぱり出してきて欲しいと言う事だったんだと思う。
でも結果的に言えば、朱里は新王である孫権と言う人物を読み違えた。
『 例え同盟国が力を失おうとも、同盟の約を我等から破棄する理由にはならない。
我が孫家が今あるのは、力と土地を失った時に我等に力を貸し、庇護してくれた一族達が居たからだ 』
そう言って、袁紹軍の追撃から守ってほしいと願い出たボク達に、反対の意見を言う孫呉の文官達を黙らせた。
一見愚直なだけの暗君に思えるかもしれないけど彼女は違う。
周りを良く観察し、臣下の意見を飲み込んだ上での彼女の本音の発言。
ただ自分一人が突っ走るのではなく、周りの意見を組んだ上での揺るがない芯を基準に行動している。
王として、もっとも王道とする姿だけど、それ故にそれを徹するのは容易では無い。
王と言っても所詮は一人の人間。 どうしても我が出てしまう。
朱里が読み違えたのは、おそらく前王である孫策と前々王の孫堅を基準として想定したからだと思う。
確かにあの二人を基準に考えたら読み違えるのも無理はないわね。
ボクと月の役目は、救援の部隊の要請と話し合いの場を作る事。
でも口を出せるのも其処までで、あとは国を担う者同士が決めなければいけない。
元相国とそれを支える軍師とは言え、そんな場に侍女なんてお呼びじゃない。
でも桃香、朱里、分かってる?
約を守り、義理堅いと言う事は相手にもそれを求めると言う事よ。
例え理由がどうあれ。裏切ったり誤魔化そうとすれば、きっと許さない。 …何が在ろうとね。
下手をすれば、私達は袁紹ではなく孫呉に全滅させられるって事。
たぶんそうなったとしても、ボクと月は大丈夫だろうけど、そんな甘い考えに身を委ねる気は無い。
月を巻き込んだりしたら、許さないんだからね。
……頼んだわよ桃香。
つづく
あとがき みたいなもの
こんにちは、うたまるです。
第99話 ~ 届かぬ想いに惑いの詩を詠む ~ を此処にお送りしました。
………ぁぅぁぅぁぅっ……、今回も明命が欠片も出て来なかったです。
ですが明命のターンが近いのも確かですので、今しばらくお待ちください。
さて賢明な読者はお分かりと思いますが、徐州を逃げだしてきた劉備一行。 その使者として、面識があり同情を誘いやすい月と詠を出した訳ですが、……月も相変わらず空気だなぁと…ちょっと反省。何かの時に彼女の視線で書きたいと思います。
この後の展開ですが、大体皆様の読み筋通りになると思います。 後は演出として私がどう書くかに掛かってくるのでしょうね。
おりしも次回でこの『舞い踊る季節の中で』も百話となり、群雄割拠編最後の章へと本格的に突入する事となります。 ………まさか百話を超えるなんて、書き始めた時には思いもしなかったですぅ……(汗
では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。
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『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。
本拠地の移転に伴う作業で忙しい毎日を送る一刀達。 そこへ懐かし顔が突然劉備の使者として訪れた。
このような形での再会など望んでいなかった使者は、何を想い一刀達を自分の都合に巻き込むのか。
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