第1話 舞い降りた八咫烏
「…私は…」
気を失っていた孫市が目を覚ます。
(本能寺で織田信長を討ち…元親と徳川が姿を見せ……泣く姿を見られてしまった…)
苦渋の表情を浮かべて孫市は頭を抱える。
(そして…光に我らは呑まれた…が、何も起こっては――)
「っ!?」
異変に気付き、孫市は跳ね起きた。
孫市が見たのは先ほどまでいた本能寺ではなく、全方位見渡す限りの平原。
関ヶ原かと一瞬思ったが、そうでは無いと孫市の勘が告げる。
ふと、右足に目をやると、扱っていた八咫烏 山吹(以後山吹)が拳銃嚢(ホルスター)に収まっており、他に使っていた銃火器も傍らに落ちていた為、孫市はひとまず息を吐いた。
??「おい姉ちゃん、いい物持ってるじゃねえか」
その声に孫市が振り向くと、そこには髪を黄色い布で縛った3人組の男が立っていた。
男2「ぼーっとしてんじゃねえよ。お前のその金色に光ってるやつを寄越せって言ってんだよ」
男3「そ、それだけあれば一生遊んで暮らせるんだな」
男1「そういうことだ、命が惜しけりゃそれを全部俺達によこしな」
3人共孫市の持つ山吹を見てニヤニヤしている。3人組の頭なのか、中年の男が
曲刀を孫市に向ける。
雑賀孫市という人間は沈着冷静であるが、決して気が長く、穏やかな性格ではない。
理解し難い状況、目の前の3人の横柄な態度、
あまつさえ己の誇りともいうべき山吹を寄越せと。金の為に。
孫市は――静かにキレていた。
孫市「…いいだろう、くれてやる」
孫市は山吹を一丁頭に向ける。
男1「へへ、物わかりのいい「但し」」
――銃声が、響く。
孫市「私がくれてやるのは、鉛玉だけだ」
カラン、と根元から折れた曲刀が落ちる音がした。
男1「…は?」
呆然とする男の耳のすぐ脇を、銃弾が掠めた。残りの男達も、孫市から発せられる
怒りに立ちつくし、言葉さえ発することができない。
孫市「私の誇りを汚すことは、私の生き様を汚すのと同義だ」
山吹を両手に構え、3人に突きつける。
男1「ま、待った!!すまん!何も取らないから許してくれ!!」
頭は土下座して必死に許しを請う。残りの二人もそれに倣い土下座をする。
その姿を見て、孫市は山吹を拳銃嚢へとしまう。
それを見て安心した男達は顔を上げるが、そこにはマシンガンを両手に持った孫市の姿があった。
孫市「フフ…己の行為を否定するか…」
男達は目の前の顔を仰ぎ見て、絶望する。そこには、
孫市「そのような生き様を、私は喜んで軽蔑しよう」
凄絶な笑みを張り付けた、鬼がいた。
平原に、幾多の銃声と悲鳴が響き渡った。
孫市「…やりすぎたか」
孫市の前には、至る所に傷を負った3人組が折り重なっていた。
孫市「これでは聞き出そうにも、無理か」
小さくため息を吐き、これからどうするかを思案する。四方を見る限り平原な為
どこに向かえばいいのかも分からない。
どうしたものか、と思った時、再び声を掛けられた。
??「あの…少し、よろしいでしょうか…?」
今度は何事か、とため息を吐きながらその方向を向くと、見たことも無い装束に
身を包んだ少女がおずおずと孫市を見ていた。
孫市「…何だ」
自分でも刺々しい言葉になっていたことに気付いたか、孫市は小さく舌打ちした。
??「あ、あなたが天の御使い様ですか!?」
しかし、この言葉を聞き、全ての思考が霧散した。
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第1話です。説明すらどう書けばいいのか迷ってしまう体たらく…(汗)