No.190166

見上げた空、七色の架け橋-蜀書†焔耶伝-

月千一夜さん

こんばんわ、月千一夜ですw
前に予告したものの本編・・・まずは序幕、公開いたします

2010-12-17 20:56:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7780   閲覧ユーザー数:6410

青空

 

晴れ渡る、心地の良い空

 

そんな空を見つめ、“彼女”は笑う

 

 

その空に浮かぶ、“七色の架け橋”を見つめながら

彼女は、ふわりとした優しげな笑みを浮かべていたのだ

 

 

「“虹”か・・・」

 

 

呟き、そっと手を伸ばす

温かな光に、僅かに目を細めながら

 

彼女は・・・手を伸ばしたのだ

 

 

「なぁ、見えてるか?」

 

 

空に、虹に向かい・・・そっとたずねる

 

 

「そっちにも、同じように・・・美しい虹がかかっているのか?」

 

 

答えはない

かわりに、風が優しく彼女の頬を撫でた

 

その風に、彼女はまた小さく笑った

伸ばした手を、すっと引いていく

 

 

「なんて、な」

 

 

笑い、彼女は視線を空からそらした

 

そして、歩き始める

しっかりとした足取りで・・・彼女は歩みを進めていく

 

 

 

吹き抜ける風

 

長く美しい髪を、撫でるように通り過ぎていき・・・溶けていく

 

 

今も、そして昔も変わらない

 

風も、空も、記憶も、思い出も

 

 

そして・・・彼女の“想い”も

 

 

 

 

 

 

 

「“お館”、愛してるよ

今も、そして・・・これからもずっと」

 

 

去り際に、風にのせた“想い”

 

今でも忘れない、大切な記憶

 

 

 

 

彼女の薬指の指輪が日の光りを反射して、そっと輝いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪見上げた空、七色の架け橋-蜀書・焔耶伝-≫

   ~序幕~

 

 

 

 

 

虹の上

 

七色の架け橋の上、何処までも・・・何処までも歩いていく

 

そんな夢を見たんだ

 

 

何で、虹の上にいるのか

 

何で、私は歩いているのか

 

 

何もわからない、おかしな夢

 

 

だけど、不思議と嫌じゃなかった

 

できれば、もう一度見てみたい

 

そう思ったんだ

 

 

そして、次こそ知りたい

 

この七色の架け橋の、その遥か先

 

いったい・・・何処へと繋がっているのか

 

何が待っているのか

 

 

私は、それが知りたいんだ

 

 

 

~とある少女の夢日記より・・・~

 

 

 

 

「ん・・・」

 

 

ゆっくりと、開けていく視界

徐々に見えてくる天井に、私は軽くため息をついた

 

 

「朝、か・・・」

 

 

呟き、目をこする

重かった体が、少しずつ軽くなっていくのがわかった

私は、そのまま体を横へと向ける

 

 

「ぅん・・・」

 

 

そこに眠る“男”の寝顔に、僅かに表情を緩ませながら

 

【北郷一刀】

天の御遣いとして、この世界に舞い降りた男

そして私達の主であり、その・・・こ、恋人でもある

 

 

「お館、起きろ・・・そろそろ、愛紗が起こしにくる時間だぞ」

 

 

そう言って、私はお館の体を揺する

それに反応し、お館の表情が僅かに歪んだ

 

 

「ん~、あと十分だけ・・・」

 

「ぷっ・・・」

 

 

あまりにも予想通りの返事に、思わず吹き出してしまう

そのお願いを叶えてあげたいところだが、さすがにそれはマズイ

だから、私はお館の耳元に口を近づけた

 

 

 

 

「愛紗が今まさに、偃月刀をお館の“蛇棒”に振り下ろそうと・・・」

 

「おっはようございます!!

起きた、超起きた!!

だから愛紗さん、その偃月刀を俺の“天の御遣い”に振り下ろすのは止めてください・・・って、あれ?」

 

 

ガバッと勢いよく体を起こし、下半身をおさえながら後ずさるお館

だがすぐに気づいたのか、キョトンとした表情のまま私のことを見つめてきた

そんなお館にたいし、私はフッと笑みをこぼしていた

 

 

「おはよう、お館」

 

「あ、ああ・・・おはよう焔耶

あ、あれ、愛紗は?」

 

「夢でも見てたんじゃないか?」

 

「そ、そうかな・・・はぁ」

 

 

“なんだ夢か”と、お館は本当に安心したようにため息をついていた

その様子に、また私は笑ってしまう

 

 

「お館は、本当に愛紗が恐いのだな」

 

「恐いっていうか、俺がこっちに来てからの付き合いだからさ

俺がどの程度のお仕置きにまでなら耐えられるのか、とか知り尽くしてるんだよ

もうダメだと思った瞬間一旦止めて、もう大丈夫だと思った瞬間にお仕置きが再開されるんだ

流石は、軍神だよ」

 

「それは、恐いな」

 

「だろ?」

 

 

苦笑し、お館は寝台から出る

窓から差し込む光に、お館の周りが微かに輝いて見えた

 

 

「さて、そろそろ着替えないとな」

 

「な、ならっ・・・!」

 

 

お館の言葉に、私も勢いよく寝台から飛び出した

それから置いてあったお館の衣服を手にとり、そっと差し出した

 

 

 

「私が、その・・・手伝おう、か?」

 

 

 

恥ずかしさを、必死に堪えながら言った言葉

お館はそんな私の様子に一瞬驚いたような表情を浮かべていたが・・・すぐにあの、いつもの笑顔を見せてくれた

 

太陽のように、温かな笑顔を

 

 

「それじゃ、お願いしようかな?」

 

「う、うむ!

任せてくれ!」

 

 

その返事に、私は思わず微笑んでいた

 

嬉しくて

こんな時間が、堪らなく幸せで

 

私は、この時間を噛み締めるよう・・・ゆっくりと、お館の衣服を整えていった

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

乱世は終わった

国の腐敗から始まり、三国による争いと続いた長い乱世は終わったのだ

 

 

魏の“覇王”、曹操孟徳

 

呉の“小覇王”、孫策伯符

 

蜀の“大徳”、劉備玄徳

 

 

三国による同盟によって、長かった戦いは終わりを告げた

 

そして“平和の象徴”として、“天の御遣い”北郷一刀の名も以前にも増して広がっている

近いうちに三国の中心に都を造り、そこを天の御遣いであるお館に治めてもらうという話が出ているほどだ

 

天の御遣いの存在は、乱世が終わっても尚必要とされていたのだ

 

 

勿論、私たちにとっても・・・だ

 

 

だからこそ理屈ではわかっていても、我ら蜀の者達はその都にお館が行くのを反対していた

 

当然のことながら、そうなってしまうと会う時間が減ってしまう

そこには我ら蜀だけではなく、魏と呉の者達も来るのだから

その中には、お館のことを密かに狙っている者も多い

特に魏の楽進や、呉の陸遜なんかが危ない

 

楽進はお館と我らを見つめたまま“いいなぁ”と呟いていたのを聞いたし

陸遜に至っては、本を片手にお館を見つめ“ハァハァ”と息を荒げていた

・・・あれは、絶対に近づけてはいけない

 

 

とにかく、蜀はその考えに反対していた

 

しかし、その都を天の御遣いが治めることで多くの人民が安心するというのも事実

それがわかっていたから、お館も我らの気持ちを知りつつもその話を受けたのだ

 

 

そして、私たちは皆お館と一緒に新たな都へと住むこととなった

 

多くの女性に言い寄られるお館の姿に、僅かに胸を痛めながら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~・・・」

 

 

そんなことを思い出しながら歩いていた私の隣から聞こえたのは、なんとも呑気な欠伸

まったく・・・私たちの苦労もしらないで

 

 

「お館、だらしないぞ」

 

「でも、なんかすごい眠いんだよね・・・ふぁ」

 

 

そう言って、また欠伸をするお館

あんなに眠っていたのに、まだ眠いのか?

 

 

 

「ていうか、昨日の夜はあんなに元気だったじゃないか・・・」

 

「ん、何か言った?」

 

「にゃ、にゃにも言ってないぞ!?」

 

「焔耶が噛んだ!?」

 

 

か、噛んでしまった・・・い、いひゃい

朱里たちは毎回こんなんで、よく舌が無事でいられるな

 

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ああ、問題ない」

 

 

とにかく、一回落ち着こう

こういう時は、確か空を見て・・・

 

 

「ぁ・・・」

 

「ん・・・?」

 

 

空を見上げた瞬間、こぼれ出た言葉

それに気づき、お館も同じように空を見上げた

 

そして、嬉しそうに微笑む

 

 

 

「へぇ・・・“虹”なんて、久しぶりに見るな」

 

 

言いながら、お館は無邪気に笑った

その空にかかる七色の架け橋に、そっと手を伸ばしながら

 

 

「虹か、確かにそうだな

今思えば乱世では、このように虹を見ることもなかった気がする」

 

「だろ?」

 

 

伸ばした手もそのままに、お館は私に向かい微笑みかける

その笑顔に、トクンと・・・胸が高鳴った

 

そんな私の様子に気づくこともなく、お館は再び虹を見つめた

 

 

「けど、虹・・・か」

 

「お館?」

 

 

ふと、何か違和感を感じる

お館は、確かに笑顔だ

だけど・・・何故か、そこに何かが“足りない”気がしたのだ

 

 

「どうかしたのか?」

 

 

だから、気づいた時にはそんなことを聞いていた

お館の手を握り、お館の瞳を見つめながら

 

そんな私の問いに、お館はフッと微笑む

それから、そっと・・・私の額に口づけた

 

 

「ぁ・・・」

 

 

その突然の行動に、一気に顔が赤くなる

お館はその様子を見て、クッと笑いを漏らしていた

 

 

「なぁ、焔耶・・・知ってるかな?」

 

「な、なんだ?」

 

 

それから、小さな声で話し始める

視線をまた、あの空の上

 

七色の架け橋へと向けながら・・・

 

 

 

 

 

「虹ってさ、繋がってるんだよ

ここからずっと、遥か彼方・・・それこそ、俺のいた天の世界にまで

何処までも、果てしなく繋がっているんだ」

 

 

 

 

 

今思えば・・・この言葉が、始まりだった

 

乱世の終わり

それに合わせるかのようにして始まった、新しい物語

 

その、始まりだったんだ

 

 

 

「何処までも・・・繋がっている、か」

 

 

 

噛み締めるように呟いた言葉

 

見上げた空

 

そこにかかる、“七色の架け橋”

 

同じように、伸ばしてみた手

 

その先に、いったい何があるのだろう

 

その答えは、未だわからない

 

だけど・・・それでもいい

 

 

 

「さぁ、行こうか

皆が待ってる」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

今は、この目の前の“太陽”を見つめていたい

 

そう思ったんだ

 

 

 

 

 

≪だから・・・後悔はしていない≫

 

 

答えを知った先、彼女を待つものも

 

その夢の意味も

 

その虹の果てに待つものも

 

 

 

≪だから、私は今でも“貴方”を愛せるんだ≫

 

 

 

何一つわからないままに

 

物語は、始まってしまった

 

 

 

≪この虹の果て・・・貴方へと、この想いをのせて≫

 

 

 

それは・・・見上げた空にかかった、七色の架け橋

 

 

 

≪私は、歩いていこう≫

 

 

 

 

その果てを夢見た、一人の少女の物語

 

 

 

 

 

 

 

 

≪見上げた空、七色の架け橋-蜀書†焔耶伝-≫

 

   開†幕

 

 

 

 

 

 

★あとがき★

 

や、やってしまった

焔耶メインのお話を考えているうちに、気づいたらこんなことに・・・ふ、不思議だ

今回は導入編ということで、短めにしてみました

 

一応“空”をテーマにした作品で、雲君や暮空と同じ系列になります

その中でも“虹”に深く関係した作品となる予定です

 

 

 

他のお話に比べ、かなり短めな今回のお話

蜀伝というよりは、もはや“焔耶伝”というわけでタイトル変更w

・・・呉伝とまったく同じザマじゃないかww

しかも、以前の予告とだいぶ変わってるというダメっぷり

 

 

・相変わらず戦闘描写のない作品

・“純愛”というか、“恋愛”みたいなのがメイン

・焔耶のデレが若干、というかかなり多いです

・シリアスな雰囲気が多いかも

・他に比べ、だいぶ短いです(5~6話くらい? もしかしたら、もっと短いかも)

・更新は不定期、というか他の連載作品メイン

 

以上を許容できる方のみ、この作品をお読みくださいww

 

あ、あとなんか“このキャラでこういう御話は考えられますか?”みたいなのは大歓迎っすよ♪

僕でよければ、がんばって書かせていただきますからwwww

シリアス・ほのぼの・・・ジャンルは問いません

ただカオス指定だと、どうなってしまうかは保証できませんがwwwwww

 

 

それでは、またお会いしましょうw


 
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