No.189468

真・恋姫無双 夜の王 第36話

yuukiさん

真恋姫無双夜の王第36話、
対蜀編、終幕

2010-12-13 13:36:44 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:8760   閲覧ユーザー数:6950

この作品の一刀は、性格、武力ともに原作とは異なっています。

 

また、一部キャラを否定する場面もございます。

 

ご理解をお願いいたします。

 

まだまだ誤字、脱字や分かりにくい表現などもあると思いますが、

 

こんな自分の作品でも楽しんでいただけたら幸いです。

 

彼女達の叫び声を聞いた、泣き顔を見た

笑っていて欲しかったのに、泣き顔など見たくはなかったのに

あまりに無慈悲な一撃が、俺の胸を貫き、全てを奪っていた

目に映るのは盗賊達の笑み、そんなもの、見たくはない

 

 

   『死にたいなら、死ねや』

 

 

  「か、、、、、、、、、、、、、、、、」

 

肉を貫く音、こみ上げる鉄の味、火傷のような熱さが迫る

気づけば、盗賊の剣が腹に刺さっていた

 

  「ば、、、かな、、」

 

有り得ない、理解できない、俺は死ぬのか、、こんなあっさりと

 

 

天和「かずと、カズト、一刀!」

地和「うそよ、こんなの、、うそよ」

人和「い、いやあああああああ!!」

 

気管を血で塞がれ、意識が端から削られていく。その中、彼女達の絶望と死の足音が聞こえた

 

盗賊「へ、はは、はははははは!」

 

剣を突き立てた盗賊は笑いだす。その醜悪な声で、彼女達の声は消されていってしまう

呼吸が途切れる、既に痛みは消え去り、麻痺して行く、死はもうすぐそこだ

人として生きて、人として死んでいく、俺はこんな所で死ぬ筈がないのに、、、

 

 

味気ない、笑うしかない最後だ、、、けれど、笑みなどこぼせない

おかしいな、無理やり笑うのは得意だったんだが、、

 

あっけない、何も救えず、何も守れず、俺は死んで逝く

これが、俺の限界なのか、仕方がないんだな

 

 

一刀「本当に、そう思っているのか?」

 

とうに尽きた聴覚に、俺の声が響いてくる。霞む視界の中、幻影が見えた気がした

 

 

盗賊「ははは、死ね、恨むんなら弱い自分を恨むんだな」

 

ああ、その通りだ。敗者が悪で、勝者が正義、分かり切った世界の真理

 

天和「いや、イヤ、嫌」

盗賊「大人しく、するんだな」

 

いくら嘆き、否定しようと、敗者に選択は許されない

 

 

彼女達の声が、貫かれた胸をさらに抉る。潰えたと思った血が口から零れる

突き刺さった剣が血を浴び、輝きが赤く染まる

 

盗賊「感じろ、苦しめ、泣き叫べ」

 

感じぬ体で何を?苦しみなど上げることも出来ない、涙など枯れ果てている

 

盗賊「お前は、、死ぬんだ」

 

   グザッ

 

瞬間、剣がさらに深く突き刺さる

 

 

終わりは静かに。無慈悲に、理不尽に訪れた

 

 

 

  「あ、、あ」

 

死ぬのか?なんと他愛もない。だが、胸に奔るこの感じ、何処かで出会ったことがある気がする

その時は、もう少し、納得できる死、だったと思うが、、

 

 

これが俺の限界、愛した人、一人守れない、無力の塊。何が、天の御使いだ

 

 

     だが、その時

 

 

一刀「否、そんなはずはない」

 

 

死に向かう意識が止まる、何処からか鼓動を感じる

 

一刀「俺が救えぬ筈がない、守れない訳がない」

 

嘲笑うかのような声が、壊れた耳に入ってくる

死と生の狭間の世界で、俺は話しかけて来る

 

  「なぜ、そんなこと」

一刀「思ったはずだ、こんな所で死ぬ筈がないと」

 

  「、、、、」

 

確かに、そう感じた。彼女達の、彼女達の危機には取り乱したが、絶対の死を前に恐怖は無かった

生物なら持ち得るであろうソレを俺は感じて居なかった

 

 

  「なら、、俺は、、」

 

 

一刀「ああ、死なない。こんな所で死ぬ無様など、晒す筈がない」

 

 

消えたはずの視界に映る俺の姿、何時か見た夢と同じ、魔王の笑みを浮かべている

それは不快で、同時に懐かしさを感じさせた

 

一刀「守りたい物、救いたい者。何を捨ててでも、叶えたい願いがあるだろう。それを掴む為に、俺は手に入れた筈だ。思い出せ、その願いの名を」

 

紡がれる言葉と共に、脳裏で何かが爆ぜた

 

  「俺は、、」

 

思い出せ、俺では無い時の俺を。忘れる筈の無い何かを、

かつて居たその場所から、映し出せ。叶えるべき願いの名を

 

 

  「、、、、 、、、、 」

 

 

 夜王 獅堂 一蝶 哀 逆狗 大陸を覆う黒天 忌むべき魔王 誇り高き悪 

 

 

知らぬ、知らない、だが、思い出す。叶えるべき願いの名は、大義

大陸の平和、紡ぐべき外史、これから歩むはずの道の情景。その為に奪い、与えたんだ

 

 

盗賊「死んだか」

 

剣を突き刺した男は死を確信し

 

地和「なんで、死んじゃうのよ、、」

 

彼女たちもまた、死を肯定した

 

一刀「さあ、再び歩むぞ」

 

俺だけが一人、死を否定し、やり直そうと

 

 

     ドクン

 

  

  「俺は、、、」

 

三者の答え、正しいのは誰なのか?答えるべき相手は?

俺は、何を思い、何を願い、何を犠牲に何を成す

 

  「そうだ、俺は、、、、」

 

救えぬのは仕方ないと思ったか?

いや違う、それを良しとしなかったから大義を背負った。力を求めた

 

__夜天を捨て、黒天を成そうと思ったのは諦めたからか?

 

  「「否、、」」

 

声が響く、俺の影と俺の闇が、重なっていくのを感じる

激痛が退き、俺は自己を認識し始める

 

一刀「「否、断じて否だ。奪われるのを待つのではない、それでは生まれながらの敗者だ。そんな世界に何の意味がある」」

 

傷口を見れば、なんてことは無い。こんな所で、俺が死ぬ筈がない

 

一刀「「俺はまだ何も成していない。ならばそれこそ、己が大義に反している」」

 

高まる鼓動、成すべき道が見えて来る

 

 

一刀「無為だと遠ざけた、救えぬと烙印を押し通り過ぎた。本当は全てを愛したかったのに、救うには俺が弱すぎたから」

 

助けたかった、撃たれてしまうはずの董卓を、儚いあの少女を

 

一刀「なぜだ、何故許されぬ。抱擁どころか、柔肌を撫でることさえ出来ない。なんたる無情、森羅万象この世は厳しすぎる」

 

力が無ければ愛でられないのに、世界には美しいモノが多すぎる

 

一刀「ならばと、力を手に入れた、守る為に、救う為に、愛する為に。妄言を吐く大徳も、戦場を駆ける戦乙女も、覇道を歩く少女も、全てが愛しい。故に、俺は紡ぐと決めた」

 

 

 『全てを愛せる世界を見つけるまで、、それこそが我が願い。大儀だ』

 

 

愛したい、強欲だと罵られるだろう。色欲魔だと思われるだろう。全身精液男の名も甘んじて受けよう

 

一刀「誰か一人を選ぶことなんて、俺には出来ない」

 

満たされない心の虚空、それを満たすために進んできた

愛したい者が居たから、救いたい者があったから

 

一刀「全てが欲しい、全てを愛したい、例外はない。彼女達は美しすぎる」

 

 

最初は救いたかった、彼女達を、たとえこの身を犠牲にしようと

だが、気づかされ、知った。俺が愛されていることを、俺が愛していることを

救うのではない。自己犠牲など知るものか。志を忘れた愚者だと罵るがいい

 

 

彼女達を救うことじゃない。新たな願いを、大義を、俺は劉備の前で叫んだじゃないか

 

 

一刀「そうだ、、、俺は」

 

 

体に力が籠る。虚空を映していた目に世界が映る。服は穢れ輝きを失う

胸をせり返り溢れだすは願い。劉備の理想を否定し、

趙雲の正義を拒絶してなお、叶えたかった身勝手な望み

傲慢にも俺に死を与えようとする、剣に手をかける

 

  『俺は、彼女達(世界)の全てを手に入れる!』

 

    バキンッ

 

少し力を込めれば、剣はいとも容易く砕け散る

 

 

笑いたいなら笑うがいい、罵りたいなら罵るがいい。これが多くの他者を犠牲に成したかった願い

傷つき、敗り、殺し、嬲って、欲望の果てに願った身勝手な望み

 

 

  『我が大義は、彼女達の為だけに有る!それ以外など、知ったことか』

 

 

その言葉で服の輝きは完全に消え失せた、天の御使いという存在意義が消えていく

だがそれでいい、その果てで、全てを愛せる世界が手にできるのなら

俺は紡ぎ続けよう、その終端に至れるその瞬間まで、未来永劫物語を!

 

一刀「くっくくくははははははははあはっははははははっはは」

 

 

最高の高揚に体を高ぶらせながら、前を見れば呆然とする盗賊達の姿が映る

死にかけた肉体は蘇生を始め、天は黒く染まっていく

 

 

ああ、心から礼を言おう。君達が居てくれたから、今俺はここに居る

思い出させ、踏ん切りを付けてくれたこと、本当に感謝している

故に観客よ、見ていてくれ、、、これが、俺の恋物語だ

 

 

一刀「さあ、」

 

虚空に手を翳せば、何処からか長刀が現れる

 

一刀「始めようか、、」

 

   ヒュン

 

振るった一振りで目の前の盗賊の体がずれ、崩れ落ちる

 

 

声すら上げられず、崩れて逝った仲間をただ盗賊達は茫然と見ていた

 

一刀「墜落の刹那、君たちに会えて良かった。迷いは消えた、羞恥も無い。心から、礼を言う」

 

そう呟きながら歩くだけで、恩人達は自分が切られていることも分からぬまま倒れていく

 

 

最後に残った主賓の前で、立ち止まり男を見つめる

 

盗賊「お前は、、なんだ」

 

恐怖するわけでもなく、助けを請う訳でもない。ただ茫然と浮んだ疑問を、簡潔に聞いて来た

 

一刀「、、、、さあ?自分でも分からんよ」

 

そう答え、剣を振り。盗賊は痛みに顔を歪めることなく倒れて行った

 

 

戦いは終わり、俺は彼女達に眼を向けた

 

天和「かずと、、」

地和「一刀」

人和「一刀さん」

 

恐怖に歪んでいた顔が、緩んでいく。三人は同時に抱きついて来た

 

天和「一刀、一刀、一刀」

 

天和はそう言いながら胸に顔をこすりつけてくる

 

地和「そんな、強いなら、最初から言っときなさいよ。ばかあ、、」

 

地和は毒を吐きながらも、思いっきり抱きついてきた

 

人和「こわかったです、、ぐすっ、、っっ」

 

人和は泣きながら俺に顔をうずめる

 

一刀「少しは落ち着け」

 

そう言って三人の頭を撫でれば、気持ちよさそうに顔を赤らめてくれる

 

 

三人を落ち着かせて、体を離し、彼女達を見つめる

 

天和「どうしたの?」

地和「な、なによ」

人和「一刀さん?」

 

 

三者三様の反応を返してくれる彼女達。始まりの外史で出会った、初めて恋をした相手

救いたいと願った。愛したいと思った。守りたいと願い、力無きゆえに守れなかった。

 

だから、俺は、彼女達を、、、

 

 

一刀「、、、、」  スッ

 

彼女達に、無言で刀を向けた。救う為に、愛する為に、途中の外史に戻る為に

 

天和「か、かずと、、」

地和「ちょ、と、冗談はやめてよ、、」

人和「どうして、、うそ、ですよね」

 

死を向けられながら、俺を信じようとする彼女達。それを見て頬を涙が伝った

 

一刀「捨てられないんだ。あの外史は、俺の大義を叶えてくれるかもしれない」

 

全てを愛せる世界が、黒天のもと成せるかもしれない

 

待ち望んだ世界はすぐそこにある。その為に、俺は刀を高く上げる

 

一刀「それに気づいてしまった。これは、俺の妄想なんだろう?」

 

趙雲に教えてもらった、失ったものは戻らない

 

最初の世界で俺は彼女達を救えなかった。なら、あの外史の彼女達はもう存在しない

 

一刀「恨んでくれ、憎んでくれ、幻想だとしても君達を消す俺を」

 

 

  『また、何時か会おう。天和、地和、人和、愛している』

 

 

 

 

 

   ----------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    「「「待ってるからね、一刀」」」

 

 

剣を振り下ろす刹那、彼女達の笑顔を見た気がした

 

世界を作っていた彼女たちへの愛が崩れ、幻想は朽ちていく

 

今の俺が居るべき場所へ、道が紡がれた

 

 

後悔は無い、俺は幾度生まれ変わろうと、俺にしかならない

詫びしないも、許しも請わない、だからどうか、

 

一刀「この世界、俺に任せてはくれないか」

 

戻って来たその黒天の下、貫かれた槍は外れ、勝者と敗者は逆転していた

 

華蝶「何故、私は負けた、、」

 

勝利を確信した瞬間に起こった奇跡、有り得ない現象に華蝶仮面は目を見開いていた

 

  

   パキッ

 

 

一刀「正義は勝つと言ったのはお前だ。正義は、望む者が多数だから正義なんだ。お前の正義より、俺の正義が望まれた。だた、それだけだ」

華蝶「ああ、ならばこの世界に、、」

 

 

   ピキ、ピキピキ

 

 

華蝶「やはり正義は、あったのだな」

 

 

   パキンッ  

 

 

   カラン カラン

 

 

砕かれ、落ちた仮面の下の表情は安堵に満ちたものだった

 

 

 

倒れこむ趙雲を受け止め、地面に下ろした後、眼前に広がる蜀兵と天兵を見据える

俺は紡ぎだす、誰かが望み、誰かが拒んだ言葉を

 

一刀「聞け、総軍よ!大徳の理想は潰え、正義の仮面は砕け散った!黒天は潰えず、広がるのみだ!故に歓喜せよ、我が同胞よ!勝者は我らだ!」

 

「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」

 

 

緑柱石は砕け、蜀という大国の名は消えることとなる

三国の均衡は崩れ、大陸を覆う戦乱が始まろうとしていた

 

 

数日後、魏

 

華琳「そう、蜀が負け。劉備は捕虜となったのね」

 

王座の間で、小さいながらも巨大な覇気を出す少女が部下の報告を受けていた

 

桂花「はい、確かな情報です」

 

覇王に忠誠を誓う軍師が毅然とした対応をとる

 

春蘭「アイツは劉備を助けたのか?本当か?」

 

その途中、同じく忠誠を誓う戦士が割り込んできた

 

桂花「本当よ、あの男が何考えてるのかは分かんないけど」

 

軍師は忌々しそうにそう呟く

 

 

華琳「ともかく、これで天はかなり強力な国になったわけね」

稟 「ええ、元々涼州や南蛮を手にしていた国ですから。単純計算で国力は超えられてしまいました」

 

近くに居たもう一人の軍師が眼鏡をあげながらそう答える

 

桂花「けど、元々蜀の民は劉備の理想について来た者達。あの男に協力的だとは思わないけど」

稟 「いえ、相手はあの一刀さんです。あの人の優秀さ、貴方も知っているでしょう?」

桂花「それは、、そうね」

華琳「ともかく、これまで戦ってきた敵とは比べ物にならない程の強敵、けれど」

 

そう言うと少女は自身に満ちた笑みを浮かべる

 

華琳「私達が負ける道理はないわ。春蘭、軍部の掃除は終わっているわね?」

春蘭「はっ、もはや華琳様の魏軍に一兵たりともあの男と繋がっている者はおりません!」

華琳「ふふ、これでようやく私達も動き出せる。みな、これからが開戦の時、私の覇道の元、共に大陸を統べるわよ」

 

   「「「「御意」」」

 

 

華琳「一刀、世界が欲しいのは貴方だけじゃないのよ」

 

天を見上げて、静かに呟く

 

 

同日、呉

 

雪蓮「へえ、やっぱり一刀が勝ったんだ」

 

覇道を歩む少女とはまた違った覇気を纏う女性が笑っていた

 

冥琳「笑い事じゃない、国力で越えられたのだ。必ず天は攻めて来るぞ」

雪蓮「その時は、私達が戦って守らなきゃ、でしょ?」

冥琳「分かっているなら、良いが」

 

思案顔で目頭を押さえる軍師に笑顔で語りかける

 

雪蓮「大丈夫よ。ようやく、私達も戦う準備が出来たんだし。ね、祭」

祭 「ああ、よもやあれほどの兵があの男に加担しているとは思わなったが、もう裏切り者は出ん」

雪蓮「私も手を抜く気はないし、絶対負けないわよ」

冥琳「手を抜く気はない、珍しいなお前がそう本気になるのは」

 

親友のその言葉に思案を解き、軍師は微笑を浮かべた

 

雪蓮「そうよね、自分でも可笑しいと思うもの。なーんか、気になるのよね、一刀のこと」

祭「ほう、惚れたか?あの男に」

雪蓮「分かんないな、これが恋なのかな?冥琳」

冥琳「私に聞かれても知らん」

雪蓮「冷たいわね、妬いたの?」

冥琳「どうだろうな?」

 

そういって二人は笑いあう

 

雪蓮「一刀を見てると苛めたくなって、戦いたくなって、貪りたくなる。これが、恋いかしら?」

 

天を見上げ、静かに呟く

 

 

 

黒天は広がる。終わりに向かって

 

 

 


 
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